「なかなか強いじゃないか、楽しませてくれる。」

 バスタード=ショウが言う。

「あんたに言われるとは・・俺も一流の仲間入りかな?」

 返すは生体装甲で武装した男。その男の額には血が流れていた。

「その通りだ、お前はもう十分に人間の域を超えた。」

 その瞳は黄金に輝いていた。

「じゃあな。」

 ショウが言い放つと同時に男は吹っ飛んだ。

「・・地獄で・・待っているぞ・・」

「バーカ、地獄も現実に存在する次元の一つなんだよ。」

 男はふと微笑み、それから息絶えた。

「・・惜しい奴だ。」


  第二話 
 時を同じくして戦場では

「何やっとんのや、早くせんかい!」

 鈴原将軍は焦っていた。この将軍は若くしてその帝国きっての戦上手とその

自身の戦闘結果だけで戦士として地位を上り詰めた少年だった。しかしいまや

その声にも落ちつきはなく、檄をとばす声にも明らかに焦りが見えていた。

(なぜなんもきかんのや)

 鈴原将軍の心に渦巻く疑問は至極当然なものだった。あらゆる物理的干渉を

うけつけず、頼りの戦術用秘密兵器圧縮加粒子砲をもうけつけないのだ。

(全部隊無人機のみ残して全滅、なんんちゅうやつや!!) 
 
 迫り来る殺意の渦。鈴原将軍はその培われた技術で愛機ゾルントゥース、通

称「黒い狼」をとっさに跳ね上げた。

(死ぬわけにはいかんのや、ワシは死ぬわけには・・)

 鈴原将軍の脳裏にそばかすの、生真面目で明るそうな少女の姿が浮かんだ。

(しなないでね)

 その声を回想すると同時にトウジの意識は白濁していた。

                 *

「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ぁっっっ!!!!!!!」

 その叫びと共に幾多の命が散ったか・・

 その男はレーザーを受けようともいっこうに感じなかった。素通りしている

のではと思いたくなる光景である。たった一人の、大鎌をもった、紅き翼の男

にいかなるものも通用しないのだ。

 その紅き翼は不思議なまでに見事な紅で、まるで血のようだった。

 その男・・アルスのふるう大鎌は大出力のレーザーをも一撃では通さぬ強固

な装甲をまるで紙細工をきるかのように無造作に切り裂いていった。

「雑魚は悪いが死んじゃいな!!早く本職に戻りたいんでね!!」

 縦横無尽に宇宙を生身で駆け回るアルス。そしてその通ったあとには死と憎

悪のみが撒き散らされていた。

 このアルスという男は流浪の戦士で滅多にこの世界へは現れぬがしかし引き

受けた仕事はなんでもこなす凄腕の傭兵でもあった。通称「残酷な天使」。

その残酷な天使が誰に頼まれしたのかはわからぬが、戦った。

(あの紅い翼は!!)

(まさかあの大鎌・・)

(あのうわさに聞く容貌・・)

 兵士達は知っていた。誰もがその男の名と幾多の伝説を知っていた。そして

それと同時にその男の恐ろしさも・・ 
 
 さしもの大鎌も刃こぼれはする、遂に限界がきた。

「ちいっ、限界かっ!!」

 叫ぶやいなや背に背負っていた弓を持ち矢をつがえた。
 
(あの大鎌はもうない!!)

兵士達が安堵したのもつかのま、その神速とも言うべき早さで神技と賞賛する

にふさわしいことが起きた。その矢は全て正確に物質的存在の核をつき、装甲

を打ち崩していた。

 兵士達はパイロットスーツのみで宇宙空間に放り出された。

「ちっ、矢がきれたか・・」

 ようやくその殺戮の権化は飛び去っていった。

 あとには静寂のみが存在した・・

                 *

 同時刻、城門にて・・


「なあ甲丸よ、あのお二人が堂々と城門から出るほど馬鹿と思うか?俺にはそ

うは思えん、地下を張った方がいいのでは・・」

「まあそういうな、なにかあのお方にも考えあってのことなのだろう。しかし

たしかに城門付近をはれとは・・」

 城門の上に立つ二人の男、一人は薄い赤銅の膚でもう一人は灰色がかった白
 
い膚。

「いずれにせよ用心ということもある、意表を突いてくるかもしれん。」

 男たちはひたすらたちつくしていた・・


 同時刻、地下倉庫にて・・


「ここだけが通路なわけでもあるまいに・・なぜ私をこんなところへ。」

 愚痴っているのはシャムシェル。それをいさめる少年。

「そういわないでさ、まあ古典的だけどここもそれだけによく使われるってこ

となんだから・・。とにかく待つ以外ないよ。」

 この少年、外見はまだ十二もみたぬ可愛らしい子供だがやはり例の部隊であ

る。なんらかの力があるのだろう・・

「そもそもなぜカヲル様はあのような愚兄・・いや平凡なシンジ様に執着なさ

るのだ、そこがわからん。それにあの男、私とサンダルフォンを組み合わせお

って。私が未熟者を嫌いなのを知ってか知らずかあやつはいつもこの小僧っ子
 
とコンビだ、なぜ私が・・・・ブツブツ」

 あきれた顔でみるサンダルフォン。

「まーたぐだぐだ言い始めた、これだから頭の固いおじさんは・・」

 ため息とともに静寂が地下倉庫を覆った。


 また同時刻・・


「・・シンジよ、お前は顔も知らぬものといったが今晩引き合わせを今行う、

それからならば文句はあるまい。」

 玉座に座りながらシンジに言うゲンドウ。

「・・・・父さんは間違ってるよ!!その考え方自体おかしいんだ!なんで僕

賀・・仮にも第一王位後継者たる僕にも言わず勝手にそんな話を進めて・・や

っぱりおかしいよ!!こんなのっておかしいよ!!」

 いきなり激しく言うシンジ、しかしそれに構わずゲンドウはレイを呼び入れ
 
た。そしてレイとシンジが互いに互いをみたとき・・

((・・・・!!))

 声にもならぬ驚きのようなものが駆けめぐった。

(・・・・な、何よ今の感覚・・?)

(な、一体何だったんだ・・?)

 このとき、運命の歯車は既に回っていた。

「・・どうした、黙っていないでなにか話さんのか。それとも私がいてはやは

り不都合か、ならば私は出ていこう。あとはお前たちで自由にしろ。」

 といいゲンドウは去っていった。

(・・アスカに似ている感じがする、何でだ?外見も違うのに・・)

(何この人?すごい力を後ろに感じる・・)

「・・・・・・・・」

「・・・・・・・・」

 沈黙が皇帝の間を包んだ。

「あ、あの・・」

「ねえ・・」

 二人の声が重なった。二人とも驚いて言葉かとぎれる。

「・・な、なに?」

「・・あ、あなたこそなに?」

「・・・・・・・・」

「・・・・・・・・」

 静寂と時のみただただ延々と確実に流れていった・・・・ 

                 *

「・・ったくもう!!シンジったら何やってんのかしら!?」

 アスカは中庭の噴水に腰掛けて待っていた。

「いくら急におじさまに呼ばれたからって早く切り上げればいいのに!!」

 延々と待ち続け、遂に待ち人はきた。

「ったくもう、なにやってたのよあんた!!アタシをこんな寒い夜に待たせて

悪いとは思わなかったの!?」

「ご、ゴメン。ちょっと色々あったんだ。」

 そう弁解するシンジの影からレイが突然現れた。

「な、し、シンジ、一体その女はなによ!?」

 あわてて説明しようとするシンジをレイが遮る。

「私はレイ、綾波レイよ。この国から逃げ出すと聞いて私も加わりにきたの。

あなたが惣流さん、ふーん。」

 とレイが妙な言い方をしたのでますますアスカは混乱した。

「つ、つまりわかりやすく言うとね・・」

 シンジは今までのあらすじをかいつまんで話した。あのあと二人で話してお

互い望まぬ結婚に反発し、この国から逃げ出す計画を打ち明けたのだ。

「・と・とにかく急がないときづかれるわ。いくわよ!!」

 アスカは中に六紡星をえがき、二三の呪文を唱えた。すると空間に穴があき

むこうにはエアポートが見える。時空操作系統の魔法だろう。

「さあ、急ぐわよっ!!」

 シンジがまずはいり、次にレイ、最後にアスカが入り穴は閉じた。

 静寂のみあとには残った。

                 *

 少年は駆けていた。その速さはまずその歳にはそぐわぬ速さで周囲にすら通
 
過を気づかせなかった。

「・・・・やってくれたな残酷な天使!!」



火野竜馬さんへの感想はこ・ち・ら♪   


管理人たちのコメント

カヲル「さあ、なんとなく異色な展開になってきたようだね」

アスカ「その異色な展開でも、どうしてアタシとシンジとレイはおんなじパターンでしか進まないの!! せっかくホモの異母兄弟の魔手からシンジを救い出せたと思ったら、今度は今度でぇ!! むきいいいいいっ!!」

カヲル「ほらほら、つつしみが足りないのがばれるよ」

アスカ「うるさいっ!!」

カヲル「じゃあ君は、シンジ君や僕たちを書いてくれる作者に何を望むんだい?」

アスカ「それはもう、シンジがアタシ一筋に使える下僕で、他の妨害を廃して二人で・・・」

カヲル「それならここに行けばいいじゃないか」

アスカ「?」

カヲル「珠玉の名作、「逃亡」をよむといいさ」

アスカ「・・・・あんた。勝手に宣伝していいの?」

カヲル「・・・・じゃ、そういうことで(すたすたすた)」

アスカ「こら!! 責任をアタシに押しつけて逃げるんじゃない!!」


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