「あ、流れた!」
「こっちも!」
「あ、また。・・・・凄いや」
少年と少女の声は感動に打ち震えていた。
「ペルセウス流星群、なぁんて言ったってたいしたコトないって思ってたけど、
・・・・ちょっと凄いわね」
「ホント、キョウコおばさんに感謝しなきゃ」
「まぁ、ウチの親がこんなトコに私たちを連れてくるから、
真夏に雪ならぬ、星が降ってるのヨ」
そんな憎まれ口に少女の堪えきれない嬉しさが滲んでいる。
いつも忙しい少女の母が突然言い出したイベントだった。
こうして一緒に泊まりがけで遠出するのは、
少女達が小学校に入学して以来、実に5年ぶりのコトだった。
今回たまたま彼女の休暇と流星群の極大日が一致したのだ。
そんなワケで嬉々として準備を進める彼女の姿に、
少女も隣家の少年も異議を挟むコトが出来なかった。
元々少女達は天体などにさほど興味がなかった。
それゆえ母親から、
『流星を見に行きましょう』
と言われても戸惑うだけだった。
楽しみどころか、ありがた迷惑とすら少女は口にした。
もっとも少年に対してのみだが。
しかし。
光害のない高原。
その星空の迫力。
まさに『白乳色の道』と言うのがふさわしい天の川。
都会では信じられない程の力強い輝きの狭間を走る流星群。
それは実際に目にした人にしか解らない感動だ。
開発の進んだ現代において、これ程の贅沢はそうそうないだろう。
「あぁ、すっごぉいぃ! 見た、見た? シンジ。
空の半分横切ったわ。ホラ、あそこからココまで」
「え、気付かなかった・・・・。でも、さっきのだって凄かったよ」
「へっへェ〜ん、負け惜しみ言っちゃって」
「そ、そんなんじゃないよ」
「ふふん。ま、いいわ。それより・・・・」
突然改まった少女の表情に少年はつい身構えてしまう。
骨の髄まで染み込んだ条件反射に気づき、心の中で苦笑する。
「何?」
「お願い、した?」
「?」
「流れ星に3回願い事すれば・・・・って奴」
「あぁ・・・・忘れてた」
応えつつ、幼なじみの思い掛けない乙女チックな一面に、
少年はなんだか嬉しくなった。
「ボクはまだだけど、アスカはもうお願いしたの?」
「うぅ〜ん、お願いしたいコトはいっぱいあるんだけど・・・・
咄嗟には出来ないモノねェ〜」
「ふぅ〜ん。で?」
「エ?」
「それで、何お願いするの?」
「エ、あ、その、エェとォ〜。・・・・内緒」
「なんだよ、ソレ?」
「いいでしょ、女の子のヒ・ミ・ツ」
そう言って少女は少年に向かってウィンクした。
少年は星明かりの下でもはっきりと解るほど赤面した。
「やぁだ〜、なぁに想像したの?」
「べ、別にィ、な、何にも・・・・」
「ウソおっしゃい! さぁ、吐け、ばかシンジ」
「ちょ。い、いたいよ、アスカ。は、放して」
「だア〜め。観念して言いなさい」
ジャレ合う2人の様子を少女の母は少し離れた所で、
微笑みながら、優しく見守っていた・・・・
「やあ、シンジ君」
教室に入って来たシンジを目敏く見つけて声を掛けてきたのは、
もちろん渚カヲルだった。
その傍らには相田ケンスケの姿もある。
「あ、おはよう、カヲル君」
「いつもながら美少女に囲まれての登校、いやァ〜んな感じ」
「な、何言ってんだよ。ケンスケ! ・・・・アレ? トウジは?」
「委員長に捕まって花瓶の水換えに行ってるよ」
「ふ〜ん・・・・」
(なかなか進展しないなァ、あの2人・・・・)
他人のコトはよく見えるようで、シンジはそんなコトをぼんやり考えていた。
先日の一件も、あの2人の間にはまったく影響がないように思える。
すると突然カヲルが真剣な表情で迫って来た。
「シンジ君」
「な、何?」
その迫力に思わず半歩後退するシンジだった。
「シンジ君は今度の日曜日が何の日か、知ってるよね」
「エ? 今度の日曜って・・・・9月13日?」
「そう」
「敬老の日・・は15日だし、秋分の日は23日だし・・・・」
「・・・・シンジ君」
必死に考えてみるが、シンジは思い出せなかった。
そんなシンジにカヲルは瞳を潤ませてにじり寄る。
思わず二、三歩後退したシンジは、たまらず周囲に助けを求めた。
「あ、アスカ知ってる?」
「えぇ〜、知るワケないでしょう」
「マナは?」
「エ〜ト、救急の日は9日・・・・動物愛護週間は20日から・・・・」
「レイ・・・・」
「残念ながら知ってるわ。災厄にまみれた日・・・・」
一縷の望みを託して声を掛けたシンジだったが、
ようやく知っている人間がいてホッとした。
しかし、心からイヤそうな顔を見せるレイに小首を傾げてしまう。
「エと・・・・何の日なの?」
「この世の闇が生まれた日」
「それはひどいな、レイ」
不満そうな口調とは裏腹に、カヲルはいつもと変わらぬ微笑みを浮かべていた。
「でも、憶えてくれてて嬉しいヨ。レイ」
「別に好きで憶えてたワケじゃないわ」
そう言って、レイは睨付けるようにカヲルを見た。
シンジならその一瞥だけですくんでしまうだろうが、
あいにくカヲルは平然としている。
「いくらイトコだからって、毎年誕生日プレゼント要求されちゃ、
忘れたくっても忘れられないわよ!」
「まぁまぁ、君の誕生日にはちゃんとお返ししてたんだし・・・・」
「何が哀しくて、アンタの等身大ポスターなんか貰わなきゃなんないのヨ!」
まさに鉄拳制裁が行われそうな気配を察して、シンジは慌てて2人の間に入った。
「お、落ち着いてよ、レイ。
あ、そ、それじゃあ、今度の日曜って、カヲル君の誕生日なの?」
「そう。・・・・でも、哀しいなァ」
「エ?」
ふいに遠い目をしたカヲルにシンジは動揺した。
そのあまりにも切なそうな表情にシンジの胸が痛む。
「親友のボクの誕生日を憶えてくれていなかったなんて・・・・」
「え、と、あの、その・・・・ゴメン・・・・」
「いいんだ、シンジ君。その代わり、その日はボクら2人っきりで・・・・」
それっきりカヲルは沈黙してしまい、ずるずると床に崩れ落ちた。
一体カヲルの身に何が起きたのか?
シンジの視界は全ての状況を捉えていたはずだが、
理性あるいは常識が認識を拒んでいた。
それでも反射的に言葉が洩れた。
「ああ、カヲル君・・・・。さ、3人とも・・・・」
「なぁに? シンちゃん?」
レイの優しげな口調、それとは裏腹な視線にシンジの身体はすくんでしまった。
ギシギシと音を立てながら見回すと、アスカとマナの視線も同様だった。
「シぃ〜ン〜ジ〜」
「シンジくぅ〜ん」
3対の視線にすっかり『蛇に睨まれたカエル』状態のシンジは、
もはや笑って誤魔化すコトしか残されていなかった。
「あ、あはははは・・・・」
そんなシンジに助け舟を出してくれたのは意外にもケンスケだった。
「まぁまぁ、3人とも。いつものコトじゃないか」
「でもォ〜」
「まぁ、押さえて。ところで、シンジ。」
「な、何?」
ケンスケの何気ない一言にも思わず身構えてしまい、
それに気が付き内心苦笑してしまうシンジだった。
「今度の土曜、何の日か知ってるか?」
「え?」
シンジに心当たりはなかった。
しかし、話の展開から行くと・・・・
「・・・・ひょっとして、・・ケンスケの誕生日」
「ご名答。でも、その様子じゃ、知らなかったみたいだな」
「エ? あ、その、・・・・あ、あはははは・・・・」
再びシンジは笑って誤魔化そうとする。
その時、
「え〜〜!! 相田君と渚君って、誕生日1日違いなの?」
あまりにも唐突なマナの大声にケンスケとシンジは目を瞬かせた。
そして驚きながらもケンスケが応える。
「あ、あぁ。そうだけど・・・・、どうかした?」
「てコトは2人とも乙女座でしょう? でも、全然タイプが違うじゃない!」
「アラ、そうとも限らないないわヨ。」
「そうなの? レイ」
「うん、ちょっと待ってて」
そう言うなり、席に着いたレイは自分の端末に向かって何やら操作を始めている。
そんなレイの様子に、アスカは『処置無し』とばかりに首をすくめて呟いた。
「あ〜あ、始まっちゃった」
「アスカ、レイって・・・・」
「そ! 占い大好き少女よ」
「やっぱり」
アスカとマナは、『今時占いなんて』とちょっと呆れた表情を浮かべていた。
「なんか言ったァ?」
「うぅん、別にィ」
「そ、ならいいわ。え〜何々?
乙女座の性格は神経質、デリケート・・・・
カヲルには似合わないわねェ、相田君もだけど。
まぁ、コレは本質で、表面には出てこないから・・・・。
表に現れる性格は射手座、・・・・ニヒル、か。
これは合ってるかしら」
「あのォ、レイ?」
「シ! 黙って。で、相田君がA型で、カヲルが・・・・」
どうやら占い関連のデータベースにでもアクセスしているようだ。
誕生日以外のデータも必要なのか、手慣れた様子で次々とキーを叩く。
一体どんな計算をしているのか知れたモノではないが、
レイの様子からすると、すっかり馴染みのサイトなのだろう。
「うん! やっぱり! アスカ、アスカ」
「な、何?」
急に嬉しそうな声を上げるレイにアスカは警戒心をヤマアラシのようにとがらせた。
「カヲル、相性バッチリよ! 射手座のアスカと。
相性率87%! この際、くっついちゃったら?」
「あ、アンタばかァ? な、なんでアタシが!
アタシは、エと、シンジと・・・・そのォ・・・・」
何やら歯切れの悪くなったアスカにレイが追い打ちを掛ける。
「えぇ〜? アスカとシンちゃん? シンちゃん双子座だから・・・・
相性率27%。残念ね、アスカ」
「何よ、それ〜」
「何って言われても、コレが天の思し召しって奴よ。
諦めてカヲルとくっついちゃったら?」
「どこの怪しげなデータか知らないけど・・・・」
「アラ、そんなコトないわよ。
この『ユー・エス・オー800』って、すっごく有名なサイトなんだから。
世界中の占い師とか、占星術関係の学者800人のデータを集計してあるんだモノ」
「あ、アタシは、占いなんて信じないモン!」
「はいはい。でも、動揺してるでしょ?」
ニッと笑ってレイがアスカの顔を覗き込む。
悔しくてたまらないが反撃の糸口が掴めないアスカは、
拗ねたようにプイとそっぽを向いてしまう。
(ちょっとイジメすぎたかな?)
レイはペロッと舌を出した。
しかしそれ程気にした風でもなく、シンジの方を振り返ると、
再び嬉しそうに話し出す。
「で、アタシとシンちゃんの相性率96%なの。
やっぱりシンちゃんと結ばれるのってアタシなんだァ」
うっとりとした表情でそう言うと、レイはさりげなくシンジに抱きついた。
それでなくてもご機嫌斜めなアスカがこれでキレたのは言うまでもない。
「くぅぉ〜ら、レイ! アンタ何やってんの!」
「何って・・・・スキンシップ」
「な、・・・・とにかく離れなさい!」
「や!」
「! いいから離れるのよ!
シンジ! 何鼻の下伸ばしてんのよ!!」
「そ、そんなんじゃ・・・・」
それまですっかり固まってしまっていたシンジだが、
アスカの言葉でようやく息を吹き返したようだ。
「れ、レイ。あの、ちょっと、離して・・・・」
「いいじゃない、アタシとシンちゃんの仲なんだからァ」
「で、でも・・・・みんな見てるし・・・・」
そう、もうすぐ始業のチャイムも鳴ろうかという時間。
すでにほとんどの生徒は教室に揃っている。
そんな中でレイに抱きつかれているシンジは、
クラス中の注目を集めてしまい、居心地が悪かった。
「わぁ〜、綾波さんって大胆〜!」
「やるわねェ〜」
「アスカ相手に・・・・命知らずよねェ」
そんな女子の好奇の視線はもとより、
殺意のこもった男子の視線が痛かった。
アスカの協力で、どうにかレイの白い腕から逃れたときには、
すっかり疲れ切ってしまったシンジだった。
一方残念そうな表情のレイにマナがひょいと問い掛けた。
「ネ、レイって何座なの?」
「3月30日のおひつじ座よ!」
マナの質問になぜか胸を張って答えるレイだった。
しかし、それを聴いたマナが急にニコニコした。
「どうしたの? マナ?」
「エ〜? だって、アタシも同じだモノ」
「?」
「アタシも3月30日生まれなの」
「ウッソ〜!!」
あまりに驚いて、目をまん丸に見開いたレイ。
相変わらず嬉しそうにニコニコしているマナ。
あんぐりと声も出ないアスカ。
そんな彼女らの耳にクラスメートの囁きが届いた。
「綾波さんと霧島さんって・・・・」
「確かに性格とか似てるよなァ」
「うん、ひょっとして腹違いのの双子とか・・・・」
「おまえ、バカか?」
「だって、声もそっくりだし・・・・」
その時、トウジの耳を引っ張りながらヒカリが教室に入って来た。
「あ、ヒカリちゃん。おはよう」
「おはよう、綾波さん。・・・・何かあったの?」
「ちょっとネ、気にしないで。そうだ!」
「おはよう。洞木さん」
マナに挨拶を返して視線を戻すと、レイは真剣な表情で端末を操作している。
状況を把握できないヒカリの顔には『?』マークがいっぱいに浮かんでいた。
「なんなの?」
ヒカリは首を傾げつつ、マナに問い掛けた。
この間哀れにもトウジは耳を引っ張られたまま、抗議も受け入れて貰えずにいた。
苦笑したマナは、かいつまんでコレまでの経緯を話して聴かせる。
マナの説明が終わった頃、レイの作業も終わったようだ。
「計算終了! ほら、やっぱり。
おめでとう、ヒカリちゃん。ヒカリちゃんと鈴原君の相性92%。
バッチリじゃない!」
「あ、アタシと鈴原は別に・・・・その・・・・。
・・・・ホント?」
「うん、ホラ見て。これによると・・・・」
そう言ってレイが詳細に解説を始め、ヒカリがマジマジとディスプレイに見入り、
トウジは相変わらず耳を摘まれたままでいると、
珍しくもチャイムと一緒にミサト先生が入って来た。
「はぁ〜い、席についてェ〜。HR、はっじめるわよォ〜」
いつもながら、どうして朝からそんないハイテンションなのだろうかと、
クラス一同不思議になるくらい明るいミサトだった。
仕方なくヒカリを初めとした生徒達は席に戻る。
そして、ヒカリの号令。
「きりーつ、れぇーい、ちゃくせぇーき」
こうして2年A組の1日は始まる。
「シンジ君」
「な、何? マナ」
あっと言う間に、午前中の授業は終わった。
そして、ざわめいた教室で声をかけてきたマナに、
思わず身構え、今日何度目かの苦笑を浮かべるシンジだった。
そんなシンジにマナは小首を傾げながら尋ねる。
「シンジ君、お弁当は?」
「エと・・・・その・・・・」
どう説明すればいいのだろうか?
シンジが迷っていると、後ろからアスカの手が伸びてきた。
かわいい袋に包まれたお弁当を持った手が。
「シンジのお弁当は、アタシと!レイが交代で作ってんの!」
思わず口調がきつくなるアスカだった。
その横ではレイが、ウンウンと頷いている。
「へェ〜、そうなんだ」
「そうよ!」
「よかったぁ」
「「!?」」
「お母さんったら絶対作ってけって、うるさかったんだけど。
アタシお料理習い始めたばっかりで自信なかったの」
思いがけないマナの台詞に一瞬ホッとするアスカとレイ。
が、それは甘かった。
「だから、上手になるまで待っててね! シンジ君」
「う、ウン・・・・」
(後が怖いと分かってるクセに、返事しちゃうんだから世話ないよなァ)
ケンスケはそう独りゴチる。
実際それは正しい。極めて正しい。
「それで、みんな何処で食べるの?」
「あ、屋上で・・だけど・・・・」
「ネ、アタシも一緒にいい?」
「う、うん・・・・」
そう言いつつ、アスカとレイの顔色を伺ってしまう。
当然2人とも苦虫を噛み潰したような顔をしていたが、
口に出しては何も言わなかった。
今更マナ1人を仲間外れに出来るような人間はいなかった。
「それじゃ、早く行きましょう!」
そう言ってシンジの手を取ると、
マナはスキップするような足取りで屋上を目指した。
呆然と取り残されたアスカとレイが我に返るまで、
3分ばかり必要だったほど、それは鮮やかな手並みだった。
「そうだ! ネ、シンジ君。コレ、アタシが作ったの」
「へ、へェ〜。お、おいしそう・・・・だね」
「味見・・・・してみる?」
「エ?」
「はい、ア〜〜ン」
周囲の様子を気にしながらも、
アッケラカンとしたマナの態度に逆らえないシンジ。
「あ、あ〜ん」
「どう? おいし?」
マナは心配そうな面もちでシンジの様子を見つめる。
「う、うん。とっても」
「ホントに?」
「うん」
「よかったァ」
マナは心からホッとしたようで、気の抜けたような笑顔を浮かべる。
シンジは身を縮めるようにして、
アスパラのベーコン巻きをモグモグと頬ばった。
マナの笑顔があまりにキレイで、真っ直ぐ見れなかった。
シンジばかりではなかった。
トウジらはもちろん、アスカ、レイ、それにカヲルも、
ハッとさせられてしまった。
そんな周囲に気付いているのか、いないのか、
マイペースなマナがふい真っ赤になってうつむいた。
突然のコトに一同何事かと不審に思い、
ヒカリがみんなを代表して尋ねてみた。
「あ、あのォ・・・・霧島さん? ど、どうしたの? 突然」
「・・・・間接キス・・・・しちゃった」
それだけ言うと、マナはさらに頬を赤く染めたのだった。
この日、碇シンジが新学期になって初めて、
保健室を利用するコトになったとは言うまでもないであろう。
[to be continued]
月刊オヤヂニスト
ゲンドウ「うむ。さすがは私の息子だ」
冬月 「なにを一人でうなずいている」
ゲンドウ「三人もの少女に行為・・・いやいや、好意を寄せられるとは、シンジも男になったものだ」
冬月 「・・・・あまりにオヤヂなギャグで、さすがに言うのがためらわれたか・・・ふう」
ゲンドウ「なっ、なにを言うか! 貴様の方が私よりもオヤヂなくせに!」」
冬月 「オヤヂとは失礼な! 体は年をとっても、心はまだまだ若いわ!」
ゲンドウ「はっ、ヂヂイは得てしてそういうことを言うもんだ」
冬月 「なにを!」
ゲンドウ「まあまあ、そう怒るな。今日はユイも呼んでいるから」
冬月 「なに、ユイ君? どういう風の吹き回しだ?」
ゲンドウ「私も学習したのだよ。自分の発言を隠れて調査されるよりは、手元に置いておいた方があんぜんだということにな」
冬月 「ほう、おまえにしては珍しく学習能力があるではないか。ユイ君をそこまで研究するとは」
ゲンドウ「ひとはいつまでも同じままではないさ」
ユイ 「あら、二人でなにをこそこそ話しているのかしら?」
ゲンドウ「あ、いや、なんでもない」
冬月 「そうそう、何でもないのだよ、ユイ君」
ユイ 「ふーん・・・・まあいいわ。で、シンちゃんどう? ちゃんと3人に翻弄されているかしら?」
ゲンドウ「翻弄? なにを言っているんだ。シンジこそが3人を翻弄してだな・・・・」
ユイ 「あーら、それは無理無理。あの子にはできませんって」
ゲンドウ「なぜそういう」
ユイ 「なぜって決まってるじゃない。あなたの息子なんですから」
ゲンドウ「な・・・・」
ユイ 「覚えてないんですの? 昔はあなただって私と霧島さんとこの・・・・」
ゲンドウ「わーっまったまった! それ以上言うな!」
冬月 「????」
ユイ 「あら、もうこんな時間。夕食の支度をしないといけないわ。先に帰っているわね」
ゲンドウ「うむ・・・・」
ユイ 「それじゃ・・・・ってあら。ちょっと失礼(ごそごそ)」
ゲンドウ「な、なんだいきなり人の襟なんかさわって・・・・って・・・・」
ユイ 「いやだわ、あなたのYシャツと一緒に洗濯した盗聴マイク、こんなところにひっかかってたのね」
ゲンドウ「・・・・おい。何だそのYシャツと洗濯っていうのは・・・・」
ユイ 「どこにいったのか探してたのよねー。よかったよかった。ちょうどよく電源も入っていたみたいだし」
ゲンドウ「・・・・・・」
冬月 「・・・・・・」
ユイ 「帰って聞いてみましょ。それじゃぁ〜」
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