第弐話「サファイヤの雫」

 

 チュン、チュン・・・

 小鳥のさえずる声が聞こえる。差し込む陽光とともに、アスカを眠りの海から引きずり出した。

 「ふむうぅー・・・はぁ、朝か・・・」

 ぼんやりとした頭であたりを見渡す。あまり広いとはいえない寝室でシングルベッドを隅に押し込み、強引に布団を二つ敷いてある。一緒に寝たい、というアスカのわがままにシンジが答えてくれた結果である。横を見ると・・・そこにはあどけないシンジの寝顔があった。

 「くすっ、かわいい顔しちゃって。これで二十歳とは信じられないわねぇ・・・」

 じっとその顔を見つめ続ける。疲れてるのかしら・・・そんな想像が頭をかすめる。

 「シンジ、起きなさいよ・・・」

 優しい声で起こしにかかる。

 「シンジ、シンジってば!」

 が、気の短さは変わっていなかった。

 「んもぉっ!起きなさいよ!」

 声を荒げても起きる様子はない。昨夜、遅かったものね・・・独り言を言いながら顔を赤らめる。

 「じゃ、この手しかないわね・・・」

 赤い顔をにやけさせてシンジの顔に近づく。シンジの鼻をつまみ、そして、美しい唇をそっと重ねる。

 「・・・うん?・・・うむむむ・・・ぷはぁっ!」

 「シンジっ、おっはよ♪」

 「おっはよ♪じゃ、ないよ、アスカぁ・・・苦しかったよぉ・・・」

 「なによぉ、文句あるの?」

 楽しそうに、微笑みを浮かばせて答えるアスカ。シンジもぼやきながら顔が笑っている。

 「な、無いけど・・・もう少し、ほかの起こし方もあるんじゃないかなぁ、なんて・・・」

 「私のキスがいやだって言うの?」

 「そう言う訳じゃ・・・ないけど・・・」

 シンジの顔も赤くなる。時にくさい台詞を吐くようにはなったが、相変わらず初なシンジであった。

 「じゃ、いいじゃない♪」

 「う、うん・・・」

 結局アスカに勝てないところも、変わってはいなかった。

 「ところで・・・おなか空いたわね。シンジ、何か食べるもの作って♪」

 「う、うん、わかったよ。今日は午後からのパーティーの準備もあるから、オープンサンドとか、簡単なものにしようと思うけど、いい?」

 「もっちろん、いいわよ♪」

 パジャマをさっと着替えると、エプロン姿になってシンジはキッチンに向かった。今日のパーティーのために前日から用意した料理の下ごしらえが所狭しと並んでいる。

 「シンジぃ、何か手伝うことある?」

 「あ、アスカ。寝てなくて大丈夫?まだ足、良くなってないでしょ?」

 「大丈夫よ。ほぉら!っとっと・・・」

 「ア、アスカぁ、大事をとってソファーで横になっていたら?」

 あわてて支えながら心配そうに言う。その顔を見ると、強情も張れなくなる。

 「うん・・・じゃあ甘えさせてもらうことにするわ」

 アスカはソファーに体を横たえた。さっき、ああは言ったものの、実のところはまだ足腰が弱かった。結婚式までには!と、プールでのリハビリを続けてはいるものの、6年間も寝たきりであったのだ。そうそう早く回復するわけではなかった。

 「アスカぁ、出来たよぉ!」

 シンジの声とともに料理が運ばれてくる。質素ながら、手を抜いたところはみじんも見受けられない。シンジらしい朝食だ。

 「「いっただっきまあす!」」

 思わず顔を見合わせた。出会った直後のユニゾン訓練・・・まだ生きているようだ。

 お互いにひとしきり笑ってから食べ出した。

 「ねぇ、今日のパーティーって何時頃からなの?」

 「ええと、夕方からだよ。それまで料理の準備が忙しそうだなぁ」

 「あんなに料理あったのに?」

 「完成するまでかなりかかるからね。人数も多いし」

 「いったいどれくらい呼んだの?」

 「みんなだよ。声掛けられるだけ掛けたら、みんな来るって。アスカの元気になった姿を見たいそうだよ」

 「へぇーっ。私の美貌を拝みに来るのね。でも、私はシンジだけに見せたいんだけどね」

 「ちょ、ちょっとぉ・・・恥ずかしいよ・・・」

 顔を赤らめながらシンジがつぶやく。

 「本気よ、アタシは・・・ところで、加持さんは来るの?」

 「う、うん。ミサトさんと一緒に来るって」

 「ふぅん。全く、ミサトはずぼらだから、加持さんに負担掛けてるんじゃないかしら」

 「加持さんは仕事忙しいそうだから、ミサトさんが家事をやっているとか・・・」

 「えーっ、あのミサトがぁ?信じらんなぁい」

 あきれ顔でアスカが答える。まあ、昔の状況を考えると無理もない。

 「まあ、ミサトさんも今は暇だから・・・結構うまく料理も出来るようになったよ。たまにとんでもないものがでてくるけど・・・」

 「所詮、ミサトはミサトよ。私には強ーい味方がいるんだから、期待してるわよ」

 「え、どういうこと?」

 「あんたばかぁ?アタシに、料理を教えてね、ってことよ!」

 照れ隠しに、昔の口調を持ち出すアスカ。もちろん、その顔は笑っている。

 「も、もちろんいいよ、アスカ。じゃあ、今日のお料理、手伝ってくれる?椅子に座りながらでも出来るものなら・・・」

 「ウン・・・お願いするわ」

 

 こうして、キッチンでの格闘が始まった。

 「ア、アスカ、そんなに力入れたら・・・」

 「いったーい!・・・指切っちゃった・・・」

 「絆創膏、絆創膏・・・」

 「シンジ、これくらいなめておけば直るわよ。ほら」

 指を突きつけるアスカ。

 「へ?」

 「んもう、鈍感ね。私の口から言わせたいの?」

 「あ・・・そ、そうか・・・(ぺろっ)こ、これでいいかな・・・」

 「よろしい♪」

 ・・・こんなこともあったが、シンジの手厚いサポートの元、料理は完成していった。

 「出来たわよ、シンジ!」

 「良かったねぇ、アスカ!」

 テーブルには豪華な料理がずらりと並んだ。レストラン顔負けの品揃えである。

 「シンジ、ずいぶんとまた料理の腕磨いたんじゃないの?」

 「そんなことないよ。こんな料理、しばらく作ってなかったから・・・」

 「そぉ♪そう言えば、さっきは何を作ってたの?」

 「ケーキだよ。せっかくだから手作りで、と思って・・・」

 「えーっ、ケーキ?すごいわねぇ、シンジ!」

 「久しぶりだからうまくできるかどうか分からないけどね。でも、アスカのためにがんばって焼いたから・・・」

 「も、もう・・・できあがるの待ってるわよ♪」

 一通り準備も終わり、ソファーに並んで座った二人。

 一休みの間も無く・・・

 ピンポーン・・

 「「はあーい!」」

 壁の汎用ディスプレイがテレビドアホンの映像に切り替わる。そこには懐かしい3人の姿が映し出された。

 「アスカぁ、元気にしてた?」

 「シンジ、久しぶりやなぁ!」

 「今日もばっちり撮ってやるぞ!」

 彼のビデオカメラを手にした姿は変わっていない。今日は大きな包みを手にしていたが。

 「全くもう、アンタはそれしか考えられないの?」

 「まあまあ、今日はめでたい日なんだからさ、穏便に。ね、アスカ」

 「ま、シンジの顔に免じて許してあげるわ。今度からは肖像権を立てに撮影料とるわよ!」

 「と、とりあえず・・あがってよ」

 ぷしゅ、という音とともにドアが開く。わいわいと騒ぎながら入ってくる。

 「お誕生日おめでとう、アスカ」「惣流も二十歳か、早いのう」「誕生日、おめでとさん!」

 「ありがとう、みんな・・・」

 「んじゃ、これがわいからのプレ・・・いててて・・・」

 「もう、早いでしょ、鈴原。こういうものはもっと後で出すの!」

 「だからといっていきなり耳をひっぱらんでもいいやろ、いいんちょ」

 「やっぱり尻に敷かれてるわねぇ、トウジ」

 「し、尻になんか敷かれとらんで!わいは硬派だからの」

 「ふふーん、で、二人はどこまで進んでるの?」

 「ちょ、ちょっとアスカ!」

 顔を真っ赤にしてヒカリが反応する。

 「か、関係なんて・・・そんな・・・」

 「キスぐらいは済ましてるでしょ?」

 ヒカリは顔を赤くしたまま小さくうなずく。

 「いいんちょ!それは言わない約束・・・」

 「あんたまだいいんちょ、って言ってるの?いい加減つきあい長いんだから名前で呼んだら?」

 「いいのよ、アスカ。私たちにとってはまだ鈴原、いいんちょ、の仲なんだから・・・」

 「だめよ、なんとしても早いとこトウジをモノにしちゃいなさいよ、ヒカリ!」

 「も、モノに・・・不潔よ、アスカ!」

 そばかすの消えかかった頬が再び赤く染まる。

 「ヒカリ・・・二人が愛し合っているならそんなことはないわ。かえってその方が自然だわ」

 ゆっくりと諭すように話すアスカ。その言葉には、経験者としての重みがあった。

 「そ、そうね・・・考えておくわ・・・それにしても変わったわね、アスカは」

 「そぉね。6年分、一気に変わったかもね。これもシンジのおかげよ♪」

 「アスカぁ・・・ちょ、ちょっと・・・」

 「あーら、これくらいで恥ずかしいの?全くあの時の大胆さは・・・って、何いわせんのよ!」

 「あ、アスカが自分で言ってるんじゃないか!」

 「きっかけ作ったのはシンジでしょ!・・・」

 

 「全く仲がいいのぉ、あの二人は。昔と変わらんで」

 夫婦喧嘩(アスカが一方的にいっているだけのように見える)を続ける二人を横目にヒカリへ話しかける。

 「鈴原も鈍感ねぇ、二人の顔、よく見なさいよ」

 「うん?大して変わっとらんで」

 「もお、顔が笑ってるでしょ!」

 「あ、そうやな。楽しそうに言い合っとるわ」

 「トウジと委員長も、そうじゃないのかい?」

 「ケ、ケンスケ!おまえまでそないな事・・・」

 「・・・相田の言う通りかもね、鈴原」

 「あ・・・そ、その通りや!」

 「ふふふ・・・仲のいいカップル2つか・・・」

 心に風が吹く、ケンスケであった。

 「でも、惣流が碇とくっついた、ということは、綾波は・・・」

 ピンポーン!

 「「はーい」」

 楽しそうに喧嘩をしていた二人が、同時に声を上げる。

 「・・・・・・綾波レイです・・・・・・」

 「やあ、シンジ君、久しぶりだね・・・」

 「カ、カヲル君!?」

 シンジの顔は蒼白になり、幽霊を見たような目つきでカヲルを見つめていた。無理もない。自分が殺してしまった、その後悔の念を持ち続けていた当の対象が目の前に現れたのだ。彼の手は、無意識のうちにアスカの手を握りしめていた。何事もなかったかのように入ってくる二人。カヲルは気軽そうに硬直しているシンジに声を掛ける。

 「元気そうだね、シンジ君。おや?どうしたのかな?」

 「き、君は・・・使徒だったんじゃないか・・・それに!」

 「かつてはそうだったわ。でも、今はただの人間よ。少々変わり者だけれど」

 「どういうこと?レイ」

 面識のないアスカが不思議そうに尋ねる。

 「あなたが自分の中に閉じこもっている間に、弐号機パイロットとして送られてきた・・・使徒、だったわ」

 「身も蓋もない説明だね、レイ。その後は僕から説明しよう」

 すっ、とカヲルが前にでる。その身のこなしは、ひどくしなやかであった。すらりと背が高くなった以外はほとんど変化を感じさせない。

 「あの後、シンジ君の未来を見たい、と念じていたらね・・・流れ流れて、母なる海から生まれ出てきたようなんだ。時間はかかったようだけどね」

 「じ、じゃあ、本当のカヲル君なの?」

 「その本当という定義に問題は委ねられるけど、おおむねそういえるだろうね、シンジ君」

 「そうか・・・良かった・・・心の仕えがとれたよ・・・カヲル君・・・」

 安堵の表情を浮かべるシンジ。長い間カヲルを殺したことがトラウマとなっていたのだ。

 「僕も君に会えて良かったよ。シンジ君、君は幸せになっているようだ・・・」

 「で、そのカヲルがどうしてレイと一緒に来たの?」

 アスカが当然ともいえる質問を投げかける。

 「一緒に住んでいるんだよ、アスカさん」

 「・・・カ、カヲル!」

 最近は感情を表すことも少なくなくなったレイだが、この時ははっきり見て取れるほど、顔を赤くした。

 「・・・カ、カヲルとは何でもないのよ。ただ、行く宛がないから、というから・・・」

 「その割には名前で呼んでるよね、綾波」

 シンジがにこやかにつっこみを入れる。

 「そういう冷たいこと言わないでおくれよ、レイ」

 カヲルはそう言いながら、そっとレイと腕を絡ませた。いやがるそぶりも特にない。

 「ううう・・・ついに綾波までも・・・独り身は俺だけか・・・」

 「そう悲観ばかりしていてはいけないわ」

 「リ、リツコさん!」

 「あ、リツコ・・・アンタも来たの?それにいつの間に?」

 「これぐらいのセキュリティが破れなくてどうするの?ねぇ、マヤ」

 「はい、先輩!」

 目を潤ませて直立不動の姿勢でリツコに寄り添うマヤ。

 「マヤさんまで・・・リツコさんに似てきたような・・・」

 「何か不都合でもあるかしら?シンジ君」

 「い、いえ・・・何も・・・ありません・・・」

 有無を言わせない視線がシンジを貫く。その視線にシンジが逆らえるはずもなかった。

 「ねぇ、シンジ。何かリツコ、変じゃない?」

 小声でアスカが話しかける。確かに目の光が怪しい。

 「予算が倍増してから、いろんな研究に手を出し始めたそうで・・・」

 「要は、マッド・サイエンティスト、ってことじゃないの?」

 「ふふふふ・・・その通りよ、アスカ」

 「リ、リツコ・・・聞こえてたの?」

 不気味な笑いに一歩引くアスカ。

 「科学者とは手段のためには目的を選ばず、スポンサーをだまくらかしても金を引き出して、とことんまで己の好奇心を満たす研究を続けるモノなのよ!」

 「目的のためには手段を、の間違いじゃないの?」

 「フフフ・・・どちらも当てはまるわよ・・・そうよね、マヤ」

 「その通りです、先輩!」

 「マヤも・・・イッちゃってるわね・・・」

 「ううう・・・そんなこと言わないでくれよ・・・」

 「あ、青葉さん、日向さん」

 「マヤちゃんが・・・何であんなに赤木博士になつくんだよ・・・」

 「洗脳受けたんじゃ、て言う噂も流れるほどで・・・」

 「「ふうぅ・・・」」

 「ちょっとそこのオペレータ二人!暗くなんないでよ!今日はこのアタシの誕生日なんですからね!」

 「ま、アスカの言うとおりで・・・明るく生きましょう、明るく。ね?」

 「そうだな・・・マコト・・・」

 「ああ・・・望みを捨てずに行こう・・・シゲル・・・」

 気を取り直す二人。苦悩はつきないようだが。

 ピンポーン!

 「ずいぶん人が来るわねぇ・・・」

 「全員集合、みたいなものだからね」

 ふと、言葉を交わす二人。にぎやかな室内は、さながら同窓会である。

 「シンちゃん、アスカ、元気してたぁ?」

 「アスカちゃん、シンジ君、久しぶりだね」

 底抜けに明るい声と、渋い大人の声が聞こえる。

 「加持さん!来てくれたのね!」

 「ああ、空港から直行でね。アスカちゃんの誕生日をすっぽかしちゃ悪いからな」

 「加持ぃ、私の誕生日の時は来てくれなかったくせに・・・それにアスカ、私はどうでもいいって言うの?」

 ちょっとすねたようにミサトがぼやく。

 「あらミサト、いたの?」

 意地悪くアスカが切り返す。

 「ちょっとそれはないんじゃないの?こうやってプレゼントだって持ってきたと・・・」

 「おいおい、葛城。ここまで俺に持たせておいてそれはないんじゃないのか?」

 にやにやしながら加持が指さした先には、重そうな包みが鎮座していた。

 「えーっ、もう加持さんこき使っちゃだめじゃない!ミサト!」

 「ふ、夫婦は一心同体って言うじゃない!」

 苦し紛れに言い訳を放つミサト。その一言がさらなる墓穴となる。

 「お、たまには良いこと言うじゃないか、ミサト」

 言うが早いか手を腰に伸ばし、引き寄せる。

 「ちょっと加持、人前ではべたべたしないでって言ってるでしょ!」

 「じゃあ、家だけで、かい?」

 加持の問いかけに微かに顔を染めて答える。

 「バ、バカ・・・」

 「あーら、お熱いことで。そう思わない、シンジ?」

 「そ、そうだね・・・アスカ」

 「今日のメインはアタシ、ということをみんなに見せつけなくちゃね」

 「ど、どういうこと?」

 長年の経験から予想しうることではあったが、微かな期待を持ってアスカに尋ねるシンジ。

 「キスして♪シンジ♪」

 「え・・・みんなが見てるよ・・・」

 「だからよ。・・・イヤ?」

 急に真顔になってシンジを見つめるアスカ。この澄んだ瞳にシンジが逆らえるわけがなかった。

 「そんなことないよ、アスカ・・・」

 周囲の集まる視線にもかまわず、二人は熱い包容と口づけを交わした。

 「ほぉ、せんせもやるのぉ」

 「ナイスシーン!」

 「だ、大胆ね・・・」

 三人三様の感想が漏れる。

 「・・・・!」

 ソファの隅でカヲルとぽつり、ぽつりと話していたレイが急にその動きを止めた。

 「そもそも誕生日というのは・・・どうしたんだい、レイ」

 「・・・・・何でもないの。何でも・・・・」

 「君もしたいんだね?」

 「・・・・え?な、何言ってるのよ」

 動揺するレイ。図星をつかれたのだろうか。カヲルがすっと顔を寄せ、ささやく。

 「・・・・そうじゃないのかい?レイ」

 自分の心にうそはつけないのか・・・素直にうなずくレイ。ゆっくりとカヲルの顔が迫ってゆく。

 「じゃ・・・・するよ・・・」

 見よう見まねで唇を触れさせるカヲル。レイは前に劣らず、頬を染めた。

 「!・・・・・な、何をするのよ・・・・」

 「だって、したかったんだろう?」

 「べ、別に、あなたとしたかったわけじゃ・・・・」

 「・・・・そう」

 さすがのカヲルもトーンが落ちる。カヲルの顔が見られないレイ。そっと、うつむく・・・

 そんな二人をよそに、会話は弾んでいた。

 「シンジ君・・・ずいぶん変わったわね・・・」

 「そ、そんなこと・・・あるかもしれませんね・・・ミサトさん」

 「昔なら、こんな場自体が苦手だったのに・・・ホント、変わるものね」

 「これも・・・アスカのおかげです。僕に自信を、持たせてくれたんです」

 誇らしげにアスカの肩を抱く。その精悍な顔つきには昔の気弱な面影はない。

 「ふーん・・・せいぜい尻に敷かれないようにね♪」

 「み、ミサトさーん・・それはないですよぉ・・・」

 語尾が小さくなる。やはり、シンジはシンジである。

 「あーら、このアタシがシンジを尻に敷くとでも言うの?」

 「今の行動みてれば、そう思うんじゃない?」

 「アスカちゃんの昔を知っていれば、なおさらかな」

 「あーん、加持さんまでぇ。そんなにアタシが強く見える?」

 「「「「うん!」」」」

 見事に全員がハモった。憮然とするアスカ。

 「今のアタシには・・・シンジしかいないの。今のアタシがいるのは、シンジのおかげなんだから・・・」

 顔に朱がさしたと思うと、再びシンジを抱き寄せ、唇を触れさせた。

 「ね、分かったでしょ?」

 「「「はいはい・・・」」」

 一人者の心には「けっ!」というつぶやきが飛び交っていた。

 「ねぇシンジ、これでもう全員そろったかしら?」

 「うーんと、後は・・・」

 その時、衝撃波とともに轟音が室内を揺るがした。

 ドーン!、キィイイイイ・・・

 「おお、20式超音速垂直離着陸戦闘機!NERVカラーだ!」

 ケンスケのデジカメが光る。ホバリングしながらゆっくりと部屋に近づいてくる。

 「おお・・・こんな近距離でとれるとは・・・感激だ!」

 ケンスケのつぶやきをよそに機体下部のハッチが開き、タラップを伝って二人が降りてきた。

 「シンジ。久しぶりだな」

 「シンちゃん、お待たせーっ!」

 「父さん、母さん!」

 「い、碇司令に、ユイおばさま・・・」

 アスカ回復の方をきいて駆けつけたユイのことをアスカはユイおばさまと呼んでいた。ユイの方からそう呼ぶように言ったのである。

 「冬月はラボに籠もりっきりでな。ユイと二人で抜け出すわけにもなかなかゆくまい」

 「まったく、ゲンちゃんたら素直じゃないんだから・・・」

 「その、ゲンちゃんという呼び方はやめてもらえないか、ユイ。部下の手前、示しがつかん」

 「もぉ、照れちゃって♪もっと素直になりなさい、ゲンちゃん♪」

 「オ、オホン。少々忙しくてな。残念ながらアスカ君の誕生日パーティーには出席できん。済まないが、これが私からのプレゼントだ」

 いつもの色眼鏡の向こうからアスカを見つめるゲンドウ。一通の封筒を取り出す。

 「後でユイから渡してもらう。楽しみにしておいてくれたまえ」

 眼鏡を指で押し上げ、シンジに近づきそっと、ささやいた。

 「シンジ、うまくやれよ。一生がかかっているのだ。今度はおまえが幸福になる番だ」

 「と、父さん・・・」

 「私は用があるのでこれで帰る。後で報告を頼む、ユイ」

 「はいはい。妙に恥ずかしがりやなんだから、ゲンちゃんは・・・」

 「ち、違うと言うに・・・」

 恥ずかしげに背を向ける。そして低い声でぼそっ、といった。

 「アスカ君・・・」

 「は、はい・・・」

 「シンジを・・・よろしく頼む・・・」

 「え・・・・・・は、はい!」

 振り返ることなくVTOLに乗り込む。その目には、満足げな光が宿っていた。

小さく、きらめきがこぼれた。

 

 キィィイイイイ・・・

 再びエンジンを吹かし、去ってゆくVTOL。視界から消えるまでの数秒間、皆が見送っていた。それぞれの感慨を胸にして・・・

 

 「何か、碇司令も変わったわねぇ・・・」

 「そうだね・・・少し、人間らしくなった気がするね」

 「あれがゲンちゃんの本当の心なのよ。私がいない間、あの人は冷たい仮面をかぶっていたのよ・・・いま、やっと少しそれが脱げてきたんだわ・・・」

 「ふーん、あれが仮面ねぇ・・・」

 「そうよ。ゲンちゃん、若い頃はかわいかったんだから・・・」

 そういって頬を染め自分の世界に浸るユイ。あきれ顔でアスカが見つめる。

 「ま、いいわ・・・シンジ、椅子までつれてって♪」

 微笑みかけながら甘える。この笑顔にも、シンジは弱かった。

 「うん、いいよ」

 華奢なアスカの体を苦もなく持ち上げる。そして大事そうに、抱え込む。

 「シンジ、アンタ力強くなったわねぇ」

 「だって・・・お風呂に入れたり、パジャマやシーツ取り替えたり・・・全部僕がやってたんだから・・・自然に力も付くよ」

 「そ、そうよね・・・ぼんやりと覚えてるけど・・・全く何で、看護婦に任せなかったの?」

 「人に・・・大事なアスカをまかせられる訳ないじゃないか・・・」

 熱いつぶやきに二人一緒に顔を赤くさせる。

 「シンジ君、女の子を口説くのがうまくなったな」

 「シンジ君、こいつみたいに女たらしになっちゃだめよ」

 「そ、そんなんじゃないですよ・・・」

 「そうよ、ミサト。だいたいシンジにそんな甲斐性ないわよ。シンジの言葉はね・・・本心から出てるんだから・・・口説き文句じゃないわよ・・・ね、シンジ」

 「ウン・・・意識してなんか、こんな言葉いえないよ・・・」

 ゆっくりと、壊れ物を扱うようにアスカを椅子に座らせる。手慣れたものだ。

 いつの間にか空は夕焼けに染まっていた。自動で部屋の照明がついたのにも気がつかないほど、皆は盛り上がっていた。

 「じゃあ、ローソクに火をつけるんで、電気、消しますよ!」

 照れ隠しか、シンジの声が響く。

 「やれやれ、おあつい夫婦だねぇ」

 「まだ結婚してないわよ、加持」

 「加持さん・・・そのことで話があるの・・・」

 照明の落ちて暗くなった室内でライターの揺れる炎が一つ、また一つと明かりを増やしてゆく。

 「ん・・・・何だ?」

 「・・・あたし、加持さんのこと、父親みたいに思ってました・・・だから・・・仲人、やってください・・・・」

 「・・・・そうか、分かった」

 加持が、ゆっくりとうなずく。うつむき、弱い声でアスカがつぶやく。

 「・・・・ありがとう・・・・」

 「ああ・・・」

 「・・・うーんと、準備もできたことだし、始めましょう!『はっぴばーすでーとぅーゆー・・・』」

 「へ、へたくそ!発音がなってないわよ!」

 「ご、ごめん・・・」

 「シンジ君・・・・それでも大学生なの?」

 「ミサトさん、僕、発音はあんまり得意じゃないんです・・・」

 「そうかしらねぇ・・・シンジ君もドイツ語覚えたら?夜の生活の選択肢、広がるわよん」

 「だっ!でっ!な、なにいってんのよ!」

 「一応、第二外国語はドイツ語とったんだけど・・・アスカ、今度ドイツ語教えてね!」

 「な、なにいってんのよっ!ミサトのいうことなんか、本気で取っちゃだめっ!!」

 「い、いや、その・・・そうだ、早くローソク消さないと」

 「う、うん・・・そうね・・・・・・」

 興奮さめやらぬアスカの息は荒かった。体は成長したとはいえ、心はまだ14歳+αである。

 「じゃ、皆さん、ご一緒に・・・『はっぴばーすでーとぅーゆー・・・』」

 「Happy birthday to you....」

 「はっぴばーすでーでぃあアスカー」

 「Happy birthday to you!」

 「え、ええっと・・・・ふぅぅぅぅ・・・・」

 わき起こる拍手のなか、皆の言葉がこだまする。

 「アスカ、20才の誕生日、おめでとう!」

 「おめでとう」

 「おめでと!」

 「おめでとさん!」

 「めでたいなぁ!」

 「おめ・・・でと・・・・・」

 「あ、ありがと・・・・みんな・・・」

 気の知れた仲間がみんなで祝ってくれる誕生日。今までなかったことだけに、少々ぎこちなかった。しかし、その顔は喜びに満ちあふれていた。

 「じゃ、じゃあ・・・早速プレゼントを・・・」

 そういって懐から小箱を取り出すシンジ。

 「・・・・・あ、な、何?」

 「ゆ、指輪だよ・・・婚約と、結婚、兼用で・・・いいかな?」

 一気に心拍数が上がるアスカ。手の上の箱とシンジの顔を交互に見つめる。

 「い、石はサファイヤ・・・アスカの瞳の色・・・病室で言ったじゃないか・・・」

 ふるえる手で、そっと箱を開ける。言葉が出ない。

 「やるじゃなぁい!シンジ君!」

 「女心が分かってきたんじゃないか、シンジ君」

 「せんせも、やるのぉ・・・」

 皆のつっこみに顔を赤らめるシンジ。恥ずかしげに、アスカの顔に目をやる。

 「し・・・しんっ・・・」

 サファイヤの瞳をにじませていた雫が、ぽろりとこぼれる。サファイヤの雫が・・・

 「アスカ・・・」

 近づき、アスカを抱きしめる。シンジの胸を濡らして涙を流す。

 「あ・・・シンジ・・・シンジぃ・・・」

 「アスカ・・・・愛してるよ・・・」

 シンジもつられてか、涙ぐむ。

 その二人の行動に動かされた、別の二人もいた。

 「うつろな目だね、レイ」

 「・・・え、何・・・?」

 「心が痛いね。感じるよ」

 「え・・・・そう、そうね・・・・」

 「痛いなら、痛いと認めればいい。泣きたいなら、泣けばいい。・・・・そうだと思うよ」

 「で、でも・・・・こんなところで・・・・」

 そうは言いながらも、目の前でシンジがアスカを抱きしめているのには、耐えられなかった。

 「・・・・ちょっとごめん・・・胸、借りるね・・・・・」

 そういってカヲルにしがみつくレイ。少々驚きながらも、カヲルはレイの背中を軽くさする。

 「あ、あぁ、いいよ・・・・好きなだけ、泣くといい・・・・」

 カヲルの胸に、透明なシミが広がっていった。赤い瞳から、こぼれる・・・

 

 「し、しんじぃぃ・・・・あ、あたし・・・あたしっ・・・」

 歓喜の表情を浮かべ、涙が止まらないアスカ。シンジの背中に手を回し、離すまいと抱きしめる。その心が通じたかのように、シンジも抱きしめ、声をかける。

 「アスカ・・・絶対に離さないよ・・・・」

 「あぁ・・・シンジ・・・ありがとぉ・・・・」

 

 「若いな、みんな」

 「そおねぇ。何か、居づらいわねぇ・・・」

 「わしらも、そうですがな、ミサトはん」

 「あーら、あなた達はいいんじゃない?」

 「そ、そないなこと・・・」

 そっと、ヒカリがトウジの袖を引っ張る。何もいえなくなるトウジ。

 「うっうっ・・・僕たちに春は来るんでしょうか・・・」

 「本命が・・・ああじゃぁな・・・」

 二人の視線の先には、涙にむせび泣くマヤがいた。

 「せ、先輩・・・いいものですね・・・愛というのは・・・」

 「そうよ、マヤ・・・あなたも探しなさい・・・」

 (ただし、私の後にね・・・)リツコ、心の叫びであった。

 「くっ・・・俺には誰も・・・ううううう・・・」

 目標となる相手さえもいない、ケンスケが血の涙を流していた。

 「相田君・・・作りましょうか?」

 「へ?作るって、何を?」

 「現在、試作中のアンドロイドのモニターになってくれないかしら・・・性格は好みに合わせて調整するわよ」

 「そ、それって・・・」

 「ふふふ・・・顔も思いのままよ・・・自立型人工知能搭載アンドロイド家政婦『マイハニー(仮称)』、・・・これで一儲けよ・・・」

 「先輩・・・不潔です!」

 「マヤ・・・人はきれいなままで生きてゆくことは出来ないのよ・・・」

 「んもう、リツコちゃんたら、またよく分かんないもの作ってるわねぇ」

 「ゆ、ユイ先輩・・・こ、これは、そ、その・・・」

 「大丈夫。ゲンちゃんには内緒にしておくから」

 「くっ・・・また弱みが・・・」

 「ふふふ・・」

 にこにこ顔のユイ。実はNervの最高権力者かもしれない。

 

 「あ、アスカ・・・あの・・・お料理、さめないうちに、食べない?」

 しばらく抱き合っていた二人。ふと、気づいたようにシンジがいう。

 「う、ウン・・・」

 感情を出しきったかのようにアスカがうなずく。アスカが意識を取り戻して以来、弐度目の涙であった。

 「腕によりをかけて作ったんだから。アスカのために・・・」

 「アリガト、シンジ。・・・いっただっきま〜す!」

 明るい微笑みを浮かべるアスカ。心の底からの、微笑み・・・

 

 「私たちも、食べるわよ?おなかぺこぺこよ〜」

 「みっともないわね、ミサト」

 「それは悪うございました。加持ぃ、あの包み、持ってきてぇ」

 「はいはい、お姫様の頼みなら、ってね」

 ごつい包みを玄関から持ってくる。一応、プレゼント用の包装紙はかかっているが、どうみても誕生日プレゼントには見えない。

 「はーい、アスカ。これが私からのプレゼントよ♪」

 「何これぇ・・・まさかビール、とかじゃないでしょうね?」

 「うっ・・・・」

 いきなりの図星であった。確かに、ビール一ケースの大きさである。

 「そ、そうよ。アスカのためにドイツビールを取り寄せたのよ!」

 「自分のため、の間違いじゃないの?」

 意地悪くアスカがつっこむ。

 「そ、そんなことは・・・少しはあるけど」

 「ま、いいわ。あまり飲んでいなかったしね。アリガト、ミサト」

 「ンなら、わいからもプレゼントや」

 白い紙袋に大学のロゴがしっかりと入っている。どうみても大学生協で買ったものだ。

 「・・・いったい何?開けるわよ・・・ジャ、ジャージぃ?」

 「文句あるんかいな?ウチの大学の指定ジャージやで!」

 「そういう問題じゃ・・・」

 「しかもシンジとお揃いやで!」

 「そうなの?ありがたく受けとっておくわよ♪」

 「急に態度変えおって・・・現金なやっちゃ」

 「でもシンジって体育系じゃないわよね・・・何で大学のジャージ持ってるの?」

 「あ、去年トウジから・・・」

 「やっぱあんたが元凶じゃない!・・・ま、トウジらしいといえばそうだけど・・・」

 ジト目でトウジを見る。

 「実用的でいいやろ!わいにはそれぐらいしか思いつかんのや!」

 「もっと女の子が喜ぶような物覚えなさいよ・・・ヒカリにジャージなんかプレゼントしてるんじゃないでしょうね?」

 「うーん・・・ジャージはもうプレゼントしてもうたから・・」

 「もう、加持さんにでも教えてもらいなさい!で、相田は?」

 あきれたように言い捨て、ケンスケの方をみる。そこには、不敵な笑いを浮かべるケンスケの顔があった。

 「ふふふ・・・よくぞ聞いてくれました!じゃーん!」

 A2ほどのサイズであろうか、巨大なつつみを差し出す。

 「何これ?絵か何か?・・・え!」

 そこには、車椅子に乗ったアスカとシンジのキスシーンがしっかりと写っていた。

 「自信作だよ・・苦労したぜ。バックを違和感なく合成するのには。出力センタに持っていったときはさすがに恥ずかしかったけどな」

 背景は殺伐とした病院の中庭ではなく、桜の花びらが舞う、お花畑であった。

 「あ、ありがとう・・・早速飾らせてもらうわ・・・」

 あのときを思い出したのか、頬を赤くしながら壁に掛ける。

 「良く撮れてるわね・・・今度からアタシをとったらデータよこしなさいよ?」

 「ああ。そのかわり、データは独占販売させてもらうぜ。未だ、人気衰えず、だからな」

 「全くもう、商魂たくましいんだから・・・」

 ぼやくアスカ。誰にも聞こえないように、ぽつりと漏らす。

 「アタシはシンジにだけ見てもらいたいんだけどな・・・」

 加持がすっと立ち上がると、懐から取り出した物を渡す。

 「アスカちゃん、これが俺からのプレゼントだ」

 「加持さんのことだから、期待してるわよ・・・あっ、きれい!」

 差し出した小箱の中身は、小さなルビーをあしらったイヤリングであった。趣味の良さが伺われる。

 「気に入って、もらえたかな?」

 「もちろんよ・・・早速つけるわ・・・」

 長くのびた栗色の髪の中に隠れるように、赤い輝きを放つ。初めての、イヤリング。

 「ありがとう、加持さん。さっすが、女心がわかってるわね♪」

 「ははは・・・それほどでもないさ。女性は常に向こう岸の存在。重要なのは、いかに近づけるか、ということだ」

 渋さをさらに増した、声が語る。長年の経験がものをいう。

 「あら、リョウちゃん。あなた、結婚してからも女性にコナかける気?」

 「長年の習性でね。でも、今愛してるのは葛城だけさ」

 さらっと、いう加持。吹き出すミサト。好対照である。

 「アンタねぇ、人前で堂々とそういう子というのやめてよ!」

 まきおこる夫婦口げんかのさなか、リツコが怪しい小箱を差し出す。

 「プレゼントよ、アスカ。私の開発した新薬よ」

 気味悪そうに、そっと箱を開けると、猫のマークの小瓶が二つ、入っていた。

 「何の薬?」

 怪しみながら訪ねる。毒々しい赤と青の液体がそれぞれの瓶に入っていた。

 「青がシンジ君用、赤がアスカ用よ。夜、寝る前に飲んでね」

 「ちょっと、飲み方はいいからどういう薬か教えなさいよ!」

 「ふふふ・・・秘密よ。決して体の害になるような薬じゃないことは保証するわ」

 「怪しいわねぇ・・・飲めばわかるっていうの?」

 「そういうこと。ふふふふ・・・ほーっほっほっほ!」

 すでに酒が入っているらしく、暴走しかけているリツコであった。

 その後もプレゼント攻勢は続いた。ヒカリの手編みマフラー、マヤの自作家計簿ソフト、

マコト・シゲルのオリジナルソング・・・そしてついに、ユイの番となった。皆の視線が集まる。

 「何だと思う、アスカちゃん?」

 「うーん・・・あの司令のプレゼントねぇ・・・想像もつかないわ。シンジはどう?」

 「ウ、ウン・・・僕もわからないよ・・・」

 情けない返事をするシンジ。ここ数年、彼の誕生日にはユイがプレゼントを持ってきていたが、完全にユイの趣味と思われる物ばかりであった。まさか、花柄エプロンをゲンドウがプレゼントに選んだとは思いがたかった。

 「はいこれ。開けてみて」

 ユイは厳重に封のかかった茶封筒を手渡した。今やあまり使われることもない、貴重品である。

 「これは・・・マンションの権利証?」

 「そうよ。二人でこの部屋では手狭でしょう?ゲンちゃんがそういって最上階に新居を用意してくれたのよ♪」

 「えっ・・・」

 「と、父さんが?・・・」

 「間取りは私が考えたのよ、アスカちゃん。気に入ってもらえたかしら?」

 「え、ええ・・・とっても・・・・ありがとうございます、ユイおばさま・・・ああ、碇司令にもお礼、いわなくちゃね・・・」

 「アスカちゃん、いいお嫁さんになってちょうだいよ・・・」

 「は、はい・・・」

 またもや、顔を赤くするアスカであった。心はすでに結婚式へ・・・

 

第参話「宴」に続く



phoenixさんへの感想はこ・ち・ら♪   


管理人(その他)のコメント

アスカ「phoenix、アンタはえらいっ!!」

カヲル「・・・・じぶんがシンジに思われているからって、ずいぶんご機嫌なようだね」

アスカ「そーよ、それのどこが悪いのよ(開き直り)

カヲル「まあ、僕も久しぶりに話に登場したからいいんだけどね・・・・でも・・・・」

アスカ「相手がレイだと不満だっていいたいんでしょ? いいかげんまっとーな道に戻りなさいよね、アンタ」

カヲル「まっとうな道? 僕にとっては男も女も同価値なんだよ。愛すべき対象としてはね」

レイ 「カヲル・・・・やっぱりあなた、私よりも碇くんを・・・・」

カヲル「レイ、ま、ま、待つんだって。これはあくまで管理人の世界の一つの可能性であって、決してこの物語の中では、だね・・・・あせあせ」

レイ 「あなたのマサカリ・・・・借りるわよ・・・・」

アスカ「・・・・ええっ?」

レイ 「たまには、わたしもやることをやらないと・・・・えいっ」

 ぶんっ! どかっ!!

カヲル「うげえっ!!」

レイ 「・・・・さよなら・・・・」

アスカ「うわちゃーっ。し、素人はこれだから・・・・マサカリで殴るときでも、加減ってものを知らないから・・・・(汗」


続きを読む
前に戻る
上のぺえじへ