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2. 転調を含まないコード進行

(1) 調性内のコード

 次のコードは、ひとつのキーの中のコードとして捉えられます。

 ・ダイアトニックコード
 ・トニック、ドミナント、サブドミナント、サブドミナントマイナー
 ・セカンダリードミナント
 ・パッシングディミニッシュコード
 ・代理コード

 それぞれを、簡単に説明します。

・ダイアトニックコード

 1オクターブの中に2つの半音と5つの全音を含むスケールをダイアトニックスケールと呼びます。代表的なダイアトニックスケールとして、メジャースケール、ナチュラルマイナースケール、メロディックマイナースケール(上行)があります。また、ハーモニックマイナースケールは、厳密に言うとダイアトニックスケールではありませんが、便宜上、他の2つのマイナースケールと同様、ダイアトニックスケールに含める場合があり、ここでも、ダイアトニックスケールとして扱います。
 ダイアトニックスケール上にできるコードを、ダイアトニックコードと呼びます。C Major Scale および A Minor Scale 上にできるダイアトニックコードを、次に示します。













 この中で、*が付いているコードは通常あまり使われないコードです。通常あまり使われないコードを除いて3つのマイナースケールのダイアトニックコードを整理すると、次のようになります。




・トニック、ドミナント、サブドミナント、サブドミナントマイナー

 メジャーキーおよびマイナーキーでは、ハーモニーの大きな流れをトニック、ドミナント、サブドミナントという3つの機能(ファンクション)で説明することができます。3つの機能で分類されたコードの間の進行には、スムーズに流れる方向があります。


◆メジャーキー

 トニック

 メジャーキーのトニックコードは、スケールの第1音をルートとするメジャーコード(メジャートライアド、Maj7th、6th)で、最も安定していて調性の中心となるものです。トニックからは、どんなコードにも進行することができます。

 ドミナント

 ドミナントコードは、スケールの第5音をルートとするコードで、最も不安定でトニックに進行しようとする性質をもっています。不安定である原因は、コードの3度と7度の間でできる3全音(トライトーン)で、それがトニックコードのルートと3度の間の長3度または、短6度(マイナーキーの場合は、短3度または、長6度)という安定した音程に解決しようとします。また、このときルートも5度下行という強い進行をするので、ドミナントからトニックへの進行(ドミナントモーション)は最も強い進行となります。

 サブドミナント

 サブドミナントコードは、スケールの第4音をルートとするコードです。サブドミナントコードからはドミナントコードに進行することが多く、トニックコードに進行することもあります。また、次に説明するサブドミナントマイナーに進行することがあります。

 サブドミナントマイナー

 マイナーキーではサブドミナントはⅣmとなりますが、メジャーキーでも借用されて用いられることがあります。メジャーキーにおけるサブドミナントマイナーコードは、トニックへ進行するときに多く用いられ、マイナーキーを予想させながらメジャーキーへ解決するという効果があります。また、サブドミナントマイナーコードからドミナントコードに進行することもあります。


◆マイナーキー

 マイナーキーにおいても、メジャーキーと同様、トニック、ドミナント、サブドミナントの3つの機能を基本としてコード進行が作られます。

 トニック

 マイナーキーのトニックコードは、スケールの第1音をルートとするマイナーコード(マイナートライアド、m6th、m7th、mMaj7th)で、最も安定していて調性の中心をなすものです。トニックからは、どんなコードにも進行することができます。

 ドミナント

 ドミナントコードは、スケールの第5音をルートとするコードで、トニックに進行しようとする性質をもっています。マイナーキーの場合は、ドミナントコードの3度と7度の間でできる3全音(トライトーン)がトニックコードのルートと3度の間の短3度または、長6度に解決し、ルートが5度下行進行します。

 サブドミナント

 マイナーキーでのサブドミナントは、Ⅳm7となります。サブドミナントコードからはドミナントコードに進行することが多く、トニックコードに進行することもあります。

 以上の、トニック / ドミナント / サブドミナント間の進行の関係を図でまとめると、次のようになります。


 メジャーキー



 マイナーキー



・セカンダリードミナント

 ダイアトニックコードを仮のトニックと考えて、それにドミナントモーションするコードをセカンダリードミナントといい、調性の範囲内として扱われます。

◆メジャーキー

 キーがCのときのセカンダリードミナントは、次の通りとなります。

 セカンダリードミナント   ダイアトニックコード
     A7 →    Dm7
     B7 →    Em7
     C7 →    FMaj7
     D7 →    G7
     E7 →    Am7
     F#7 →    Bm7(b5)

◆マイナーキー

 キーがAmのときのセカンダリードミナントは、次の通りとなります。

 セカンダリードミナント   ダイアトニックコード
     F#7 →    Bm7(b5)
     G7 →    CMaj7
     A7 →    Dm7
     B7 →    Em7
     C7 →    FMaj7
     D7 →    G7


・パッシングディミニッシュコード

 ディミニッシュコードは、経過的に使われ、半音上または下のコードに進行します。ディミニッシュコードは、ドミナント7th(b9)のルート省略形と考えることができ、短3度離れたディミニッシュコードは同じ構成音を持っています。
 したがって、半音上行するディミニッシュコードは、セカンダリードミナントと同様の働きを持ったもので、そのベースラインをスムーズにしたもの、ということができます。キーがCの場合は、次のものがパッシングディミニッシュコードになります。



 キーがCのときのダイアトニックコードを、半音上行するパッシングディミニッシュコードで連結すると次のようになります。




 半音下降するディミニッッシュコードは、ドミナント7thの働きはなく、経過的に用いられるものです。キーがCのときのダイアトニックコードを、半音下降するパッシングディミニッシュコードで連結すると、次のようになります。




 転回形のコードに進行するパッシングディミニッシュコードもあります。リズムチェンジの6〜7小節目では、5thルートのコードに進行するパッシングディミニッシュコードが使われています。




ブルースの5〜7小節目でも同様の進行が使われることがあります。




・代理コード

 Ⅴ7の代わりに用いられるbⅡ7、ⅣMaj7の代わりに用いられるⅡm7 のようにトニック、ドミナント、サブドミナントの代わりとして用いることができるコードを代理コードといいます。構成音が似ているもの、重要な音を共通に持つものが代理コードになります。次の表は、メジャーキーとマイナーキーにおける代理コードをまとめたものです。

◆メジャーキー


◆マイナーキー


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