そしてそれから

第7話  嵐を呼ぶ転校生


アメリカでの事件にも決着が付き、シンジたちは再び日本に帰ってきた。
もっともかなり遊んでからだったが。そのため今日からもう二学期が始まろうとしていた。
流石に今日は遅れずに教室に到着する一行。


アスカ「あーあ、今日から二学期かあ。」
シンジ「十分遊んだだろ、アスカ。」
アスカ「始業式がうっとおしいのよ。そもそも式ってつくのはたいていつまらないわね。」
レイ「結婚式は?」
アスカ「それは例外。」
ヒカリ「結婚式かあ・・・・いつかはあたしも・・・・」

自分とトウジの結婚式を想像して頬を赤らめるヒカリ。アスカ、レイも自分の結婚式を想像する。
当然相手はシンジだ。

シンジ「どうしたの二人とも?顔が赤いけど。」
アスカ「・・・!!!」

慌てるアスカ。自分とシンジの結婚式を想像していたときに当のシンジに声をかけられたのだから当然だろう。
レイも外見上は変化がないように見えるが内心激しく焦っていた。

アスカ「い、いきなり声をかけないでよ。」
シンジ「何でいきなり怒り出すんだよ、アスカ?」
アスカ「・・・馬鹿シンジ!あんたが鈍いからよ。」

シンジの鈍さはいつも通りである。そしていつも通りの喧嘩が始まる。
シンジの鈍さ、アスカの意地っ張り、そしてレイの世間知らず。この3つが重なって3人の仲は中学時代から
全く進展していない。
少しは進まないものかな。
ヒカリでさえそう思う。
そしてまた、いつも通りにヒカリが止めに入る。

ヒカリ「ほら、三人とも。そのくらいにして。もうそろそろHRが始まるわ。」

やがてHRの時間になり、担任の教師が一人の女生徒を連れて教室に入ってきた。

教師「えー、今日は転校生を紹介します。」
マナ「霧島マナです。よろしく。」

教室が一斉にざわめく。アスカやレイがいるから美人は見慣れているはずだったが、それでもマナの
美しさは際だっていた。アスカたちに決して引けはとらないだろう。ケンスケなどは早速カメラを
用意している。

教師「霧島さんの席は・・・・・碇くんの隣が空いてますね。」
マナ「よろしくね。碇くん。」

にっこり微笑むマナ。シンジは自分の顔が赤くなるのを感じた。当然アスカは面白くない。
憮然とした表情だ。レイも口にこそ出さないがかなり不満そうだった。もっともアスカたちの席はシンジの
後ろだったのでシンジがそれに気が付くことはなかったが。

HRが終わった。今日は授業がないのでこれで終わりだ。シンジを連れてさっさと帰ろうとするアスカよりも
早く、マナがシンジに話しかけた。

マナ「碇くん、これから何か用事ある?」
シンジ「え・・・別にないけど。」
マナ「よかった。ねえ、碇くん。学校内を案内して欲しいんだけどなぁ。」

シンジをじっと見つめるマナ。それを見てアスカが怒りだした。

アスカ「何見つめあってんのよ、あんたたち。」
シンジ「アスカ、何怒ってるの。」

鈍いシンジにはアスカが嫉妬しているなどと言うことには気づきもしない。
肩を戦慄かせるアスカを見てシンジは思いきり勘違いをした。

シンジ「ひょっとしてお昼ご飯のこと?」
アスカ「馬鹿シンジ!」

アスカのビンタを食らって文字通り吹っ飛ぶシンジ。

アスカ「ヒカリ、レイ、こんな奴ほっといてさっさと帰りましょ。」

そう言うと二人の手を引っ張って帰ってしまった。

マナ「碇くん、大丈夫?」

慌ててシンジの側に駆け寄るマナ。抱き起こしたシンジの頬にははっきりとアスカの手形が付いていた。

シンジ「あいたたた・・・・」
マナ「ほっぺた、真っ赤になっちゃってるよ。保健室に行った方が・・・」
シンジ「これくらいなんて事ないよ。」
マナ「でも血が出てるよ。・・・・ちょっと待ってて。」

血のにじんだシンジの手に自分のハンカチを巻き付けるマナ。多少なりともシンジが怪我をしたと
いうことでアスカが本気で怒っていたことが分かる。
無論シンジだからこの程度で済んだのであって、これがもし一般人ならば顎骨が粉々だっただろう。
これほどアスカが怒ったのは久しぶりのことだった。

シンジ「ありがとう。・・・・それにしても机がむちゃくちゃになっちゃったね。かたずけなくちゃ。」
マナ「手伝うわ、碇くん。」
シンジ「そんな・・・悪いよ。」
マナ「いいのよ。ねえ碇くん、学校、案内してくれるわよね?」
シンジ「うん、いいよ。」
マナ「だから、そのお礼よ。」

にっこり微笑むマナ。それにつられてシンジも微笑んだ。
かたずけが終わり、学校を案内するシンジ。二年生の教室にさしかかったとき丁度クラスメートとおぼしき
女の子と話しているカヲルと出合った。シンジはその子に見覚えがあった。

カヲル「やあ、シンジくん。・・・・・おや、その子は?」
マナ「霧島マナです。よろしく。」
カヲル「僕は渚カヲル。よろしくね。」
シンジ「あ、ユカリさん。ひさしぶりです。」
ユカリ「あら、シンジくん。」 
シンジ「霧島さんは今日僕たちのクラスに転校してきたんだ。それで学校を案内してるんだ。」
カヲル「ふーん・・・・・・」

マナをじっと見つめるカヲル。

マナ「あ、あの・・・なにか?」
カヲル「いや、なかなか可愛い子だと思ってね。」
マナ「え・・・・そんな。」
カヲル「アスカたちは?」
シンジ「なんだかよく分からないけど怒って帰っちゃったんだ。」
カヲル「なるほどね。」

カヲルは苦笑した。シンジの頬に付いた手形とシンジに対するマナの態度を見ていれば何があったのか
容易に察しは付く。

ユカリ「カヲルさん、何時までも話していないでくださいよ。」
カヲル「おっと、ごめんごめん。」

すっかり忘れられた形のユカリが口を挟む。明らかに不満そうだ。カヲルがマナのことを可愛いなどと
言ったことも原因の一つだろう。

カヲル「じゃ、僕は用事があるからまた後でね。」
シンジ「ユカリさんとデート?」

それを聞いてユカリは瞬時に赤くなった。

カヲル「そうじゃなくて合唱部の方で僕に是非歌ってくれって頼まれてね。これから練習するところなのさ。」
シンジ「へえ、そうなんだ。じゃ、また後でね。」」
カヲル「うん。」

カヲルと別れて少ししてマナが口を開いた。

マナ「碇くんはあんな友達がいていいなあ。」
シンジ「うーん・・・カヲルくんは友達って言うよりむしろ兄弟って感じかなあ。一緒に住んでるし。」
マナ「そうなんだ。」
シンジ「うん。いろいろあってね。」

話しながら校内を案内していくシンジ。二人はやがて屋上にでた。

マナ「きれいなところね。」
シンジ「そうだね。」

遠くから合唱部の歌声が聞こえてくる。気持ちのいい風を感じながらシンジとマナはしばらく黙ったまま
風景に見入っていた。


マナ「もうこんな時間だ。そろそろ帰らなきゃ。」
シンジ「そう?」
マナ「うん。引っ越してきたばかりだから荷物も整理しなくちゃならないしね。」
シンジ「霧島さんの家ってどこ?」

マナの家はシンジの家と同じ方向だった。

シンジ「じゃあ、途中まで送るよ。」
マナ「本当?嬉しい。」



そのころアスカはレイとヒカリと一緒に昼食をとっていた。
ヒカリにしてもどうせ家に帰っても誰もいないのでつきあうことにした。

アスカ「全く何よあの霧島マナって子は!転校してきた早々シンジにちょっかいかけて。シンジもシンジよ。
ちょっと親しげに話しかけられただけででれでれしちゃってえ。」
ヒカリ「でもいいの、アスカ?碇くんをほったらかしにしちゃって。」
アスカ「いいのよ。」
ヒカリ「そんなこといってたら碇くんをとられちゃうかもしれないわよ。」
アスカ「う・・・・」

カヲル同様、シンジもまた女性に人気が高かった。何しろシンジもカヲルもあの外見に加えて成績も優秀で
スポーツも万能なのだ。カヲルの下駄箱は毎日ラブレターで埋め尽くされている。シンジもアスカもレイも
よくラブレターはもらうが、レイはそんなものに興味はないしアスカはいつも通り捨ててしまうしシンジの
ものに至ってはアスカが何かと理由を付けて断らせていた。告白しようにもシンジの場合アスカとレイが
いつもシンジの側にいるため告白のしようがなかったのだ。ちなみにカヲルだけはもらった手紙の全てに
律儀に返事を書いている。そのためカヲルには正式につきあっている子はいないが『お友達』はたくさんいる
のだった。




マナ「ねえ碇くん。何か食べて帰らない?」
シンジ「いいの?」
マナ「うん・・・・・・どうせ家に帰っても一人だし。」

一瞬、寂しそうな表情をするマナ。
気まずい雰囲気を振り払うようにシンジが言う。

シンジ「じゃあ食べて帰ろうか。霧島さんは何がいい?」
マナ「私、引っ越してきたばかりでおいしいお店とかよく知らないから・・・・」
シンジ「じゃあ、この近くにおいしいイタリア料理の店があるけどそこでいいかな?」
マナ「うん。」

商店街の方に入っていく二人。

シンジ「あ、ちょっと待ってて。」

立ち止まるとシンジは一軒の店に入った。すぐにでてくると、

シンジ「はい、これ。」

そういってシンジが差し出したのは女性用の可愛いハンカチだった。

マナ「これ・・・」
シンジ「さっきのは血が付いちゃったから、代わりにプレゼントするよ。」
マナ「いいの?ありがとう。」
シンジ「じゃ、食事に行こうか。」



アスカ「全く馬鹿シンジのやつぅ・・・」
ヒカリと別れた後、アスカはウインドウショッピングでストレスを解消することにした。
レイはあまり興味がないのかつまらなさそうにしている。

アスカ「ねえレイ、あんたはどっちがいいと思う?・・・ちょっとレイってば。」
レイ「黙って。」

レイの見つめる先ではシンジとマナが楽しそうに食事をしていた。アスカも大声を出しそうになったが
何とかこらえて様子をうかがう。

アスカ「シンジの奴何やってるのよ。」
レイ「霧島さんと食事をしているわ。」
アスカ「そんなの見れば分かるわよ。何でシンジとマナが一緒なのかって事よ。」
レイ「さあ・・・知らない。」

そうこうしている間に食事が終わり店を出るシンジとマナ。

アスカ「後をつけようか?」
レイ「無理よ。そんなことをすればすぐに気づかれるわ。」
アスカ「じゃあどうするのよ。」
レイ「どうしようもないわね。」

冷静そうに見えて、実際はレイもかなり動揺していた。とはいえこんな時どうすればいいのかレイは知らない。
マナと楽しそうに話しながら遠ざかっていくシンジを見つめることしかできなかった。



シンジ「ただいまー。」

自宅に戻ってきたシンジを待っていたのはアスカとレイの突き刺すような視線だった。

シンジ「ど、どうしたの二人とも?」
アスカ「シンジ・・・学校を案内するだけにしちゃずいぶんと遅かったじゃない。」
シンジ「ああ、そのあと一緒にご飯を食べて、それから霧島さんを家まで送っていったんだ。」
レイ「碇くん、それどうしたの?」

レイがシンジの手に巻き付けられている女物のハンカチに気づく。

シンジ「これ?アスカにビンタされてちょっと怪我したんで霧島さんが手当してくれたんだ。」
アスカ「いつまで巻いてんのよ。もうとっくに治ってるんでしょ。」
レイ「碇くん、とって。洗濯するから。」
シンジ「いいよ。後で僕がするから。」
アスカ「それじゃ返すのが遅くなっちゃうでしょ。」
シンジ「いいんだ。霧島さんには代わりのハンカチをプレゼントしたから。」
アスカ「な、なんですってえええ。」



カヲル「ただいま・・・って何をやってるんだい?君たちは・・・」

帰宅したカヲルが見たものは見る影もなく散らかされた部屋とシンジを追い回すアスカの姿だった。
レイはショックのためかさっさと自室に引きこもっている。

シンジ「あ、カヲルくん。お帰り。」
カヲル「ほら、アスカもそのくらいにして。部屋をかたずけなきゃ。」
アスカ「うー。」

アスカにしてみればシンジが他の女性に贈り物をするということが、まして自分がしたことがその引き金に
なったと言うことが気に入らない。が、気持ちを落ち着けてみれば少しやり過ぎた気がしないでもなかった。
とりあえず部屋をかたずけ始める三人。




食事も終わり、カヲルとシンジは二人でベランダにでて星空を見ていた。

シンジ「カヲルくん・・・霧島さんのことどう思う?」
カヲル「まだ何とも言えないね。少なくとも敵じゃなさそうだけど。シンジくんは彼女のことをどう
思っているんだい。」
シンジ「なんかいいなって思う。でも何も考えず行動してみんなを危険にさらすほど馬鹿じゃないから。」
カヲル「ハンカチをそのまま返さなかったのも万が一に備えてか。」
シンジ「嬉しかったからお礼がしたかったのと半々くらいかな。」

シンジはアスカが考えているほど浮かれてはいない。確かにいつもよりは遙かに浮かれているがそれでも
警戒は怠っていなかった。自分たちを狙っている組織など数え切れないほどある。ネルフだってその一つ
だろう。血液だって立派な分析対象なのだ。

シンジ「素直に信じることができないって言うのも悲しいことだけどね。」

シンジが寂しそうな表情をする。

カヲル「あまり気にすることはないよ。時間が経てばはっきりするさ。」
シンジ「・・・・・・そうだね。」

そのまましばらく二人で星空を眺め続ける。月光に照らしだされたシンジとカヲルの姿は幻想的とさえ言えた。

カヲル「雲の動きが早いな・・・・」

・・・・嵐の到来であった。




続く




後書き

マナ「皆さん初めまして。ヒロインの霧島マナです。」
アスカ「でたわね、マナ。」
マナ「人を妖怪みたいに言わないでください。」
カヲル「いきなりシンジくんと一緒に食事とはマナもなかなかやるね。」
シンジ「鋼鉄のガールフレンドの影響が大きく出始める話だよね。」
レイ「4人の中で一番私の出番が少ないわ。」
K「いや、どちらかって云うとレイの場合出番はあっても台詞がないような・・・・・・」
レイ「・・・・・・・(ぎろり)」
K「・・・・・・・・前向きに善処します。」
カヲル「で、次からはどうなるんだい?」
K「次からは・・・・・・私の妄想が激しく暴走していますねえ。」
レイ「私と碇くんの話にするのよ。少しずつ惹かれ会う二人。激しく燃え上がる愛の炎・・・・(うっとり)」
アスカ「勝手に妄想しないでよ。シンジには私がいるんだから。」
レイ「選ぶのは碇くんよ。もちろん碇くんは私を・・・」
アスカ「シンジ!あんたはどうなのよって・・・・マナ!こっそりシンジを連れてくなああああああ。」



Kさんへの感想はこ・ち・ら♪   



管理人(その他)のコメント
カヲル 「シンジ君〜」
ゲンドウ「なんだ、うるさい」
カヲル 「おや、これはめずらしい」
ゲンドウ「シンジを探しているのか」
カヲル 「ええ、そうです。」
アスカ 「どこに行ったか知ってるの!! 知ってたらさっさと教えなさいよね!」
ゲンドウ「(大人に向かってなんという口の利き方を・・・・)」
カヲル 「シンジ君、どこに行ったか知ってるんですか?」
ゲンドウ「・・・・ああ」
カヲル 「どこですか?」
ゲンドウ「さっき、第壱中の制服を着た女の子と、ホ・・・・
アスカ 「ホ!?」
ゲンドウ「・・・・ットドッグを食べながら歩いていたぞ」
アスカ 「ホ・・・ットドッグ・・・・汗」
カヲル 「・・・いま、何を想像したんだい?」
アスカ 「な、何だっていいじゃない!!」
カヲル 「どーせホ○ルとかホテ○とか○テルとか・・・・」
アスカ 「その言い方じゃ伏せ字にした意味がないでしょ!」
カヲル 「じゃあ、図星なんだね」
アスカ 「そ、そ、そんなことどうでもいいでしょ!」
ゲンドウ「(まったく、最近の子供は・・・・)」
アスカ 「そもそも、このオヤヂが紛らわしい言い方をしたのが悪いのよ!!」
ゲンドウ「オヤヂとは何だオヤヂとは!!」
アスカ 「オヤヂをオヤヂといって何が悪いのよオヤヂ」
ゲンドウ「うぬぬぬぬ・・・・」
カヲル 「まあいい。じゃあ、ぼくはシンジ君を探しに行くから」
アスカ 「あ、こら!! このオヤヂとあたしだけを置いていくんじゃないわよ!」
ゲンドウ「だからオヤヂと言うなぁ!!!」
レイ  「碇司令・・・・いつもと・・・・違う・・・・」




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