If You Believed In Me

GERRY MULLIGAN
If You Can't Beat 'Em, Join 'Em

(LIMELIGHT/PHCE-6010)

ジャズ・ファンからすれば、鼻にも引っかけないアルバムでしょうね、たぶん。でも、個人的には名盤の一つと数えたいです。
ジャケット・デザインもナイス!

1. King Of The Road
2. Engine, Engine No. 9
3. Hush, Hush Sweet Charlotte
4. I Know A Place
5. Can't Buy Me Love
6. A Hard Day's Night
7. If I Fell
8. Downtown
9. Mr. Tambourine Man
10. If You Can't Beat 'Em, Join 'Em


June 26, 2000

●●●●●●●You Can Beat 'Em●●●●●●●●●

 ぼくがCDショップに出かけると、かならずといっていいほどチェックするコーナーがあります。世界一バリトン・サックスが似合う男、ジェリー・マリガンです。しかも、作曲家、アレンジャーとしても一流なのですよ。ま、似合うかどうかは個人的な思い入れなのですけど、長身でハンサムな男にバリトン・サックスでゴリゴリと攻めまくられたら、だれでも「世界イチ−ィ!」と叫んでしまうと思うのでございます。いや、けっして新宿2丁目の近くに住んでいるせいではないはずですけど(^^;。
 で、久々に見っけましたよーの1枚が、クインテットによる「ジェリー・マリガン/イフ・ユー・キャント・ビート・エム、ジョイン・エム」です。
曲目は左にあげたとおりです。

 10曲中9曲はすべてポップスのヒット曲でまとめた軽いジャズ・インストといった趣の1枚です。このアルバムがリリースされたのは1965年で、当時といえば、ブリティッシュ・インヴェイジョンの真っただ中でありました。名門ブルーノートは66年にリバティ・レコードに売却され、ビル・エヴァンスの名盤を送りだしたリヴァーサイドは64年に倒産しています。大手レコード会社はジャズよりお金になるロックのほうに舵を取りだした頃です。アルバム・タイトルでもある10曲目のオリジナル曲は、そういうロック連中の仲間になったほうが身のためだネー、てな意味でしょうか、ジャズ・マンにとって自虐的な洒落であります。マリガンがうそぶいているだけあって、じつは5人全員とても心地くスウィングしてます。聴いているこちらもリラックスできる、とても楽しいアルバムです。ディナーのBGMにいかが、というそんな感じなので、マリガンの「ゴリゴリ感」は「コリコリ」っと軽めに調理してあります。「ゴリゴリ」を期待している方には少し物足りないかもしれませんけど、そんな方はここにはおられないでしょう、たぶん。
 で、これだけでしたら、ここでは取り上げる意味はありません。実はこれです。

ドラム/ハル・ブレイン
ベース/ジミー・ボンド

ギター/ジョニー・グレイ
ピアノ/ピート・ジョリー

 ねっ。パーソネルを知ったら、すぐにでもCDショップに駆け出したくなるでしょう(^o^)。ちなみに、ハル・ブレインの自伝に、この時のセッションのスナップ写真が載ってました。ジャズ畑出身であるハル・ブレインのジャズ・フォーマットによるアルバムは意外に少ないので、これはマスト・アイテムであると言えるでしょう。ハル・ブレインといえば、「やたら手数が多く、音がでかいだけだ」なんて勘違いしてる人はぜひ買ってもらいたいですね。んー、小技は相変わらず多めかなー(^^;。


 あまり小難しいジャズは苦手である、とお嘆きの諸氏のためかどうかは定かではございませんが、マーキュリー・ミュージックエンタテイメントが「名演ジャズ指定席」と銘打って、お堅い芸術品ではないジャズ・アルバム13枚を取り上げたシリーズが登場しました。今回取り上げた「ジェリー・マリガン/イフ・ユー・キャント・ビート・エム、ジョイン・エム」は、その中の1枚です。せっかくですからね、同じパーソネルにストリングスを加えたアルバム「Feein' Good」もリリースしましょうよ。

 話は変わって、「Add More Music To Your Day」の木村さんから、本格的な夏になるまでがトム・ジョーンズの賞味期間ですよ、とご忠告いただきました。さすが高校の先生でいらっしゃる。このまま聴き続けていたら「オヤジィ、汗クサーイ」と、女の子にガンを飛ばされるとこでした。パンティが飛んでくるトム・ジョーンズとは雲泥の差であることは間違いありません。(注/トム・ジョーンズは夏季限定だとおっしゃる強者が神戸在住のあつこさんです)

 で、やはり夏には爽やかさを、というわけでこの1枚。クリス・レインボウのベスト盤ですが、実はぼくがデザインをしたものでした。ん?、なんか見たようなデザインだなぁと、お思いのあなた、ピンポーンです。当時、センチュリー・レコードの担当ディレクターだった橋本ゆかりさんから、思いがけないメールをいただきましたので、ちょこっと裏話を添えて書いてみようと思います。といいながら、今回は予告編でおしまい(^^;。来週の(ホントか?)のお楽しみ。

クリス・レインボー3連発。世界初CD化の快挙は、はたして報われたのでしょうか?


White Trails
(CENTURY/CECC-00499)


Looking Over My Shoulder
(CENTURY/CECC-00505)


Home Of The Brave
(CENTURY/CECC-00515)

Best Of Chris Rainbow
(CENTURY/CECC-00675)

再び、ソフトロック・ファンの間で注目されたクリス君のベスト。94年にセンチュリー・レコードからリリースされた時は、あまり話題にならなかったようで。このCDのために、クリスは日本のファンのためにとメッセージを送ってくれました。そればかりか、リマスターまでしてくれています。

レーベル・デザインのほうでは彼の意向を取り入れて、「水」をイメージした東洋的なおもむきで攻めてみました。いかがでしょうか。

July 10, 2000

水もしたたるイイ男

 クリス・レインボーの世界初のCD化という快挙を成し遂げたのが弱小レコード会社のセンチュリー・レコードでした。名前はカタカナでも本来は演歌のレコード会社であります。実際、自主製作の委託がかなりあると聞いてます。八

こんなレコードも出してました。
名古屋人のマストアイテム?いわゆるご当地ソングであります。しかし、オリンピックといい万博といい、意味深なタイトルですねー。しかも、歌っている女性の名前も今では危険なイメージを誘います。
代亜紀の移籍や演歌の低迷で台所はかなり厳しかったようですが、大手がやらないスキ間を狙ったマイナー・レーベルのジャズ・アルバムのオリジナル仕様の復刻シリーズが1988年頃から始まり、マニアに喜ばれました。傍から見ていると、演歌の不振をジャズの復刻でカバーしているようにも思えます。
 その頃、洋楽の担当はほとんど一人で切り盛りしていたらしく、ジャズには精通していてもポップスに対しては程々の知識だったため、同時に出していたオールディーズ物は食傷気味の内容が多く、ビギナー以外は見向きもされないようなCD(しかし、手堅く売れるらしいです)がほとんどでした。
 そうした中、(今発売中のレコード・コレクターズのリイシュー・ガイドに名前を見ることができる)皆川氏が入社し、次々と埋もれたポップス、ソウルのCD化を行ないました。彼はコーネリアス、ピチカート・ファイヴらと親交があり、その知識もただ者ではありません。彼は、小さい会社がゆえに若造の自分でも思い通りの企画を出せる反面、会社の力の限界を嘆いており、やがて去ってしまいます。それでも、わずか数年の間に、ゾンビーズ、ニルヴァーナ、モンキーズ、ファースト・クラス、フラワーポット・メン、クロディーヌ・ロンジェなど、今でいうソフト・ロックの定番アーティストの復刻を果たしたことに改めて驚かされます。クリス・レインボーもそうした発掘の一つだったわけです。リリースは1993年でした。しかも、ファースト、セカンド、ラストの一挙3枚を復刻という無謀とも快挙ともいえるものです。VANDA誌がソフト・ロックを本格的に取り上げたのが1995年に発行した18号ですが、まだ彼の名前は取り上げられていません。今思えば、皆川氏が行なったことは少し早かったのかもしれません。
 皆川氏がセンチュリーを辞めることが決まり、洋楽ディレクター業務を引き継いだのが、(前回ちらっと触れた)本屋さんで「レコードコレクター紳士録」を立ち読みし、僕の名前を発見してメールをくださった橋本嬢です。センチュリーの台所はますます苦しくなり、新し
こんなんもありました。水戸黄門にゲストで出て欲しかったなぁ、と思うのはぼくだけでしょうか。それに、このCDは並みのCDではないのです。
しかも、
お守りを買うつもりで2枚買ってください、だって。
はたして、どういう方が買われたのでしょうか。
い音源を買い付けることなんて到底無理な状態だったそうです。彼女としてみれば、手元にある音源を編集していく方法くらいしかないので、皆川氏が過去に買い付けてきた音源を片っ端からベスト盤にしたてていった、と当時を振り返っておられました。(現在彼女は、音楽の仕事から離れておられるそうです。)
 その中の一つが「ベスト・オブ・クリス・レインボー」で、皆川氏のアドバイスもあってデザインの依頼がぼくのところに回ってきたのでした。といっても、ぼくのデザインが素晴らしいという理由ではないのはいうまでもないでしょう。そのデザインですが、お気づきのようにビーチ・ボーイズの「All Summer Long」の焼き直しでございます。クリスご本人のご要望としては「水」っていう漢字が大好きだからそれをジャケットに入れて欲しい、とのたまっておりました。しかし、彼の知名度からして、そういう冒険はしたくないという理由で却下、なのであります。デザインという点からしてみれば、面白いのですけどね。当時としてみれば、店頭に並んだ時、「漢字好きのけったいな西洋人」になってしまい、彼のビーチ・ボーイズ・フォロワーとしての音楽性が伝わりにくいのではないか、という危惧がありました。悪い言い方ですが、ビーチ・ボーイズ好きの音楽ファンが騙されたと思って買ってくれないかなぁ、であります。
 ジャケットは、そういうことで手を抜いておりますが、レーベル・デザインのほうではそれなりに努力してます。

 それはともかく、クリスご本人はベスト盤が出ることに大層お喜びの様子で、「どうせリリースするなら、リマスタリングした音で出したい!」と仰せられたのでございます。で、スケジュールぎりぎりに届いたDATには、オリジナルと左右が違っている曲があるのでは、という疑惑が出てきたそうです。「本人に改めて確認をとるべきだが、やり直す時間がすでにない」ため、「これもリマスタリングのうちである」と解釈してそのままプレス工場へ渡されました。つまり、コレクターズ・アイテムになりうるCDということらしいですね。クレームが一つもなかったことから、勘違いだったかもしれないと、彼女は言ってますが、「Allnight」は確かに逆みたいですね。もっとも、オリジナル・アナログ盤は聴いたことがありませんので、どちらが正しいのかはわかりません。個人的にはどっちだって関係ない気がしますけど。
 うっかり聞き忘れたのですが、果たして売れたのでしょうか?今なら話題になったでしょうが……
 ところで、これはぼくが知らなかったことですが、当時センチュリーには藤圭子がいて、自分と子供がやっているユニット「U3」というバンドのCDをセンチュリーから発売していたのですね。何でも、「U2をもじってU3」で、藤圭子の名前は絶対出さず、小学生の娘が鉛筆でスタジオの風景を書いたものをジャケットする、と宇多田氏は強く言ってたそうです。宇多田ヒカルの大ブレイクのおかげで、「U3」も売れてセンチュリーもニコニコだそうで、めでたしめでたし、かな?

preview page

next page


9 8 7 6 5 4 3 2 1 0

enter

THE WALL OF HOUND
このサイト名の由来は、もちろんフィル・スペクターが創造したWALL OF SOUNDの語呂合わせです。 HOUNDには、マニアという意味もあるようですが、特に深い意図はありません。また、ぼくは吠えたりもしません。このサイトでは、そのフィル・スペクターの再認識と知名度の向上を第2の目的としたものです。(文責: 大嶽好徳)
yoxnox art gallery
で、第1の目的はといいますと、ぼくの本業であるイラストを紹介することです。
プロフィール代わりに、どうぞご覧になってください。
message wall
掲示板です。ご意見、情報交換の場としてご利用ください。
Links  2/27/2001 更新
Mailご意見、ご感想、叱咤激励などなんでもお待ちしています。ご返事は必ずいたします。
e-mail の宛先は、yoxnox@big.or.jp