そしてそれから外伝




中編 日常生活 レイとアスカの場合


アスカ「ただいま〜。」

玄関からアスカの元気な声が聞こえてくる。カヲルは読んでいた雑誌を閉じて玄関に向かった。

カヲル「おかえり。」
シンジ「ただいま。」
レイ「ただいま。」

3人ともかなり濡れていた。雨が強くなってきたのだろう。

シンジ「洗濯物は?」
カヲル「取り込んでおいたよ。」
アスカ「まったく、いきなり強く降ってくるんだもん。参っちゃうわ。レイ、シャワー浴びましょうよ。」
レイ「そうしましょうか。」

アスカとレイは浴室に向かった。シンジも何時までも濡れたままでいるわけにも行かないのでタオルで体を
拭きつつ自室に入る。

カヲル「シンジくん、熱いお茶でも入れようか。」
シンジ「うん、頼むよ。」

着替え終わったシンジはカヲルのいれてくれた紅茶を飲みながらリビングでくつろいでいた。
暫くしてアスカとレイが浴室から出てくる。

アスカ「ああ、さっぱりした。シンジはシャワー浴びないの?」
シンジ「うん。着替えたから・・・・・・」
カヲル「二人とも、紅茶をいれたけど飲むかい?」
レイ「ええ。」

4人はソファに座って紅茶を飲みつつくつろいでいた。レイが外をちらりと見やって呟く。

レイ「天気はどうなるのかしら。」
シンジ「天気予報では明日からは晴れだったけど・・・」
レイ「晴れると良いわね。」
アスカ「そうよね。折角の旅行ですものね。」


事の起こりは数ヶ月前。シンジたちが学校の行事で旅行に行くと決まった頃だった。

カヲル「ええっ?シンジくんが旅行?」
シンジ「うん。なんでも、生徒たちがずいぶん戻ってきたからその親睦を図るためだって。」

戦いが終わって約1年。そろそろ第三新東京市にも人が戻り始めていた。とはいえ、引っ越し続きで
クラスになじめない子供が多い。それでこういう企画が出たそうだ。

カヲル「・・・・・僕は?」
アスカ「カヲルは高校生だもの。当然留守番ね。」
カヲル「そんな〜。」
レイ「しょうがないわよ。」
カヲル「ううっ、やっぱりシンジくんたちと同じ学年になるんだった・・・・・」
アスカ「ま、今回はどうしようもないわね。」

アスカは今回の旅行がかなり楽しみだった。修学旅行は結局いけなかったし、今までエヴァのパイロットと
して生きてきたアスカにはこういう機会が少なかったのだ。レイも戸惑いはあるものの、シンジたちとの
生活の中でこういう喜びに目覚めつつあったのか楽しそうだった。

カヲル「よし、僕も付いていくよ。」
アスカ「学校はどうするのよ。」
カヲル「もちろん休むよ。うまく潜り込めばきっと気づかれないだろうし。」
レイ「かなり無理があると思うわ。それは・・・・・」

レイのいうとおり、カヲルの容姿はかなり人目を引く。どんな格好をしていても目立ってしまうカヲルが
こっそり紛れ込むのは無理があった。それでも諦めきれない様子のカヲルを見てシンジが提案する。

シンジ「じゃあ、夏休みになったら4人でどこかに旅行に行こうよ。」
カヲル「どこに?」
シンジ「どこにでもいいよ。カヲルくんが行きたいところで。」


・・・こうして家族旅行に行くことになったのだった。行き先はカヲルの提案で京都になった。
修学旅行の雰囲気を味わいたいらしい。

窓の外を眺めると雨がかなり激しく降っている。

カヲル「・・・・ま、雨の日でも楽しいことはあるさ。」

カヲルが締めくくって、アスカとレイは旅行の用意に、シンジは晩御飯の用意に取りかかった。



そして旅行の当日。昨日あれだけ降っていたのが嘘のように晴れ上がっている。

アスカ「いい天気ね。」
レイ「ほんとね。心配することなかったわね。」

新幹線に乗り込んで席に座る。やがて列車は静かに走り出した。揺れが少ないため早さを実感しにくいが
かなりの速度である。カヲルとレイは窓の外を眺めている。二人ともあまり旅行をしたことがないので
珍しいのだろう。アスカははしゃぎすぎたのか眠り始めた。シンジは何をするでもなく座っている。
だが、シンジが能力を使って車内の安全を確認しているのがカヲルには分かった。

そのうち景色を見るのに飽きたのかレイはカヲルやシンジとおしゃべりを始めた。

レイ「ねえ、碇くん。まず、どこに行くの?」
シンジ「清水寺辺りにしようと思ってるんだけど、どうかな。」
カヲル「いいね。そうしようか。」

話す言葉からレイやカヲルががかなり浮かれているのが分かる。いつもは寡黙なレイも今日は比較的積極的に
話しかけてくる。そんなレイがシンジにはまぶしく感じられた。


シンジ「アスカ、起きて。」
アスカ「ん・・・・もう、着いたの?」
シンジ「まだだけど、もうそろそろお昼にしようと思って。」

既に時刻は正午を過ぎている。アスカは起きると目を覚ますため顔を洗いに行った。その間にシンジが
作ってきたお弁当を広げる。

アスカ「じゃ、食べましょうか。」

アスカが席についてみんな食事を始める。

アスカ「さすがよね〜。」
カヲル「シンジくんの特製弁当はいつもながら絶品だね。」
レイ「こんなに美味しいものを食べちゃったら、宿の料理に満足できそうにないわね。」
シンジ「そうかな?一応料理を重視して宿を決めたんだけど・・・・」

食事とおしゃべりを楽しみつつ、4人はこれからの事に思いを馳せた。4人で旅行するのはこれが初めてだ。
4人とも期待でいっぱいだった。

やがて列車は京都に到着した。ここはセカンドインパクト前とほとんど変わらない佇まいを見せている。
もっとも、セカンドインパクト前の京都を知る人にいわせれば四季の移り変わりがないということになる
のだが。シンジの案内で4人は京都見物を始めた。シンジの流暢な案内を聞いてアスカはふと疑問を感じた。

アスカ「ねえ、シンジ。あなた京都に来たことあるの?」
シンジ「いや、初めてだけど・・・・・・・・どうして?」
アスカ「やけに詳しいなって思っただけ。」
レイ「ガイドブックか何かを見たからじゃないの?」
アスカ「そうよね・・・」

それにしても詳しすぎる気がしたのだが、折角の旅行中にそんなことを考えていてもしょうがない。
アスカはきっぱり忘れて楽しむことにした。

アスカ「ここが清水寺ね。」

長い坂を上ってようやく到着しただけあっていい景色だった。舞台からのんびり景色を眺める。
桜や紅葉があればさぞかし綺麗だったことだろう。

カヲル「ふ〜ん。ここが清水の舞台か。よく、ここから飛び降りる気持ちがどうとか云うんだよね。」
アスカ「試しにやってみたら?」
カヲル「やって見せようか。」

アスカにからかわれてカヲルもまた軽く返す。そのまま滑らかな足取りで舞台の端に近寄った。
下まではかなりあるがカヲルにとってはなんともない距離だ。

レイ「カヲル、本当に飛び降りるなんて馬鹿なまねはしないでね。」
カヲル「やらないよ。目立ってしまうじゃないか。」

レイに釘を差されてカヲルは苦笑した。周囲には結構人がいる。敢えて目立つ気はカヲルにはなかった。

シンジ「そうだね。そういうことは誰もいないときにしよう。」

じゃあ、誰もいなければやる気だったのだろうか。そう思ったアスカだった。

一通り清水寺を見て回り、その後土産物屋へと向かった。清水寺へと続く坂には土産物屋がたくさんある。
4人とも、何軒も回ってそれぞれおみやげを選んでいた。

京都に到着したのが昼過ぎだったため、買い物が終わった頃には既に夕方になっていた。
しかし、日にちはたっぷりあるのだから無理して見て回る必要は全くない。シンジたちは宿に向かった。
いかにもという感じの宿屋だ。仲居さんに案内されて部屋に入る。

アスカ「ちょっとシンジ!ひょっとして部屋、一つだけなの?」
シンジ「そうだけど、それがどうかしたの?」
アスカ「どうかしたのじゃないわよ。仮にも年頃の男女が一緒の部屋で寝るなんて・・・」
レイ「私は別にかまわないわ。」
カヲル「いや。やはりアスカのいうように倫理上問題があるよ。ここはやはりもう一部屋取って
男女別で寝ようか。」

カヲルの意見を聞いてアスカはふと思った。そうなると当然シンジとカヲルが、そしてレイとアスカが
同じ部屋で寝ることになる。アスカは慌てて否定した。

アスカ「やっぱり止めましょ。どうせ普段から一緒に寝てるようなものだし、今から余計に部屋を取らなく
てもこの部屋は十分広いし・・・」
カヲル「それだけかい?」
アスカ「う、うるさいわね。」
レイ「・・・変なアスカ。」
アスカ「ぬわんですってぇ〜。」
シンジ「ほらほら3人とも喧嘩はそれくらいにしようよ。折角の旅行なんだしさ。」
アスカ「う・・・・・」

シンジに云われてアスカも引き下がった。丁度いいタイミングで食事が運ばれてくる。

カヲル「じゃ、食事にしようか。」

食事を重視して選んだだけあってシンジの料理で舌が肥えているアスカたちにも十分に満足できるものだった。
ただ、レイは肉が食べられないのであらかじめ精進料理を頼んである。

シンジ「どうかしたの、レイ?」
レイ「何でもないわ。」
カヲル「その割には元気がないみたいだけど。」
レイ「・・・・・一人だけ違うものを食べているから、ちょっと気になっただけ。」

確かに4つあるお膳の内、レイのものだけ中身が違っている。普段の食事ではおかずはみんなで食べていた
ので、レイだけが仲間外れになることはなかったのだが、こうして分けられてしまうとレイが肉が食べられ
ないということがはっきりしてしまう。

シンジ「・・・ごめん。気が付かなかったよ。次からは僕もレイと同じにするから・・・・・」
レイ「でも・・・・・・」
アスカ「も〜。なんで辛気くさくなってるのよ。折角の旅行だっていうのに。」
シンジ「だって、これじゃレイが仲間外れみたいじゃないか。」
アスカ「いい、シンジ。同じものを食べていれば仲間だなんてことはないのよ。シンジがレイと同じものに
したってレイが肉が食べられないって現実が変わる訳じゃないわ。だけど確かにレイ一人だけが違うって
いうのはかわいそうだから・・・4人とも違うものを食べましょう。これなら文句ないでしょ。」

カヲルが意外そうにアスカを見る。

カヲル「へえ、アスカがレイのことを思いやるなんて珍しいじゃないか。」
アスカ「ま、折角の旅行だし。それに・・・・・レイは家族だもの。」
シンジ「レイもそれで良いよね。」
レイ「ええ。・・・・アスカ、ありがとう。」

そう言ってレイは微笑んだ。その微笑みは先程までの悩みを全く感じさせなかった。



アスカ「レイ、お風呂に行きましょ。」

食事が終わってからシンジたちは部屋でくつろいでいた。
食休みも十分に取ったのでアスカはレイとお風呂にはいることにした。

レイ「ええ。」
カヲル「じゃあ僕たちも行こうか、シンジくん。」
シンジ「そうだね。」

それを聞いてアスカが何となく嫌そうに呟く。

アスカ「え〜。シンジたち、一緒にお風呂にはいるの〜?」
シンジ「アスカだってレイと一緒に入るんだろ。男同士だし別に問題ないじゃないか。」
アスカ「だって・・・ねぇ?」

アスカはレイの方を見る。レイはこくこくとうなずいていた。

カヲル「まあ折角の機会だしいいじゃないか。」
アスカ「しょうがないわねぇ。」

シンジたちの家の風呂も決して狭くはない。むしろ広い方だろう。それでも大柄なシンジとカヲルが一緒に
湯船に使ってのんびり出来るほどは広くない。こういう広い風呂でもなければ一緒にはいるのは無理だった。

お風呂の用意をしながら、アスカがシンジをからかった。

アスカ「覗かないでよ。」
カヲル「おや、覗かれるほど成長したのかい?」
シンジ「1年前に比べれば大きくなったけど・・・・・・・・」

うっかりいってしまってからシンジは自分の発言の意味するところに気が付いた。真っ赤になるアスカ。

アスカ「なっ・・・何でそんなこと知ってるのよ。」
レイ「碇くん・・・・覗いたことがあるの?」
シンジ「ちっ、違うよ!覗きなんかしてないよ。」

慌てて否定するシンジだがアスカはさらに追求してくる。

アスカ「じゃ、どうしてそんなこと知ってるのよ。」
シンジ「そ・・それは、その、そうだ。下着だよ。僕が洗濯してるんだからサイズくらい知ってても
不思議はないじゃないか。」
アスカ「う・・・・・それはそうね。」
カヲル「ま、二人ともこれを機に洗濯くらい自分でしたらどうだい?」
アスカ「じゃあ、これから洗濯は私とレイでするわよ。レイもそれで良いわよね。」
レイ「私は別にかまわないわ。」

期せずして洗濯がアスカとレイの仕事になってしまってシンジはちょっと嬉しかった。


着替えやタオルを持って4人は浴場へと向かった。

服を脱ぎながらカヲルがシンジに話しかける。

カヲル「どうせシンジくんが覗きたいと思ったらいくらでも覗けるだろうけどね。」

カヲルの云うとおり、シンジたちには優れた知覚能力がある。本来は敵の居場所を感知するための能力だが、
覗きに使えなくもない。

シンジ「そんなことしないってば。」
カヲル「ははは、それもそうだね。」

カヲルの身体は白く、傷一つなかった。シンジも色白な方だがカヲルにはかなわない。二人とも、全体的に
華奢な感じがする。その外見からはこの二人が想像を絶する戦闘能力を有しているとは思えないだろう。

浴場には他に誰もいなかった。これだけの空間に二人だけなのでちょっと得した気分だった。
手早く身体を洗うと湯船につかる。

カヲル「ふう。やっぱり風呂はいいねぇ。」
シンジ「全くだね。」


一方こちらは女湯。アスカとレイが服を脱いでいた。

アスカ「レイの脱ぎかたって色気がないわね。」
レイ「そう?」

アスカはクォーターのせいか抜群のスタイルを誇っている。とても15歳とは信じられないだろう。
だが、そこには年相応の健康的な美しさがあった。
レイの肌はカヲルと同じくらい白かった。さすがに胸はアスカには及ばないがこの年齢にしてはいい方だろう。
すらりとした体型がかえって魅力的だった。

レイ「他には誰もいないみたいね。」
アスカ「そのようね。」

アスカは身体を洗うと湯船につかって大きく伸びをした。それからシンジに仕切り越しに声をかける。

アスカ「シンジ〜。そっちはどう?こっちは私たちしかいないわよ。」
シンジ「こっちもだよ。」
アスカ「私たちだけの貸し切りって訳ね。」

それを聞いてシンジは半ば反射的に能力で周囲の気配を探った。この場に自分たちしかいないという状況を
不自然に感じたのだ。

カヲル「シンジくん、偶然だよ。襲撃を受けることはない。」

カヲルがシンジをたしなめる。カヲルの云うとおり周囲の安全は十分に確認してあり、今は相手が人間ならば
不意をつかれるはずもない状況だった。
シンジは楽しい旅行の最中でも戦いのことを忘れられない自分に軽い自己嫌悪を感じた。
しかしそれも一瞬のこと。シンジの感知能力は至近距離にいる「力」の持ち主、レイとアスカを捉えていた。
シンジの脳裏にレイとアスカの姿が鮮明に映し出される。

普段、敵を探るときにはシンジはレイやアスカに気づかれないように意識して感知能力を使っている。
自分たちが襲撃に晒されていることを知らせたくないからだ。
しかし、今回は反射的に能力を使ったためそんなことを考える暇がなかった。当然アスカに気づかれる。
アスカは慌てて胸を隠すとしゃがみ込んで怒鳴った。

アスカ「ばっ・・・・・・馬鹿シンジ!何やってんのよ。」
シンジ「裸・・・・・・・・・・・・・・・アスカとレイの裸・・・・・・・・・・」

それだけいうとシンジはのぼせて倒れてしまった。



気が付いたとき、シンジはレイに膝枕をされていた。

レイ「碇くん、大丈夫?」
シンジ「あれ・・・ここは・・・・・」

急速に意識がはっきりしてくる。辺りを見渡してみるとここはシンジたちの部屋で、シンジとレイの二人きり
だった。

シンジ「カヲルくんとアスカは?」
レイ「二人とも外で涼んでいるわ。」

さっき見たレイの裸を思い出してシンジは頬を赤らめて俯く。

レイ「どうしたの?」
シンジ「いや、その・・・・・さっきはごめん。覗くつもりはなかったんだ。」
レイ「別に気にしてないから・・・・・」

そう言いつつもレイは頬を赤らめている。その様を見てシンジにはやはりレイは変わってきたと思えた。
レイに膝枕をされたままシンジは窓の外を眺める。今日は綺麗な満月だった。

シンジ「・・・月が綺麗だね。」
レイ「そう?」
シンジ「確かに月の輝きはどこで見ても変わることがないのかもしれないけど・・・・ここでこうしてレイと
一緒に見ているから、そう思えるのかな。」

シンジに見つめられて、レイは心臓の鼓動が高まっていくのを感じた。そっとシンジの手をとる。

シンジ「レイ・・・・・・・・・」

しかし、折角のいい雰囲気を部屋に入ってきたアスカがぶちこわす。

アスカ「何やってるのよ、あんたたちは!」
シンジ「あ・・・・アスカ。」

慌ててシンジはレイと離れる。

レイ「もう少し遅く帰ってきてくれればよかったのに・・・・・」
カヲル「ま、そううまくはいかないってことかな。」

カヲルが軽く肩をすくめる。レイは残念そうだった。

シンジ「ア、アスカ・・・さっきのは、その・・・・・・・・・・」
アスカ「それについてはカヲルに聞いたわよ。」
シンジ「じゃ、じゃあ・・・」
アスカ「今のはどうなのか、説明してもらいましょうか。」

アスカに詰め寄られて後ずさるシンジ。

シンジ「アスカ、折角の旅行なんだからよそうよ〜。」
レイ「そうよ。やきもちはみっともないわ。」
アスカ「な、何いってんのよ。別にそう言う事じゃなくてこれは・・・・」
カヲル「じゃ、なんなんだい?」

カヲルにつっこまれてアスカは言葉に詰まってしまった。

シンジ「はいはい、それくらいにしてもう寝ようよ。明日も早いんだから。」」
アスカ「うぅ・・・うまく逃げたわね、シンジ。」

アスカはまだぶつぶつ文句を言っていたが、とりあえずは丸く収まってシンジはほっとした。
手際よく布団を敷くと潜り込む。

「おやすみなさい・・・・・」



翌日も快晴だった。射し込んでくる日の光にシンジは目を覚ます。まだ、他の3人は眠っているようだ。
枕元の時計に目をやると7時だった。室内を見渡すと、アスカの浴衣が乱れていてかなりあられもない格好に
なっていた。シンジは苦笑すると布団をかけ直す。

カヲル「アスカに悪戯かい?シンジくん。」
シンジ「はうぅっ。」

いつの間にかカヲルが起きていた。いきなりカヲルに声をかけられてシンジは狼狽えた。言葉がうまく出て
こない。

シンジ「あうあうあう・・・これは、ただ、アスカが風邪を引いたらいけないと思って、その・・・」
カヲル「分かっているよ、シンジくん。アスカは寝相が悪いからね。」
シンジ「うん。アスカは普段からこうだからね。」
アスカ「ふ〜ん。で、どうして二人とも私の寝相の悪さを知ってるのかしら。」

振り返ってみるとアスカが仁王立ちになっていた。飛び上がらんばかりに驚くシンジとカヲル。

カヲル「やあ、アスカおはよう。」
シンジ「おはよう。」
アスカ「おはよう。シンジ、カヲル。」

シンジたちは動揺を辛うじて隠しにこやかに挨拶をした。にっこり微笑むアスカ。しかし、目が笑っていない。
ちょっと青筋が立っている。

シンジ「アスカは寝てたはずじゃ・・・」
アスカ「枕元であれだけ騒がれたら目も覚めるわよ。」
カヲル「いわれてみればそうだね。ははは。」
アスカ「で、どうして私の寝相の悪さを知っているのよ。」
カヲル「ということは自分の寝相が悪いことは認めているんだね。」
アスカ「う、うるさいわね。さあ、シンジ。どうしてなの。」
シンジ「それは・・・アスカの寝顔がとても可愛かったからだよ。」

シンジの台詞は質問の答えになっていなかった。

アスカ「シンジ・・・・アンタ、カヲルに毒されてない?」
カヲル「まあまあ、アスカ。それが家族ってものだよ。家族なんだから寝相くらい知っててもおかしくない
じゃないか。」
シンジ「そうそう。」
アスカ「う〜。」

シンジ「ほら、レイ起きて。もう朝だよ。」
レイ「ん・・・・・・」


レイを起こすと着替えて支度を整える。
朝食をとりながらシンジたちは今日はどこに行くか話し合った。

シンジ「今日はどうしようか?」
アスカ「私、神戸に行きたい。」
レイ「何で神戸なの?」
アスカ「別に良いじゃない。」
カヲル「ふ〜ん。」
アスカ「な、なによ。」
カヲル「別に〜。」



それからの数日間、シンジたちはあちこちを見て回った。
毎日が特別に感じられる。4人で行動するのがこんなに楽しいなんて初めて知った。

しかし、楽しいときも何時かは終わりを迎える。今日の午後には第三新東京市に帰ることになる。
シンジたちは早起きして山に出かけていた。

山登りの用意など何もしてきていなかったが、4人とも肉体能力が並みではない。平然と歩き続けた。

アスカ「ねぇ、シンジ。まだなの?」
シンジ「もうすぐだよ。」

それから暫く歩くと、急に視界が開ける。

アスカ「わぁ、きれいなところね。」
レイ「本当。」

アスカとレイが感嘆の声を上げた。山の一部がちょっとした広場になっていて、一面に柔らかそうな草が
生えている。風に優しく吹かれて揺れる草が美しい模様を描いていた。

レイ「いい気持ち・・・・・」

レイは地面に横たわって空を見上げた。澄んだ青い空を雲がゆっくりと流れていく。大地の温もりと
日の光を全身で感じつつ優しく吹きゆく風に身を委ねた。

シンジとアスカは草原を駆け抜けた。すがすがしい空気を胸一杯に吸い込んで戯れる。やがて、アスカに
追いついたシンジがアスカを捕まえると、二人とも大地に倒れ込んだ。そのまま空を見上げる。
火照った身体に優しく吹く風が心地よかった。

カヲルは草原の真ん中に生えている大木の根本に腰を下ろした。風に揺すられる度に梢がざわめく。
かざした左手の上で小鳥が囀る。自然が奏でる美しいメロディーにカヲルは聞き惚れていた。





カヲル「楽しかったね。」
シンジ「うん。」

新幹線の単調な揺れが眠気を誘ったのか、それとも疲れていたのか、アスカとレイは眠りについていた。

カヲル「今回は珍しく何事もなかったね。」
シンジ「さすがに今までの戦いで懲りたんだと思うよ。」
カヲル「あと数時間後には第三新東京市か。長いようで短かったね。」
シンジ「また4人でこようよ。」
カヲル「ああ。旅行の機会はいつでもある。一緒にいるならきっと、またこれるさ。」

シンジとカヲルは外を眺めつつ、思い出を胸に刻み込んだ。
4人で共に過ごした記憶、二人にとっての宝物を・・・・・・・



そして、またいつもの生活が始まる。


後書き

K「どうも、Kです。」
カヲル「いきなりはずしているねえ。」
シンジ「前回の予告と全く違ってるもんね。」
アスカ「まあ、私の話だから良いんだけど。」
K「そうですよ。アスカの出番がこんなに増えたんだし・・・」
レイ「私知ってる。なぜこんな話になったのか・・・」
K「ぎくっ。」
アスカ「どういうことよ。」
レイ「この人、元々この話を書く予定はなかったの。」
シンジ「え、そうなの?」
レイ「ええ。でも、ユカリさんの話があまりに暗くて、私とアスカの出番がないから急遽この話を
書いたのよ。」
K「ふっ、暗黒な話を書いた反動です。」
アスカ「ふっ、じゃないわよ!」

どこぉ

カヲル「次はまた僕とシンジくんが大活躍か・・・・・」
アスカ「もぉ、いやぁ!」




Kさんへの感想はこ・ち・ら♪   



管理人(その他)のコメント

トウジ「せんせ、やるのお」

シンジ「な、な、なにがだよ!」

トウジ「かくさんでもええちゅうねん。せんせの能力を使えば、覗き放題し放題やんか」

シンジ「ト、ト、トウジ!! いきなり何を言うんだよ!」

トウジ「ええんやええんや。せんせかて男やさかいな。惣流や綾波の裸を見たいっちゅうんは健全な証拠や。ほらほら、おもいだしてみ、惣流の胸、綾波の太股、惣流のふくらはぎ・・・・

シンジ「う、う、ううぅぅぅん・・・・ばたっ」

トウジ「なんや、その程度でダウンかいな。せんせもまだまだおこさまやのぉ」

カヲル「こらこら、僕のシンジ君を虐めないでくれないか」

トウジ「なにいうとるんや。ワイはせんせに男らしゅうなってほしいおもたからこうやっとるんやないか。なんならカヲルもやってみるか? 惣流のケツ、綾波の胸、ほらほらほら〜」

カヲル「ふっ、僕はその程度で参ってしまうほどお子様ではないからね」

アスカ「じゃあ、なにでダウンするって言うのよ」

カヲル「そりゃきまってるじゃないか。シンジ君の胸、シンジ君の太股、シンジ君のうなじ、シンジ君の・・・・・ってはうっ! あ、アスカ君!」

トウジ「げ、惣流!」

アスカ「二人して腐った根性しおって! 成敗してくれるわ!」

 ばきっどかっぐしゃっ!!

カヲル「うきゅぅぅぅ・・・・シンジ君の裸が・・・・みえるぅ・・・・ばたっ」

トウジ「うぐ・・・・惣流・・・・ちっとはてかげんせんかい・・・・がくっ」

アスカ「ふっ。悪は滅びる定めにあるのよ!」



続きを読む
前に戻る
トップへ戻る