アスカとシンジ、二人の意志はもはやはるか時空をも超えているだろう。

 ただひたすらに一途な、しかし死すべき者のはかなき情熱。

 そんな中、遥か昔に人を神へと進化させんとした計画が・・・・

 永遠を手に入れんとした計画が、甦る。

 しかし、その試みは所詮一部を除いてしかできなかった。

 その一部、その一部こそが純粋な強い魂の持ち主達だ。

 シンジとアスカの二つの魂は融和し、今完全な『アダム』と化していた。

 アダム、完全なる人類・・・・

 はたして人類の愚かなる試みは、またも失敗に終わるのか・・・・ 

 迫り来る死の恐怖と感情のせめぎ合いから逃れ・・・・

 究極の選択を成すことができるのか・・・・

 今ここに、天使と悪魔のハルマゲドンが始まろうとしている・・・・

 過ちを繰り返すなかれ、人類よ・・・・

 これは警告だ、全ての人類の歩んだ『死』という道を・・・・

 再びこの新たな宇宙で起こすことなかれ。

第十話 永遠の想い


(我々神化促進委員会は本日を持って解散、以後『人類補完委員会』と新たに

呼称する。)

(遥かなる超過去から続きし人類永遠のテーマを・・・・)

(我々の手で終わらすのだ。)

(そのためにもゲンドウ皇帝、イレギュラーは許されない。)

「わかっています、全て一部の狂いもなく遂行して見せます。」

(あの少年、シンジ、とかいったね。君の息子だそうだな。) 

(あのようなイレギュラーはもっとも忌むべきパターンだ、直ちに排除しなさ

い。)

「わかっています、たとえ息子であろうとも計画の支障になる、または計画の

不確定要素となるモノは全て取り除きます。」

(あの少女、アスカとやらもだ。迅速な行動を期待しているよ。)

(我々がハルマゲドンを起こす上で非常にあの二人は危険だ。)

(我々自体も参加せねばならなくなる、そのような事態にはなりたくない。)

(全ては暗黒神話の記すままに・・・・)

「・・・・はい。」

                 *

 シンジをとりまいていた不思議なオーラもいつの間にか消え失せ、人一人の

通れるぐらいの大きさの時空の穴ができた。そこへ指示したわけでもなしに不

意に方向を転換して飛び込んだアスカもさることながら、このような短期間に

不安定な座標への道を造り上げたシンジもすごい。まさにこれぞ想いの力だ、

奇跡としか言い様がない。

「シンジっ!!」

「アスカっ!!」

 飛び込んでくるアスカをシンジが抱き留める形になり、二人は再会した。

「し、シンジ、あのね・・・・」

「あ、アスカ、あの・・・・」

 しばらく抱き合ったまま二人は固まり、そしてしばらくの時が流れアスカが

口火を切ろうとした。

「アタシはシンジが・・・・」

「ストップ!!」

 アスカの言葉を遮りシンジがいう。そしておもむろに少し体を離してから、

アスカの肩に両手をかけていった。

「僕が、言うよ。・・・・アスカ、僕は気付いたんだ。今の今まで幼なじみと

してのなれ合いの中に浸っていて、ずっと肝心なことを遠くに置き忘れてい

た。アスカがそばにいるのが普通になっていたからかもしれない・・」

 そしてアスカの瞳に視線を合わす。

「この前カヲル君に連れ去られてからずっと考えていたんだ、アスカについ

て。・・・・そりゃあアスカは僕には少々きつくって、それが大きくイメージ

されていたのかもしれない。だけれどもね、そんなアスカだからこそ、アスカ

にしか解決できないことが僕の中には山ほどある。それだけじゃあない、時に

は親身になって僕の悩みをどんなくだらないことにでも付き合ってくれた。落

ち込んだ僕を励ましてくれたりもした。」

 さらにシンジは、これまでに見せたことのない優しい目をしてアスカを見つ

めた。

「だからこそ、僕にとってアスカは重要なんだって気付いたんだ・・・・。ア

スカ、僕の生活には、いや僕にはアスカなしの生活には耐えられない。」

(えっ・・)

 ある種の予感がアスカの中をかける。

「元気はつらつとして、ちょっと抜けたこともたまにする、厳しい、だけどそ

れ以上に優しいアスカ・・・・」

 アスカの顔が徐々に紅潮していく。

「そんな自分に正直な元気で優しいアスカだから、いやアスカだけにこの言葉

を言うよ・・・・」

 アスカの鼓動が速まっていく・・・・

「愛してる、結婚しよう。」

 その瞬間、アスカの意識は真っ白になった。

 そして・・・・

「・・・・はい・・・・」

 涙と笑顔で頷きながらそう答えた。

 そして、再びシンジがアスカを抱きしめる。

 その抱擁は、まるで永遠のように続いた・・・・

                 *

「私は生憎そんなに野暮じゃあないのよね。」

 レイが時空の穴を少し遠く離れたところで言う。

「感動の再会と、告白に割ってはいるほど野暮じゃなし。かといって、はたか

ら眺めていてもつまんない。」

 ムスッとした顔でぼやく。

「あーあ、退屈。あれが終わるまでまだ当分かかりそうだし・・・・」

 そして小さな可愛いあくびを一つしてから目をこすりこすり言った。

「どっかにいい人落ちてないかなー。」

 結局レイは、三十分後にやっと離れた二人の所へ行ったのだった・・・・

                 *

「で、お父様、なぜレイのかわりに私が?」

 スタイルの抜群な、しかしそれでいて気品とワイルドさを兼ね備えた長い紫

の髪の女性が言う。歳はだいたい十八ぐらいだろうか。質問の矛先は彼女の、

そして妹であるレイの父親でもある綾波キリカだ。質問にややたじたじになり

つつも賢明に言葉を探し、必死で答えるキリカ。

「そ、それはだな、その、つまりわが国としても独立したばかりだし第一むこ

うにレイは気に入られていないという。だから器量も容貌も良いお前に変わっ

たのだ、カオリ。」

 ふーん、と一応納得はしたようなしなかったような曖昧な声を出しながらカ

オリはにっこり微笑みさらに言う。

「当然向こうもレイをけるくらいですもの、さぞ素晴らしい方なんでしょうね

え?」

 実はそんなにすごく良いわけではないのだ・・なんて口が裂けても言えな

い。そんなことを言ったらまず間違いなく彼女の気性からしてせっかく小康状

態にある関係を、遥かに悪化させてしまうに違いない。

「そ、それはだな・・・・とにかく会ってからのお楽しみだ。」

 うまくごまかしたキリカ、さすがにできた娘を相手にするのはしんどいよう

だ。

「でも肖像画とか、映像記録ぐらいあるんでしょう?」

 しかし安心したのも束の間、追撃は容赦なく来る。

「さあ、見せて頂戴よ。」

 じりじりにじりよるカオリ、そろそろ後ずさるキリカ。

「さあ、さ。それとも私に見せられない何かがあるとか?」

「そ、そんなことは・・・・」 

「ないんでしょ、だったら自分で映像データ集めてみるわよ。」

 ああ、おしまいだ・・と、内心がっくりしているキリカに較べ、カオリの反

応は・・・・

「凄い・・・・」

「へっ?」

 思わず聞き返すキリカ。

「凄い良いじゃないの、この人。ぜひともお会いしたいわね、今すぐにで

も。」

 予想外の展開に唖然とするキリカ、しかしそれとは反対に婚約に大いに希望

を抱くカオリ。

「やっぱり年下のこういった男の子でなきゃあ、ね・・・・」


火野竜馬さんへの感想はこ・ち・ら♪   


管理人(その他)のコメント

カヲル「あのー」

カオリ「はい?」

カヲル「君は誰なんだい?

カオリ「はい?」

カヲル「レイの姉。キリカの娘。それは分かってるんだけどね。その先の展開に、君は一体どうやって関わってくるつもりなんだい?」

カオリ「そんなこと、わたしが知っているわけないじゃないですか。カヲルさん」

カヲル「・・・・それはそうだけどね」

カオリ「そう言うことは火野さんに聞いて下さいね」

カヲル「ぬぬっ。また扱いづらいキャラが一人・・・・(汗)」


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