そこは工場だった。造られているものは生体装甲で、造り方はたいしたこと

もなく特筆すべき事ではない。

(このまま逃げ切れるか?否、俺の今の体力からいって生体装甲を奪ってぎり

ぎりだな。問題はどうやって奪うかだ、全快の時ならまだなんとかなるのにこ

れじゃあ捕まってなぶり殺されるのがオチだ。こんな時魔法が使えりゃあな、

瞬間移動で逃げるも製造者を眠らすもいっそ全快になるも自由なんだが・・・

とにかく何とかしないといけないんだ、初級魔法ならなんとかなるから・・)

 長髪の少年は懐からナイフを取り出し小指の中腹を切った。床に血で魔法陣
 
を描いた。そしてぼそぼそと呪文を唱え始めた。

「大地よ、我が御名においてその大いなる豊穣の力をふるえ。」

 すると床から細々と生えていた雑草があっと言う間に十メートルほどまでお

いしげった。

「な、一体何なんだ!?」

 造っていた男たちは視界を遮られ動きが取れなくなった。

(しめた!!まさかこんな魔法が役立つなんて、人生何が役に立つかわからな

いもんだな。)

 少年は生体装甲を奪い、装着した。

(はは、なかなか着心地がいいな。)

 少年はただ一直線に、生体装甲によってもたらされた力で走り抜けた。壁を

砕き人をなぎ倒し、走り去った。

(俺の勝ち!!)


第三話 
 

 少年の容貌は具体的に言うと顔は少し幼いが既に声変わりもし、なかなか引
  
き締まった体の顔も整った少年だ。髪は腰まで届く長髪で色は透き通るような

(透き通ってはいない、髪の色で頭皮は見えない)水色で見事なものだった。

その姿はまだ子供というよりはその年齢にそぐわぬ立派な青年のような印象す

ら与える。

(このままいけばこの要塞から脱出か、まあなるようになるさ)

 少年はただひたすら駆け抜けた・・・・

                 *

「まったくもう、何でこんなすました顔した女と一緒にいなきゃいけないわけ

!?まったく世も末ね!!シンジもシンジよ、初めて見知ったばかりの奴にい

きなり計画ばらさなくったっていいじゃないの!!」

 アスカは戦闘機を魔法で操りながら怒っていた。戦闘機は最新鋭の生体シス
 
テムを使ったもので精神操作の魔法を使えばなんということもなく操れるので

喋りながら魔法もできるのだ。

「そんなに怒ることもないだろ、綾波さんだって無理矢理押しつけられた結婚

がいやで一緒に逃げてきたんだから。」

 シンジがいう。

「あのねぇ、アタシが問題にしてるのはアンタがアタシのいうことに従わない

ってことなのよ!!もっとこうレディファーストな考え出来ないの、不器用な

ヤツ!!」

 とたんにアスカに言い返されて言う言葉もない。

「まあまあ、私はあそこから逃げたかった、あなた達も同じ、仲間なんだから

仲良くしようじゃないの。」

 レイはいたって気楽に構えていてアスカの怒りにはこれっぽっちも反応しな
 
い。アスカはレイに言い返そうとしたが声が出ない。

(あれ?おかしいわね、何で声が出ないのよ!)

 必死に声を出そうとしてるアスカをレイはちょっといたずらな目線でみてい
 
た。それに気づきアスカは思考送還、いわゆるテレパシーを使いレイに叫ぶ。

(アンタ妙な魔法使ってアタシの声を止めたでしょ!!早くときなさい!!)

 しかしレイはいたずらっぽい笑みを浮かべてアスカをみるだけ。

(いい加減にしなさい!!)

 しかたなくレイは印を結ぶ。するとアスカの声が戻ってきた。

「あんたも魔法が使えるのね、生意気にも。」

 アスカは渋々自分の声を封じたレイを評価した。魔法に呪文の詠唱は絶対不

可欠なもので、声を封じるというのは不意をつかれたとはいえ自分と同等かま

たはそれ以上の力の持ち主にしかできないことだからだ。

 そうこうしていても戦闘機は一路N-Fポイントへ向かっていた・・・・

                 *

「なに!?シンジ君とあのつつしみの足りない女がいなくなっただって!?い

つ、どこで!?まさか君の目すらあざむける場所なんて、あの位の高いものし

か入れぬ中庭ぐらい・・そうか!!魔法か、彼女は希代の魔術師でもあったね、
うかつだったよ。じゃあ僕がいくよ、しかたないな。」

 カヲルは全身黒ずくめの男にいい、二三の呪文を詠唱した。そしてさらに精

神を集中させ、いくつかの複雑な魔法陣を周囲に描いた。次の瞬間にはもう消

え去っていた。

(フフフ、君がどこにいようとも逃がさないよ。)

 カヲルは亜空間移動のなか、怪しく微笑んだ。

                 *

「・・・・しかしあの皇子、まるでストーカーだな。無茶苦茶だ。」

 ショウが言う。それに火野は答えない。

「おおっと、そろそろこの世界にいれなくなったか。じゃあ名残惜しいがいくか。」

 ショウと火野は永劫の彼方へ消え去っていった・・・・・・・・

                 *

「急げないのか、例の新兵器は。もう戦力半減だぞ。」

 男が言う。この男、長髪で腕に何やら怪しい物体を張り付かせているが実は

神聖帝国でも一二を争う色男で戦艦「クルス」の副艦長でもある青葉シゲル。

性格は軽い。

「無茶を言うなよ、工場に負担はこれ以上かけられない。それよりこの進路で

あってるんだろうな。」

 答えるのはバンダナの男日向マコト。この男も神聖帝国軍師で人気は高い。

そしてうって変わって対照的に厳格な性格。

「無茶をやるのが下の仕事だろ!」

 シゲルに言い返されむっとするマコト。バンダナをとろうとしたが・・・・

「やめてください!!こんな時に争い事をするなんて・・日向軍師も青葉副艦

長も大人げないですよ!」

 とたんに二人とも戦意喪失。この女性、この艦の艦長伊吹マヤという。ちな

みに二人ともこの魅力的な艦長を獲得するのが夢であった。

「まったく、長距離レーザーでも撃たれたらどうするんですか。元帥も何かお

っしゃってくださいよ。」

 元帥と聞き二人ともはっとしてきをつけをした。その対象となる人は白髪の 

男で名を冬月コウゾウという。加えるならばマヤの大叔父でもある。

「二人とも、くらだぬことでいさかいを起こさぬように。」

「「はい、わかりましたっ!!」」

 二人とも元帥の機嫌を損ねると長年の夢が途絶えるので特に礼儀正しい。

「じゃあ引き続き任務に戻りたまえ。」

 そういって冬月は艦の奥へ去っていった。すぐさま任務につきつつも内心安

堵した二人だった。

(危ない危ない、マヤ艦長への道が閉ざされるところだった)

(ふぅー、伊吹艦長への長い道のりが更に長くなるところだった)

「じゃあ例のヤツはどのくらい完成してるんだ?」 

ぶっきらぼうにシゲルが言う。

「ええと、約77・48%ぐらいまで完成、あとはコアと右脚部、それに細部

を残すのみ。もう一週間で完成だ。」

 それに答えるマコトも口調に熱がこもってない。しかし一応表面上は元に戻
 
ったのでマヤもようやく安心して別のことにとりかかった。

(まったく、あの二人ってどうしてああ仲が悪いのかしら、こんなことであの

魔導を駆使するNERV帝国に勝てるの?)

 しかしその根底の原因が自分だとは思ってもいないのだった・・

                 *

 少年はもはやずたずたになった生体装甲をなおも無理矢理使っていた。

(さすがにやばいかな、戦闘機の一機もあればなんとかなるけど・・)

 まわりは既に敵の兵が集まってきていた。

(こうなったらあれに頼るか)

 少年の目線の先にあるのはカラの魔導スーツ。しかしその距離なんと三百メ

ートルの先だ。しかも装着しても特定の装着者がいないとも限らない、成功の

確率は低い(魔導スーツは特定の装着者がいると拒絶されて死にも及ぶ)。

(あそこまで三十秒、敵は三十人強でビームガン全装備、キャノン砲数十門っ

ていやあもはや生体装甲だけじゃ生存確率オーナインどころじゃないな)

 まわりをいよいよ兵士達が取り囲む。

(絶体絶命ってヤツか、まさかこんな死に方とは死んでいった父上と母上に申

しわけがたたないな)

 少年は護符を取り出して念をこめた。

(これまでか・・・・姉さん、すまない!!)

 少年がまさに自爆用の呪文を唱えようとしたその瞬間・・

「まちな、お前ら。」

 そこには一人の男が立っていた・・・・



火野竜馬さんへの感想はこ・ち・ら♪   


管理人たちのコメント

アスカ「すとーかーね。まさしくアンタのためにあるような言葉だわ」

カヲル「なにを失礼な。シンジ君らぶらぶの君にそんなことを言われたくないね」

アスカ「アタシとシンジは恋愛関係だからいいのよ。アンタの場合は完全にシンジをつけねらってるだけなんだから」

カヲル「君の一方的恋愛要求じゃないのか? シンジ君が迷惑してるよ」

アスカ「そ、そんなことないわよ・・・・・」

カヲル「ふっ、そうかな(にやり)」

アスカ「違うって、絶対に!!」

カヲル「の割には、シンジ君、綾波レイを連れて逃げようとしてるじゃないか」

アスカ「あ、あれは・・・・シンジがやさしいから・・・・」

カヲル「ま、そうだといいね、君には(にやり)」

アスカ「にやりって・・・・アンタ、性格毒されてきてるわよ・・・・」


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