そしてそれから

 

第三話 戦いの始まり

 

 

 

 

ミサトの頼みでアメリカに行くことになったシンジたち4人は今、機内にいた。

シンジやカヲルは気にした風もないしレイはいつも通りの無表情だが、アスカは不満だった。

それもそのはず、シンジたちが乗っているのは軍用長距離輸送機なのだ。

 

 

アスカ「アメリカに行くのはいいとして何でこんなので行かなきゃならないのよ。もっとましなのを

用意しなさいよね。」

 

シンジたちの案内役に任命されたマヤは不満を爆発させるアスカを必死でなだめていた。

 

マヤ「もっとましなのっていうけど、これは最新の輸送機なのよ、アスカちゃん。」

アスカ「そういうことをいってるんじゃないわよ!何で軍用機なのかってきいてるのよ。」

 

さっきからカヲルはなにやら窓の外を眺めて考え込んでいるし、レイは本を読みふけっているし、

シンジはずっとごはんを食べているので必然的にアスカの相手はマヤがすることになる。

また、カヲルの要求で国連極東方面軍の幹部も同乗している。

こちらは口にこそ出さないがはっきり不満だと分かる表情をしている。

ストレスのたまるマヤだった。

 

 

 

だいたい半分くらいきただろうか、という頃にはさすがにアスカも文句を言い尽くして眠っていた。

静まり返る機内。

そしてその静けさを破るかのように突如激しい振動と爆音が機体を襲った。流石に目を覚ますアスカ。

機体が軋む嫌な音がする。

 

レイ「敵襲?」

マヤ「まさか、こんなところで?」

シンジ「やはり国連軍かな。」

軍人「まさか!私が同乗しているんだぞ。そんなことはありえん!」

カヲル「ふむ・・・・人質の価値が低かったかな。」

 

カヲルのいわんとすることを悟って絶句するマヤと軍人。

ネルフが自分たちの抹殺をはかるのを防ぐための策だったのだがどうやら甘かったようだ。

 

アスカ「どうするのよ。」

カヲル「ま、どうにかするよ。」

 

そう言って出口に向かうとためらうことなく外にでる。

 

 

カヲル「く・・・かなり厳しい条件だな。」

 

風が激しく吹き抜けていく。また、気温もかなり低い。戦闘機ごときに後れをとるとは思わないが

長期戦は不利だ。敵を見つけるべく精神を集中する。

カヲルの鋭敏な感覚はすぐに敵を捉えた。即座にATフィールドを鋭利な刃と化して解き放つカヲル。

それは敵を引き裂き、一瞬で決着を着けるはずだった。

しかし・・・・

 

カヲル「な・・・・まさか!」

 

雲の海から巨大な何かが浮かび上がってくる。

予想に反してカヲルが見たものは全長600m程の巨大な生物だった。

翼の生えたガギエルといった外見だが、ドラゴンを連想させる姿でもある。そしてなによりカヲルを

驚かせたのはそのATフィールドだった。自分の放ったフィールドを中和したのを見るとそこそこ

強い奴なのだろう。少なくともこれだけ不利な条件下で倒せる相手ではなさそうだ。

 

使徒は雄叫びをあげると翼を大きく羽ばたかせ旋回する。間違いない。先程の攻撃でカヲルの存在に、自分を

滅ぼしうる力を持った存在がここにいることに気が付いたのだ。

 

カヲル「く・・・・」

 

カヲル自身既に使徒はいないという思いがあったとはいえ、迂闊だった。落ち着けばすぐに気が付いたと

いうのに。内心臍を噛むカヲル。

 

カヲル「それにしても、使徒がその敵対者たるドラゴンの姿をしているとはねえ。」

 

皮肉を言うカヲルだが事態はかなり悪い。敵がターンして戻ってくるまであと1分ほど。

もし敵が戻ってくれば、あれだけの巨体だ。体当たりの一撃で自分は無傷でも輸送機は四散するだろう。

それまでの僅かな時間が勝負だった。

 

 

 

機内は思いもしなかった敵の襲撃に激しく混乱していた。

 

シンジ「マヤさん、これはどういうことですか?あれは一体何なんです。」

マヤ「知らないわ。こっちが聞きたいくらいよ。」

アスカ「嘘言わないで。」

 

いくら問いつめても知らないと繰り返すマヤ。シンジはそのマヤの様子からその言葉が真実であると

見て取った。既に軍人は気絶しパイロットはパニックに陥っている。レイは機体が撃墜されたときに備えて

シンジとアスカを守るべく身構える。

 

レイ「状況が不利だわ。二人とももう少し側に来て。いざとなったら機体を捨てて逃げるから。」

シンジ「分かったよ、レイ。」

アスカ「ええ。カヲルが何とかしてくれればいいんだけどねぇ。」

シンジ「カヲルくん・・・・何とかできるの?」

 

じっと虚空を見つめるシンジ。

 

 

使徒の巨体が大きく旋回し、こちらを目がけて突っ込んでくる。

もはや悩んでいる暇はない。

裂帛の気合いとともに再び刃を放つ。それはさきほどと同様に敵のATフィールドに中和され消滅する。

しかし、僅かにタイミングをずらして放った弐撃目が敵の翼を切り裂いた。

浮力を失い急激に落下していく使徒の巨体。

 

高速で接近する目標に対し一撃目で空いた穴を通して、敵のフィールドが回復するまでの僅かな時間に攻撃を

仕掛ける。

それがどれだけ困難であるかは言うまでもないだろう。

それをこれだけ不利な状況下で平然とやり遂げる・・・・・驚異的なまでのカヲルの能力だった。

 

会心の笑みを浮かべると機内に戻るカヲル。

 

シンジ「カヲルくん!大丈夫だった?」

カヲル「もちろんさ。」

アスカ「敵は?」

カヲル「翼を切り落としてたたき落とした。まあ、とどめは刺せなかったけどしばらくは身動きがとれない

だろうね。」

レイ「厄介なことにならないといいけど。」

カヲル「ま、そのときはそのときで何とかするさ。」

 

使徒には自己修復能力に加えて自己進化能力まである。いずれより強力になって現れることだろう。

本当ならここで仕留めたかったのだがやむを得ない。

とりあえず将来のことより目先の困難だ。先ほどの衝撃で機体はかなりのダメージを負っていた。

そこで手近な基地のあるハワイに緊急着陸することになった。幸い空中分解などという事態には

至らず無事着陸できた。同乗していた軍人はショックのため即座に病院送りになったが。

 

アスカ「はーまったく、始まったばっかりだっていうのにいきなりこれとはねー。先が思いやられるわ。」

シンジ「いいんじゃない。時間はあるんだしさ。」

カヲル「せっかくハワイに来たんだし遊んでいかないかい?どうせ新しい輸送機を用意するのは時間が

かかるだろうし。」

アスカ「それもそうね。楽しまなきゃ損ね。」

 

こうして用意ができるまで遊びまくったシンジたちはマヤが迎えに言った頃にはホテルでぐっすり寝ていた。

その様を見てさらにストレスがたまるマヤ。

 

 

 

あの戦いの後、ネルフはしばらく忙しい日々が続いていた。国連や各国政府に対する事情の説明、

ゼーレとの争い・・・・・

だが幸いなことに、主立ったゼーレメンバーが全員失踪していたためゼーレとの抗争は思ったより早く決着が

着いた。

ネルフの職員は国際公務員なので非常時以外は定時に出退勤できるようになり、時間に余裕が生まれると

当然のように生活に潤いを求めることになる。

以前の戦いでマヤにいいところを見せていた青葉はここぞとばかりにマヤを口説き落とし、

ついに結婚にこぎ着けたのだった。

 

一方ネルフの指令、副指令という重要な役職に就いたミサトとリツコはさらに仕事が忙しくなり

事実上行かず後家が確定している。そのためかさっさと結婚してしまったマヤに対して風当たりが

強くなってきていた。今回の任務もシンジたちと知り合いの方がいいだろう、ということで

決まったのだ。本当はシンジたちにアメリカ行きを要請するのもマヤがやるはずだったのだが、

そのときはリツコに頼まれて他の用事をしていたのでミサトになったのだ。

 

やはり新婚さんの頃毎日のろけていたのがまずかったのだろうか。

先輩や葛城指令もとっとと結婚すればいいのに・・・・心の中ではそう思っても口に出しては言えない

マヤであった。

 

マヤ「いいかげんにしてえー。」

 

流石に限界だったのだろう、マヤは絶叫するとぱったり倒れてしまった。

その声で目を覚ますシンジたち。

 

アスカ「なに、どうしたの?」

シンジ「よく分からないけどマヤさんが倒れていたんだ。」

 

マヤの容態を調べるカヲル。

 

レイ「何か分かった?」

カヲル「彼女の神経はガラスのように繊細だね。」

アスカ「どういうことよ?」

カヲル「精神的な負荷に耐えきれなかったってことさ。でも、どうしようか?シンジくん。」

シンジ「とりあえず救急車を呼ぼう。後はネルフから何か言って来るまで好きにしてれば

いいんじゃないかな。」

 

そんなに気楽にしてていいのかなと思わないでもなかったが、結局他にすることもなく

青葉が迎えに来るまでさらに3日程シンジたちは遊んでいた。

 

或いはそれぞれが戦いを忘れ休息が欲しかったのかもしれない。

空を飛ぶ鳥たちにも休息は必要なのだから。

 

謎の使徒の襲撃はシンジたちに少なからぬ衝撃を与えていたのだ。

それを忘れ一時の安らぎを得るシンジたちはこれから自分たちの身に辛い試練の時が訪れることを知らない。

遊ぶシンジたちのその表情は普通の子供そのものであった。

 

 

 

 

 

つづく

 

 

 

後書き

 

K「なんか・・・・我ながらとんでもないことを書いてしまったような気が・・・・・・」

 

ごめすっ

 

マヤ「何で私が青葉さんと結婚してるんですか。Kさん。」

アスカ「頭から血がどくどく出てるわよ・・・・これじゃしばらく起きられないわね。」

カヲル「一応説明しておくとこの作者は以前Crowさんのページにショタマヤの番外編を投稿して

いるんだ。」

マヤ「しかもこの扱いはなんなんですか。酷いです。シンジくんもそう思うでしょ?」

カヲル「ああ、シンジくんなら身の危険を感じたから今回はお休みだそうだよ。」

レイ「ここではヒロインは私なのよ。あなたは引っ込んでて。」

アスカ「ちょっと、レイ。ヒロインはこの私よ。勝手なこといわないで。」

マヤ「ならはっきりさせましょう。Kさん、真のヒロインは誰なの。(ぷすっ)」

カヲル「おおっ薬物投与で強制的に意識を取り戻させるとは・・・・・」

アスカ「さあ、答えなさいよ。真のヒロインは誰なの。」

K「し・・・真のヒロインは・・・・・」

レイ「ヒロインは?」

K「霧島マナ・・・・・」

 

どかぁっ ぐしゃあっ べきっ ばりばりっ めきっ 

 

K「ぐはああああっ」

アスカ「縁起でもないこというからよ。」

 



Kさんへの感想はこ・ち・ら♪   


管理人(その他)のコメント

アスカ 「軍用輸送機とは何事よ!! アタシを乗せるからには、コンコルドくらい用意しなさい!」

カヲル 「鉄格子付きの?」

 どかっばきっ

アスカ 「だれが鉄格子よ!」

ケンスケ「いいかぁっ!! 飛行機なんてどう粉飾したって、所詮は人間を荷物としてしか扱ってないんだ!! だったら実用性一点張りの軍用機のほうが、装飾過剰な旅客機よりも落ちる可能性は低い!!」

アスカ {まぁーたマニアが現れたわね」

ケンスケ「そもそも、人間たるもの贅沢に慣れてはいけないんだ!! 旅客機をすべて軍用輸送機に置き換えるべきである!!」

アスカ 「じゃ、あんたもそれに乗るってわけ?」

ケンスケ「無論! 戦略自衛隊・国連軍の輸送機に乗れるのなら、問題ない!」

カヲル 「ぱちぱちぱち。立派な心がけだね。それじゃそういうことで

ケンスケ「待った!! カヲル君、君も乗るんだよ!!」

カヲル 「ひとをまきこまないでほしいなぁ」

アスカ 「戦略自衛隊に国連軍ね・・・・それにしては、あの幹部の情けないありようったら・・・・」

ケンスケ「う・・・・・汗」

アスカ 「ほんとだめねぇ、贅沢に慣れた幹部は。旅客機が同こういう前に、まずああいうのをなんとかしないとねぇ、相田ケンスケ君(にやり)」

ケンスケ「・・・・・・無言」




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