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特別企画
バレンタインデー・キッス "結の巻"






そして、放課後。
ようやく待ちに待った放課後。

「さ、行くわよ! シンジ!」
「え? 行くって? わ、そんな引っ張らないでよ」

そんなシンジの抗議に耳も貸さない。
2−Aの教室から覗く生徒達の顔には、
不思議なモノを見たような、何ともいえない表情が浮かんでいた。
そんな中でレイとマナは、微苦笑を浮かべて2人を見送っていた。

アスカはシンジの手を引っ張りながら、ズンズンと廊下を歩いて行く。
その迫力に行き合わせた生徒達は、みな道を譲ってしまう。

「ネ、何処行くの?」
「・・・・」

何を聞いても、アスカは返事もしない。
シンジは諦めて、おとなしくアスカの後をついて行くコトにした。





やがて2人は、屋上に立っていた。
風もなく、穏やかな陽射しが雲の合間から注いでいる。

(誰もいないわ! らぁっきぃ〜!!)

アスカは心の中で呟くと、シンジの方を振り返った。

「?」

そこには、小犬のような瞳でアスカをみつめているシンジがいた。
その視線にアスカは、今シンジと2人っきりなんだ!
というコトを急に意識しだした。
すると、先程までの強引なまでの行動力は突然影をひそめ、
1人の恋する乙女になっていた。
アスカは真っ赤に染まった顔を伏せ、黙り込んでしまう。

(どうしたんだろう? 急に・・・・)

シンジにとって、意外な状況だった。
さすがにチョコを渡すために連れ出されたのは分かる。
でも、アスカのことだから、ぶっきらぼうに、
あるいは思いっきり恩を着せながら渡されるモノだと思いこんでいた。

しかし、現実はどうだ。
こんなアスカを見るのは、あちらの世界も含めて初めてだ。
不審に思いながらも、新鮮な思いがこみ上げ、
ついつい凝視してしまう。
その視線にアスカは、ますます恥ずかしそうに俯き、沈黙してしまう。
モジモジと制服の裾を指でもてあそび、
そのままなかなか口を開けない。

(こんな時こそ、ボクがイニシアンティブを取るんだ!)

などと、決して思い付かないのが碇シンジであろう。
それどころか、初めて見るアスカに、
自分まで緊張して、カチコチに固まってしまった。

そのまま静寂が辺りを支配するコト、10数分。

(行くわよ! アスカ)

自分自身に声を掛け、ようやくバックから赤いリボンをかけた
青い包みを取り出し、シンジに差し出した。
ただ、それでもアスカは、何も言い出せなかった。

だから、シンジもどう反応すればいいのか、判断に迷った。

黙って受け取ればいいのだろうか?
ただお礼を言えばいいのだろうか?
好きだよ、そう告げればいいのだろうか?
それとも、母さんが言ってたように・・・・

シンジが逡巡している間に、アスカは決心した。
伏せていた顔を上げると、シンジの眼を見ながら、
大きく深呼吸する。
そして、震える声でささやいた。

「・・・・シンジ、・・・・好きよ。・・・・コレ、受け取って・・・・」
「!」

全く予想外の展開だった。
これ程恥じらい、ためらいを見せるとは思わなかった。
何も言えずに俯いてしまうとは思いもしなかった。

そして・・・・

アスカにハッキリ告白されるとは、シンジの想像をはるかに超えていた。

(・・・・でも、好きだと告白されるのは嬉しい)
(前にも一度あったけど、・・・・やっぱり嬉しい)
(こんなボクでも、ココにいていいんだ・・・・)

一方、アスカは期待と不安を込めた瞳でシンジをみつめて続けていた。

(シンジはどう思ってるの?)
(アタシのコト、好き?)
(アタシにキス、してくれる?)





数瞬の沈黙。

シンジは、差し出されたアスカの白い手をそっと両手で包み込んだ。

(! シンジの手・・・・あたたかい・・・・)

驚きはしたが、アスカは何も言わなかった。
黙ってそのまま動きを止めていた。

さらに、数瞬の沈黙。

「・・・・ありがとう、アスカ。ホントに・・・・うれしいよ」

心をこめた台詞だった。
シンジは、アスカの真心を受け取った。
アスカの無器用な、しかし素直な気持ちが痛いほど伝わってきた。
そして、思った。
アスカの真剣な思いに、ウソだけはつきたくない。

「・・・・アスカ、ホントにありがとう。
 アスカの気持ち、受け取ったよ。
 ボクのコト、好きだと言ってくれて嬉しいよ。
 ボクも、・・・・ボクも! アスカのコト、好きだよ」

さりげなく、確かにそう言った。
確かに聞こえた。
アスカの目に涙が溢れてくる。

「でも・・・・」

(でも?)

「レイと、マナ。2人のコトも好きなんだ。
 ゴメン、卑怯だよね。こんなの。
 ボクだって、解ってるんだ。
 前にも言ったよね、ボクには比べられないんだ。
 ボクには選べないんだ。
 ・・・・少なくとも、今のボクには・・・・」


分かっていた・・・・
シンジなら、きっとそう言うと。
分かっていた。

でも・・・・
でも!!

今だけでいい。
ウソでもいい。

アタシだけを愛してるって言ってよ!
夢を見させてよ!

ばかシンジ・・・・

女の子の気持ちなんて考えてないんだから・・・・
そんなコト聞かされるアタシの気持ち、分かんないの?

バカ・・・・





「だから・・・・、今のボクには・・・・」

言いながら、シンジはアスカに近付いた。

アスカの心臓がドキッと高鳴った。
思わずまぶたを閉じる。
そして、じっと待ち続ける。
シンジが近づいて来るのを。
シンジの唇が触れるのを。

ふっと、右手にシンジの手が触れるのを感じた。

「エ?」

シンジは、アスカの白い手を取ると、
その手の甲にそっとくちづけした。

思いを込めて・・・・
敬意を込めて・・・・
愛しさを込めて・・・・

唇を離すと、シンジは上目遣いにアスカを見上げ、

「だめ?」

そう尋ねた。

どんな表情をするのが、一番いいんだろう?
アスカは判断に迷った。

ふぅ〜

大きく息をつくと、ひとつ首を振って、
頭の中を駆け巡るいろんな思考を払い落とした。

「ネ、1つ聞いていい?」
「な、何?」

我ながら情けないのだが、シンジは思わず身構えてしまう。
そんなシンジの様子に、アスカはクスッと笑いをこぼした。

「レイやマナにも・・・・、おんなじコト、したの?」
「・・・・う、うん。・・・・そ、その、・・・・ゴメン」
「ばっかねェ〜。謝るコトないじゃない。
 シンジのウソ偽りのない、今の気持ちなんでしょ? それが」
「うん・・・・」
「なら、いいわよ。今回はコレで許してあげる」
「アスカ・・・・」

緊張続きのシンジの顔にようやく笑みが戻った。

「でも・・・・、次はココ! 期待してるから、ネ?」

イタズラっぽくウィンクするアスカは、
その柔らかそうな唇に指をあてながら呟いた。

「そ!・・・・う、うん・・・・」

真っ赤になって頷くシンジに、アスカは満足そうな微笑みを浮かべた。
それから改めて自分の台詞に赤くなった。

「エと、・・・・戻ろ? マナや、レイが待ってるよ」
「うん、そうネ。覗きに来られる前に帰りましょ」

言いながら、アスカは右手を差し出した。

「?」
「そこまで・・・・手をつないで行きましょう。いいでしょ?」
「!・・・・う、うん。・・・・行こ」

そっと手をつなぐと、シンジとアスカは歩き出した。
2人は、マナとレイの待つ教室へ戻っていった。


[終劇]






みきさんへの感想はこ・ち・ら♪   


幸せ一杯の人たちののコメント

アスカ「あ〜れ〜のどこが恥ずかしいって言うのよあんたたちは!!」

レイ 「だって・・・・」

マナ 「男の人にチョコレートをあげたことがないんだもの〜。もうどきどきだったわ〜」

アスカ「手の平にチュッ、で恥ずかしかったら、この世の中であたしたちが(ぴーっ)で(ぴーっ)で(ぴーっぴーっ)な小説なんて発禁処分じゃないの!」

マナ 「アスカ・・・何か読んだ?」

アスカ「え?」

レイ 「絶対、そう言う小説読んだでしょー! だからそんなこというのよ!」

アスカ「う、ぐ、あ、アタシは絶対あんなことしないからっ!」

レイ 「はい?」

マナ 「ん? 何このプリントアウトされた紙は」

アスカ「キャーッキャーッ!! 見ちゃ駄目よあんたたちには刺激が強すぎるんだから!!」

マナ 「かくしEVA『妄想』・・・?」

レイ 「どれどれ・・・」

マナ 「!!」

レイ 「!!」

アスカ「だから見るなっていったのに〜!!」

カヲル「おやまあ。なんかそこで二人ほどのぼせているようだね」

アスカ「アンタか〜! この小説プリントアウトしてシンジの机に置いておいたのは!!」

カヲル「はい? この小説って何のことだい?」

アスカ「・・・・いまいち疑いはれないけど、まあいいわ。で、今日は「幸せ一杯の人たちのコメント」のはずなのに、なんでずたぼろのアンタが出てくるのよ」

カヲル「仕方ないじゃないか。逃げた作者から伝言を預かってきたんだから」

アスカ「伝言?」

カヲル「いいかい? 読むよ? 「この作品はバレンタイン前に受け取っていたのですが、諸事情により掲載が遅れましたことを深くお詫びいたします」だって」

アスカ「なーんだ、いつものことじゃない」

カヲル「まあまあ、そう言わないで。それじゃ、僕は帰るから、後は幸せ者同士でうまくやってくれ(号泣)

アスカ「なによその号泣って・・・って、ちょい待ち! 背中に何か張り紙ついてるわよ!」

カヲル「?」

アスカ「なになに・・・・?『う・ら・や・ま・しいぞ〜!!』・・・・?」

カヲル「・・・・作者の魂の叫びか?汗」



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