アタシの肩に、シンジの頭が乗っている。

シンジはアタシに身体を預けて眠りに就いてる。

シンジの寝顔・・・・穏やかだな。

これってもしかして、アタシに心を許してるって証拠なの?だったらいいな。

アタシもシンジに頼られたいもん。

アタシがシンジに頼り切っているように・・・・

  




アスカ一行日記・外編

第七話:永遠の一瞬



ガタンゴトン、ガタンゴトン・・・・

  

電車の揺れる感じって、ほんとにいいリズムよね。

電車に座ると眠っちゃう人の気持ち、わからなくないな。

実際シンジも、ほんとに気持ちよさそうにしてるし・・・・

アタシも油断すると、この穏やかな雰囲気に包まれて、また眠っちゃいそうだけど、我慢我慢!!シンジはアタシを信頼して、こうして眠ってるんだもんね。

アタシの方で、その信頼を裏切る訳にはいかないわ。

  

でも・・・・ほんと、シンジの寝顔って、まだまだかわいいわよね。

女のアタシが言うのもなんだけど、お肌もつるつるしてるし、女装でもすれば、きっとショートカットの女の子で十分通用するわよ。

だから、こういう無防備なシンジを顔を見てると、何だか無性に守ってやりたくなっちゃうのよね。そんな事を言ったら、きっとシンジは嫌がるだろうけど、そう感じちゃうんだから、仕方がないわよね。

でも、顔はかわいくても、やっぱりシンジは男なのよ。女のアタシとは違う。力とか、そういうんじゃなくって、男らしい強さを持ってる。それに、思いやりも・・・・

  

アタシはこんな奴、これまで見た事がなかった。

本当に弱い癖して、絶対に逃げないのよ。そして、逃げる事をとっても恥じてる。アタシはそんなにつらいなら、楽な道を選べばいいと思うのに、シンジは自分で決めた道は絶対に貫き通すの。

以前のアタシも、それに似たようなものだと思ってたけど、シンジの心に触れていくうちに、シンジとアタシとでは、強さの形が全く違ってた。

昔のアタシの場合、アタシは自分自身に絶対の自信をもってた。だから、何でも出来ると思ってたし、実際そうだったから、アタシはなんでもやって見せた。

アタシはそれで、ずっとうまく行ってた。アタシに出来ない事は、何にもなかったんだから。

でも、アタシはここに来て、はじめて壁にぶつかった。壁にぶつかったアタシは、それまでが嘘のように、もろくも壊れていった。固いものを猛スピードで壁に投げつけたら、その投げる勢いのせいで固いものの方が壊れてしまうかのように。

結局アタシには限界があった。って言うより、アタシのやり方そのものに、無理があったのよね。でも、アタシはその事に、ずっと気がつかなかった。だって、アタシはそのやり方で、今までずっと、賞賛を浴び続けてきたんだから。でも、シンジはそんなアタシの間違いを、やさしく直してくれた。

アタシはシンジのやり方を知り、そんなシンジを、純粋に凄いと思った。

その時はじめて、アタシは自分の敗北を認めた。

そして、こいつには絶対に勝てないと思った。でも、アタシは既に変わりつつあった。だから、もう勝たなくてもいいと思うようになった。

それよりもアタシは、もっとこいつの事を知りたいようになった。アタシを変えた、こいつの事を・・・・

  

それからアタシは、意識してシンジを観察するようになっていた。

そして、シンジを知れば知るほど、どんどん魅かれて行く自分があった。

アタシは自分の能力以上の事は、何も出来なかった。でも、シンジは自分に出来ない事でも、絶対に諦めなかった。そして、周囲に自分のやさしさを振りまいているシンジを見た時、アタシはこいつしかないと思った・・・・

  

「シンジ・・・・」

  

アタシはそうつぶやくと、シンジを起こさない程度に、指先で軽くシンジのほっぺたをつついてみた。

  

やわらかい・・・・

  

アタシのちょっとした悪戯でも、シンジは起きなかった。

そしてアタシは、そんなシンジに向かって、続けてこうつぶやく。

  

「アタシがどれだけアンタの事が好きだか知ってるの・・・?」

  

しかし、返事はない。

無論、アタシはシンジの答えを期待してそう言った訳じゃないけど、アタシの心は、いつもその疑問をシンジにぶつけて、その答えを求めてた。

  

「アタシはアンタの事が好きだから、つい意地悪しちゃうのよ。嫌いだったら絶対にそんなことしないんだからね。」

  

アタシはまるで、いつも心の中でシンジに話しかけているように、シンジの寝顔に語りかけていた。

  

「・・・・アタシの気持ち、わかったならそれに応えてよ。アタシはいつも、アンタの事を待ってるんだから・・・・・」

  

シンジの顔は安らかだ。アタシの心の中の想いとは裏腹に、何の問題も抱えていないような顔をしている。

  

「バカ・・・・いつも恥ずかしがってばっかりで・・・・アンタのそういうところが、唯一賛成出来ないのよね・・・・・」

  

シンジはいつ起きてもおかしくない。でも、アタシは別にシンジに聞かれてもいいと思った。むしろ、心の中ではシンジに聞いて欲しかった。

  

「アタシの事が好きだったら、きつく抱き締めて、キスでもすればいいのよ。アタシは絶対、嫌がったりはしないから・・・・」

  

アタシはそう言うと、まるでアタシがシンジで、シンジがアタシに入れ替わったかのように、シンジの身体に回した腕の力を少し強めた。

  

「・・・・アンタがしてくれないなら・・・・こっちからするわよ。いいでしょ?キスしても・・・・?」

  

返事はない。

そしてアタシは、シンジの身体に覆い被さるようにして、微かに開いて寝息を漏らしているシンジの唇に、自分の唇を重ね合わせた・・・・

  

「・・・・・」

「ん・・・・・」

  

さすがにシンジも、キスをされると目を覚ました。

でも、完全に熟睡していたのか、ぼんやりして事態に気付いていないみたい。

アタシはゆっくりシンジから唇を離すと、まだ眠たげなシンジの顔を覗き込んでこう言った。

  

「・・・ごめんね、起こしちゃって・・・・・」

「・・・・アスカ・・・・?」

「・・・・悪気は・・・・ないんだからね・・・・・」

「・・・・・」

  

アタシは寝起きのシンジの顔を見たら、何だか自分のした事にちょっぴり罪悪感を覚えて、軽く視線をそらした。

しかし、シンジもアタシが寝ているシンジに何をしたのかようやく理解したようで、片手で唇を押さえると、つぶやきを漏らした。

  

「・・・・もしかして・・・アスカ・・・・」

「・・・・・」

「アスカ?」

「な、何よ?」

  

アタシはしらばっくれようかと思ったんだけど、そうも行かないみたいで、観念してシンジに顔を向けた。

  

「・・・キス・・・・したよね?」

「わ、悪い?別にしたっていいじゃない・・・・」

  

アタシは事実を知られちゃって、反対に開き直ってみせた。

するとシンジは、そんなアタシに向かってちょっと不満の色を表しながらこう言った。

  

「・・・別に悪くはないけど・・・・」

「けど?」

「だけど、わざわざ僕が眠ってる時にやらなくてもよかったのに・・・・」

「ど、どういうことよ、それ?」

「何だか僕の知らないところでキスされるのって、後味悪いじゃない・・・・」

「わ、悪かったわね、後味悪くって。」

「い、いや、そういう意味じゃないんだよ。困ったなあ・・・・」

「じゃあ、どういう意味だって言うの?」

「つ、つまり・・・・こういう意味。」

  

シンジはそう言うと、いきなりすっとアタシに顔を近づけて、ほっぺにキスをしてくれた。アタシはあんまりいきなりだったもんだから、よけるも何もなくって・・・ま、まあ、よけるつもりなんて全くなかったんだけど・・・・

とにかく、アタシは呆然としちゃって、シンジの顔を不思議そうな目で見つめながら、シンジの名前を口にした。

  

「・・・シンジ・・・・・」

「わ、悪かったかな、アスカ?」

「わ、悪くなんかないわよ。で、でも・・・・」

「な、何?」

「シンジって、キスするのもされるのも、嫌いだと思ってたから・・・・」

  

アタシがそう言うと、シンジは恥ずかしそうに真っ赤な顔でアタシに答えた。

  

「・・・嫌いなのは確かなんだけど・・・・たまにはこういうのもいいかな?って・・・・」

「じゃ、じゃあ・・・・・」

「た、たまにだからね。いつもじゃないんだから。」

「わかってる、わかってるから・・・・」

  

アタシはそう言うと、居ても立ってもいられずに、シンジに飛びついた。

  

「好きっ!!好きなんだからねっ!!」

「ア、アスカっ!!やめ・・・・」

「駄目っ!!今日だけは放さないんだからっ!!」

  

アタシはそう言うと、我を忘れてシンジを抱き締めながら、頬をすりよせていた。シンジはそんなアタシに閉口しているようで、今更キスした事に後悔の色を表しはじめている。でも、シンジがアタシにキスした事は、シンジの本心からだってアタシはわかってたから、そんな事は全然気にしなかった。

アタシにとっては、シンジからキスしてくれた事が、何よりもうれしかったから・・・

  

「も、もうそのくらいでいいだろ?勘弁してよ、ね!?」

「駄目よ。このアタシが勘弁なんてすると思う?」

  

シンジは困り切ってアタシに懇願する。でも、アタシはシンジを勘弁してやる気はさらさらない。別にシンジをいじめるとか、そういう気持ちは全くなかったんだけど、もうアタシはとまらなかったの。

だからアタシは、いつものように意地悪くシンジに接する事で、今の自分をちょっとだけごまかして見せた。

  

「わ、わかったから・・・ね?」

「何がわかったのよ?」

「ア、アスカが僕の事、好きだって事を・・・・」

「そんなのはじめっからわかり切ってた事じゃない。アタシはまだ、わかんないわよ。シンジがアタシの事、好きだって事を・・・・」

  

アタシはシンジに抱き付きながら、そう言ってみた。別にアタシはシンジの答えなんて、本気でここで求めるつもりじゃなかったのに・・・・

でも、シンジはアタシの言葉を聞くと、真剣にこう答えた。

  

「じゃ、じゃあ、僕がアスカを好きだって事、どうしたらアスカはわかるの?」

「・・・・キスして。今度はほっぺにじゃなくて、唇に・・・・」

  

アタシがそう言うと、シンジはゆっくりとうなずいて見せた。

  

シンジの顔が近付く。

アタシの心臓はどきどきしてる。

  

シンジはアタシの事が好きだって事を証明するために、今ここで、アタシにキスしてくれるんだ・・・・

  

アタシはそう思いながら、この一瞬を感動でいっぱいにしていた。そしてシンジのあたたかく柔らかい唇の感触・・・・

  

アタシはこの時を忘れない。

この時のキスを、永遠に・・・・・・

  


高嶋さんへの感想はこ・ち・ら♪   

「かくしEVAルーム」高嶋さんのぺえじはこ・ち・ら♪   


管理人(以外)のコメント

 アスカ「シンジ・・・・アタシは、シンジのことが好きだから、こんなことができるのよ・・・・別に他の人が見ていたって全然気にならないんだけど、シンジが恥ずかしがるだろうからそんなに積極的にしないだけで・・・・アタシはいつだって、こんな風にシンジを抱いていたい・・・・そしてキスしてあげたい・・・・そして、シンジにも同じようにしてもらいたいの・・・・。嫌がったりなんてしない。しないし、するわけがない。好きな相手に抱きしめてもらうこと・・・・そしてキスしてもらうこと。それほどの幸せって、他にあると思う? アタシの幸せの相手はシンジ。・・・・シンジの幸せの相手は、アタシ? レイじゃなくて、アタシ? ・・・・そうだと信じても、いい? シンジ・・・・キスもそうだけど、いつか、はっきりとその口から伝えてね・・・・アタシのこと、心から愛してるって・・・・」

 カチッ

 アスカ「???」

 ミサト「なっかなかいいもの、聞かせてもらったわ」

 アスカ「あーっ!! ひ、人の独り言を勝手に録音して!!」

 ミサト「さーって、これをシンちゃんに聞かせてあげようかなぁ〜(ニヤリ)」

 アスカ「ミ、ミ、ミサト!! そんなことしないでよ!!」

 ミサト「あ〜ら、全然おっけーじゃないの? ここまで思われるシンちゃんも幸せってもんじゃない」

 アスカ「だからってシンジにそんな恥ずかしいもの聞かせないでよ!!」

 ミサト「まったまた〜照れない照れない(ニヤリ)」

 アスカ「・・・・ミサト・・・・(真っ赤)


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