JACK NITZSCHE
THE ARRANGER AS SUPERMAN
Rhino
Handmade
シュールというか、単にキモイというか、売り上げに貢献するとは思えないデザインでございます。 Jack Nitzsche 曲名なし、クレジットなし。 |
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●Jun 10, 2002● ジャック・ニーチェ、三種の人技
ところで、このCDには通し番号がふられておりまして、わたくしのは「0574/3000」です。ちなみに新宿のディスクユニオンの店頭にあったものは180番台でした。 さて、このCDは三部構成になっております。第一部は、1972年にリリースされたニーチェの4枚目のアルバム「セント・ギルス・クリプルゲイト」の全6曲です。このレコードの企画は、ニール・ヤングの『ハーヴェスト』のオーケストラ・パートのロンドン・レコーディングの時に立てられたそうです。とはいえ、その内容はポップス、ロックとは、まったくかけ離れたネオ・クラシックという意表をつくものでした。ストラヴィンスキーやチャールズ・アイヴズを思わせるリズムと不協和音、そして時折見せる官能的で美しい旋律が繰り広げる映像的な管弦楽は、なかなか興味深いもので、ニーチェの実力が存分に発揮された作品だと思います。演奏は『ハーヴェスト』と同じくデイヴィッド・ミーシャム指揮によるロンドン交響楽団と贅沢なものです。それでも内容が内容ですから、セールスも期待してなかったようです。一説によりますと1,300だけ出荷されただけとか。 ちなみにアルバム・タイトルとなっているSt. Giles Cripplegateはロンドン市内にある有名な教会だそうで、レコーディングもこの教会で行なわれました。 第二部は、このCDの目玉であります。1974年に製作された『ジャック・ニーチェ』というタイトルの幻のシンガー・ソングライター・アルバムの全容です。ニーチェにとって初のボーカルに挑戦した作品で、テスト盤までプレスされましたが、今日まで未発表になったままだったのでした。 自慢ですが、そのテスト盤を所有しております。正直にいいますと、それは、はたして本当にニーチェのレコードがどうか長年疑い 続けて、今日に至った代物で、何度も捨てようかと思った塩化ビニールだったでした。嗚呼、捨てなくて良かった、と思う今日この
今から10年ちょっと前でしょうか、「ジャック・ニーチェのテスト・プレス」という情報だけで米国のディーラから買ったのですが、届いてみると「あれまぁ!」でございました。何も印刷されていない白いスリーヴに、「MS 2189 Jack Nitzsche」とボールペンで書かれているだけで、レーベルにも曲名の記載もない実に怪しげなものでした。ジャック・ニーチェの歌声を知っていれば話は早いのですけれどねぇ。唯一の手がかりがレコードにも刻まれていた「MS-2189」というレコード番号だけ。この番号から70年代はじめのワーナー/リプリーズのものということだけはわかりましたけど、以後調査断念。で、今回のCD化がなければ永久にわからずじまいだったかもね。サンキュー、サイ君。 ところで、ニーチェ自身は、そもそも自分のキャリアにボーカル・アルバムを付け加えることに興味がなかったようです。しかし、彼の親友であるロバート・ダウニー(ロバート・ダウニーJr.のパパさん)監督の映画プロジェクトに融資するために、しかたなく歌ったそうです。結果は、結構本気です。決してうまいとはいえませんが、アーシーでいい味出してます。写真だけは想像きませんでしょうけど、ちょっとニール・ダイアモンドの声に似ています。
1曲目の「Lower California」は、ファルセットのコーラスが被って、ビーチ・ボーイズへのオマージュを思わせますが、すぐにニーチェお得意のR&Bのコード進行のリフが続きます。そして、2曲目以降、サウンドは南へ南へと移動します。というか、ニーチェのカリフォルニアからニューオーリンズへの気ままな一人旅を収めたロードムービーのサントラ盤を聴いているようです。(テスト盤を聴いた時も、てっきり映画音楽ではないかと思って調べたくらいです)アルバム全体のトーンはR&Bをベースにしていて、けだるさが心地よいです。また、陽気なメキシカンのインストがあったり、7分を越える管弦楽による心理描写のトラックがあったりで、2年後の1976年に手がけた「カッコウの巣の上で」に通ずるものを感じました。 第三部は、ロサンゼルスとナッシュビルで1971と1972年に録音された歌のデモ・テープからの4曲です。「I'll Bet She Knew It」はなかなかイケテます。 ということで、ジャック・ニーチェのためなら5,000円くらい安いもんじゃ、という酔狂な御方はディスクユニオンに問い合わせてみてはいかがでしょう。あんまし売れてないと思います(≧∇≦)ノ彡 |
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