今回は、ベースラインの横の動きの聴き取りをトレーニングします。ベースラインから、コード進行の流れをつかめるようにすることが目的です。転回形など、ベースノートの縦の位置を聴き取ることについては、第10回でおこないます。
1. 基礎知識
(1) ルート進行の音程とベースライン
ベースラインの主な役割は、ルートを示してスムーズにつないでいくことです。ルートは主にベースラインの強拍の部分で示されていますので、それを聴き取ることが、コード進行を知る上で重要になります。
ベースノートが進む音程によって、ベースラインのスムーズさは異なります。完全4度上昇(完全5度下降)や、半音下降または上昇するとき、スムーズに感じられます。ルート進行がそれ以外のときは、経過的な音として間に入れることによって、ベースラインをよりスムーズにすることができます。
それぞれの音程が現れるコード進行の例と、よく使用される経過的な音について説明します。
・短2度上昇(長7度下降)
音程の最小単位による移動であるため、スムーズな動きになります。メジャーキーの III7 から IV 、VII7 から I、I から bIIMaj7 や bII7 、パッシングディミニッシュ、などで出てきます。最初のコードの 2nd の音を間に入れても、スムーズなベースラインになります。
・長2度上昇(短7度下降)
メジャーキーの I から IIm7、IIm7 から IIIm7、bVII7 から I、 V7 から VIm7、マイナーキーの bVII7 から Im、IVm から V7、などで出てきます。最初のコードの b2nd 、b3rd、6th の音を間に入れることによって、スムーズなベースラインになります
・短3度上昇(長6度下降)
メジャーキーの I から bIIIdim7、IIIm7 から V7、IIm7 から IVm7、マイナーキーの Im から bIIIMaj7 、などで出てきます。最初のコードの 2nd 、3rd、b7th の音を間に入れることによって、スムーズなベースラインになります。
・長3度上昇(短6度下降)
メジャーキーの IV から VIm7、I から IIIm7 や III7、マイナーキーの bVIMaj7 から Im、などで出てきます。最初のコードの 4th または M7th の音を間に入れることによって、スムーズなベースラインになります。
・完全4度上昇(完全5度下降)
完全4度上昇(完全5度下降)は、倍音列に含まれる近親性の高い音からの進行であるため、最もスムーズな流れとなります。ドミナントモーションをはじめ、多くのコード進行で出てきます。最初のコードの 3rd や b5th の音を間に入れても、スムーズなベースラインになります。
・減5度上昇( 減5度下降)
メジャーキーの IV から VIIm7(b5)、I から #IVm7(b5)、などで出てきます。最初のコードの 4th や 5th の音を間に入れることによって、スムーズなベースラインになります。
・完全5度上昇(完全4度下降)
メジャーキーの IV や IVm から I、I から V7、マイナーキーの IVm から Im、Im から V7、などで出てきます。次の定型的なベースラインがよく使われます。
・短6度上昇(長3度下降)
メジャーキーの I から bViMaj7 や bVI7、IIm7 から bVII7、などで出てきます。最初のコードの 5th の音を間に入れることによって、スムーズなベースラインになります。
・長6度上昇(短3度下降)
メジャーキーの V7 から IIIm7、I から VIm7、マイナーキーの I から VIm7(b5)、bIIIMaj7 から Im、などで出てきます。最初のコードの 3rd または b7th の音を間に入れることによって、スムーズなベースラインになります。
・短7度上昇(長2度下降)
メジャーキーの IIm7 から I、IIIm7 から IIm7、I から bVII7、マイナーキーの Im から bVII7、などで出てきます。最初のコードの M7th の音を間に入れることによって、スムーズなベースラインになります。
・短2度下降(長7度上昇)
音程の最小単位による移動であるため、スムーズな流れになります。ドミナント7th の代理コード、パッシングディミニッシュ、メジャーキーの IV から IIIm7、bIIMaj7 から I、bVII7 から VIm7、bVIMaj7 から V7、マイナーキーの bVIMaj7 から V7、などで出てきます。最初のコードの b7th の音を間に入れても、スムーズなベースラインになります。