(俺は・・・・)

 ライジは逃げていた。彼ほどのものが逃げるとは一体・・・・

(俺は・・貴様らとは違うっ!!)

 ライジは振り向きざまに剣激を繰り出す、しかし手応えはない。

(駄目なのか?・・・・俺は、駄目なのか?)

 なおも駆け通すがしかし、追撃は振り切れない。

(畜生・・・・俺も、同じなのか?)

 電光石火の動きでさらに加速しつつもジグザグに動き、追撃をかわそうとす

る。だが、なおも執拗に追撃は続く。

(くっ、もう、げん・・か・・い・・・・か・)

 そして遂に倒れ伏し・・・・

「ハアァァッッ!!」

 絶叫して跳ね起きるライジ。それに驚いて周囲の者達ももそもそと寝床から

這い出してくる。

「大丈夫か?疲れてるんだろう、ゆっくり休んで心を落ちつけろ、な?」

 男の一人がライジに語りかける。それに全身を汗でグショグショにぬらした

ライジは微かに、しかしはっきりと頷き周囲のものを安心させる。

「寝れないんだったらイメージルームでゆっくりしろ、初陣ってのはすごいプ

レッシャーだから無理もない。気にするな、殺した奴等はだいたいが即死で苦

しみもしなかった、いやなにがあったかすら理解せず今もあの世で頭をひねっ

ているさ。だから、殺した奴等のことは考えないようにしな。」

 親切な男が声をかける。それに頷いてからライジはイメージルームへ足を進

めた。

(また・・・・あの夢か。いつも同じくせして覚えていない、でも同じなん

だ)

 ふらふらと、少しおぼつかない足どりでイメージルームにはいる。

(俺は・・・・誰なんだ?)

第九話 闇からの目覚め


 時をほぼ同じくしてアスカ達は・・・・

「・・・・」

 無言のままものすごいスピードを飛翔魔法で出していた。

(シンジ・・・・)

 アスカはただ持てる全ての力をシンジの存在を感じるところへ向けていた。

(会わなきゃ・・・・会って、いわなきゃいけないっ!!)

 レイの存在すら忘れたかの如く一心に念じ続ける。おそらく、今アスカの精

神を覗いてみたらシンジ以外の存在はないだろう。 

(私も、ああやって誰かのために力を使うときが来るのかしら・・・・)

 レイは、そんな一途なアスカを少しうらやんでさえいた。

(生まれてこの方、そんな感情なんて持ったことのない私。まあ別にこんな窮

屈な王女だ何だかやっていれば当たり前だけど、もっと色々世界を見回ってみ

たいわよね。)

 レイは生まれてから姉に色々厳しくしつけられ、みっちりと礼儀作法などを

教え込まれているから冷たい印象を持たれがちだが、その実とても自由奔放明

朗快活とした女の子である。そんなレイがアスカを見てうらやましがるのも無

理はないだろう。

(自由、か・・・・この際逃げ出しちゃおっかな)

 レイは自分のこれからについて考えていたが、しかしその未来にはたとえ休

息は与えられても運命が平穏は与える日はなかったのであった・・・・

                 *

 蠢く闇・・・・

 また一つ、呪縛が解き放たれる・・・・

 しかしその呪縛にあいた穴は、まだ小さなものでしかなかった・・・・

 ゆっくりと、しかし確実に穴は広がっていた・・・・

(我等の使命を・・・・)

(我等に課せられし使命を果たさねば・・・・)

(果たして、終わるのか?・・・・)

(過去幾星霜の時を経て今もなお続く、この戦い・・・・)

(そのためにも我々は何としても、鍵を手に入れなければならない・・・・)

(奴等に渡してはならない・・・・)

(世界創世時より続きしこの戦い・・・・)

(負けるわけにはいかぬ・・・・)

(((負けるわけにはいかぬ・・・・)))

 闇に蠢きし者達は、自身にかけられた呪縛を少しずつだが解いていっ

た・・・・・

                 *

 空間に生じはじめた歪みは、まだ手のひら程度の大きさのものだったがそこ

からは確かにアスカの姿が見えた。シンジは念をアスカに送る。

(アスカ、アスカ!!)

 しかし答えはない、まだそこまで広がってはいないのだ。再び空間を歪め

続けるシンジ、その体からはいつしか以前の優しい桜色から光輝く黄金色に変

わっていた。

(不思議だ・・・・こんなに充実した感じは初めてだ・・・・)

 黄金色のオーラはやがてシンジを中心に渦を巻いていった。

(アスカのことを思うだけで心があったかい・・・・何か、昔得られなかった

ものが今手に入ったような・・・・)

 シンジの全身からは絶えず黄金色のオーラが発せられる。

(カヲル君が昔は僕をよく理解してくれる一番の人と思っていた・・・・でも

違う、カヲル君も『大切』だけれども違う。アスカは・・・・遥かな昔から

『繋がって』いた、僕を理解とかそんな概念じゃあない、僕とアスカは遥かな

昔から繋がっていたんだ。だから、どんなことでも共有していける・・・・ど

んな時でもアスカと僕とは繋がっているんだ、こうしているときも、いついか

なる時でも。真に意識を共有できる、僕が胸を張っていえる最高のパートナー

なんだ!!)

 シンジの意識は、やがて周囲に不思議なオーラを発していった。

 そのオーラは、全てのことを包み込む『力』だった・・・・

                 *

「まったく反応がない・・・というよりも閉ざされている!?・・いや、違

う、これは・・・・これは覚醒ではない。けれども、なぜだか無性に心地よ

い。」

 カヲルは扉の前で不思議なオーラに包まれながらいった。

(この感じは・・・・わからない、僕の知らないことだ・・・・)

「すぐにでも扉を開かねばいけないのだろうけれども・・・・なぜだろう?そ

うしてはいけない気がする。」 

 カヲルは気づいていなかった、覚醒とは・・・・

                 *

「いよいよだな、しかしこの力は・・・・」

 ショウがいう。それに対してわかっているように火野も頷く。

「俺達が介入すべきなのは今ではない、出直しだな。」

 ショウ達は、異空間へと消え去っていった・・・・

                 *

「この計画も随分と完成に近づいてきたわね。」

 ミサトが汗を拭いながらいう。それに対しリツコも頷く。

「予定より早くできあがるわね・・・・明日、明後日には完成するでしょ

う。」

「おやおや、お二人さん、そこで何話してるんだい?」

 加持が階段から声をかける。

「まったく、いかに完成を早める為っていったってエネルギーを全てアレにそ

そぎ込むことはないだろう。おかげで俺はもう足がくたくただよ、マッサージ

でもしてくれないかな?お二人さん。」

「なにバカいってんのよ、私たちも同じなの。そんなこといってないでちゃん

と時間に来て仕事しなさいよ、夕方出勤たあいい度胸じゃないの。」

 指をバキバキ鳴らしながら加持に近づくミサト。

「おおっと、こいつは済まなかった。なにせ特別任務があってね、それを今ま

でやっていたんだ。」

「特殊任務ぅ?」

 ミサトが聞き返す。

「そう、それもわざわざ皇帝陛下直々にだよ。」

 急に真剣な顔になる加持。

「内容はもうひとつの計画進行について、銀河帝国から独立したばかりのゼー

レ公国、いや今はゼーレ王国だな、そこについての情報収集をやれってね。そ

んなわけで悪いが葛城、俺は明日から一週間ゼーレ王国へ密偵の旅だ。後は頼

んだ。」

「加持・・・・」

「なんだ?」

「・・・・死んだら承知しないからね。」

 その言葉に微笑みで返事をしてから、加持は去っていった。

 そして、いよいよ始まった。人類が生まれる以前から起きていた長き戦争、

終結させるための史上最初の試みが。

 ハルマゲドンプロジェクト、今ここに最終戦争を起こそうとして、そしてそ

の戦いに勝って、人類が生き延びるための計画が発動せんとしていた・・・・




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管理人(その他)のコメント

カヲル「うむむむむむっ」

レイ 「どうかしたの?」

カヲル「いや、アスカ君とシンジ君がここまではっきりと意志表示をしたのが悔しくてね・・・・ってきみ、いつものレイじゃないね?」

レイ 「はあ? いつものレイってワタシはいつもこうよ」

カヲル「ああ、君はあっちのレイか」

レイ 「はあ? 訳分からないこといってないで。とにかくあの二人、よーやく心を通じ合わせたようで、よかったわね〜」

カヲル「僕にとっては悲しいことなのさ」

レイ 「人の幸福をねたんでどうするのよ、まったく」

カヲル「他人の不幸は密の味、っていうじゃないか」

レイ 「性格悪いと嫌われるわよ」

カヲル「ぐっ、君、なかなか言うじゃないか」

レイ 「ひねた人生観もってるからね〜ワタシって」


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