そしてそれから




第14話 赫い瞳に隠されしモノ


槍に串刺しにされながらも、シンジは生きていた。何かを掴むかのようにその右手を掲げる。その様を直視
しながらも、アスカは動けなかった。シンジを助けなければいけないのは分かっている。分かっているのに
体が云うことを聞かなかった。シンジが動く様を見てか、上空に佇んでいた4号機からさらに3本の槍が
シンジに向けて投げつけられる。

アスカ「だめえええええええぇぇぇっ。」

絶叫するアスカ。だが槍は無慈悲にも一直線にシンジに襲いかかった。肉が裂け、骨が砕ける鈍い音と共に
槍はシンジの全身の至る所を貫いた。掲げられた右手が槍に断ち切られ、その半分が下に垂れ下がる。
傷口から血が噴き出し、シンジの身体をさらに紅く染め上げていく。その様を見てアスカはがっくりと
地面に膝をついた。

大切なものを失ってしまった喪失感に、アスカは今までの現実が崩壊していくのを感じていた。
自分が涙を流していることさえも気づかなかった。

茫然自失のアスカに量産機が群がってくる。その光景を見てもアスカは動かなかった。自動的に展開される
ATフィールドが量産機の攻撃を阻んでいるのがまるで他人事のようだった。もう、どうなってもいい。
そんな圧倒的な虚脱感の前に気力を失い、座りこんでいたアスカの耳に、静かに、だが力強い鼓動が聞こえて
くる。

アスカ「シンジ・・・?」

激しい衝撃の余り止まってしまってかのような時の流れを、シンジの鼓動が紡ぎだすのを感じて、アスカは
ゆっくり立ち上がった。

アスカ「これは・・・聞こえる・・・・・シンジの鼓動が・・・・・」

鼓動は徐々に強く、そして激しくなっていく。それを聞いてか、4号機が残る3本の槍をシンジに投げつけた。
シンジの負傷はかなり酷く、回避する余力はない。

アスカ「シンジィーーーーーッ!!!」

アスカの叫びに呼応するかのように、シンジは突きだした左手に展開したATフィールドで槍をくい止める。
そして、槍が再びATフィールドを貫いてシンジの体に突き刺さるかに見えた瞬間、シンジのATフィールド
が急激に輝きを増した。

アスカ「な・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

アスカは呆然として立ちつくした。シンジが立ち上がったのだ。全身を槍に貫かれたままで、さらに自らの
ATフィールドで3本の槍を受け止めながら。自らの血を浴びて紅く染まったシンジの右目が激しい
殺意と怒りを帯びて輝いた。

先程は槍のコピーに容易く貫かれたシンジのATフィールドではあるが、今度はびくともせず完全に槍を
受け止めている。槍の生み出すアンチATフィールドをシンジのATフィールドが上回った、ただ、それだけ
のことなのだが、例え槍がコピーとはいえ3本も支えるにはどれほど強力なATフィールドが必要なのか、
アスカには見当も付かなかった。

シンジは太く吼えると、どこからともなく取り出した自らのロンギヌスの槍を握りしめて一閃した。ただ
それだけで4号機の投げつけた槍が膨れ上がり、巨大な肉の塊と化して消滅していく。

槍「しょせんはコピー。意志を、魂を持たない肉の塊か・・・・・・・・・・・」

シンジの持つ槍が呟きを漏らす。その口調は哀れんでいるとも、蔑んでいるともつかなかった。
槍を振ったことでシンジの出血が激しくなり、シンジはぐらりとよろめく。

そこに量産機が一斉に襲いかかってきた。
だが、シンジはただ静かにそれを見上げただけだった。そして、ただそれだけで量産機が浮力を失い地面に
落ちていく。量産機が痙攣し、断末魔の叫びをあげる様をシンジは口元に冷笑を浮かべつつ冷ややかに
見つめていた。

一体何が起こったのか、ミサトたちには全く理解できなかった。だが、アスカには分かる。シンジが
量産機の力を吸収していると云うことが。いわば、量産機を喰っていると云うことが。
地面に落ちた量産機は起きあがることさえ出来ず、それでもなお生に執着してもがき続けた。
しかしそれも時間にしてみれば僅かなことで、剥がれ落ちた特殊装甲から覗いている量産機の肉体が見る間に
生気を失いミイラと化していく。そしてついには塵と化して風に舞った。後にはただ、中身を失った特殊装甲
だけがその場に残されていた。

それに合わせて、シンジの左腕は見る間に元の形を取り戻し、空虚な眼窩にはあっというまに光が戻っていく。
そして、シンジが完全にその両目を見開いたとき、シンジの全身から凄まじいまでの光が放たれる。
シンジの咆吼が大気を震わせた。



リツコ「何が起こったの。」
青葉「今までにない強力なATフィールドが発生しています!」
日向「反応パターンが変化していきます。これは・・・・・・・パターン青!使徒です!!」
ミサト「使徒ですって!?シンジくんが?」
マヤ「外気圧、急激変動。」
青葉「衝撃波来ます。」

もはやミサトたちは完全に傍観者だった。ただ呆然とシンジが土砂を巻き上げながら十字状の光を吹き上げる
様を見ていた。しかし、その様を見ることが出来たのも僅かな時間に過ぎなかった。突如メインモニターが
ノイズの嵐で使用不能になる。

青葉「強力な電波障害です!」
マヤ「駄目です。モニターできません!」

何も映し出すことのないモニターの向こうでは、人は見ることさえも禁じられた戦いが始まろうとしていた。




覚醒の余波か、シンジの放出したエネルギーが強力な衝撃波を発生させ、アスカは吹き飛ばされないように
するのが精一杯だった。何とか堪えてシンジの方を見る。
シンジは全身を金色に輝かせ、宙に舞っていた。かなりの光量のため細部まで視認する事は出来ない。
それでもアスカにはシンジの背中から12枚の翅が広がっているのが見て取れた。やがて徐々に光が弱まり、
体が淡く輝いている程度になって、アスカはようやくシンジの全身を直視できた。全身を淡く金色に輝かせ、
12枚の翅を広げたシンジの姿は確かに美しい。しかし、それは神々しさと禍々しさとを併せもった美しさ
だった。全身を金色に輝かせながらも、その瞳だけは燃えるように赫く輝いている。その様を見てアスカは
本能的に恐れを感じた。
アスカにはシンジの力が桁違いに高まっているのがはっきりわかる。
自分の力も以前とは比べものにならないほど高まっている。おそらくカヲルと比較しても遜色ないだろう。
だが、シンジの力はそれを圧倒的に上回っている。
そして何よりもその赫い瞳には激しい殺意が、破壊衝動が込められたままだった。それは今まで人としての
心が押さえてきた使徒としての本能なのだろうか。

アスカは待避するべきだったのだろうが、圧倒的な力に魅せられたかのように動けなかった。
再びシンジが吼える。それに応じて、気圧の変動で生じていた竜巻が4方に解き放たれた。アスカも
エヴァ4号機も避ける間もなく巻き込まれ、地面に叩きつけられる。

アスカ「馬鹿シンジ!どこ狙って・・・」

そこまで言って、アスカはようやくシンジの瞳に宿る殺意が自分にも向けられていることに、シンジが
自我を失い暴走しているということに気づいた。

「やめっ・・・」

アスカの制止が全く聞こえていないのか、シンジの瞳が光を放つ。超高出力の熱線は、大地を融解させ
つつアスカを掠めて、遙か後方に大爆発を引き起こした。十字型の光が吹き上がる。
後に残された一筋の煮えたぎる大地の帯はまるで引き裂かれた大地の傷跡のようだった。その破壊力に
戦慄するアスカ。一発熱線を撃ち込むと、既にアスカに関心を無くしたのか、シンジは今度は4号機に
熱線を撃ち込んだ。辛うじてATフィールドでその攻撃を防ぎ、4号機も仕返しといわんばかりに
熱線を、それも一発でなく数十発撃ち込んでくる。
しかしシンジは、おそらく重力を制御しているのだろう、信じがたい速度で宙を舞い、これを容易くかわした。
お互いに相手が手強い敵だと認識したのか、対峙するシンジと4号機の間に緊張が走る。4号機は槍のコピー
を全て失ってしまったので素手のまま、そしてシンジは槍のオリジナルを構えている。二人とも全く隙がない。
先に再び攻撃を仕掛けたのは4号機だった。

高出力の光線を間断なく撃ち続ける4号機。しかし、シンジは回避し、或いはATフィールドでそれを
容易く防ぎ、完全に無傷だった。シンジのATフィールドでねじ曲げられ、引き裂かれた光が周辺の地形を
変えていく。ATフィールドに守られていなければアスカはひとたまりもなかっただろう。別にアスカが
弱いのではない。シンジと4号機が強すぎるのだ。このまま二人が激突したら、アスカは無事でも大地の方が
保たずに、南極のように消滅してしまうかもしれなかった。だが、二人ともそんなことはお構いなしに戦闘を
続けている。
爆風にあおられてアスカが悲鳴を上げた。

アスカ「きゃあぁっっ!」

その一瞬、シンジの注意が4号機から逸れる。その瞬間を狙って4号機が殴りかかってきた。

アスカ「シンジ!」

単純な筋力だけとればあの体格差だ。明らかに4号機の方が上である。しかも4号機はあの巨体からは
想像できないほど鋭敏な動きをしていた。4号機の拳を受け止めたシンジのATフィールドが澄んだ音を
立てながら輝きを増していく。
これだけ接近されてしまっては機動力を生かして攪乱することは出来ない。今はATフィールドで支えて
いるが、仮にそれが破られれば・・・

だが、シンジは4号機がこうくるであろう事を予測していた。4号機の腕にかかっていた圧力が不意に消える。
シンジが空間を渡って4号機の背後に回り込んだのだ。シンジが槍をふるうと、生じたアンチATフィールド
が巨大な刃と化して4号機に襲いかかる。その力は4号機のATフィールドをまるで紙切れのように切り裂き、
さらに翅と左腕をも切断した。苦痛と怒りに雄叫びをあげながら4号機は振り向くと同時に全力で光線を
叩きつける。これほどの力がぶつかり合えば生じる反発力が確実に大惨事をもたらすだろう。アスカは周辺が
死の大地と化すのを半ば覚悟した。しかし、シンジが槍を一閃すると、4号機の放った巨大な力がいとも
容易く霧散する。

シンジ「・・・・・・無駄だ。おまえがいかに強大な力を使おうとも、こちらはそれを全て中和し、
無効化出来る。それが、ロンギヌスの槍の・・・いや、リリスの力だ。」

機械的な声でシンジは淡々と事実を告げる。そこにはいかなる感情も含まれていない。しかし、それは4号機
にとっては死の宣告そのものだった。

シンジ「・・・攻撃は通用しない。相手の攻撃を防ぐこともできない。そのダメージでは逃げることさえ
出来はしない。もはや、残された道は殺されることだけだな。」

4号機は絶え間なく光線を撃ち続け、なんとか体勢を立て直そうとするが無駄なあがきだった。
シンジが槍を振るうと光線は全て虚空に消える。時間稼ぎにすらならなかった。慌てて逃げだそうとしたが、
それよりもシンジの動きが速い。ロンギヌスの槍を水平に構えると、ぴたりと4号機を指し示す。

シンジ「さらばだ。」

短く、そして冷たく別れを告げるシンジ。ほとんど同時に金色の輝きが爆発的に膨れ上がり、槍の穂先に
収斂して解き放たれた。解き放たれた莫大な力は光の柱となって横一文字に走り、4号機を容易く貫く。

アスカ「エヴァを・・・・・ATフィールドごと貫くなんて・・・・・・・」

呆然と呟くアスカ。4号機は胸に風穴を開けながら後方に大きく吹き飛び、地面に激突した。さらに、
4号機の全身は地面から吹き上げてくる光の柱に覆われて消滅していった。それは、あまりにあっけない
最後だったが、それだけにシンジの絶大な力をまざまざと見せつけるものであった。

4号機を容易く貫いた光はそのまま走り抜け、暗雲を吹き飛ばして晴れ間を見せる。それは、まるで天高く
そびえ立つ塔のようであった。

4号機を倒したシンジの表情は、戦いに勝った喜びも、死なずに済んだ安心でもない。まるで当然のこと、
予定通りのことが起こっただけに過ぎない、そんな表情だった。
4号機が消滅したのを確認すると、シンジはゆっくりとアスカの方を向く。緩やかな動作の中にとてつもなく
危険な匂いを感じて、アスカはとっさに身を翻した。それと同時に、一瞬前までアスカがいた空間を
桁外れに強力な光線が貫いた。完全に回避したはずなのに、その余波だけでアスカは体勢を維持できずに
宙をきりもみする。4号機のATフィールドを容易く貫いたことからして、もしこれを食らえばひとたまりも
ないのは確実だった。かといって今のシンジを力でどうにか出来るはずがない。

アスカ「シンジ、止めてよ!こんなの止めてーっ!」

アスカの呼びかけにもまるで反応を示さず、シンジは全身から光線を飛散させ、全方位を見境なく攻撃し
始めた。先程の攻撃よりも威力は劣るが、この数では完全に回避し続けることは出来ない。

シンジ「うああっ・・・」

アスカを攻撃することに理性が反発しているのか、シンジは苦悶の表情を浮かべている。そのせいか4号機と
戦ったときとは比べものにならないほど集中力を欠いており、狙いも甘かった。それに加えてアスカは完全に
防御に徹しているのだが、それでもなおシンジの攻撃を捌ききれなかった。

アスカ「死ぬのはイヤアァァァァァーーーーー!」

絶叫するアスカを数発の光線が直撃した。辛うじてATフィールドで防いだが、動きが止まったところを更に
数発の光線が襲う。地面に叩きつけられて呻くアスカの視界に、シンジが槍を自分に向けてかざすのが映し
出された。穂先に光が集まっていく。

アスカ「シンジ・・・アタシを、殺さないで・・・・」

弱々しい呟きと共にアスカはシンジを求めて手を差し伸べる。それも空しく、槍から破壊の閃光が
解き放たれた。

迫りくる確実な死を前にアスカが思わず目を閉じたとき、シンジの瞳から赫い光がふっと消える。
それと同時にシンジが絶叫した。

シンジ「止めろおおおーーーーーっっっ!!!」

アスカを直撃する寸前に光線はねじ曲げられ、虚空へと消えていく。シンジは肩で息をしていた。

アスカ「シンジ・・・?アンタ、シンジよね?」
シンジ「そうだ・・・僕はシンジだ。碇シンジなんだ・・・・・」

アスカに答えると云うより、自分に言い聞かせるようにシンジは呟く。
既に、怒りも憎しみもなく、ただ深い悲しみだけがその瞳には宿っていた。シンジのそばに来たアスカだった
が、何となく声をかけられなくて黙っている。
何時までもこうしているわけにはいかないと思ったのか、シンジはアスカに微笑む。だが、無理に微笑んで
いるということが明白であり、アスカは却って辛かった。アスカは早くカヲルたちと合流して家に帰りた
かった。早くいつもの生活に戻りたかった。
だが、カヲルたちの様子を探っていたシンジの絶叫が、アスカを過酷な現実へと引きずり戻す。

シンジ「まさか・・・・・・・カヲル君がやられた!?そんな馬鹿な!!!」




カヲルはレイの剣で胸を貫かれていた。瞬間移動で逃げる余力はない。レイの早さを考えれば後ろに下がって
逃れることも不可能。カヲルの五体がバラバラに切り裂かれるという、まさにその時。カヲルは前に出た。

カヲル「まだ・・・死ねない。死ぬわけにはいかないんだ。」

レイの剣を根本まで食らいこませ、しかも左手でレイの手を掴んで動きを封じる。カヲルも重傷だが、レイも
頸骨と肋骨が折られている。こうなってしまえば剣を振るうことは出来ない。レイは剣を変形させてカヲルを
引き裂こうとしたが、それよりもカヲルの行動が早かった。空いている右手で掌打をレイの鳩尾にたたき込む。
肋骨を折られていたレイにとってはかなりの打撃だ。一瞬、集中がとぎれた。その瞬間、カヲルは掌をレイの
体に密着させたまま、力を火球と化して解き放った。激しい炸裂音と共にカヲルとレイが反対方向に吹き飛ぶ。

レイ「くはっ・・・・・・」
カヲル「ぐうっ・・・・・・」

地面に叩きつけられてカヲルは呻いた。レイの剣を引き抜いて、バラバラにされるのはなんとか免れたとは
いえ、あれだけの至近距離ではカヲルもダメージを免れ得ない。右腕が黒く焼け焦げていた。引き抜き方が
強引だったために胸の傷もさらに悪化している。まともに戦える状態ではなかったが、レイがのろのろと
ではあるが立ち上がるのを見てカヲルもまた身を起こす。戦いはまだ終わっていないのだから。

レイもまた重傷だった。頸骨と肋骨が折れている上、先程の火球の直撃で腹部に重度の火傷を負っていた。
火傷は内臓にまで達している。それでもほとんど身動きのとれないカヲルよりはましだ。そう判断したのか
レイはカヲルの方にゆっくりと歩み寄る。それを見てカヲルは相打ち覚悟でレイを倒すことを決断した。
この状態ではまともに戦ってレイに勝つことは難しい。しかし、自分が死ねばシンジがレイと戦うことに
なるかもしれない。それだけは避けたかった。

レイ「タブリス・・・あなたはなぜ使徒として生きようとしないの?」
カヲル「見つけたからさ。与えられた使命などではない、自分にとって本当に大切なものを。」
レイ「・・・そう。」

二人の間に静かに緊張が高まっていく。そして、最後の攻防が始まるかと思われた時、強い力を持ったものが
二人、こちらに向かっているのが感じられた。レイはやむを得ずに残った力を振り絞って瞬間移動で待避する。
それを見て、カヲルの意識は闇へと沈んでいった。




カヲル「う・・・・・・・・・・・」

柔らかな光が全身を包み込んでいるのを感じる。意識が急速に鮮明になっていき、カヲルは身を起こそうと
した。しかし、激痛のために体がうまく云うことをきかない。何がどうなっているのか、辺りを見回して
みると、どうやら自分はシンジに抱きかかえられているようだった。

シンジ「カヲルくん、まだ動かない方がいいよ。」

シンジに云われて改まって自分を見てみると、確かに酷い有様だ。胸の傷は塞がったようだが、かなりの
失血で服は完全に赤く染まっているし、右腕も黒く焼け焦げたままだった。
力を使ってカヲルの怪我を治しているシンジのそばでアスカが心配そうな表情をしている。
カヲルがここまで酷い怪我を負ったのを見るのは初めてなのだから無理もないことだった。

アスカ「アンタ一体何と戦ったのよ?こんなに酷い怪我をするなんて・・・・」
カヲル「それは・・・・・・・・・・・」

カヲルは口ごもった。だが告げなければならなかった。そしてカヲルが事実を告げたとき、3人は深い沈黙に
包まれた。

シンジ「レイが・・・・・・・第二使徒・・・・・・・・・・・・・・・・・」

受け入れがたい現実を突きつけられ、シンジは呆然としていた。

アスカ「だからって何でレイと戦わなきゃいけないの!?アンタだって使徒じゃない!!」
カヲル「同じ使徒とは云え僕は・・・第17使徒タブリスは能力として自由な意志を持っている。
だが、レイは使徒としての運命に逆らえなかったんだ。」
アスカ「どうしてよ!私たち、同じ道を歩んでいたはずよ。これからも家族としてずっと一緒に暮らすはず
だったのに、どうして・・・・・・・こんな・・・・・・・・・答えてよ、カヲル。答えてよ!」

最後の方はかなり嗚咽が混じっていた。泣きながら詰め寄るアスカに、カヲルは悲しそうに呟いた。

カヲル「分かれ道はどこにでもあるさ。ただ、普段は気が付くことがないだけだ。」
アスカ「そんな・・・・・・・・・」
カヲル「済まない、シンジくん。僕は躊躇うべきではなかった。躊躇わずにレイにとどめを刺すべきだった。」
シンジ「いいんだ。」
カヲル「よくはない!僕が躊躇ったせいで、またシンジくんに辛い役目を押しつけてしまったんだ。もはや
僕の力ではレイを止めることは出来ない。きっとシンジくんがレイと戦うことになるだろう。
済まない・・・・・」

うなだれるカヲルだったが、シンジは静かに首を左右に振る。

シンジ「いいんだ。僕の知っている『渚カヲル』は家族を躊躇いなく殺せるような使徒じゃないから・・・
・・・・・」
カヲル「シンジくん・・・・・・・・・」
アスカ「シンジ・・・・・・・・」

何時しか日が沈み始め、空が夕焼けに染まっていく。その色はまるで血のように紅かった。



続く



後書き

K「どうも、Kです。」

めきゃっ

K「はうう・・・」
アスカ「アンタ馬鹿ぁ!?何でアタシがシンジと戦わなきゃなんないのよ!」
シンジ「ううう・・・アスカを危うく殺しかけるなんて・・・・」
カヲル「まあ、前回よりはましかな。死なないで済んだし、シンジくんには膝枕をしてもらったし〜。」
アスカ「アンタ、何トチ狂ってるのよ・・・」
シンジ「うう・・ごめんよー、あすかー。」
アスカ「良いのよ、シンジ。悪いのは全部こいつなんだから。」
K「だって、電波がそういうから・・・」

どかばきどこっ

アスカ「この大馬鹿っ!バカ、バカッ!!」
シンジ「こんな展開になっちゃって大丈夫なのかな。」
カヲル「たぶん大丈夫なんじゃないかな。というわけで次回予告だよ。」

シンジたちは真実を求め、リリスとの接触を試みる。どこともしれぬ空間で交わされる質問とその答えは、
今までシンジたちが、互いに傷つけ合うことを、自らの過去を恐れて避けていたものだった。

次回 そしてそれから15話

「真実の欠片」




Kさんへの感想はこ・ち・ら♪   



管理人(その他)のコメント

冬月  「平和じゃの〜」

ゲンドウ「・・・・ああ」

冬月  「茶がうまいの〜」

ゲンドウ「・・・・ああ」

冬月  「出番がないの〜(涙)

ゲンドウ「・・・・ああ」

加持  「何をやってるんですかあなた方は・・・」

冬月  「ここではわれわれは邪魔者みたいなんでな〜茶でもすすりながら愚痴でもこぼそうかと」

ゲンドウ「・・・・ああ」

加持  「あっちは大変だって言うのに・・・そもそも、なんですかその碇司令の等身大人形は」

冬月  「ああ、これは「独居老人の愚痴相手ゲンドウ君」じゃ。新発売だよ」

ゲンドウ「・・・・ああ」

加持  「・・・・なんですかそれは。しかも新発売って・・・・ついていけんわ(汗)」

カヲル 「いいじゃないですか。あのへんの老人はほっておいて」

アスカ 「ふん、ヂジイはひっこんでりゃいいのよ」

冬月  「だれがヂジイじゃ!」

アスカ 「すくなくとも、ここではATフィールドを展開して空飛べないとヂジイの範疇にはいるのよね」

冬月  「んなことできるかい一般人に!」

カヲル 「はう・・・・そうすると、一番力の弱いぼくがこの4人の中ではヂジイなの・・・(涙)」

アスカ 「あっはっは(笑)」

カヲル 「・・・・でも・・・・今の君もおそらく僕と同じくらいの強さだから、ヂジイじゃなくババ・・・・ぐはっ!」

 どかばきっ!!

アスカ 「その台詞をいうなぁぁぁ!」

カヲル 「きゅうううう」



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