(2) 交換可能なコード進行
スタンダード曲の多くは、元来、ミュージカルや、映画音楽、古いポピュラーソング等であるため、アドリブの素材としてふさわしいよう、オリジナルのコード進行を整理して、より洗練されたコード進行で演奏されることがよくあります。また、コーラスやセクションの切れ目など、曲の構成上の区切りの前のコード進行は、厳密に決められたものではなく、臨機応変に、スムーズにつながるコード進行が作られます。このようなコード進行は、交換しても支障のないものです。
・リハモナイズ
代理コードなどによるリハモナイズの手法を知っていると、個々の細かいコードネームの違いにとらわれることなく、本質的な部分を理解して演奏することができます。一般的なリハモナイズで解釈できるコード進行の違いは、”同じようなもの”として覚えておけば十分で、実際の演奏の場でもその方が自由度が高くなり、良い結果が得られます。
スタンダード曲の中には、リハモナイズされたコード進行のほうが一般的になっている場合もあります。一方、もともとジャズミュージシャンによって作曲されたジャズオリジナル曲は、最初から洗練されたコード進行がついているので、リハモナイズされることは、ほとんどありません。
一般的によく使われるリハモナイズで解釈できるコード進行の違いは、”同じようなもの”として捉えておき、即興的に交換可能なものとして考えます。詳しくは後で説明しますが、次のようなリハモナイズの方法があります。
代理コードを用いるもの
7th ⇔ IIm7-V7
m7th ⇔ IIm7-V7
IIm7-V7 ⇔ bⅥm7-bⅡ7
コードタイプの変更
ドミナント7th の挿入
パッシングディミニッシュ ⇔ 7thコード
パッシングディミニッシュの挿入
コルトレーンチェンジ
・構成上の区切りにスムーズにつながるためのコード進行
コーラスやセクションの切れ目など、曲の構成上の区切りの前には、スムーズにつながるためのコード進行が作られることがあります。このようなコード進行は、目的とするコードへの流れが重要で、厳密に考える必要はありません。
コーラスの最後の1〜2小節は、冒頭に戻るためのコード進行に変更されることが多く、ターンバックと呼ばれます。多くの曲でコーラスの最後の部分はトニックコードとなっていますが、Deceptive Cadence など、曲の始めにスムーズに戻るコード進行を(多くの場合、即興的に)作って演奏します。楽譜によっては、ターンバックのコードを記載している場合がありますが、必ずしもこれにとらわれずに演奏されます。
このように、リハモナイズやターンバックによるコード進行の違いは大きな相違ではないわけですが、言い換えると、一般に出回っている楽譜のコード進行には、すでにこのような変更が施されている可能性があるということが言えます。基本的なコードの流れが異なっているのであれば問題ですが、多少のコード進行の相違は誤りと考えるのではなく、リハモナイズとして解釈できるのかどうかを考えて、コード進行の流れを整理して把握しておきます。