アドリブ基礎 第1回
今回は、アドリブソロを組み立てていくときの基本的な考え方について説明し、そのための基礎練習について考えます。
アドリブとは即興的な作曲ですから、そのとき思い浮かんだ音を弾くのが理想です。しかし、弾いたことのないフレーズは失敗しやすく、聴いたことのない音が思い浮かぶことはまれです。
アドリブ基礎でおこなう練習の目的は、突き詰めると、思い浮かんだ音を正確に出すことができるようになることです。
基礎練習で、弾いた音を繰り返し聴くことにより、フレーズが記憶され、アドリブの際にその音を思い浮かべることができるようになります。また、アドリブのときに思い浮かべた音が練習でやったことのあるフレーズであれば、失敗が少なく、自信を持って弾くことができます。
アドリブのための基礎練習が重要な理由は、ここにあります。
アドリブのコピーをして、フレーズをそのまま覚えたけれども、実際の場面では使うことができなかった、というのは、多くの人が経験することです。そもそも、他人が弾いた音を、全くそのまま思い浮かべることは困難で、苦痛ですらあります。
アドリブのときには、練習したフレーズをそのまま弾こうとせずに、そのとき思い浮かんだ音をなるべく忠実に弾けるようにしておくことが必要です。
そのためには、フレーズを覚えるときに、長いアドリブフレーズをそのまま覚えるのではなく、もっと短い単位で覚えることが必要となってきます。アドリブのときは、今弾いているひとつの音だけを考えているわけではありませんが、それほど遠い先のことまで決めてもいられないからです。
ジャンルによって、またプレーヤーによっても異なりますが、ジャズでは、4音から8音ぐらい、2拍から1小節ぐらい先まで、といった感じでしょう。
その範囲で、どのような音を選んでフレーズを組み立てるかの見通しを立てておくことが、失敗の少ない演奏につながります。そのプランの根拠になるのが理論であり、そこから、練習するべきアドリブ素材を見つけることができます。