2017年、スペイン
 シンジは演奏会のため、ここに滞在している。もちろん、綾波マネージャーも一緒だ。
 あれからネルフレコードでCDを発売したシンジは、なぜかソロのチェロなのに世界的
に有名になってしまい、今では世界のスターにまでなっていた。
 しかし、本人の希望で顔がわからないように今まで演奏して来たのだが、今回初めて顔
を出すというイベントであった。
 シンジは嫌がったのだが、クィーンベルサイユと言うこれまた世界的に有名な演奏団と
一緒と言うことで、シンジは承諾した。
 そして、スペインにて合同演奏会が行われることになったのだ。

 シンジは私も付いていくというアスカをなんとか説得して来ているわけだが・・・

 シンジは携帯電話に手を伸ばして通話ボタンを押した。
 何個かボタンを押すがすぐまた通話ボタンを押して切ってしまう。

「どうしよう・・・」

 彼は悩んでいた。
 時間は11時をまわろうとしている。
 どうしようもない寂しさが彼に襲いかかっていた。

「アスカに電話しようか・・いや今、日本は早朝のはずだ。だからアスカは絶対に寝てい
る。こうなればやっぱり・・・」

 次にホテルの内線電話の受話器をとり、番号を押す。

 テュルルルルルテュルルルルル・・・・・

 何度目かの呼び出し音の後、彼女は出た。

「はい、201号室ですが・・・」
「あ、綾波?」
「碇さん?どうしたんですか?」
「あのさぁ・・・・」

 それが、後に彼の一生の不覚になるとは思いもよらないであろう。


 日本、数時間前。
 アスカは、シンジのいるヨーロッパへ旅立ちの準備をしていた。

「いきなり行って驚かせてやろう・・・」

 クシシと小悪魔の笑みをもらしながら、ボストンバッグに着替えやら日常道具を詰め込
んでいる。

「きっとビックリするぞ・・・」

 またもや小悪魔の笑みをもらすとバッグを持って飛行場へ急いだ。
 こんな時間でもあるためか、飛行場はガラガラに空いており、飛行機内も空席が目立つ。
アスカは、一番後ろの窓側の席に座って、眠りについた。
 2時間も飛べば、スペイン到着である。



 再び、スペイン。

「碇さん・・・ダメですよ・・・アスカさんに怒られます」
「お願い綾波。こうしているだけでいいから・・・」

 2人は抱き合ってベッドに入っていた。
 裸ではなかったが、布団をかぶって顔だけ見えているだけに、どう勘違いされてもおか
しくはない。
 しかし、シンジはそこで終わらなかった。
 レイも、そこで終わらせてほしくはなかったのかもしれない。

「・・・・・・・・」

 シンジが無言でレイを見つめる。
 覚悟したのか、レイは目を閉じて、シンジを求めた。

「ん・・・・・・」

 レイの唇は柔らかく、それでいてしっとりと絡みついてくるような感触がある。
 シンジはたまらなくなってしまう。
 しかし、後一歩の所で、レイの顔とアスカの顔がだぶって見えてなえてしまうシンジ。

「・・・このまま隣で寝ていますから」

 レイはそんな彼を気遣って、そう言うときは決まって隣で寝るようにしていた。

「・・・ごめん」

 何故か謝ってしまうシンジ。
 その日は、何事もなく過ぎていこうとしていた。


 その頃、アスカは飛行場で立ち往生していた。
 スペインに到着したはいいが、人でごったがえしているために前にも後ろにも進めない
状態になっており、ただ人の流れに付いて行く事しかできなかった。

「まったくもう、何なのよこの人、人、人は!」

 流れに逆らうことなくアスカは、バスに乗り込んでしまう。

「ちょっと、アタシは乗らないのよ!」

 しかし、無情にもバスのドアは閉まってしまう。

「あぁーん!降ろしてぇ!」
『本日は、イタリア行き直通バスをご利用いただき、誠にありがとうございます。当バス
はイタリアまで約2時間で・・・』
「え?直通??てことは・・・これってイタリアまで停車しないってこと?」

 一人で騒ぐアスカ。

「いやだいやだ!!アタシは降りる!」

 外を見ると、景色が飛ぶように過ぎていくのが目に入った。

「え?」

 気が付いたであろうか、いくら何でもスペインとイタリアを2時間で行こうなんて非現
実的な事を書いてしまった作者はこの時後悔している。
 と、今更言っても遅いのだが、この時バスは直行でイタリアに向かっていた。
 今気が付いたが、時速800ぐらいないとダメ?

「シンジィーーーー!!!」

 アスカの叫びがバスの中に響く。
 しかし、無情にもバスはスペインを離れてしまう。



 同時刻、スペイン。
 その頃、シンジとレイは、シンジが演奏をする会場の下見に来ていた。
 ふと、シンジはアスカに呼ばれたような気がして振り返る。

「どうかしましたか?碇さん」
「いや、アスカに呼ばれたような気がしてね・・・」
「アスカさんに?」
「うん・・・」
「アスカさんは日本に居るじゃないですか・・・なんなら電話したら?」
「そうだね・・・ちょっと待ってて」

 そう言うと、シンジは携帯電話で日本に電話をかけた。

「・・・・・・・あ、アスカ?」
「はい、碇です。ただいま留守にしておりますので、発信音の後に伝言を入れておいてく
ださい・・・・ピー!」

 プチ!

 シンジは遠慮がちに電話を切る。どうやら留守録が苦手らしい。

「居なかったよ、アスカ。留守電になってた」
「そうですか。一応、支配人さんの方には話をしておきましたから、今日は帰りましょう」

 演奏家たるもの体調には気を付けておかないといけない。

「うん・・・」

 シンジは、もう一度声が聞こえた方を見ると、

「幻聴か・・・今日は電話しようかな・・・」

 ポツリと呟いて、レイの所に走っていく。



「イタリアに着いたのはいいけど、スペインまでどうやって帰ればいいのかしら・・・」

 アスカはローマでぶーたれながら、途方に暮れていた。

「お金もさっきの直通バスに取られちゃったし・・・」

 ふと、電話が目に入る。

「やっぱり電話するしかないわね・・・」

 公衆電話の受話器を取ると、シンジが泊まっているホテルにかける。

「・・・・あ、すいません。そちらに碇シンジという人が泊まっていると思うんですけど」
「はい、泊まっていますが・・・おつなぎしましょうか?」
「お願いします」

 時間はもう夜の7時をまわっていた。
 あまりの観光客の多さにアスカは目が回って公園で寝ていたのだ。
 アスカは起きているかなと思いながら保留音が切れるのを待った。

「もしもし?」

 眠そうな声が受話器から聞こえてくる。

「あ、シンジ?アタシ」
「え?・・・・・・・・・・アスカ!?」
「なによ、その驚きは?」
「いや、アスカから電話をかけてくれる事なんてあんまりないから・・・」
「そうね」
「どうしたの?なにかあった?」
「それがね・・・・」

 言いかけてアスカはやめてしまう。

「それが、一時家を留守にするからと思って・・・」
「うん、さっき電話したときも留守電だったよ」
「そ、そう・・・」
「それだけ?」

 アスカはピーンときた。

「シンジ、アンタまさか。そこにあの女が居るんじゃないでしょうね?」
「え?あの女って、綾波のこと?」
「そうよ!」
「い、いないよ・・・」

 焦ってどもってしまうシンジ。
 やっぱりねと言う顔をして呆れるアスカ。

「やっぱり、今から行くわ。高速タクシー使うからお金用意しておいて」
「えぇ?今から行くって?高速タクシー?今どこからなのアスカ?」
「ローマよ!」

 ガチャン!

 勢いよく電話を切るアスカ。
 シンジの額から大粒の汗が流れる。
 とにかくシンジはレイを起こして自室に帰ってもらおうと思っていた。

「・・・・・・綾波?アスカが今から来るって・・・」
「アスカさんが?どうしましょう・・・」
「高速タクシーって言ってたから、5分とかからないよ」

 この時代の高速タクシーというのは、自動車タイプの高速飛行機で、マッハ10で飛ぶ
こともできる。
 乗客及び運転手は別空間で仕切られており、外からのGを受けないすぐれものだ。

「はやく、自分の部屋に!」

 テュルルルルルテュルルルルル・・・・

 その時、部屋の電話が鳴り響く。
 ハッと一瞬止まる2人。

「も、もしもし・・・・?」
「203号室の碇様ですか?ただいま碇様に面会が来ていますが」
「そ、その人の顔は怒ってる?」
「は?いえ、そうは思えませんが・・・」
「その人の名前は?」
「はい、葛城ミサトと言っておられますが」
「ミサトさん?どうして・・・ま、いいや待っててもらっていただけますか?」

 アスカじゃなかったと安心したのかシンジはフロントに降りていった。
 しかし、そこに待っていたのは眉間にしわを寄せているアスカだった。
 シンジは逃げたかった。高速タクシーのお金を渡して逃げたかった。
 しかし、

「シンジ、こっちこっち!」

 やけに優しい声のアスカ。こう言うときのアスカは一番怖い。

「や、やあ。アスカ・・・」
「シンジ、取り敢えず。高速タクシーにお金払ってきてね」

 ニッコリ笑って言うアスカ。シンジにとっては大魔王の笑いに見える。

「うん・・・わかったよ・・・」

 苦笑いを浮かべてシンジは高速タクシーに料金を払った。

「さてと、シンジ。部屋に行きましょうか?203号室だったわよね」
「う、うん・・・」

 有無言わさず、シンジの部屋に行くアスカ。

 さて、彼の運命やいかに!!


作者と、チルドレン達による後書き OHCHAN:ついに続き物が始まりました!! アスカ:演奏家シンちゃん? シンジ:ぼくってそんなにチェロが上手かったかな・・・ OHCHAN:いいんですよ、上手いって事になっているんですから・・・ アスカ:でもなんだかドロドロになってきてない? OHCHAN:そうだね・・・前作が中途半端だったからね・・・ アスカ:そうね、ある人から言われたもんね。 シンジ:誰から言われたんですか? OHCHAN:いいじゃないそんなこと・・・ シンジ:ともかく、つづくになったんですね・・・ アスカ:自分のHPの小説も書かないで何やってるのよ。 OHCHAN:ギク!その事には触れないでください。 シンジ:精神合体はどうなっているんですか? アスカ:宇宙戦士は? OHCHAN:くそ!えーい!パチン!!  OHCHANが指を鳴らすと、お約束の亜空間がシンジ達の足元に出現する。 アスカ:ちょっと!自分が不利になるといつもこれなのね!! シンジ:逃げちゃダメですよOHCHANさん!!  亜空間の中に消えていく2人。 OHCHAN:ふぅ・・・ レ イ:OHCHANさん、レイちゃんシリーズ・・・ OHCHAN:ギク! レ イ:ふふふふふふふふふふふふ・・・・・  その後、OHCHANは3日後に保護された。 同 僚:おい、OHCHAN、小説の方どうなったの? OHCHAN:小説? 同 僚:なんだよ、書いてたじゃないか・・・忘れたのか? OHCHAN:いや、知らないんだ。僕は多分、2人目だから・・・  OHCHANの運命やいかに!!


OHCHANさんへの感想はこ・ち・ら   


管理人(その他)のコメント

カヲル「まず、コメントの前に管理人から一言お詫びを申し上げます。OHCHANさんの前作において、感想の送り先を着けることを忘れておりました」

アスカ「これも全て管理人の不手際。この場を借りて、無能な管理人に変わってお詫びします。ついでに、制裁の一発を読者のみなさまに変わって!」

どかばきぐしゃっ!!

カヲル「あうう。3発も殴るなんて・・・・」

アスカ「ふん、細かいことは気にしないの。さーて。シンジ、かもーん♪」

シンジ「あ、あれっ? こ、ここは・・・・いつの間に僕はコメントなんかに出てってはううっ!! あ、アスカ!!」

アスカ「にこにこにこにこ(^_^#)」

シンジ「どきどきどきどき(-_-;)」

カヲル「じいいいいいいい」

アスカ「アタシの言いたいことは分かってるわね」

シンジ「・・・・はい」

アスカ「じゃあ、そのことについてこれからふたりじっくりとお話ししましょうか」

シンジ「・・・・・・・・・・・・はい・・・・・」

カヲル「・・・・シンジ君、合掌・・・・・」


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