ミルク世紀すちゃらかエヴァンゲリオン

著者 踊りマンボウ

第壱話「扉を開ける者」

   

『だん!』

 ドアが開かれる。碇家の朝の合図ともいえるその音は、美少女と呼んでいい女の子がたてていた。

 少女の名は惣流・アスカ・ラングレー。入った部屋の主、碇シンジとは幼なじみの間柄にある。

「・・ホント、幸せそうに寝てるわねぇ」

 アスカが部屋に入った時、ベッドの上でシンジは笑っていた。幸せという形容か、それとも変な奴か、見る人によって受け取りかたが違うと思うのだがアスカは幸せと思った。

 何かいい夢を見ているのだろうか口元がだらしなく緩んでいる。

「ほら、バカシンジ!起きろー!」

「わっ!」

 耳元でアスカの叫び声を聞いてシンジは跳ね起きた。

「あ、アスカ・・」

「あ、アスカじゃないわよ。いいかげん、早起きの癖つけたら?毎朝、毎朝起こしに来る身にもなってよね」

 アスカは腰に手を当てて、シンジを見下ろしている。

 確かにシンジに対して呆れているようではあるが、それでもわざわざかいがいしく起こしに来る所からすると、それとは別の感情があるようだ。

 だが、当のシンジはそんなアスカの世話焼きを疎ましく思っているのか、布団に潜り込んで、再び夢の世界に入ろうとしていた。

「ちょっとシンジ!何また寝ようとしているの、起きなさいたら」

 声だけでは起きないので、アスカはシンジの布団を剥ぎ取った。

「イヤン、アスカのエッチ☆」

「・・ぶつわよ」

 布団の中で丸くなっていたシンジは、ちょっとオカマちっくな声を上げた。

 アスカは、そんな馬鹿なシンジに対して手を上げた。

『パチン』

 乾いた音が、部屋に響いた。

「どう?シンジ。目は覚めた」

「は、はい」

 ぶつわよというアスカの言葉は、脅しではなく実行を意味していた。

 シンジは、ぶたれた頬をさすりながらゆっくり布団より起き上がった。鏡を見ると、顔にアスカの手形のあざが浮かんでいる。

「じゃ、先に下に降りて待ってるからね。五分以内に来なきゃ、今度は蹴りが跳ぶわよ」

「解ってるよ。ホント、アスカは乱暴なんだから」

「何よ。シンジが早く起きないから、私はしかーた無く実力行使に出てるだけよ」

 すました顔でアスカは戸を閉めて降りていった。階段をトントンと軽やかに降りて行く音がすぐに聞こえてきた。

「嬉しそうに蹴りをかますのは気のせいって言うのかい、アスカ」

 鏡で顔を腫れを確認しつつシンジは呟いた。今日も、容赦ない平手打ちだった。

 学習能力というものがいいかげん芽生えても良いと思うのだが、シンジはどうしても早起きできないでいた。

「愚痴ってても仕方ないや・・。早く行かないと蹴られるし・・」

 そんな日常にシンジは慣れてしまった。言い換えると、環境への適応・・だろうか。

 ひょっとしてその手の素質があるのではと思ってしまうことがある。

「黙ってれば、可愛いのに」

 シンジはアスカの美少女ぶりについては認めていた。自分の通っている公立第三新東京中学校の中でも、1、2位を争うほどの美少女であると贔屓目なしに思う。

 ただし、言っているように条件付きではあるが。

 幼なじみということでだろうか、とにかくシンジに対してはまったく遠慮というものをアスカは持ち合わせていない。

「みんな羨ましいって言ってるけど・・その手の趣味でもあるのかなぁ」

 アスカがシンジだけを苛める。その事実が意味する所を彼はまだ気付いていないようだ。

   

「あら、アスカちゃん、今日も早いわね」

 台所では、シンジの母親のユイが朝食の準備と片付けをしていた。

 明るい声で、自分の代わりに息子を起こしてくれる頼もしい少女を迎える。

「おはようございます」

「いつもいつもごめんなさいね。ホント、シンジはお寝坊さんだから」

「いえ、いいんです」

「紅茶・・今入れるからちょっと待っててね」

 ユイは、ティーポットを取り出して、紅茶の葉をパッパッと入れた。それに朝沸かしているお湯のはいったケトルに再度火にかけて、沸かしなおす。

 それは、毎日行われていることなのだろう、とても手際よく進められる。

「はい、いつもすみません」

 シンジを起こしてから、着替え、朝食などで待たされることは日常化している。

 アスカはシンジを起こしに来た時点で、すべての準備を終わらしているのでただ待つ以外にすることがないのだ。

「おはよう・・ふぁっ」

 シンジは、のろのろと二階から降りてくる。

「おはよう、シンジ」

「シンジ、早く顔洗ってらっしゃい。毎日毎日、アスカちゃん待たして」

「おはよう、シンジ!」

 にこにこと笑顔を浮かべてアスカはシンジを迎えていた。手には紅茶の注がれたカップがある。

 ユイの入れてくれる紅茶を飲むのも彼女が朝早くから碇家に来る理由の一つなのだ。それほど、ユイの入れる(もしくは選んだ)紅茶がアスカは好きだった。

「なんだよ・・アスカが勝手に待ってるんじゃないか。さっさと先に行けばいいのに」

「シンジ、何ですその言い草は。アスカちゃんに失礼ですよ」

「だって本当のことだよ」

「・・バカシンジ」

 低く唸るような声がシンジの耳に届いた。

 ちょい、ちょい。

 アスカは、シンジに近くに来るように指で示す。こめかみ辺りに、彼女の怒りを表わす血管が浮いてたりする。

 紅茶を楽しんでいた時だっただけに、余計に気分が悪くなったようだ。

「・・」

 シンジは、それまでの減らず口が嘘のように素直にアスカの側に行く。ヘビに睨まれたカエルといったところだろう。

「せっかくだから、私が顔洗ってあげるわ!」

「いたい。アスカ、耳引っ張らないで」

「ほら、来なさい!」

「いだだだだだ・・」

 アスカに引っ張られてシンジは洗面所へと消えた。

「ぎゃー!」

 家全体に聞こえるほどの悲鳴が上がった。

「・・シンジも懲りないな」

 それまで沈黙を守っていた碇家の大黒柱、碇ゲンドウが呟いた。朝の騒がしいやりとりをよそに新聞を広げて読みふけっている。

「あなたも、いいかげんその癖、やめたらどうです?」

 今のうちに片付けられる洗い物をユイは洗っている。

「・・ああ」

「新聞読むか、朝御飯食べるか・・。もう、急がないと会議に遅れますよ」

「ああ」

「もう生返事ばっかり。会議に遅れて冬月先生にお小言言われるのは私なんですからね」

「君はもてるからなぁ」

「ほら、冗談いう暇あるんだったら、急いでください。まだ準備終わってないんでしょう」

「君のほうはどうなんだ?」

「もう終わってます。・・ふう、あとの食器は帰ってからね」

 今済ませられる洗い物を終わらせてユイは台所からテーブルへと移動した。

「・・痛ひよ。あしゅか・・」

「・・ぷい」

 顔を真っ赤にさせられたシンジがテーブルにつく。アスカはその隣で紅茶を再び飲み始める。

「母さん・・アスカったら酷いんだよ。あんなに乱暴にタオルで僕の顔擦るなんて・・」

 シンジは、そっと自分の顔に手を当てた。まるで燃えているように肌が熱い。もしかすると、軽く火傷しているかもしれない。

「自業自得よ」

 ユイは冷たく言い捨てた。

「女心をもっと理解するんだな」

 ゲンドウがユイに続く。新聞の向こうでうんうんと頷いている。

「そう、もっとアスカ君の気持ちをだな・・」

「アスカの気持ち?」

 とたん、アスカの顔が完熟トマトのように真っ赤になった。

「あー、ほらバカシンジ!あんたが早く食べないからこんな時間になったじゃない。ほら、早く!鞄持ってきなさいよ」

「?」

 急にアスカが騒ぎ出したのに、シンジはついていけずにきょとんとしている。

 彼は、何故彼女がそんなに焦っているのか、何故彼女が顔を赤くしているのか理解していないようだ。

「もう、私が取ってくるから、さっさと食べなさい!」

 ばたばたと階段を駆け上がっていくアスカ。

「アスカ・・駆け上がるとパンツ見えるよ・・」

 アスカの態度の豹変に、ついていけないシンジはぼんやりと彼女が二階に上がっていくのを見ている。

「・・水色か・・」

 新聞とにらめっこしているはずのゲンドウがぼそりと告げる。どう考えても、彼の位置からは見えないはずなのだが。

 シンジの記憶では、さっきからずっと同じ格好で新聞を読んでいるはずである。動きとしてはわずかに風に揺れるほど、紙面が揺れたくらいなものだ。

「・・あなた」

 怒りのオーラを纏ったユイがゲンドウの後ろに回り込んでいた。手にはフライパンが収まっている。

「ぬう・・」

 ゲンドウの頬を冷や汗が伝う。

 ユイがゲンドウに襲いかかったのは直後だった。

『ばこん』

 鈍い音がした。だが、ゲンドウの新聞を持つ手は下がらなかった。

 惨劇を隠すためかどうか解らないが、とにかくゲンドウは微動だにしない。

「・・」

 シンジは恐ろしくて両親の喧嘩を直視できず、朝食を掻き込むとその場から離れた。すぐに、喧嘩は終わると思うのだが、さわらぬ神に何とやらである。

 階段の方に行くとアスカが丁度二階から降りてきた。

「アスカ・・水色?」

 父ゲンドウの言葉が気になったのか、シンジは「何が」をはずして質問した。

『げしっ』

 シンジの方は蹴りをくらった。

 それによりシンジは自分の目で、アスカの下着の色を確かめることが出来た。

 父の言葉通り、アスカの下着は水色だった。

『すごいや、父さん』

 口には出さなかったが、シンジは父の技に感動していた。

「馬鹿なこと言ってないで行くわよ!」

 シンジの手に鞄を持たせてアスカは玄関に急いだ。

「あ、現国の教科書!」

「今日の分は、きちんと確認して、入れてるわよ」

 教材を入れ忘れているのを思い出したシンジにアスカは注意する。

 二階から彼女が降りてくるのが遅かったのはそのためだ。鞄を取ってくるついでに彼女は、中身の確認をしていたのだ。

 シンジと同じクラスのため、確認はそれほど困難なことでない。案の定、入れ忘れているものが幾つかあり、アスカはそれをそろえて入れておいた。

「え・・?」

「ほらいいから早く」

 予想以上に、時間は差し迫っていた。アスカはシンジを引っ張って家を出る。

「じゃ、おばさま、いってきます!」

「はい、いってらっしゃい」

 二人が出ていって、いつもの朝の騒がしさがようやく終わりを告げた。

「ほら、早く!あなたも遅れちゃうじゃないですか」

「ああ」

 いや、まだ終わってはいなかった。

   

第壱話「扉を開ける者」   

終わり   

第弐話「転校生 壱」へと続く   

   


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管理人たちのコメント

カヲル「水色か・・・・」

 どげしぃいっ!!

アスカ「ひ、ひ、ひとのぱんつをなに涼やかな顔して批評してんのよアンタは!! れでぃの気持ちを考えない男は、き、き、きらわれるわよ!!」

カヲル「きみのつつしみが足りないから、シンジ君にぱんつ見られるんじゃないか。それともなにかい? シンジ君になら見せても言いと思ってるとか?」

シンジ「・・・・・・」

アスカ「アンタなにバカなこと言ってんのよ・・・・・って!! ああ、シンジ! あんたなにこっそり聞いてんのよ、このエッチ!!」

 ばちいいいいいいんっ!!>

シンジ「あううううう、僕がいったい何をしたって言うんだよぉ・・・・(*;;)」


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