「今度は誘導はなしよ。」

 そのレイの言葉に頷くカヲル。

「ああ、僕とてできることならその溢れんばかりの知性を総動員して覚醒して

欲しいからね。・・で、君が存在論を十分に理解し、かつ想いの力理論もわ

かっていることを確認したので次の論題へ移行させてもらうよ。」

「・・・・試した、ってわけね。いいわ、次の論題は何?」

「次はだね、この不可解な突然の訪問者達について、だよ。」

 そういうが早いか振り向きざま空間を斬り結ぶ。

 その空間の裂け目からは二つの人影が現れる。そう、火野とショウだ。

「ほう、よく気がついたな。」

「俺達に気がつくなんて、相当の腕の持ち主。」

 軽く無駄口をたたきながら進み出て席に着く二人。

「この人達、僕の記憶はおろか暗黒神話、死海文書にも載っていない存在なん

だ。何者だと思う?」

 カヲルがレイに向かって問いかける。

「さあ、私にもわからないわね。・・・・でも決して害意はないわね、断言し

てもいいわ。」

「ありがたいお言葉で。・・・・で、自己紹介をさせてもらうと俺は火野竜

馬。」

「俺はバスタード=ショウだ、聞いたことはあるまい。」

 アスカが妙な顔をしてじっと火野の方を見つめている。

「何か俺の顔に不審な点が?」

「おおありよ、むかし見た物語の主人公にそっくりだわ。」

 間髪入れずに言葉を返すアスカ。

「それは俺も、とても有名になったって事かな?」

「それはないって、火野。」

 苦笑するショウ。

「そもそも俺達はここに干渉して良い存在じゃあない、悪いことは言わないか

ら黙って俺達を時空の狭間に返してくれないか?」

 しかしその言葉に一同首を横に振る。

「おやおや、随分と怪しまれているようだ。・・ならばこの場は・・・・」

「おお、あいつらにバトンタッチして・・・・」

と言うが早いか二人はかき消え、それと同時に別の青年が現れた。

「ったく、人使いの荒い人だなー。」

「しかたない、これもまた定めだ。」

 一同より不思議な顔をしてみせる。

「自己紹介、俺は竜造寺ガイ。この時空担当の者だ。」

「同じくこの時空担当の加賀音日比斗だ。」

「簡略に説明してこの場を去ろう・・・・さっき現れた二人は俺達の上司みた

いな者で、俺達は運命変更者だ。」

「それはいわゆる未来から来たタイムトラベラー?」

 レイが質問する。

「ちょっと違うな、これから起こる不幸なことや起きてしまった不幸なことを

幸福へと導く者だ。」

「なんだか妖しい宗教みたいね。」

アスカがつっこみをかます。

「いやいや、君らとはまた後でお会いしよう。ではではさようなら。」

 瞬時に消え去る二人。・・・・しばらく続く沈黙。

「・・い、今のことはなかったことにして次の論題に移ろう。」

第十六話 会食弐

「なんだか変なことが起きたみたいだけど気にせず次の論題に移るよ。今度は

アクシデントなしだ。人類補完計画、ってしっているかい?」

 一同首を横に振る。

「だろうね、じゃあ全貌を話しておくよ。そもそもサードインパクト以前には

人は今のように魔法を使えなかった、科学力も今ほどではなかった。なぜこれ

だけ一気に進化したと思う?そう、人類補完計画のおかげさ。結論からおか

げ、と言う言葉を使っているけれど直接進化させたわけじゃあない、ただきっ

かけを作っただけさ。・・二人ともさっきあの情報貯蔵庫であれをみたね?」

 こくりと頷く。

「あの中味は全て、人類補完計画についてのことだよ。人類はそもそも不完全

な生命体だった、それを補完したのは『使徒』という存在なんだよ・・さっき

君の記憶に甦ってきたね?そう、あの存在達の特殊能力と最後の使徒である人

類が融合して生まれたのが今の僕らさ。・・・・で、たまに僕や僕の仲間みた

いに使徒の特色や記憶を強く持って生まれてくる者達がいる。僕は知ったん

だ、いや生まれたときから知っていた・・・・僕の記憶は十七番目の使徒、

『渚カヲル』という使徒と同じ記憶を持っている。そしてそれは、君の記憶の

底に眠っている『碇シンジ』という記憶の中にも記されている存在だ。その記

憶が僕に訴え掛けてくれた、最後の審判の時は近いとね。審判の時、とは紛れ

もなくハルマゲドンのことだよ、最終戦争。天使と悪魔の最終戦争、遥かな過

去から繰り返されてきた終わりなきとさえ言われていた戦い、それに終止符を

打つのが君ら『人間』なんだよ。わかりやすく言おう、使徒とは天使のことで

それは僕とその仲間達のことだ。・・・・そして悪魔とは、まだ封印から解き

放たれていない者達のことだ。この戦いを天使側の勝利とするにはシンジ君、

君の中の隠された力が必要なんだ、協力してくれ!」

 シーンと静まり返る。

「・・・・僕にそんな力が?」

 久々にシンジが口を開く。

「そう、正確に言うと君とアスカ君との想いの相乗効果の力がこの戦いに終止

符を打てるほど、そしてそのほか全ての因子が集まればより確実に僕らの勝利

となるんだ!!」

「ちょっと待ってよ、そもそも天使側が勝って人間に利益はあるの?」

 レイが口を挟む。

「ああ、あるとも。天使側が勝つと人類は皆永遠の平穏の中静かに進化してい

くようになる。反対に悪魔側が勝つと進化と退化の繰り返し、激しい能力の差

がしまいにはついてしまうようになるんだ。」

「そう、それは悪いこととは想わないけど・・・・失礼、続けて頂戴。」

 レイが続きを促す。しかしカヲルか首を横に振る。

「もう話すことはこれぐらいさ、しばらく君たちでどうするか話し合ってく

れ。その結論の後でメインディッシュだ。」

 そう言うとカヲルは退室していった。

「・・・・どうするの、シンジ!?あんな変態の味方になるの?」

「いや、正直言ってまだなにがなんだかよくわからないし・・・・綾波と話し

ててくれないか?」

「しかたないわねー・・・レイ、あなたはどう思うの?」

 アスカはレイに意見を求める。

「そうね、私個人としてはこの二者一択の選択肢にもうひとつつけ加えたいわ

ね。人類は人類として第三者として参加する、っていうね。」

もっともな意見をレイは提唱する。

「そうね、今更そんなアタシ達の知らない過去のことを蒸し返されてもアタシ

達はアタシ達だし・・・・アタシも同意見かな。シンジ、考えはまとまっ

た?」

「まあ、アスカがそう言うのなら僕もそうしてみるよ。僕自身どちらか一つっ

て言うのは好きじゃないしね。」

 三人の意見がまとまった、と同時にカヲルが戻ってきた。

「どうやら早くも意見がまとまったようだね。で、答えは?」

 三人は口を揃えていった。

「「「第三者としての人類の参加を希望する。」」」

 その答えをある程度予想していたかのようにカヲルは頷く。

「うん、その選択でも良いさ。・・・・それに正直言って僕自身も人類自身の

歩みたい道をもう歩ませた方がいいと思うしね。」

 そして再び席に着きシンジ達に食事を促す。おおかた食べ終わった頃合を見

計らってまた指をパチッと鳴らす。

「オーケー、メインディッシュに入ろうか。」



火野竜馬さんへの感想はこ・ち・ら♪   


管理人(以外)のコメント

シンジ「前々から思っていたんだけどさ」

アスカ「何、シンジ」

シンジ「この作品の中に時々出てくる「火野」ってひと、作者の火野竜馬さんと同じ名前だよね」

アスカ「それが?」

シンジ「まさか、作者自身なのかなぁ?」

アスカ「そんなことアタシに聞いても分かるわけないじゃない。火野に直接聞きなさいよ、直接」

シンジ「それに、今回出てきた謎の人物も日本人風の名前・・・・」

アスカ「はあ?」

シンジ「この世界の宇宙は、日本人の支配する宇宙なのかな・・・・」

アスカ「・・・・あんた、佐藤大輔病はまってるわね・・・・」

シンジ「え?」

アスカ「・・・・いちいち説明するの、めんどくさいからこれをよみなさい、これ」

シンジ「・・・・『地球連邦の興亡〜オリオンに自由の旗を〜』・・・・アスカ・・・・なにここで丸山さんの好きな本の宣伝をしてるんだよ・・・・

アスカ「(まさか裏で取り引きしたなんて・・・・いえないわよね・・・・(汗))」


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