「まだつかないの?アスカ。」

 待ちくたびれてシンジが言う。しかしいつの間にかアスカは眠っていた。

「アスカ?」

 シンジが再び問いかける。

「アスカ、本当に寝てるの?」

 しかし返事は来ない。とするとレイが操っているのだろうか?

「綾波が操ってるの?」

 しかしレイは首を横に振る。

「じゃあアスカが眠ったまま魔法かけっぱなしで寝ているのかな。」

 しかし今度もレイは首を横に振る。

「じゃあ誰が?」

 するとレイが喋りはじめた。

「おそらく何者かが外部から操っているのね、それもよほどの力の持ち主。こ

のアスカって娘の力は相当のものよ、おそらく世界でも一二を争う素質を持っ

ているわ。その力が未発達だからといって眠らせるなんてよほど巧妙にかけた

か熟練した魔導士ね、この娘はけっして防備ではなかった。」

「と、いうことは?」

「つまり、私たちのすぐ近くに魔導師がいるってこと。失敗したのよ、脱出の

計画が。」

 シンジははっと振り向いた。後ろから視線を感じたのだ。

「やっと追いついたよ、シンジ君。」

第四話


「か、カヲル君!!」

 驚愕に包まれるシンジ。しかしカヲルはいっこうに気にせずシンジに迫る。

「そんなに驚くことはないだろう、僕はいつも君のそばにいたんだから。」

 しかしシンジは焦ってカヲルのいうことすら耳には入っていない様子だ。

「安心して、僕は君を連れ戻しにきたわけじゃないんだ。ただ君を追いかけて

きただけだよ。」

 それを聞いて胸をなで下ろすシンジ。すっかり安心して話しかける。

「なんだ、そうならそうともっと早くいってくれればいいのに。」

「僕が君のいやがることを強制することはなかったろう?」

 シンジがうなずく。たしかにカヲル君は今まで僕に色々よくしてくれたもの
 
な・・ それを見てカヲルは微笑んだ。そしてシンジを・・ 

「相変わらずね、この狂ったモーホー野郎!!アタシの禁呪文で消滅させてあ

げようか?それともなぶり殺し?いずれにせよアンタこの前までと別人になっ

たわね、何かに憑かれたでしょう!!」

 アスカは怒りにまかせ叫んだ。

「へえ、まさかあの眠りの呪文から抜け出すとはね。」 

 カヲルが意外そうな顔をしてみせる。しかしそれを無視してアスカは更に

「アンタみたいのにこのアタシがやられるわけないじゃない!!」

といった。アスカは怒りに包まれていた、その周囲の空間が紅く染まる。

 一方シンジは一体何が起きたのか飲み込めずに二人の会話を聞いていた。

「シンジ、どきなさい!!そいつは渚カヲルじゃあないわ!!」

「え?」 

 シンジが一瞬戸惑った隙をついてカヲルはシンジを抱き抱え、戦闘機の窓か

ら飛び出した。カヲルは深紅の瞳を怪しく光らせ瞬時に消え去った。

「な・・」

 アスカは絶句した。瞬間移動、いわゆるテレポートはどんな伝説の魔導師で

も魔法陣と呪文詠唱なしにはできなかったのだ。人間の魔導師には!!

やはりアスカの読み通りカヲルは人間ではなかったのだ。

 しかしアスカはうろたえずカヲルの行き先を探った。

「一体どこへヤツは逃げたの!?」

 アスカは戦闘機を停止させ、印を結んで魔法探知をした。

(ん・・・・B-Hポイントにいるわね、待ってなさい化け物!!)

「レイ、いくわよ!!目標地はアンタもわかっているはず、協力してよね!」

 しかしレイはなかなか協力しなかった。

「アンタなんで協力しないのよ!?一緒に逃げた仲間でしょ、シンジを助けた

いとは思わないわけ!?」

 するとレイは

「私自身だって危ないもの。私はあいにくそんなに情の厚い方じゃあないの・・

とはいってもなーんか気にかかるのよね、あのシンジっていうの。しょうが

ないわね、助けにいくわよ。」

といい印を結んで念を集中した。とたんに加速する戦闘機。

 戦闘機は一路B-Hポイントへ、神聖帝国の地下へ向かっていた・・・・

                 *

「いやあ、いよいよもって俺の登場は引き立つな。」

 なぞのマントの男が言う。

「貴様、何者だ!!」

 兵士の一人が言う。しかし、帰ってきた声は

「ノンノン、この場合はもう少し個性派にこのいい所に誰だ!ぐらいは言って

欲しかったな。シリアスと謎を粉砕し、爆裂大魔王の異名の名のもとに全世界

明るくパーッと派手にいこう計画でいこう!!」

 などという明るい声。その顔は明るいなかなか顔の良い好青年の雰囲気をか

もしだしていた。その背中には大鎌が背負われ、腰まで届く長髪と異様なカリ

スマの微妙なシンフォニーを奏でている。

「ええい、やってしまえ!!」

 と隊長格の男がかまわず言う。しかし一向にその数にもひるまず陽気な笑み

を崩さない。しかしその不敵な態度にもかまわず無個性なかけ声とともに攻め

たててくる。

「雑魚どもはメインを喰わないこったな、寿命が縮むぜ。」

 というが早いか電光石火の動きで全兵士の胴をまっぷたつ!!そしてクスリ
 
と笑い言い放つ。

「ほら死んだ。」

 全身を返り血にまみれさせながらも指を一鳴らししただけであっと言う間に

全ての血が消えた。なかなか高等な魔術だがこの程度は貴族の潔癖症な者や貴

婦人の身だしなみ程度のものだ。そこへおずおずと礼を言う少年。

「あの・・どうもありがとうございました、どうか名前を教えてくれませんか

?俺は惣流=カゲル=ラングレーといいます。」

 すると男が初めて少年の方を向いて傲岸不遜な笑みを浮かべ言う。

「なかなか礼儀正しいな、初対面の相手に自分から名乗るとは。俺はアルスと

いうただの通りすがりの一主人公だ。」

 その圧倒的な圧迫感に飲まれることなく平然としているこのカゲルという少

年、なかなか出来る。

「そうですか、俺は今まで奴等にとらえられていたんです。そこを逃げ出した

所までは良かったんですが体力が三日目でつきまして・・・・」

 そのセリフを聞き頷くアルス。

「なるほどな、つまり君はどこへ逃げようとしていたんだ?」

 なるほど、もっともな質問である。

「それは・・あ、あのNERV帝国です。姉がそこにいるもので・・」

 するといきなりそこらへんの機械をアルスが壊しはじめた!!

「い、一体何をするんですか!?」

「なに、暇だったしあのNERV帝国の関係者ならそこまで行って礼金をあの皇

帝からもらってやろうと思ってね。少々時間がかかるがすぐ手製の亜音速飛行

装置を造ってやろう、兵士もなかなか来ないぞ。」

 というと、何か鼻歌を歌いながらリズムに乗ってどんどん分解していく。

(この人・・悪い人じゃあないけれども大丈夫かなあ・・。名前も同じだし力

もそうだからたぶん本人だろうけれど・・まあいいか)

 カゲルは疲れをとるため、とりあえず眠りについた・・・・

                 *

「やれやれ、カヲル様のお考えもわからぬよ。」

 シャムシェルはいう。周囲には十八人のメンバーが勢揃いしている。

「なぜあそこまでシンジ殿にご執着なさるのか・・」

 なおもいうシャムシェルを、その横から甲丸とサンダルフォンがいさめる。

「そういうな、あのお方のことだ、なにかお考えがあるのだろう。」

「そーそー、血管切れたらどうするんだよ。もっと落ちついてさ。」

 まわりの者達も口々に同じようなことを言うがしかしそこはそれ、頑固で知

られているシャムシェルは納得しなかった。

「いかにお考えがあろうと今回はひどい!!連れ戻すかと思いきや地下の我等

の練武場を改造してそこに二人でこもりっきりなのだぞ!」

 ブツブツ言うシャムシェルを一同肩をすくめてみる。

「・・まあ確かにシンジ殿狂いしすぎではあるな。我等の宿敵がすぐそこまで

迫ってきているのに。」

 乙丸がぼそりと言う。

「ああ、奴等の復活が迫ってきているのに指をくわえて見てるわけにゃあいか

ねえぜ。」

 引き締まった大男・・ゼルエルは言う。

「私たちの敵である奴等の復活を阻止するためにはあらゆる力、方法を駆使し

てでも勝たねばなりません。そのためにも・・」

 とやさおとこ・・イロウルが言う。そしてその視線の先には・・

「私が何とかするさ。イロウル、お前は策でも練っていてくれ。」

 この深緑の長髪の、悲しみをたたえた蒼い瞳の男こそANGEL隊長アボリオン

その人なのだ。

「カヲル様の行動、こう考えればよいのだ。ご好意を寄せられているのは確か 

だが、そのうえシンジ殿を例の『鍵』に使うのだ、と。」

 そのセリフを聞きようやく頷くシャムシェル。

「さあ、我等に残された時間は残り少ない。いざ決戦の地へ集え!!」


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管理人(その他)のコメント

カヲル「さーて。一部では「シンジ君狂い」と呼ばれている僕のようだけどね。それは誤解に基づく誤った解釈というやつさ」

アスカ「どこがよ。身の程知らずに毎日毎日毎日毎日「ほらシンジ君」「ちょっとシンジ君」「ねえシンジ君」「シンジ君」「シンジ君」・・・・と騒ぎ立ててるくせに、むきいいっ!!」

カヲル「いいかい、君。「シンジ君狂い」というのは、彼を独占していたい。自分一人のものにしていたいというほどシンジ君にご執心なだれかさんのことをこそいうんであって、僕はそこまで狂ってはいないよ」

アスカ「それはもしかして、アタシのことを言っているつもりなの?」

カヲル「他の何に聞こえるんだい?」

 げしげしげしげし!!

アスカ「このアホたれ!! そもそもシンジを奪ってアタシから逃げるような奴が、狂っていなくてなんだって言うのよ!!」

カヲル「・・・・君だって、某所ではシンジ君を綾波レイから奪って逃げているくせに・・・・」

アスカ「あれはシンジも同意の上での行動! アンタのは単なる誘拐!!」


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