モード 第1回
モードスタイルのアドリブをとるための練習を行ないます。特に、モードで用いられるフレーズの作り方を中心に進めていきます。
実際のフレーズの説明に入る前に、モードについて簡単に説明します。ジャズを演奏する人であれば誰でもモードという言葉を聞いたことがあると思いますが、その正確な意味についてはよくわからないという場合が多いと思います。
モードという言葉は、ジャズでは2つの意味で用いられています。その1つは、曲(または曲の一部のある程度長い区間)の基本となるスケール、という意味です。この意味では、Major Scale や Minor Scale (Natural Minor Scale, Harmonic Minor Scale, Melodic Minor Scale) もモードの1つです。しかし、アヴェイラブルノートスケールとモードは違った意味合いを持っています。例えば、Dm7 - G7 - CM7 というコード進行の中で用いられるG Alt7th Scale のことをモードと言ったりはしませんが、G Alt7th Scaleをもとに作られた曲があったとするとその場合、 G Alt7th Scale はモードと言えます。
2つ目の意味は、以上に説明したモードの中で、Major Scale とMinor Scale(長調と短調)を除いたもの、ということです。通常、ジャズでモードという場合は、この意味で用いられます。ここでも、2番目の意味でモードという言葉を使っていくこととします。
Major Scale とMinor Scale はドミナントモーションを作ることができ、ジャズに限らず、多くの曲で用いられています。ジャズにおいては、ドミナントモーションを中心とした機能的なコード進行と、それに基づくアドリブラインとして洗練されていき、ビバップというスタイルになりました。先進的なミュージシャンが、ビバップを極めたあと着目したのがモードです。
モードでのアドリブには、ビバップとは違った考え方が必要となってきます。ビバップの曲では、ドミナントモーションに代表されるように、コード進行にダイナミックな動きがありますので、それに乗ってフレーズを組み立てていくことでアドリブソロの流れを作ることができます。これに対して、モードの曲ではコード進行にダイナミックな動きがないため、アドリブソロが単調なものになってしまいがちです。そのため、基本的なハーモニーに沿ったフレーズだけではなく、そこから外れたフレーズも用いて、ソロに変化をつけることがあります。アウトサイドなフレーズは、インサイドなフレーズとの対比によって生きるものですので、インサイドとアウトサイドをコントロールすることが重要になってきます。
ここでは、多彩でダイナミックなアドリブソロをとるために、インサイド、アウトサイドを自由にコントロールし、様々な素材を用いる方法を説明します。
・特性音 (Character Tone)
モードの性格を顕著に示す音を特性音 (Character Tone)といいます。グレゴリアンモードでは、長調や短調と区別できる音や、他のグレゴリアンモードと区別できる音が特性音になり、それ以外のモードでは、グレゴリアンモードと区別できる音が特性音になります。特性音は、トニックコードのアベイラブルノートスケールにおけるアボイドノートに対応する場合が多く、それを使用することにより、モード曲であることを強く印象づけるものになります。