2. 転調
曲の途中で別の調に移行することを転調といいます。転調には、一時的にコード進行に色彩感を与えるだけの効果のものと、本格的な転調があります。また、転調の方法には、はっきり転調を意識させないスムーズなものから、意図的に転調を意識させて意外性を狙ったものまで様々です。
(1) ピボットコードを用いる方法
ピボットコードとは、共通するダイアトニックコードなど、転調の前と後の両方のキーにおいて何らかの関係があるコードです。ピボットコードを経由することにより、スムーズに新しい調へ移行することができます。近親調には多くの共通するコードがありますので、ピボットコードを利用した転調が容易です。
例えば、AマイナーからCメジャー(平行長調)へ転調するとき、次のコード進行で転調することができます。
短3度離れたディミニッシュコードは同じ構成音を持ちますので、ディミニッシュコードをピボットコードにして転調することができます。元のキーのコードパターンを(I-#Idim7-IIm7-V7-I)、新しい調のコードパターンも同様とすると、次の様に転調できます。
元のキーのコードパターンを(I-#Idim7-IIm7-V7-I)、新しい調のコードパターンを(I-bIIIdim7-IIm7-V7-I)とすると、次の様に転調できます。
元のキーのコードパターンを(I-bIIIdim7-IIm7-V7-I)、新しい調のコードパターンを(I-#Idim7-IIm7-V7-I)とすると、次の様に転調できます。
元のキーのコードパターンを(I-bIIIdim7-IIm7-V7-I)、新しい調のコードパターンを(I-bIIIdim7-IIm7-V7-I)とすると、次の様に転調できます。
そのほかにも、ピボットコードを介在してスムーズに転調できるケースがあります。各機能のコードとその代理コードを、コードタイプごとに度数で整理し、異なるキーで共有できるコードを考えていきます。
・Maj7
【長調】
トニック … IMaj7
サブドミナント … IVMaj7
サブドミナントマイナーの代理コード … bIIMaj7、bVIMaj7
【短調】
トニックの代理コード … bIIIMaj7、bVIMaj7
サブドミナントの代理コード … bIIMaj7、bVIMaj7
・7th
【長調】
ドミナント … V7
ドミナントの代理コード … bII7
サブドミナントの代理コード … IV7、VII7
サブドミナントマイナーの代理コード … bVI7、bVII7
【短調】
ドミナント … V7
ドミナントの代理コード … bII7
サブドミナントの代理コード … bVI7、bVII7
・m7th、m6th、Minor Triad
【長調】
トニックの代理コード … IIIm7、VIm7
サブドミナントの代理コード … IIm7
【短調】
トニック … Im、Im7、Im6(=VIm7(b5))
サブドミナント … IVm、IVm7、IVm6(=IIm7(b5))
・m7(b5)
【長調】
トニックの代理コード … #IVm7(b5)(=VIm6)
サブドミナントの代理コード … #IVm7(b5)(=VIm6)
サブドミナントマイナーの代理コード … IIm7(b5)(=IVm6)
【短調】
トニックの代理コード … VIm7(b5)(=Im6)
サブドミナントの代理コード … IIm7(b5)(=IVm6)
・dim7
【長調】
パッシングディミニッシュ … #Idim7(=IIIdim7 = Vdim7b = VIIdim7)
bIIIdim7(=Idim7 = bVdim7 = bVIIdim7) 等
これをもとに、転調する音程別に、使用可能なピボットコードをまとめます。表のコードを含むコード進行を使って、スムーズに転調することができます。転調前のキーが C Major または、A Minor のときのコードネームで示し、()内に転調前と転調後の各キーにおける度数を示します。
長調→長調
長調→短調
短調→短調
短調→長調
例えば、CメジャーキーからDbメジャーキーに転調するときに使用できる 7th のピボットコードには B7 がありますので、次のコード進行で転調することができます。