衝撃の、そして激動の戦が今始まろうとしていた・・・・

 まさしく、その戦いはNERV帝国対神聖帝国ではあったけれどもその実・・

 この男がいたからこそ圧倒的科学力と資産、兵器数を誇るNERV帝国相手に

 戦い抜けたのだ・・・・

 まさしく、いや人々の想像を越える戦で、後にこの最前線で戦った男に敬意

 を評しこう呼ばれた・・・・

第七話 武神降臨


 そもそもは一介の兵卒だったのだ、確かに一介の・・・・

 しかしその人を人たらしめているある種の戒めから解き放たれることにより

 男は絶大な力を誇っていた。

 場所は戦場、時は不明、新たなる伝説が生まれようとしていた・・・・

                 *

「さあ、おまえら明日に祝いの酒を飲みたかったら生きて帰ることだ

なっ!!」

 傭兵隊隊長が激をとばす、この部隊初の出陣である。それに対しいささか緊

張、または興奮気味だった隊員達の気持ちもほぐれてきた。隊長が最後にレ

シーバーからの最終伝達を告げると、各々自分の乗るべき機体に乗り込んだ。

(俺達生きてかえってやるぜ)

(死ねない、死ねないぞ)

(斬る、斬る斬る斬る斬る斬るぅぅぅっ!!)

 それぞれの思いをうちに秘め、発進準備を待つ。この傭兵部隊の半分は強制

志願により戦場にかり出された前途ある若者達ばかり、緊張するのも無理はな

かったろう。しかしただ一人、穏やかな、死を覚悟したわけでもない何か底知

れぬものを感じさせる男がいた。この男こそ後の時代に神話にまでなった伝説

の『双星の戦士』の片割れ、慈悲深き悪魔の異名をとるライジその人だったのだ。

(俺は誰だ?・・・)

  その不思議な疑問に思考をはせながらライジは発進準備を進めた。彼は宇宙

空間に漂っていたのを救われ前線へ編入されたのだ。
  
(俺は、一体何者なんだ?・・) 
 
  なぜそのような疑問がわくのかわからない、自分がなぜここにいるのかすら

もわからない。そう、アイディンティティの不在だ。自己の確立がなされてい

ないがために自分の行動にすら自信が持てない、他人に押し切られてしまうのだ。
 
 「発進、5秒前。4・・3・・2・・1・・ゴーッ!!」
 
  機械的な声に後押しされ、猛スピードで発進するマシンたち。
 
 そしてそれと同時に目前に広がる閃光と星々の世界。戦士たちは戦場に今

様々な思いをはせつつ、戦いへと身をゆだねた。 
 
  次々と砲撃により沈んでゆく戦士たち。それに対抗するように直接ブリッジ

へと射撃をする戦士たち。数々の命と意志が宇宙に散る中、ただ一人の男のみ

戦場を震撼させていた。
 
 振り向きざまにどうをなぎ払ったかと思いきやまるで後ろに目があるかのよ

うに機体を跳ね上げて銃弾をかわす。大胆にブリッジに直接攻撃を仕掛けたか

と思うと信じられない正確さで銃を乱射している。その攻撃は静かに、しかし

確かに死を撒き散らすまるで慈悲深き悪魔のようだった。決して存在感がある

わけでもないのに驚異的な戦闘力、苦しませることなく一撃でほふる事から慈

悲深き悪魔、と・・・
 
  男の名はライジ、この戦争に深く関わってくる人物の一人・・・・
 
                 * 
 
 (人類の犯した罪・・星々の資源の事かな?それともこの際限のない争いその

もの、いやもしかすると存在自体が許されないものなのかも知れない・・それ

とも、僕の世代の知らない事件・・Third impactのことを指し示しているの

かも)
 
 シンジは謎を考えうる限りのパターンで解明しようとしていたが、いずれも

推測の域を脱しない。ちなみにサードインパクトとは、今より数千年前のこと

で成人しない限りその実態は教えられていない。とにかく人類が文明を持って

早一万年を数えようとしていた。
 
  シンジはベッドの傍らに置いてある水を一口のみ、のどの渇きを潤した。そ

して意識を集中して外部からの呼びかけを探る。しかしシンジを探す声はどこ

からも聞こえては来なかった。
 
(閉鎖された空間、か・・なんだかんだいって何が目的なのかさっぱりわから

ないな)  
 
  そして右拳に念を集中させる。すると不思議な光輝く紋章が浮かび上がる、

『選ばれし者』の証である。シンジは拳をかざして更に念を集中する、たちど

ころに足下に一振りの剣が出現する。その剣を一振り、二振り・・とある形に

型どってふるう。すると一枚の写真があらわれる、これほどまでにして厳重に

封印してある写真とは・・・・それは紛れもなく惣流=アスカ=ラングレー

の、しかも優しく微笑んでいる姿だった。 
 
(アスカ・・・・必ず会いに戻る!!) 
 
  シンジはそのいとおしい幼なじみの写真を見て脱走の決意を固め、一人部屋

にたたずんでいた・・
 
                 * 
 
 外ではアボリオンが舌打ちをする。 
 
 「まさか突如あのような強い結界が作動するとは・・・・やはりあなどれぬ

な。見張りを更に増やすか・・」
 
  このアボリオン、いかに本気ではなかったにせよ隊長だ。その隊長であるア

ボリオンさえシンジの張った結界内をのぞき見ることができなかったのだ。や

はり王家の血を正当に受け継ぐ者だけのことはある。
 
「しかたないよ、相手はカリにもカヲルさんの兄弟だもの。魔力においてかな

う相手じゃあないもん。いくらたいちょーだって無理無理。」 
 
  横から声が聞こえる、サンダルフォンだ。
 
 「ああ、やはりなめてかかると逃げられるな。見張りを増やそう、ガギエルも

見張らせておくか。」
 
 アボリオンはそういうとスっと消えた。その後でサンダルフォンがやれやれ

といった表情で廊下を歩いて去っていく。再び廊下に静寂が訪れた・・・・ 
 
                  *
 
「もうやめなさいよ、悪いことは言わないから私が前行くってば。」 
 
 「うるさいわねっ!!七度目の正直よ!」
 
 「まったく・・よくこれで見回りとかに見つからないわね。ひょっとするとこ

の場所にはいないんじゃあないの?これだけ警備が甘いって事は。」
 
「アタシの進む道は必ず真実へと向かっているの!!アンタは黙ってなさ

い!!」 
 
  ボコッ  落とし穴だ。
 
「ほらまた引っかかった。これで三十二回目よ、よくそんなに見え透いた罠に

引っかかるわねー。もはや達人の域に達してるわよ。」 
 
 レイが穴のそこに向かって言う。しかしもはやなにも言わずにアスカは穴の

底に魔法をぶっ放すだけだった。 
 
   ドッゴオォォォッ!!
 
  あたりにこだまする轟音。それを聞いて肩をやれやれとすくめつつもしかた

なく穴の底へ降りていくレイ。暗闇の中するすると穴を滑り降りるとしたには

広い石畳のフロアが広がり、西洋の館の広間のような雰囲気が漂っていた。そ

こら中に古代の金属鎧などアンティークな物が並べられている。
 
 「まったく、こんな場所に逃げ込むなんてやっぱり趣味の悪い奴ね!!最悪の

趣味で、ナルシーで、ホモで、そのうえ何考えてるんだかわらないあの顔!!

究極にイヤな奴。」
 
  アスカがあたりを見回して思わず洩らす罵詈雑言。そしてそれとは無関係で

あるかのようにスタスタと扉の方へ進むレイ。しかたなくアスカが後から追い

かけていく。そしてレイがそのやはり重重しい感じの扉を開いた先は・・・・
 
                 * 
 
  皇帝の間にゲンドウと、リツコの二人。
 
 「・・あの計画の進行具合はどうなのだ・・」
 
 ゲンドウがしばらくの沈黙の後にリツコに聞く。

「問題ありません、1・7296%の遅れしか生じてはいません。このまま行

けば時間の問題かと・・」 
 
  そのリツコの答えに満足そうな笑みを口のはしに浮かべるとゲンドウはくる

りと振り返りもうひとつ問う。
 
 「・・それでシンジたちは見つかったのか・・」
 
  その問いの返事代わりに首を横に振るリツコ。その気配を察してゲンドウは

個室へ去っていった。
 
 「・・・・数千年前に犯した過ちを、また繰り返すつもりなのね。」
 
  リツコは一言そうつぶやいてから皇帝の間から退室した。
 
  
  それからしばらくたった後、そこには黒い霧のような物が立ちこめたかと思

うと真っ赤なペンキで塗りたくったかのように皇帝の間は紅く染まっていた。

翌日そこで近衛兵三人が奇妙な姿で死亡しているのが発見された。
 
 そこに現れたゲンドウは、一瞬の笑みを残し皇帝の間の清掃を命じてから

去っていった。 
 
  果たして何が起きたのか、知る者は誰一人としていなかった・・・・
 
                  *
 
 (うまく乗れたんはいいけど・・・・何でワシがこないなカッコで窮屈な思い

せなあかんのや!!)
 
(仕方ないだろー、思ってた以上に警戒が厳重でこうやって特殊加工したコン

テナの中にいてやり過ごすしかないんだよ) 
 
 二人は塩と魚の血にまみれて会話していた。空港の警戒が厳重なため食糧輸

送コンテナとしてカムフラージュしていくことになったのだ。 
 
(せやけどこないなモンやなくてもよかったはずや、口ん中が塩っ辛くてたま

らんわい!)
 
  トウジがしきりにぼやく。それに対し魚の身を削ぎ落として食べるケンス

ケ。腹が減っては密航もできぬとしかたなくトウジも塩辛い魚を食べた。
 
 (あー、はよヒカリのうまい料理が食いたいわー)
 
  などと考えつつも塩辛さに閉口するトウジであった・・・・
 
 

火野竜馬さんへの感想はこ・ち・ら♪   


管理人(その他)のコメント

アスカ「何見てんのよ、シンジ!」

シンジ「ア、アスカ!! あせあせ」

アスカ「こら、今何を隠した!!」

シンジ「な、な、なんでもないって!! ほんと、違うんだよ!!」

アスカ「アンタが違うんだよっていうのは言い訳の時だけなの!! アタシに隠し事をするなんて10000年はやい! さっさとそれをみせなさいっ!!」

シンジ「あああっ!!! な、なにするんだよ!!」

アスカ「ふん、モノをかすめとることにかけてアタシの右に出る者はいないわ!」

シンジ「スリじゃないんだから! と、とにかく返してよアスカ!」

アスカ「うるさいっ!!」

 ばきっ!!

シンジ「むぎゅう・・・・ばたっ」

アスカ「ようやく静かになったわね・・・・さて、何を隠してたのかしら・・・・」

カヲル「何を見ているんだい、アスカ君?」

アスカ「え、え、えええええっ!!(真っ赤)

カヲル「おやまあ、君の写真じゃないか」

アスカ「シ、シンジがこんなものを持ってるなんて・・・・」

カヲル「え? これをシンジ君が!? むむむっ、これはゆゆしき事態・・・・」

アスカ「シ、シンジ・・・・なぐったりして・・・・ごめんなさい・・・・」


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