「・・で、話とは?」

 ゲンドウが改めて聞き返す。

「この件に関する報酬を・・」

『報酬?』

 思わず聞き返してしまう一同。しかしそんな周囲を無視して話を進めるアル

ス。電卓を取り出し、ピッポッパッといった具合である。

「こんなもんでどうでしょ?」

「ううむ・・・もう少し負けてくれんか?かわりに必要経費はこっち持ちで前

金も払う。こんなもので・・・どうだ?」

 しかしそこはやはり一国を治める皇帝、商談を安く値切りにかかる。

「うーん・・・・こんなもんで?」

 こんなやりとりがおこなわれている中、カゲルは大きくため息をついた。

(どうにかしてよ、この人達・・・・でも本当にこの人があの残酷な天使なの

かな?そもそも噂と言うより伝説に近いし、もしそうなら年齢だってかなり

いっていると思うし・・・・)

 ぽんと肩を叩く音。

「お互い色々大変だね、カゲル君。」

 振り向いた先には彼の大の親友、シュウがややうんざりした顔で立ってい

た。

「ホント、今頃俺達の姉様方は何をしているのやら・・・・」


第十九話 運命の歯車


「・・・じゃあこれでいいですね?」

「うむ、やむをえまい。」

「商談成立、と・・・・あ、はんこお願いしますね。」

「君はえらく古風なのだな、見かけによらず・・・・よしっ、これでいいだろ

う。」

「毎度ーっ!」

 そうこうしているうちに商談もまとまったようだし、アルスも上機嫌みたい

だ。アルスはくるりとカゲル達の方を振り向き、突然こう宣言した。

「これから君達四人+まだあっていないもろもろの人々を戦争が終わるまで守

ることになった傭兵の『残酷な天使』アルスだ、改めてよろしくなっ!!」

 さらに呆気にとられる一同を一向に気にする様子もみせずこう続けた。

「これより君達は数日前の晩から行方不明になった三名の捜索のため、俺と同

行してもらう。シュウ君、だったね?君は見た所魔力が高いようだからこれか

ら探知役に任命する。シオリさん、だったね。君はカオリさんと一緒にえっ

と・・・・その動きづらそうな服からこっちの特製の服に着替えてもらう。カ

ゲル、君はシンジ君とアスカちゃんを知る唯一の魔力の高い人物だ、シュウ君

と一緒に探査役をお願いするよ。」

 と一気に話したいことを話すといきなり今度はものも言わずに床に魔法陣

を描き始める。何やら複雑なタイプだがおそらく魔力増幅用の魔法陣だろう。

「・・君達二人はこの上でこれから俺の教える呪文を詠唱し、それからそれぞ

れレイちゃんとアスカちゃん、それにシンジ君を思い浮かべるんだ。いい

ね?」

 いきなり忙しくし始めたアルス、どうやらやっと本腰を据えたらしい。

「呪文はこうだ、まずこう印を切って・・・・・」

 それからおよそ三十分、皇帝の間では準備が忙しくとりおこなわれた。

                 *

 後ろで忙しく執務を執り行っているゲンドウを除いて全て準備は整った。

「ちょっとおかしいけど、まあそんなにひどくはないからいいわよね。」

「何が待っているかわからないのですもの、この際見た目はかまわないわ。」

 まずシオリとカオリだが、この二人はさんざ文句を言った挙げ句に結局機能

性重視を考えて呪符を織り込んである暗殺専用の黒装束に軽合金の羽織を羽

織った。その後さらに魔力増幅のため、魔法陣の描かれた白の手袋も身につけ

させられた。

「久しぶりにまともな服に着替えるな。」 

 カゲルはというと、白兵戦用のライトアーマーにアスカの部屋にあった家宝

の剣を背負った戦士の姿だ。なかなかの若武者ぶりだ。

「こんなものでいいかな?」

 シュウは運動よりも魔法が得意、だから魔導師のローブに身を包むだけ。

「シンジのこと、頼んだぞ。」

 出発前にはゲンドウからそんな言葉もでた。それに笑って答えるアルス。

「いくぞ、みんなっ!」

『ハイッ!』

 たちまち白い光に包まれ、五人の姿は時空の彼方にかき消えた。

 静寂が久しぶりに皇帝の間を包む。

「アルス、か・・・・」

 ゲンドウが呟いていると伝令が血相を変えてかけ込んできた。

「大変です、またも反政府派が現れ今度は壱拾弐ブロックのS2発電所がやら

れました!!死傷者、行方不明者の数は不明、おそらく千はくだらないでしょ

うっ。さらに今後の活動声明もだされました、今度は軍部の兵器庫を破壊する

とのことです。国民達はこの事件で反政府の思想者が増えた模様で、ニュース

にも大きく取り上げられました!」」

「フム・・・・困ったものだな。」

 ゲンドウはため息を大きく一つついたかと思うと、皇帝の間から個室へ退い

た。

「テロリスト共が、私のシナリオを邪魔しおって・・・・」

                 *

「・・・・なるほど、それで皇帝はんなんて言っておった?」

 トウジがスープをすすりながらケンスケに尋ねる。昨夜先に眠ったトウジと

は違いケンスケはその後も色々とうざったい確認作業等を済まし、さらに皇帝

自身にまで直接話して事情を説明していたのだ。

 ケンスケはトーストをかじり紅茶で飲み下し、問いに答える。

「本人とデータで照合した結果確定した、おめでとうな。ただ将軍の座はもう

新しい奴がもっていたそうだ。ただし俺がトウジの軍師になり、近頃出没して

いる盗賊をとらえたら将軍の座を再び用意すると言っている。もっとも費用物

資はいっさい手を貸さないそうだ、余程トウジのだした損害が痛手だったよう

だな。」 

 すると不適に笑いトウジはこう返す。

「メシはヒカリのうまいの喰って、作戦はお前が練って、ワシがパチキでもか

ませばそれで十分や。皇帝はんもつくづくワシの力に未練があるようやな、こ

んな簡単な条件を出すとは・・・・さっそくデータ集めよろしくな、ケンス

ケ。ヒカリ、ここにはまだなにか使えるマシンあるんか?」」

「OK、俺に任せといてくれよ。」

「ええ、貴方のつくっていたマシンを完成させておいたわ。毎日メンテナンス

をしていたから今からでも出れるわよ。」

 心強いことである。トウジはさっそく食事を早々に済ませ、実戦の感覚を取

り戻そうとトレーニングルームへと向かった

(ワシの設計しとったマシン、あれが完成しとるんやったらあとはワシが今度

あの化けモンとやっても負けんようにするだけやな)

 黙々とトレーニングを続けつつもそんなことを考えながらふと気づいたトウ

ジはトレーニングを中断した。

「・・・・メシを食ってすぐトレーニングしたら、ワシの体にも作ってくれた

ヒカリにも悪かったな。食休みした後や・・・・」

 つぶやいた後大の字になって休むトウジ、脳裏には今でもあの戦闘の折のア

ルスの姿が焼き付いている。迫り来る紅い翼の天使、そして・・・・

(ワシ・・・・何で生きとるんやろ?)

 再び湧く疑問、そしてふと身を起こし考えた。

(メグミは、どうしとるんやろ・・・・)

 鈴原メグミ、ちょっとやんちゃでお転婆な十一歳の妹。もしも自分の屋敷に

戦闘を仕掛けられたらと思い、帝国にいる両親の元においてきたままだ。人一

倍妹思いのトウジは帝国一の戦士を有し、最強の防御網をもったこの屋敷にも

一度もメグミを来させることはなかったのだ。

(ワシが生きとるってわかって、今頃安心しとるやろうなぁ・・・・人に心配

ばかりかけとるのう、ワシは)

 苦笑しながらも立ち上がり、またトレーニングを開始する。

(もう負けるわけにはいかんのや、もう二度と人を悲しませるわけに

は・・・・)

 トウジは密かな決意を胸に抱き、燃える闘志を呼び戻す。そう、昔の戦場で

がむしゃらに戦っていた頃の熱い闘志を・・・




 時は銀河歴9999年、後に激動の年と言われた年であった。





 後書き:03 カゲル「再起不能になった作者にかわり今回は俺とシュウで後書きします。」 シュウ「さて、序盤もいよいよ大詰めとか作者の手記によるとなっております がはたして総計何話で終わるのでしょう?運命の歯車は今まさに勢いよく回っ ております。」 カゲル「序盤のメインだったらしき会食も終わり、キャラクターもだいたい出 揃った(らしき)ところで運命は今何を伝えようとしているのか?」 シュウ「行き当たりばったりの作者が初めて出す次回予告、はたしてこれから の超妖魔異次元時きゅ・いてっ!!・・・・とにかくこの作品はどうなるの か?」 カゲル・シュウ「お楽しみに〜!!」
次回予告
 
久々の登場に思わずはりきりすぎるミサト。完成も間近な『生命 体コンピューター』三体を調整するリツコ。    はたしてメルキオール、バルタザール、カスパーはどんな形で登場するの か? 次回第二十話、運命の歯車2 この次もお楽しみにっ!!

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管理人(その他)のコメント

カヲル「あー、今回から次回予告がついているけど、これは火野さんが書いている奴だから」

アスカ「なんか最近無気力ね、アンタ」

カヲル「とんでもございません。そうみえるのはきのせいきのせい」

アスカ「あんたが何にも策略を巡らさないのにひらがな発言をするところが怪しいのよ」

カヲル「ああ、そうかなぁ・・・・すると、やはり疲れているのかも知れない。いろいろとね」

アスカ「逃げた作者の電波をまともに受けているからよ。トウジみたいに身体でも動かせば?」

カヲル「ぼくは筋肉ダルマになる気はないから。そんなことはしないよ」

アスカ「じゃあ、シンジみたいにチェロでも弾くとか」

カヲル「僕の知っている歌はベートーヴェンの第九だけさ。歌はいいね〜」

アスカ「・・・・やっぱり、今日のアンタ、おかしいわ」


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