神話を創りし者
myth of children
第参話 賭け
司令室
そこには二人の人がいた。
「何のようだ?」
「・・・・・・・・・・」
「用が無いのなら出て行け、シンジ」
「・・・・・・・・・・」
「出て行けと言ってるだろう」
「・・・・お久しぶりですね。碇司令」
少年は聞こえるかどうかという、か細い声で微笑みながらそう呟いた。
それは明らかにシンジの声ではなかった。
「まさか・・・・そんな・・・ばかな」
珍しくゲンドウは動揺を表に出していた。
「どうかしましたか?」
「フィフス・・か・・・・」
「さすが碇司令、ご聡明なことで。」
皮肉の言葉を投げかけ続ける少年は人懐っこい笑顔を浮かべた。
それはまさに5th・children−渚カヲルだった。
暫くの沈黙の後ゲンドウは質問を投げかける。
「何故、おまえがシンジの体にいる?おまえは使徒として死んだはずだ。」
予想していた質問に再び微笑む。
「確かに僕は死んだ、いや死んだと思っていた。そしてダミーの体に魂が移るんだ
そう思った・・・・・。ゼーレが僕を死なせてくれるとは思っていなかったからね。
だけど初号機につぶされる前に取り込まれたんだよ。コアをね・・・・・
何故だかはわからないけどね。考えてみるとそれはユイ氏の意志だったのかもしれないな。
彼女はこうなることが分かっていたような気がする・・・・。
そしてあなたは愚かにも自分の計画を実行させたいがために瀕死のシンジ君を初号機に乗せた。
たしかにあのまま病院に連れて行けば間違いなく死んでいたけどね、その点から言えば、
あなたの行動は敬意に値するよ。
だけどシンジ君を引っ張り出すときにおまけがついてきたんだ。シンジ君の身体がLCLに溶け
再構築する一瞬の間に僕のコアが入り込んだ。
・・・複雑な気分だったよ。また会え、一緒になれた嬉しさと
シンジ君の心を大きく占めていた僕を殺させてしまった自分に対する嫌悪感がね、
せめぎあうんだよ。
そしてシンジ君の体に僕がいることを話そうかどうかもね。
受け入れてくれるのだろうか?それともって。
苦しんでいるのに・・・自分が嫌われたくないって言う理由で声をかけれない。
そんな自分が嫌いになるし、なぜかほっとする。
自分の心がいくつもあるんだ。そして迷う。人ってこんなものなんだって分かった。
そしてそれを喜んでいる自分。
何とかしたい・・・・・
でもこのまま時間がシンジ君の苦しみを忘れさせてくれれば・・・・
いつも答えが違うんだよ。おもしろいよね?人の心は。
だけどシンジ君の喜び、悲しみ、戸惑い、決心、愛、憎しみ、相反するの物ほとんど
が碇司令、あなたに対する物だったと分かったとき、あなたを恨み、そして嫉妬した。」
ゲンドウは口元で手を組み黙っている。が、明らかに目線が合うのを避けている。
「だから僕は・・・・・」
「いいよカヲル君。そこまでいい」
シンジの口からもう一種類の声が出てカヲルの声を止めた。
『少し雰囲気が違うが間違いなくシンジの声だ。』ゲンドウはそう思い顔をゆっくりと上げ
自分の息子の顔を見つめた。
『変わった』そう思った。
「・・・父さん・・・・」
不意にシンジが声をかける。
「僕は聞いたんだ。カヲル君から・・・ネルフ、ゼーレ、補完計画、母さんのこと
父さんのこと・・・・・全て、そう全てだよ・・・・・・・。」
「それがどうした」
ゲンドウは相変わらずの無表情に顔を戻し問いた。
「補完計画をやっちゃいけない。
・・・父さんは信じてるの?
すべての人の心の壁を取り壊し心の隙間を埋めあう。そんな事が出来るって。」
「おまえには関係ない」
質問には答えず言い放つ。
「答えて」
「・・・・・・・・・・」
「答えてよ。そのためにトウジも、トウジの妹も、カヲル君も、綾波も・・・・そ
んな馬鹿げたことのために、そんな夢見ごとのために傷ついていったの?」
「馬鹿げてなど、ましてや夢見ごとなどではない。」
「どうしてそんなことが言えるんだよ?」
「・・・・・・・・・・」
「・・・母さんも否定したよ。補完計画はやっちゃいけないって。」
「!?」
心に波紋が広がる。
「母さん泣いてたよ・・・・泣いて頼んだ・・・僕に・・・あの人を止めてって
今でも泣いてるよ・・・・父さんのために泣いてるんだよ。」
「やる必要があるのだ。(そう、ユイに再び会うためには)」
「・・・・・・・・補完計画無しでも母さんに会えたら?
ちゃんとサルベージできるとしたら?」
ゲンドウは答えない。答えられない。
「分かったよ・・・・僕には父さんを救えないんだね。」
自嘲気味に呟く。
暫くのときが流れる。
「母さんに会いたい?」
突然問う
その言葉にゲンドウは少なからずショックを受ける。
『会いたい』『会えるわけが無い』
「母さんに会いたくない?」
もう一回
「もし会いたかったら・・・・・三十分後、初号機のケージにきて。来なければ二度とあえない。
僕が補完計画の敵にまわるからね・・・・」
「本当に・・・・会えるのか?」
ゲンドウは聞かずにいられなかった。
「天使は嘘をつきません・・・・会ってから補完計画の有無を決めるのも良いと思う
時間はないけどね」
・・・それはシンジとカヲルどちらの言葉だったのだろうか。
「先に行かなくちゃならないところがあるので、これで失礼します。
とう・・・碇司令」
ゲンドウを分岐点に立たせた彼の息子はドアから闇の方へと歩み出た。
病室・303
『カヲル君、少し寝ててくれない?』
『ご安心ください、あなた様のお姫様との語らいを私のような従者が邪魔を出来るとは
少しも思っておりません。』
・・・・おどけた態度でいつも自分の不安を打ち消してくれる。
優しく、そして強く悲しい存在、そしていつもそばにいてくれる。
『ありがとう』
『どういたしまして。』
コンコン
「入るよ。いい?」
「ごめん、返事がないから勝手に入ってきちゃった。」
「・・・・・怒ってくれないんだね。」
少し残念そうに呟く。
「ここに来るとさ・・・・自分のいやな顔を見せられてる気がする。
昔のさ、自分ばっか可愛がって・・・・自分だけ守って・・・存在を肯定して欲し
くて・・・・・まぁ今もあんまり変わらないけど・・・・でもね一つだけ目標が出来
たんだ。
そしたらね、何故か生きていたくなった。どんなことをしてでもね。
不思議だよ、今の僕ならお腹がすいたらミサトさんのカレーでも食べれる気がするんだ。」
(・・・・反応なし・・・か)
まっ、たしかに面白くないジョークだけど。
「だから・・・だから生きる意志を持ってよ・・・お願いだから・・・
僕をこれ以上泣かさないでよ・・・。」
「ごめん、今のアスカにこんな事言っているようじゃ駄目だよね。でも、たとえどんなこと
だったとしても生きる意志がなくちゃ駄目なんだ。」
(あと十分か・・・・)
シンジは左手でそっとアスカの左手首をいとおしそうに持ち上げる。
そして
薬指を
みつめながら
軽く
くちづけをする。
(指輪を渡したかったんだけどね)
右手を握り締める。
緩める
握り締める
緩める
握り締める
緩める
そして思いっきり握り締める。
「僕はもう逃げないよ」
ゆっくりと左手をおろし
右手で髪を優しく撫でる。何回も、何回も。
その手を髪の毛にそっておろしてゆく。
耳
頬
唇
顎
そして首へ
左手を右手に重ねる。
何も反応を示さない。
「・・・逃げちゃ駄目だ」
力を込める
アスカの顔が歪む
シンジはゆっくりとまるで愛の言葉を囁くかのように言う。
笑顔で、透き通ったとても奇麗な笑顔で。
「死ねよ、アスカ」
うーん別にアスカが嫌いなわけじゃないんだが?(笑)
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第四話・光りあれ 次回もサービス、サービス
By armchair detective
管理人(その他)のコメント
アスカ「シンジぃ!! なによあの最後の台詞は!!」
シンジ「そ,そんなこといわれたって,ぼくは全然知らないよ! あんな事言った覚えは,ぜ,全然ないんだから・・・・」
アスカ「言い訳無用! アタシの首を映画に続いて締めたむくい,きっちりとうけてもらうわよ!」
カヲル「いやぁ,シンジくんもついに君を邪魔者に思って,排除する事にしたようだね」
シンジ「そ,そんなことはないって!!」
カヲル「いやいや,別にそれが自然な成り行きなんだから,否定するようなことはなにもないって」
シンジ「だからちがうっていうのに!! カヲル君,誤解を招くようなことを言わないでよ!」
アスカ「そうなの? シンジはアタシが邪魔者なの?」
カヲル「そそ,そのとおりさ」
アスカ「・・・・そう・・・・そうなの・・・・」
シンジ「そ,そんなことないに決まってるじゃないか! 僕が今まで何度,アスカがいてくれてよかったと思った事か・・・・」
アスカ「シンジ・・・・」
カヲル「いやはや,シンジくんもなかなか言うようになったね.むかしは真っ赤になって気の利いた言葉の一つもいえなかったくせに・・・・って,なにを僕のことをにらんでいるのかな?汗」
アスカ「何すっとぼけた顔してにこにこ馬鹿笑いしているのよ.アンタがよけいな話をしたせいで,アタシはひどく傷ついたのよ! このむくい,はらさずにはいられないわ!!」
カヲル「結局,こうなるのかぁ・・・・涙」
どかっばきっぐゃっ!!
アスカ「むー,まだいまいちすっきりしないわね・・・・シンジ,これからちょっとつきあいなさい!!」
シンジ「な,なに?」
アスカ「憂さ晴らしのお買物よ! あたしに荷物を持たせる気じゃないでしょ!!」
シンジ「あ,う,うん・・・・わかったよ・・・・」
カヲル「デ・・・・デートにさそいたいならそう言えばいいのに・・・・まったく,意地っ張りなんだから・・・・」
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