第二十二話 運命の歯車・完結編 さて・・・舞台は移ってネルフ帝国の街並みへ。 「近頃なんだかんだと物騒だよな、テロがでたりなんだりで」 「馬鹿言えよ、あの帝国がなくなるんだったら安いもんだぜ」 「そうそう、何でもこのあいだのテロでえらく研究所のドグマ壊されたみたい じゃない」 「いい気味だよな、税率を戦争中の苦しいときに跳ね上げたりするからだ」 ザワザワザワザワ・・・・・・・・ ネルフ帝国の悪政と言ったら天下に名を轟かせ、敵国の神聖帝国サイドすら もその国民に同情するほどだ。税率1、5倍、十四歳以上の男子を徴兵、それ に加えて極度のインフレが帝国中を襲っていた。 「いっそのこと俺達がクーデターを・・」 「馬鹿、もし憲兵に聞きつけられたら命がないぞ!」 「しかしこのあいだのテロリスト・・と言うよりあれは義賊団だよな、俺達の 味方だろ?」 「犯行声明もだされてるぜ、新聞にもほら・・・ここんところに『覇王団』参 上って。メンバー数まできっちり、しかも名前までだされてるじゃねえか」 「覇王団?まさかあの・・・・ほらルウ、十年前にギャラクシーステーション のところでたむろしてたガキ達がそう名乗ってたじゃん」 「まっさかあ。それよりさ、この覇王団のリーダー代行とかいう奴、結構格好 良くない?」 などと巷にどうやって情報が漏れたのか、きっちり写真入りで新聞まででて いる。詳細は一切不明、人数は全部でわずか15名(うち三名は名前のみ)。 たかが知れた影響力と最初のうちは目をつぶっていた帝国政府も、次第に沸き 上がってくる「俺も」「私も」という決起の気配をかぎつける。手を討つが瞬 く間に、一日にして全帝国版内の住民に、いや全人類にその情報は伝わったと いっても過言ではないだろう。そしてそのざわめく住民達の上でクスクスと含 み笑いをする女、覇王団のローザだ。 「こちらローザ、煽動の準備はどうですか。どうぞ」 魔法感知装置に引っかからぬように旧式のトランシーバー(しかも決まった 機種でないとつながらない)で会話を交わす。 『こちらセイホー、下準備はもうするまでもないくらいだ。そちらの様子はど うですか?どうぞ』 「こちらも準備万端、後は火をつけるだけです。他はどうですか?どうぞ」 『こちらデュラン、他も全てオッケーだ。開始は10分後だ、どうぞ』 『了解!』 そして各自トランシーバーを握りつぶし、爆破する。次々と、しかし目立た ぬようにひっそりと不満不平をたらす人混みにまぎれて噂話に参加する。 「・・・だからサー、帝国なんかはっきり言ってない方がいいんだよ」 「同感!いっそのこと俺達でぶっこわしちまわないか?」 「え、でも兵士達が・・」 「これだけの人数みんなが帝国に対して不平不満を持っている、誰か一人が事 を起こしたらみんな助けてくれるさ」 「そ、そうだな。よーし・・」 あちこちで何やら帝国にとって不穏な動きが目立ち始める。最初は帝国碑を 壊したり、ドグマへのハッキングやクラッキングが行われる程度だったがドグ マからでてきた警護兵が民間人を突き飛ばしたのがきっかけだった。 「ほらどけぇ!一体何様のつもりでこのような破壊活動をしている!」 ドウッと突き飛ばされた男は倒れ込み、全身を強く打ったようで動かない。 「お、おい大丈夫か。しっかりしろよ・・」 近くに駆け寄り揺さぶる友人らしき男、しかし開かれているその目は瞳孔が 拡大していた。視線で人を殺さんばかりにその警護兵を睨み付け、ゆっくりと 立ち上がる。思わず後ずさる兵士、しかしここでゆずっては面子と沽券にかか わる。 「ふ、ふん、その男がドグマの扉を破壊したからいけないのだ」 半ば周囲の不穏な空気を突き放すかのように、半ば自分への言い訳のように 苦しげに言葉を吐き出す。とたんにものすごいスピードで群集が押し寄せ、そ の兵士を飲み込みドグマ第一隔壁を突破する。 ワアアアアァッ その波は市街地の国民全てに伝わり、ものすごい勢いで群集が帝国本部へと 突き進んでくる。 「皇帝を殺せーっ!」 「血祭りにあげろーっ!」 「絶対に皇族を許すなーっ!」 「そうだ、自分の息子と部下の娘、挙げ句の果てにはその息子の嫁すら逃げ出 すような奴を皇帝にしておくものかーっ!」 「カヲル皇子は殺すな、あの方はいつも我々国民に平等に接してくださっ た!」 「皇紀も、ユイ様も皇帝の無謀な圧制から私達を守ってくれていたわ!」 「諸悪の根元はゲンドウ皇帝、奴だ!!」 「ゲンドウを血祭りに挙げろ、奴の首を取った奴は英雄だぞ!!」 すさまじい殺意の波がゲンドウ一人に終結していく、もはや完全なるクーデ ターだ。武器でまとめて殺そうとするが兵士達はその姿を捕捉された瞬間に は、どこから手に入れたのか先頭を切っている者達の手に握られているニード ルガンの餌食となっていた。 「でてこいゲンドウ!!貴様の息の根を止めてやるぞ!」 * 「マスター、いかが致しましょう」 「我等MAGI、いつでも国民の鎮圧や説得に努める準備はできております」 「そうですユイ様、いかに言い分が正しいとは言え一国の皇帝に対する態度と しては見過ごしておけませんよ!」 他のちゃらちゃらとした皇族達と違いドレスなどで着飾ってはいない(本人 談:ドレスなど贅沢をするよりも民の暮らしを考えねば)簡素なローブを身に つけたユイの前に、MAGI三人衆が彼女の意見を求めに来たのだ。 「こらメルキオール、言葉を慎みなさい!」 ぽかりと一発カスパーに喰らい、その白と黒の反転している目で抗議をす る。 「ほらそんな目をしても駄目です、ユイ様の前で見苦しいですよ」 「ちえっ、言ってることは間違ってないのに・・」 「メルの言うとおりです、カスパー。私を気遣う必要はありません」 そんな二人を見て諭すユイ、そして三人に背を向ける。 「あの人の招いたことです、あの人に責任をとらせるべきでしょう」 「はい、しかしいつでもお申し付けくだされば我等MAGI、どのようなこと でもいたします」 そんなカスパーに振り向き、優しく微笑んで言う。 「優しいのですね、あなた達は・・」 * ドグマは全て突破され、残すは皇帝の間の扉のみとなった。 「この中に諸悪の根元ゲンドウが・・・・おいやれ!みんな!」 破壊槌でもって重厚な扉を破壊しにかかる、しかしあっさりと扉は開いた。 「さて、この私に何か用かな?」 ゲンドウが姿を現し、ゆっくりと暴徒の中に入ってゆく。 「貴様を殺すために俺達はきたんだーっ!」 真っ正面の位置にちょうど来た瞬間、男の拳は自らの主の意志に沿いゲンド ウの喉元へと繰り出されてゆく。避けようともせず、直撃を受けて吹き飛ぶゲ ンドウ。その直後繰り出された斬激が吸い込まれるようにして首を打つ! ドシュッ ・・・・・ドサッ その直後、帝国中に乗っ取られたカメラで流されていた映像を見ていた人た ちは歓声を一時に挙げた。 ワアアアアァッ 「やったな」 「ええ」 時は9999年、遂に運命は動き出す・・・・
あとがき:06 アスカ:「ようやくあたし達の出番ね、台本によると・・・・ えぇ!!???!???!」 シンジ:「どうしたの?アスカ」 アスカ:「な、何でもないわよ!(真っ赤になって後ろ手に台本を隠す)」 シンジ:「ねえ僕にもちょっとぐらいみせてくれてもいいだろ?一体何が書か れているのさ」 カヲル:「おやおや、台本はきちんと出演者全員にみせないと駄目じゃないか アスカ君(ヒョイッとアスカの手から台本をかすめ取り、目を通す)えええ え!?!?!これはびっくりだねえ」 シンジ:「ええぇっ!?カヲル君、僕にもみせてくれない?」 カヲル:「いや、これはちょっと・・・・むこうのカヲル君が暴走してしまい そうだ、公表するわけにはいかないねえ」 シンジ:「い、一体何が書かれてるの(まだ真っ赤になって放心しているアス カの方を見やる)」 アスカ:ボッ(ますます真っ赤になる) シンジ:「き、気になるなあ・・・・」次回予告 遂に動き出す運命、惹かれ合う宿命の戦士たち。彼らが故郷に帰ったときに巻 き起こされた歓声と、ひとときの安らぎは世界中を駆け抜けた。次回第二十三話、「祝宴」 お楽しみにっ!
管理人(その他)のコメント
カヲル「はぁ〜い♪ むこうのかをるくんでーっす♪」
げしげしげし!!
アスカ「うっとおしいからやめんかそのぶりっこ口調は!!」
カヲル「ううっ・・・・い、痛い・・・・・」
ゲンドウ「痛いのは私だ。クビなど落とされては生きていけんではないか」
カヲル「そうかい? あれはあれで慣れればいいものだけどなぁ」
アスカ「アンタは人間じゃないからね(毒づく)」
ゲンドウ「慣れれば、といってもだな。死んでしまっては慣れようがないではないか」
カヲル「といいつつコメントにはしっかり出ているような」
ゲンドウ「それはまあ、作者の都合という奴だ」
アスカ「それで片づけるとは世も末ね・・・・汗」
ゲンドウ「それはそうと、今後私の復活する余地はあるのだろうな。ユイにすら見捨てられたのでは拉致があかん。そもそも皇帝が死んでしまって、ネルフ帝国の統治機構はどうなる? 皇妃、皇太子を生き残らせるか? 共和制に移行するならば彼らも罪に問われるだろうにくどくどくど」
アスカ「あー老人の戯言ってうるさいわねー」
カヲル「ま、その辺で騒がせて置いて、僕たちは休息でもしようか」
アスカ「賛成」
ゲンドウ「だからくどくどくど・・・・・・おーい。どこへいったー?」