2005年10月30日(日)

世界の中心で愛を叫んだけもの △(SF, 小説, 本)

ハヤカワ文庫 ハーラン・エリスン

表題作を含む短編15本から成る短編集。まず最初に目次が無く作者の世迷い言のような前書きから始まるのでエラク面食う。
ちなみに超売れた小説「世界の中心で愛を叫ぶ」のタイトルは、エヴァのTV版最終話のサブタイトル「世界の中心でアイを叫んだケモノ」に感化されて(というかモロにパクッた)編集がつけたもの、とどこかで紹介されていた。無論エヴァのサブタイトルはSF小説であるこの本から取ったもの。庵野監督がSFからネタを持ってくるのはよくやる手段で、トップをねらえ!の最終話「果てしなき流れの果てに…」は小松左京の小説だったりする。

表題作のあらすじ:
我々の世界とは別のどこかにクロスホエンと呼ばれる天国がある。そこは天国なので犯罪のような行為は一切存在しない。存在しないというか、犯罪的な行為があった場合、その犯罪の原因である悪心とでもいうような根源の物質を人間から抽出し、天国以外の別の世界に排出してしまうという行為を行っていた。我々の世界の理不尽な戦争やら犯罪行為はこれによって引き起こされてる、と。
この行為に心を痛めた排出装置の製作者は、自分自身を装置にかけて外の世界に排出する事を希望し、叶えられて彼は命を落とす。そして天国以外の世界は彼によって、ほんの少しだけ悪い行為が軽減された事があったみたいですよ、というような話。
収録作の中でも特にこれは分かりづらい部類に入る。

全体的に暴力をモチーフとした話や、古典っぽい適当だったりどこかで聞いたような設定に基づいた話が多い。しかもそれらの設定がキチンと消化されないまま書かれている感じで、どうにも中途半端な印象が強い。
古い人とはいえこの作者がそこまで有名だったり賞を取っていたりするのがどうにも理解できないのだが、あとがきにもあるようにどうもこの人の言動がネタとして面白く、作者のキャラの方がひとり歩きしているみたいだ(SF大会で初対面のアシモフに対して「なってねえよ!」と言い放った、とか今なら間違いなく2ちゃんで良くも悪くも祭りになりそうな人)。
ただ短編の中には、クリストファー・プリーストの「魔法」の元ネタに恐らく(多分、間違いなく)なったであろうと思われるような話などもあり、そもそものアイディア自体はいい物もあったのかな。
まあ何においてもアイディア”だけ”じゃ全くダメなんですが。

SF , 小説 ,

コメントがありましたらどうぞ




保存しますか?