ミルク世紀すちゃらかエヴァンゲリオン

著者 踊りマンボウ   

第十話「大人達の戦い」

「・・ちっ、見つかったかな?」

 男は、闇を駆けていた。

 まるで、この暗闇が見えているかのように躊躇いもなく走っている。

 足音は、ほとんど聞こえない。

『・・カツン、カツン』

 追跡者の靴音だけが聞こえる。

 相手の正体を知ってか知らずか、無警戒に近づいてきている。

 男は、曲がり角で身を隠すと駆けてくる追跡者の方に全神経を集中させた。

「あと、20・・」

 男は、相手の位置を正確に把握していた。

 手にはサイレンサー付きの銃が吸い付くように収まっている。

「・・来た」

 男は短く呟いた。

 そのすぐ後に、ぱすっぱすっと、空気を詰めたビニール袋が破れたような気の抜けた音がした。

『どさ・・』

 呻き声を軽く漏らして、追跡者の男は倒れた。

「・・後、10分・・」

 男は、追跡者の男をちらりと見てすぐにまた、走り始めた。

 新月の・・ヘドロのような闇の夜だった。

「さすがに・・暗視ゴーグル無しだときついか・・」

 しかし・・男、加持リョウジの口は、笑っていた。

 

「・・『ヤマデラ』から連絡だ、碇」

「ああ、繋いでくれ・・」

 とあるビルの特別室、冬月コウゾウと碇ゲンドウは、とある研究報告書を見ていた。

「ああ、どうも・・『タチキ』さん。第23番研究所は、潰しました・・。一応報告までに」

 さっきまでの緊張を微塵も感じさせない軽い調子の声が、受話器から聞こえてきた。

「・・わかった。いつもご苦労だな・・。それで、一通りの仕事が終わったら一度こちらに来てくれ。『ホンダ』の周辺に不穏な動きがある」

「・・解りました。しかし、彼女の周辺には・・」

「ああ、『コヤス』と『ユウキ』がついてはいる。彼らだけでは、今回の動きに対処できそうに無いんでな・・」

「ま、そういう事でしたら仕方ないでしょう・・」

「あと、『ミツイシ』くんも寂しがっているからな」

「はっ?・・その話は・・また今度・・では」

 電話の向こうでおそらくは、焦っているであろうことが、ゲンドウには手に取るように解った。

 彼も、まさかここで、ミサトのことを持ち出してくるとは思わなかったのだろう。

「ああ・・」

 電話を置いて冬月を見る。

「何か聞きたそうだな・・」

「ああ、私の所には不穏な動きの報告など来ていないぞ。どういうことだ?」

「・・まだ、未確認情報でしかないが・・彼からの報告だ・・」

「彼・・とは」

「リツコ博士の息子・・といえば解るだろう」

「・・彼か・・」

「ああ、覚醒体を向こうも投入してくるとの話があるそうだ・・」

「・・なるほど・・な・・」

 それっきり、二人は黙って研究報告書を見つめた。

『雪風ナギサおよび綾波レイに関する報告書』

 研究報告書の表題にはそう書いてあった。

 

「・・しかし・・この俺達が・・子守りとはな」

「シゲルじゃなかった、『コヤス』そんなにぼやくなよ。別に不満な訳じゃないだろう・・」

 下校中の雪風ナギサを見張る二人の男。

 日向マコトと、青葉シゲルである。

 彼らは、碇ゲンドウの命令で、雪風ナギサ、及び綾波レイを陰ながら守っている。

「まあな・・、あの娘はいい子だし・・『ハヤシバラ』の方も・・な」

「ああ、そうだよな。・・それにしても『ヤマデラ』さんは、どうしてるか知らないか?」

「ん?あ、あの人か・・。あの人ならまた『作戦』に関わっているらしいぜ・・」

 双眼鏡から、目を離してシゲルはマコトの方を見た。

「・・なるほどね・・」

「・・よう。『コヤス』に『ユウキ』、元気だったか?」

 マコトの後ろに、不精髭を伸ばした男が、二人にまったく気付かれないで立っていた。

 声を掛けるまで、近寄っていることすら感じさせていない。

「う、うわ!・・や、『ヤマデラ』さん・・。脅かしっこ無しですよ」

 突然後ろから声を掛けられて、マコトは跳びあがった。

「まったく、脅かすのが好きなんですから・・『ヤマデラ』さんは・・」

 ある程度、シゲルの方は予想できていたらしく、さほど驚いてはいないようだ。

 双眼鏡から目を離したのは、誰かの到来を感じてのことだったらしい。

「まあ、そう言うなよ。・・それで、『ホンダ』のようすはどうだい?」

「ええ、周りに不穏な動きもありませんし、平穏無事なものですよ」

 マコトは、双眼鏡でナギサを追いながら答える。

「そうか・・『タチキ』さんから、頼まれたのだが・・まだ大丈夫そうだな」

 シゲルから双眼鏡を受け取って、リョウジはナギサの周辺を一通り観察した。

 確かに、マコトの言う通りナギサの周りには不穏な動きはない。

 のんびりとした調子でてくてくと歩いて行くナギサ。

「ま、転校一日目から、敵に気付かれたら仕事の内容を疑われるしな・・」

 リョウジは、双眼鏡から目を離した。

「それはそうと、・・お前らだけで不安と言う訳ではないが、『ガーゴイル』さんから、頼まれたんで・・彼女を呼んでおいたぞ」

「彼女?・・まさか・・」

 シゲルの声が、焦りの色が強く表れている。

 リョウジの悪戯げな表情に何か思い当たるところがあるようだ。

「そう・・『ナガシマ』さんだよ・・。嬉しいだろ?『コヤス』『ユウキ』」

「えーっ!あの加賀さんが・・ですか?」

「・・『ユウキ』・・ちょっとは声押さえろよ・・それに・・コード呼びじゃないぞ」

「・・ふふっ、随分な慌てようだな・・マコト・・。コード名で呼ぶのも面倒だろう・・。別に構わないぜ・・。今のところは・・だがな・・」

 リョウジは、コード呼びの解除を提案した。

「・・はい・・それにしても本当ですか?あの加賀イコマさんが来るなんて・・」

 マコトは、さっそく本名で話し始めた。

 どうやら、まだコード名での呼び方に慣れていないようである。

「・・もう来てたりして・・ね」

「うわ!」

 マコトは後ろから話し掛けられて、リョウジに話し掛けられた時以上に跳び上がった。

「お、イコマ。何だ、来てたのか・・。予定じゃ、もう少し先じゃなかったのか?」

「あら、・・そうだったかしら?まあいいじゃない。・・それにちょっとリツコの所にも用事があるし・・」

 加賀イコマはそういってソバージュの髪をかきあげた。

 やや染められて茶色の髪、黒い瞳、真っ赤な口紅・・まるで、水商売のお姉さんと言った印象の女性。だが、服だけはそれほど派手な色ではない落ち着いたものである。

「それで、ちょっと怪しげな男達が居たんできてみたのよ」

 強い香水の匂いが、日向マコトの鼻孔を刺激する。

「い、イコマさん・・あ、あまり乗り掛からないで下さい・・その・・胸が・・」

 その豊満な胸の刺激を頭に感じてマコトは顔を赤くした。

「・・イコマ、止めてやれよ。純真な青年をからかったりしてさ・・」

 リョウジの顔は、そう言いつつも笑っていた。さらさら、止める気など無いのだ。

 ただ、一応目の前にしている以上、義理で言っているだけである。

「そう?・・でもマコトちゃん、可愛いんですもの」

 イコマはそう言って、更に意識して胸を押しつける。リョウジには、ウインクしてみせる。

 胸を押しつけられたマコトは、シゲルに目で助けを求めた。

『し、シゲル・・た、助けてくれ・・』

『ま、マコト・・すまねぇ・・。俺も苦手なんだ、その人・・年上だし・・。それに別に悪い気持ちじゃないだろう』

『そ、そんな・・シゲル・・代わってくれよ・・』

『・・すまん・・本当に・・すまん・・』

「あらー?怪しいわね、男同士見詰め合っちゃって・・駄目よ、マコトちゃん、お姉さんが女の良さを教えてあげる」

 アイコンタクトで話している二人に、イコマは悪戯げに微笑んだ。

 無論、二人が何をしていたのか知っての上である。

「・・い、いえ・・その・・」

「い、イコマさん、何言ってるんですか・・。お、俺達はただ・・」

「目と目で、分かり合っていた、でしょ?」

 くすくすと、口の前に片手を当てて、イコマは楽しそうに笑った。

「そ、そうじゃなくて・・」

 シゲルが慌てて反論するが、言葉が見つからず、すぐに黙り込んだ。

「くすくす・・ほら・・何?」

「おいおい・・その位にしとけよ。一応、マコト達は任務に就いてるんだからな」

 困り果てる二人に、リョウジが、ようやく助け船を出した。

「ふふっ、そうね。それにあたしも用事の途中だったけ・・。じゃ、邪魔にならないように行きましょうか・・ちゅっ」

 イコマはマコトの頬にキスをした。口紅の跡がくっきりと残るキスを。

「・・・・」

 イコマの行為に、マコトが絶句した。

 リョウジは、ひゅうと口笛を吹いてみせた。

『マコト・・どうやら気に入られたようだな・・頑張れ・・』

『そ、そんな・・加持さん・・』

『ま、これも運命だ・・あきらめろ・・』

 リョウジの言葉に、マコトががっくりとうな垂れる。

「じゃあね、リョウジ、マコトちゃん、シゲルちゃん・・また会いましょう」

 イコマは、ひらひらと手を振って、街角に消えた。

「・・」

「・・」

「俺も、ちょっと用事あるんでな。ま、頑張れってくれ、マコト」

 イコマと同じように、手を振ってリョウジは街角に消えた。

「・・」

「良かったな、マコト」

 あっという間に消えてしまった先輩達を見送って二人は顔を見合わせた。

「・・お前、他人事だと思ってるだろう」

「ああ、他人事だな」

 そういって、シゲルはにやりと笑った。

「イコマさんと仲良くな・・」

「シゲル!お前っ!」

「ほらほら、二人ともマンションに入ったから・・交代だぜ」

 顔を真っ赤にして掴み掛かってくるマコトを軽く交わしてシゲルは車に乗り込んだ。

「・・たくっ・・」

 マコトは不満の顔を見せながらも車に乗り込んだ。

「さて、今夜の姫君達はどんな夢を見るんでしょうかね・・」

「?・・何だよそれ?」

「新作の曲の詩を考えてる所だよ。気にするなよ」

「そうかい・・」

「そうだよ、よっと」

 車は急発進させる。

「・・何、急いでるんだか?」

 自分の脇をすり抜けていった車を見て、リョウジは呟いた。

「ま、いいけどね」

 手にした煙草を地面に落として足で踏み消してから、リョウジは裏路地へと消えていった。

 

 

  

第十話「大人達の戦い」   
終わり   
第十一話へと続く   


踊りマンボウさんへの感想はこ・ち・ら♪   


 

すちゃらか裏話

 

 

作者 「どうも!へっぽこ作家の踊りマンボウです。皆さんこんにちは」

ナギサ「皆様、ご機嫌いかがでしょうか?アシスタントの雪風ナギサです」

作者 「ようやく、まともにストーリー展開を始めたけど・・」

ナギサ「はい?」

作者 「何時になったら、終わるのだろうね」

ナギサ「あの・・それはマンボウさん次第ではないでしょうか?」

アスカ「そう!ナギサの言う通りよ!」

作者 「・・今度は天井から降りてきたか・・」

アスカ「あら、あんまり驚いてないようね」

作者 「不意打ちはいつものことだからね」

ナギサ「あまりお元気ではありませんけれど、何か心配事でもあるのでしょうか?」

作者 「そうだね・・。連載開始から・・かなりの時間が過ぎてるからちょっと焦ってるんだよ」

アスカ「まあ、次回予告のタイトルを外したのもその所為なんでしょ」

作者 「ああ・・次の作品が書き上がるまでタイトルがころころと変わっているからね」

ナギサ「良く転がるのですね」

作者 「そう、坂道からころころと・・じゃなくて」

ナギサ「ほよ?」

アスカ「ほら、ナギサ。ボケはいいから・・」

作者 「まあ、それで予告を外したんだけどね」

アスカ「後、このすちゃ裏を撤去しようっていう話もあるんでしょう?」

作者 「これは続けていく予定だけどね。ネタは無くなってきたけれど・・一つ一つの作品にコメントをつけて下さる丸山さんを見習わなきゃね」

アスカ「ふうん、アンタにしては珍しいわね」

ナギサ「そうですわ。マンボウさん、ファイト!」

作者 「うん、ありがとう」

アスカ「・・何か、この娘のテンポ・・アタシには疲れるわね・・ついていってる作者も作者だけど」

作者 「ということで、これからもすちゃエヴァをよろしくお願いします!」

アスカ「何だか、ブランクが長くて文体が変わるかもしれないけど、気にしないで・・だそうよ」

ナギサ「あ、あの一生懸命、わたくしもアシスタントを勤めますので宜しくお願い致します」

作者 「といったところで、今日のすちゃ裏は、お開き」

アスカ「笑点ネタなんて・・じじくさいわね」

ナギサ「ジジと申しますとあの魔女の宅急便の・・」

作者 「・・・・」

アスカ「あー、はいはい、そうね」

ナギサ「まあ、間違いではなかったのですね。となりますとマンボウさんはマンボウさんではなくて黒猫さんなのでしょうか?」

作者 「ナギサちゃん・・それだと踊りにゃんこうになってしまうから・・違うけど」

ナギサ「あらあら・・では、どういうことなのでしょうか?」

アスカ「あー、ほらほら、巻き入ってるから挨拶挨拶!」

作者 「あ、ああ・・それではまたお会い致しましょう!では・・」

ナギサ「あ、・・それでは皆様、またお会い出来る時までご機嫌よろしゅう。・・マンボウさん、待って下さいまし」

アスカ「・・何だか、どんどんベタベタになっていくわね・・。はぁ・・疲れるわね」

 


管理人(その他)のコメント

カヲル「なんだい、あの『ヤマデラさん』とか『ミツイシさん』とかいうのは

アスカ「さーねーあたしはなにもしらないわよー」

カヲル「・・・・うそだね、それは(きっぱり)」

アスカ「知らないったら知らないわよ。もし万が一知っていたとしても答える事はできないわ」

カヲル「はっ・・・・ま、まさか、その名前は、あの人たちが影で悪事の限りを尽くす時の偽名とか・・・・さしずめきみは『ミヤムラさん』ってとこか」

アスカ「ちゃんと知ってるじゃないのよ!!」

 どかっばきっ!!

カヲル「うぐっ・・・・い、いたい・・・・」

アスカ「しかし、またこりゃずいぶんと急な話の展開よね〜」

カヲル「きみのぱんつをのぞいていたころとはなんかはなしの雰囲気がかわ・・・・」

アスカ「まだそのネタをひっぱるか!!」

 げしげしげし!!

カヲル「むぎゅぅ・・・・作者がそのネタを気に入ったからだよ・・・・」

アスカ「却下却下却下!!」

カヲル「じゃ、じゃぁ・・・・ぼくのパンツでも代わりに・・・・」

アスカ「あんた、一度といわず何回か死んでみる?

カヲル「・・・・・・結構です・・・・・はい・・・・・」

アスカ「ふん、わかればいいのよわかれば」

カヲル「(影でこっそりと宣伝)ふっぼくのパンツ姿を見たい人は、誰かイラストレーターさんに書いてもらえるように交渉してくださいね」

アスカ「こ・の・あほたれぇえええ!!」


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