JACK NITZSCHE
THE ARRANGER AS SUPERMAN






Jack Nitzsche
THREE PIECE SUITE: THE REPRISE RECORDINGS 1971-1974
(RHM2 7787)

3,000枚限定、WEBのみでの販売。

Rhino Handmade
こちらののホームページで試聴ができます。
ディスクユニオン
無くなり次第終了ということですが、新宿の店頭には、まだ売れ残りが。(6月9日現在)


ST. GILES
CRIPPLEGATE

(Reprise MS2092)1972

シュールというか、単にキモイというか、売り上げに貢献するとは思えないデザインでございます。

Jack Nitzsche
TEST PRESSING
(MS-2189)

曲名なし、クレジットなし。
ただいえるのは、A面7曲、B面4曲の計11曲だということ。
妄想は膨らむばかりでした。

Jun 10, 2002

ジャック・ニーチェ、三種の人技

 ジャック・ニーチェのCDが未発表曲入りでRhino Handmadeから発売されている、という情報をはじめて目にしたのは、大野氏の主宰するメーリング・リストの去年の11月初旬の投稿でした。同じころVANDAのBBSにも投稿があったようです。で、すぐにオーダーをしようと試みたのですが、なんと北米以外には発送しないということでアウトでした。理由は、ヨーロッパ市場での発売が計画されているため、というものです。
 しかし待てど暮せど、ヨーロッパ盤が出る気配はない…、と思っていたら3月の中旬、新宿のディスクユニオンの店頭にRhino Handmade盤が置かれているのを見つけたではあ〜りませんか! 驚いちゃったよ。手に取って、さらに驚いちゃったのは、その値段!!  4,790円也です!!!  2枚組ではありませんよ、1枚です。「世界でたったの3,000枚限定」というポップがありましたが、それにしても高い(@_@)。

 ところで「3,000枚限定」といっても、このてのコアな商品では十分な量かと思われます。こんなもの欲しがる物好きな人間は世界中に3,000人もおらんわい、といっても過言ではないのでした。
 で、かくいうわたくしも、栄えある3,000人の内の一人でございます。しかしながら、金4,790円也は高うございます。で、持つべきものは友と申しますか、困ったときのハリー君です。彼に頼んだところ、快く引き受けてくれました。代わりにマイケル・イングリッシュ(誰だ?)の日本盤CDを頼まれちゃった(≧∇≦)ノ彡

 アメリカ国内での購入金額は送料込みで$23.73。そして日本への送料が約$7.00。中間マージンなし。で、日本円に換算すると、およそ4,000円でした。ん〜ん、国際郵便ではなくEメールで済ませたからこそ800円ほど節約できましたが、ここまでする必要があった のかは微妙な線です。逆に、ディスクユニオンの価格は良心的なものといえますなぁ。

ロンドン市内にあるセント・ギルス・クリプルゲイト教会。ハーヴェストのオーケストラ・パートの録音もここでした。

 ところで、このCDには通し番号がふられておりまして、わたくしのは「0574/3000」です。ちなみに新宿のディスクユニオンの店頭にあったものは180番台でした。

 さて、このCDは三部構成になっております。第一部は、1972年にリリースされたニーチェの4枚目のアルバム「セント・ギルス・クリプルゲイト」の全6曲です。このレコードの企画は、ニール・ヤングの『ハーヴェスト』のオーケストラ・パートのロンドン・レコーディングの時に立てられたそうです。とはいえ、その内容はポップス、ロックとは、まったくかけ離れたネオ・クラシックという意表をつくものでした。ストラヴィンスキーやチャールズ・アイヴズを思わせるリズムと不協和音、そして時折見せる官能的で美しい旋律が繰り広げる映像的な管弦楽は、なかなか興味深いもので、ニーチェの実力が存分に発揮された作品だと思います。演奏は『ハーヴェスト』と同じくデイヴィッド・ミーシャム指揮によるロンドン交響楽団と贅沢なものです。それでも内容が内容ですから、セールスも期待してなかったようです。一説によりますと1,300だけ出荷されただけとか。
 ちなみにアルバム・タイトルとなっているSt. Giles Cripplegateはロンドン市内にある有名な教会だそうで、レコーディングもこの教会で行なわれました。

 第二部は、このCDの目玉であります。1974年に製作された『ジャック・ニーチェ』というタイトルの幻のシンガー・ソングライター・アルバムの全容です。ニーチェにとって初のボーカルに挑戦した作品で、テスト盤までプレスされましたが、今日まで未発表になったままだったのでした。
 自慢ですが、そのテスト盤を所有しております。正直にいいますと、それは、はたして本当にニーチェのレコードがどうか長年疑い 続けて、今日に至った代物で、何度も捨てようかと思った塩化ビニールだったでした。嗚呼、捨てなくて良かった、と思う今日この

怪しげなホワイト・アルバム。
クリックするとスリーヴ右肩のアップの画像が見られます。
ごろでございます。
 今から10年ちょっと前でしょうか、「ジャック・ニーチェのテスト・プレス」という情報だけで米国のディーラから買ったのですが、届いてみると「あれまぁ!」でございました。何も印刷されていない白いスリーヴに、「MS 2189 Jack Nitzsche」とボールペンで書かれているだけで、レーベルにも曲名の記載もない実に怪しげなものでした。ジャック・ニーチェの歌声を知っていれば話は早いのですけれどねぇ。唯一の手がかりがレコードにも刻まれていた「MS-2189」というレコード番号だけ。この番号から70年代はじめのワーナー/リプリーズのものということだけはわかりましたけど、以後調査断念。で、今回のCD化がなければ永久にわからずじまいだったかもね。サンキュー、サイ君。

 ところで、ニーチェ自身は、そもそも自分のキャリアにボーカル・アルバムを付け加えることに興味がなかったようです。しかし、彼の親友であるロバート・ダウニー(ロバート・ダウニーJr.のパパさん)監督の映画プロジェクトに融資するために、しかたなく歌ったそうです。結果は、結構本気です。決してうまいとはいえませんが、アーシーでいい味出してます。写真だけは想像きませんでしょうけど、ちょっとニール・ダイアモンドの声に似ています。

クリックでアップの画像。レコード番号が確認できます。

 1曲目の「Lower California」は、ファルセットのコーラスが被って、ビーチ・ボーイズへのオマージュを思わせますが、すぐにニーチェお得意のR&Bのコード進行のリフが続きます。そして、2曲目以降、サウンドは南へ南へと移動します。というか、ニーチェのカリフォルニアからニューオーリンズへの気ままな一人旅を収めたロードムービーのサントラ盤を聴いているようです。(テスト盤を聴いた時も、てっきり映画音楽ではないかと思って調べたくらいです)アルバム全体のトーンはR&Bをベースにしていて、けだるさが心地よいです。また、陽気なメキシカンのインストがあったり、7分を越える管弦楽による心理描写のトラックがあったりで、2年後の1976年に手がけた「カッコウの巣の上で」に通ずるものを感じました。

 第三部は、ロサンゼルスとナッシュビルで1971と1972年に録音された歌のデモ・テープからの4曲です。「I'll Bet She Knew It」はなかなかイケテます。
 ということで、ジャック・ニーチェのためなら5,000円くらい安いもんじゃ、という酔狂な御方はディスクユニオンに問い合わせてみてはいかがでしょう。あんまし売れてないと思います(≧∇≦)ノ彡

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