第二十三話 祝宴 は予定変更して

第二十三話 会見 

 二人がカヲルの後を追ってみると、そこにはいくつかの複雑な古代文字で印

されたらしき石碑と存在すらわからぬような高純度のクリスタルでできたモノ

リスがあった。

「これは一体・・・・協力って、ここで一体何をすればいいの?」

 シンジが辺りを見回しながら石碑に手をかけているカヲルに問う。

「それは簡単なことさ、少し君達二人の血を分けてくれればいいんだ」

「二人?でも綾波が・・・あれ?綾波は?」

「彼女なら先程の所でNERV帝国へのゲートを開くための魔法陣を造っている

よ、シンジ君」

 そしてとんっと石碑を人差し指で叩き、シンジの方へと向かってくる。一瞬

掌が光ったかと思うと、その手にはモノリスに負けぬ透明度のクリスタル製の

ナイフが握られていた。目にも留まらぬスピードでそれをふるうと、本人すら

あまりの切り口の綺麗さでそこから流れ出る赤い物を見なければわからなかっ

たほどの切り傷がシンジの左薬指にできていた。血は球となって雫と化し、そ

れをカヲルが何時の間にだしたのか手にした試験管に落とす。

「アスカ君も・・・・」

 そしてカヲルは僅かに光の反射を受け、銀色の閃光が走ったかのように見え

る動きで再びクリスタルナイフをふるう。ほぼ反応しきれなかったアスカも、

シンジと同じく左薬指の中腹にその刃をかすめた。じわりと滲みで、雫となっ

て同じく試験管の中に・・もっともこちらも何時だしたかわからぬ、先程シン

ジの血を入れたのとは違う物だが・・アスカの紅い血が球となって落ちる。

「これだけでもういいよ、君達の協力は得られた。ありがとう、さあ早く

NERV帝国へと戻ろう」

 そういうといつの間にか薄められた朱に染まったモノリスを足場に、レイが

既に九分九厘魔法陣を完成させている先程の部屋へと跳躍した。ヒーリングで

傷を塞ぎながら、首を傾げつつもシンジとアスカもカヲルに続く。

「・・・これでよし、と。さあ三人とも、ゲートを開くから魔力を集中してこ

れに注いで」

 言われるがままに念を集中するシンジ、いやいやながらも帰るためだと自分

に言い聞かせ念を懲らすアスカ、まったく何を考えているのか読みとれないカ

ヲルと魔力制御に神経を割くレイ。世界で一二を荒そう高魔力のアスカとレ

イ、軽々と時空転移をこなすカヲル、不完全ながらも巨大な力を秘めたるシン

ジの四人が集中すると流石にゲートは瞬く間もなく瞬時に形成された。行き先

がNERV帝国である証として見える、三人の最初に集まった中庭の噴水。しか

し微妙に感じられる気の流れにその綺麗な眉をひそめつつ、レイはゲートをく

ぐる。続いてアスカ、シンジとゲートをくぐり最後にカヲルが残った。

「アボリオン、うまくやってくれよ・・・・」

 そうなにもないはずの空間に呼びかけ、カヲルはまるで彼の後ろにいる誰か

に手を振るようにゲートに向かったまま右手を振った。そして閉じつつある

ゲートをくぐり抜け、中庭に咲く花を踏まないように注意深く降り立った。

「さて、主のいない皇帝の間へと急ごうか」

「「「えっ!?」」

 さしたる重要事項と思わせぬ口振りでカヲルはそれをさらりと言い、そして

それに見事にシンクロしたアスカとシンジが驚きの声を上げる。

「どうやら少々間に合わなかったようだね・・・随分急いだつもりだったんだ

けどもね」

 その銀髪を掻き上げながら苦笑するカヲル、それに遅れること数瞬後に遠く

から響いてくる怒号。あまりの統一された一つの熱気に中庭の花々はふるえ、

その怒号の主達が事等へと迫っていることを彼らに教えた。何が起きたのか把

握できなかったアスカとレイもその怒号を魔法でブーストして、推測を事実へ

と昇進させた。

「革命、ってわけね」

「そしてゲンドウおじさま・・・NERV帝国碇九世の死」

「「流石よね、ここまでお見通しなんて」」

「いやいや、事細かに教えてくれる仲間がいるものでね・・・・シンジ君に知

らせようか少し迷ったけど、いずれわかることならそれも良いかと思ってね」

 見事にはもった、その二人の美少女に対しこの二人でなければどんな少女達

も虜にするであろう少しも屈託のない笑顔をみせる。

「父さんが・・・そうか、別にかまいはしないさ」

 その瞳に通常浮かべられている気の弱そうな光が、僅かに青みがかった悲哀

の色を交えている。シンジを気遣う静寂が中庭に生じ、僅かに震える握り拳が

やがて解けた。瞳に力強い赤が混じる。

「大丈夫、それよりも今は・・・・あの人達をどうにかしなくちゃ」

と中庭の一角に遂に現れた群衆を指さした。

「皇帝は殺した、もはやお前達の拠り所はないぞ!!」

 先陣を切っている二十代の青年がにじり寄りながら、パルス式捕縛銃を構え

る。防御呪文を詠唱するレイとアスカ、身構えるシンジ。男が狙いを定めまさ

にトリガーを引こうとしたその瞬間、男の腕を突然つかむ手が現れた。

「待て、彼らはシンジ皇子とアスカ嬢だ。それに後ろに控えている方はカヲル

皇子だし、アスカ嬢の横に並んでいるのは失踪していたゼーレ王国の王女レイ

様だ。銃を構える必要はない」

 そしてその男・・少し長めの髪を紐で束ね、鋭気の溢れんばかりの鋭い目つ

きをしてい、標準よりも高い背と均整の取れた戦士の体つきをしている・・は

四人の方へ歩み寄ると、すっとあらかじめ用意されていた丸められた書状をシ

ンジに手渡した。目でその男に促され、紐ときてシンジがその書状を読み上げ

た。

「・・・われわれ民衆は碇九世の悪政に長き間耐え難きを耐え、苦しい生活と

重税、徴兵に不平不満を言うことすら憲兵の存在のためままならずその思いを

この度機会まで忍んできた。結果、我々民衆の力により碇ゲンドウこと碇九世

は死に至った。我々民衆は第一皇位継承者たるシンジ皇子を殺す意志はなく、

その新皇帝即位をむしろ喜んで受け入れよう。しかし、その即位の前に我々は

過ちと悪政の道を新皇帝に進ませぬ為にも約束していただきたい、決してその

膨大な権力を持って民を虐げ、私利私欲を追究せぬことを。今日という日、今

というこの時全ての国民に誓って欲しい、良き皇帝であることを・・・・」

 シンジはその短い、しかしたしかに全ての意志がこめられた書状を幾度か口

の中で反芻し、そしてその面を上げた。

「・・みなさん、僕の部屋にカメラを運んできてください。そこで話がありま

す」

                 *

「一体何を話すつもりなの?シンジ」

 MAGIをつき従えたユイが、会見の準備の執り行われているシンジの部屋

へと入って来た。

「母さん・・・別にそんな大それたことを話すわけじゃない、とにかく聞いて

てよ」

 その顔を見て少し考え、頷いてからユイは言った。

「あなたがどれほどの器か、見させてもらうわよ」

 それに微笑みで返答をするシンジ、そして傍観者となることを決め込んだの

かユイは最前列の席にMAGIとともに座る。

「・・ねえ大丈夫なの?本当に」

「アスカまでそんな心配することないよ、この会見は新皇帝としてでなく、む

しろ僕という一個人の考えたことを話すだけなんだから・・・ちょっとアス

カ、聞いてる?」

 いつになく弱気なアスカ、やはり両親とも行方知れずで弟が彼女を捜しに

行ってしまったというのが堪えたのだろうか。それを気遣ってシンジが服装を

正しながらアスカに優しく声をかける。

「大丈夫、あの伝説の『残酷な天使』がついてるんだから心配はいらないよ。

それにアスカの両親・・・しばらくたてば僕の義理の両親にもなるわけだけ

ど、それだってこの会見が終わってから一週間以内には必ず分かるよ」

 うん、と小さく返事をして頷くアスカを横目で見、その髪型を整えているカ

ヲル。そしてレイもネックレスをつけながらその二人の様子を眺めていた。

 彼らの服装はレリエルによりここまで運ばれたアルミサエルの力によって美

しく、しかし決して贅沢には見えぬものへと変えられていた。

「さあ、準備も整ったみたいだし行こうか」

 そして四人はすっと控え室・・もっともシンジの部屋でもっとも使用頻度の

少なかっただだっ広い部屋だが・・の扉を通りその姿をカメラに写した。奇妙

なまでに静まり返り、私語するものは一人たりともいなかった。皆カメラを構

え、レコーダーをセットし、その一言一句一挙手一動足たりとも漏らさぬよう

にしている。急ごしらえの会見席に着き、軽く目をつぶってしばらくの間を取

るシンジ。そしてやにわに口を開く。

「・・まず最初に僕は言いたいことがあります、新皇帝として即位するとい

う、ですが・・・・これはやめました。帝国というのは専制君主のもので、そ

して過去から学ぶように最良の専制政治は最悪の民主政治よりも悪いことはな

いのです。ここに今僕は、NERV帝国の事実上消滅を宣告します」

 どよめきが起き、そしてすぐに次の発言に合わせておさまる。

「厚かましいこととは思いますが僕は、民主政治もやるつもりはありません。

理由はごく簡単なものです、民主政治とはある特定の人物に何かを任せ、人々

を堕落させる原因ともなりうるからです。そこでです、僕は全国民の方々の意

志であろう書状に書かれていた、僕の即位をむしろ快く思ってくれると言うお

言葉に甘えて専制政治でもない、民主政治でもない双方の良い部分を最大限活

かした政治をやらせていただきたいのです。無論僕一人が政治を行うわけでは

ありません、とりあえずはここにいる四人で政治を執り行いたいと思っていま

す。それに形にとらわれることのなく、優秀かつ人望のある方々が才覚を示せ

ば喜んでこの若輩の身です、その座を明け渡しましょう。とりあえずはここに

いる四人が中心に政治を執り行い、補佐としては僕の母である元皇紀様とそれ

に従う万能のMAGI三人に当たってもらう構想ですが優秀な人材の見つかり

次第政府を組み立ててゆくつもりです。制度については悪い点が見つかり次第

変わるようにもしますし、時代の流れに臨機応変に対応できる法律も創るつも

りです」

 ここで一息つき、シンジは傍らにある水を飲むと沈黙した。しばらくしてカ

ヲルが後を継ぐ形で口を開く。

「・・今シンジ君が言ったように僕たちはみんなにとって最良の国づくりをし

たいと思っている。だがそれだけではない、基本的に政治を執り行う人物はお

節介であって欲しいと思っている。民主政治の悪い点はここにもある、法の規

制の締め具合が難しいために緩くすれば政治に携わる人々が賄賂という形で私

腹を肥やし、税金は本来あるべき国民の為に使われない。そして厳しくしすぎ

れば水清くして魚住まず、と言うように少しのゆとりもなき生活を国民に強い

ることとなってしまう。ここで要求されるのは国としての機能だけでは駄目な

んだ、君達国民の一人一人がけじめをわきまえ、賭博に溺れて死ぬ者のないよ

う精々一月分の給料を賭ける程度に、私怨があったとしても決して殺さず骨折

程度に、後のことも考えて殴るとかその類の賢さを持ち合わせなければ駄目な

んだ。ここで要求される物は何か、それは古来から言われてきたように文明と

しての開花が必要なんだ。文化の開花は人々の心を磨き上げ、美しくする。無

論汚れきった心の方が好ましいと感ずる人々もでようがその人々にはまた違っ

た価値観があり無理強いすることはできない、その人達にあった国へと移って

もらうのがいいだろう」

 一気に言ってのけると不意にカヲルも口をつぐむ。そしてレイがやにわにそ

の目を大きく見開き口を開く。

「・・そもそも国というのは人が集まった集団として、人が個人として最大限

に自由にあれるように存在する物なの。だから集団としての協調性、調和性な

どは求めずに基本的には今度の国では個人を最大限重きをおいて見れるよう

な、ちょうど例えるならばまったく他の国に頼らずに存続している永世中立国

であるクロノスみたいな場所にしたいの。あそこはお節介な人が他人のために

献身的に好き好んで政治を行い、決して汚職などは起きないわ。そして犯罪も

まったく公平に、本人達同士での決着を見届けるという形で裁判も行われてい

るわ。非が片方のみにあったのなら被害者がその犯罪の内容に応じてある程度

の減刑、増刑などができるようになっているし双方にあった場合は裁判者がふ

さわしい刑罰を、決して更正できなくなるような刑罰は絶対下されることなく

下すの。だから国民性として全体的に完璧に個人が尊重されていて・・まあ

もっとも技術が発達していて広いあの国ならでわのことなのかも知れないけ

ど、とにかくそんな国を目指したいのよ」

 そして目を閉じ、一つ大きく息を吸い込む。最後にアスカが口を開く。

「そしてこれはもっとも大事な事項なの、良く聞いていてね。・・実は人同士

が争っている場合じゃないの、だから現在戦場の方も交戦箇所は一カ所もない

わ。ハルマゲドン・・・この単語を聴いたことのない人は多分いないでしょ

う、それが今起ころうとしているらしいのよ。もちろんあたしだって信じられ

ない、けれども事実なの、疑う余地もない事実なの!」

 大きなどよめきが上がり、先程よりも長く続いた。それはアスカがその間を

はかっていたのであろうけれども、明らかに先程の物とは異質な長さだった。

「・・・そしてそれを証明してくれる人たちがいる」

 すっくと立ち上がり、その深紅の瞳をカッと見開くカヲル。部屋の空気の質

が膚で感じとれるほどに変化した。そしてカヲルは目を細めながらそれとほぼ

同じ一定したスピードで右手を上げ、そして再び目を見開くと同時に右手が大

きな音と衝撃波を伴い振り下ろされた。


   ザクッ


 そしてカヲルの振り下ろした手刀の切り裂いたであろう空間に異常が発生し

た、突如として砕けたのだ。その空間にあいた穴から現れた姿は火野とショウ

の二人のものに相違なかった。

「お初にお目にかかる諸君、俺がクロノスのリーダーであるバスタード=ショ

ウだ」

 その鮮やかなグリーンの長髪を揺らすことなく、その場にいた群集全てを圧

倒して部屋へ降り立つ。

「・・そして俺がクロノスの一応、義理で、しかたなく手伝っている火野竜馬

だ」

 その体から吹き出る巨大な、しかも意識していないであろう闘気に群集は全

身を汗で濡らした。二人はシンジ等四人の視界を塞がぬようにはじの方へと移

動したがその存在感に飲まれる者が大多数で、そしてそれと同時に彼らは自分

の中に沸き上がりつつある押さえ切れぬ不思議な感情を認知していた。

「今アスカ君が言ったようにこの世界にはハルマゲドンが起こされようとして

いる。しかも人間達の手で、だ」

「その事について証明してみせろと言うのならば実際に天使と悪魔の戦う場所

へと連れてゆこう、希望する者はいないかな?」

 辺りを見回す火野、しかし挙手する者は一人も・・いや、いた。

「私はぜひとも見届けておきたいわ、今何がどこで起きているのかを」

 ユイとMAGIだ。その言葉に頷くと、火野は

「ここで話すべきことを話してからお連れいたしましょう」

と言った。

「天使と悪魔、わかりやすく言い換えた言葉だが実際にはもっと複雑な要素が

絡まっている。残念ながらそれを語るべき時でも、またその権利を持っている

わけでもないので詳しくは語らないし俺達の役目は『真実を見たい者』に真実

をみせることだけなんでな」

「ショウの言ったとおり、俺達と真実を見たい奴だけこっちへ来い。それので

きない臆病な人間はこれ以降時代に求められぬだろうさ」

 やがておずおずと立ち上がると、少年報道員が歩み寄る。その手にはカメラ

もレコーダーもなく、未来への希望が握られているのであろう。

テレビを見てきたのであろう、やがて少年達が扉を打ち壊して入ってきた。

「結局未来を開くのは未来に生きる者だけか、今を生きる人できてくださるの

はユイさんだけとは情けない話だ」

 そしてショウはシンジの方を振り向く。

「シンジ君、君はユイさんが行く前に発表しておきたいことがあるんじゃない

か?」

 とたんにシンジとアスカの顔が紅く染まる。興味津々でユイも聞く。

「発表しておきたいことってなあに?シンジ」

 カメラがシンジの方へとようやくむけられる。ますます紅くなり、そして覚

悟を決めたかのようにシンジは立ち上がった。

「えっと・・その・・・・・ぼ、僕はアスカと婚約します!」


 言った後にシンジもアスカもカヲルの瞳ほどに紅く染まり、そしてやがて群

集から、ショウの元に集まった少年達から、ユイとMAGIから、ショウと火

野から、カヲルとレイから拍手が巻き起こった。






                 *






 その後、ショウと火野は少年達とユイとMAGIを引き連れて再び異次元へ

と旅立った。

 シンジ達?シンジ達はと言えばそのまま大広間へ行って婚約パーティーに

なった。その時の様子はまた後日、と言うことで・・・・











あとがき:06 シンジ:「予定、変更になっちゃったね」 カヲル:「しかたないんじゃないかな、この作者だからね」 アスカ:「でもこれまでに較べて長くなったわよね」 レイ:「たしかに、随分前より長くなったわね」 アスカ:「これであたしとシンジが結婚して、それで終わりならいいのに」 カヲル:「そういうわけにも行かないさ、作者から送られてきた台本によると ようやく四分の一が終わったとか・・・・」 レイ:「しかもこの作者の予定が長引かなかった試しがないわ、下手をすると 百話どころか百五十話ぐらいになったりして」 シンジ:「あ、でも一応作者さんこの作品の構想完成したんだ」 カヲル:「でも構想完成直後に予定変更、随分と長引きそうだよ」 ショウ:「多分この作者、構想変えるぜ」 火野:「そうそう、俺と同じ名前の奴だからな。」 ショウ:「・・・自慢になってねーぞ、火野よう」 火野:「だが、モデルは別人だぞ!」 アスカ:「どちらにせよ出演料が沢山きそうね、嬉しいわ」 レイ:「座談会になる前にあとがきやめましょう、お開き」 アスカ:「チェッ、つまんないの」 (どやどやと去っていく一同)
次回予告
 テレビの反響は大きく、それは神聖帝国も同じことだった。和平を望む人々 が集い、今会談がなされようとしている。
 次回第二十四話、「第一次和平会談」 予定変更するかもね

火野竜馬さんへの感想はこ・ち・ら♪   

火野竜馬さんのぺえじはこ・ち・ら♪   


管理人(その他)のコメント

カヲル「国という形について、ね」

アスカ「個人の尊重なんて当然のことでしょ」

カヲル「困ったことに、それを分からない人が多いんだよ」

アスカ「国が主体なのか、個人が主なのか。国がなくても人は生きていけるけど、人が居ない国は国じゃない。そう考えれば自明の理りじゃないの」

シンジ「すごいねえ、アスカ。さすが大卒のことはあるよ」

アスカ「アンタバカ? だいたい国なんて言うのは人がより安全に生きていくための一つの手段でしかないのよ。原始人が国をもっていた? 国がないと人は生きていけない? そんなことないじゃない!」

シンジ「あ、うん・・・・」

カヲル「集団だってそうさ。人が一人で生きていくのは孤独で辛いことだ。しかし、集団の中でしか生きていけないと言う訳じゃない。集う人を拒むべきではないし、離れる人も拒むべきではないんだよ」

シンジ「カヲル君も、すごいねえ」

アスカ「閉ざされた人。閉ざされた集団。閉ざされた国。どれもいいもんじゃないわよね」

カヲル「ほほう、心を閉ざした経験者は違うねぇ」

アスカ「誰が経験者よ!!」

 どかっばきっぐしゃっ

カヲル「うがぁ・・・・ぼ、暴力反対・・・・・警察に・・・・つかまるよ・・・・」

アスカ「ふっ。アタシは許されるのよ!! なにしろ全国1億2千万の下僕がいるんですから!」


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