「ちっ、まずったな。」
 
 長髪の少年はいう。

「このままじゃあ失敗だ。」

 明らかにその顔には焦りが見えていた。

 時は銀河歴9999年であった。



超異次元妖魔時空機動武闘新帝国世紀エヴァンゲリオン

                                    ぷれぜんてっど ばーい 火野竜馬

「父さん、ひどいじゃないか!!」

 一人の少年がいう。それに対峙するは眼鏡をかけた男。

「僕の気持ちも考えないで、勝手に婚約なんておかしいよっ!!」

 この少年の名は碇シンジ、そしてそれに対峙するは父親の碇ゲンドウ。

「どうした、何がきにくわんというのだ。別段醜いというわけでなし、むしろ

綺麗ではないか。」

「父さんはそう思うだけで、僕がそう思った訳じゃない!!ましてやまだ僕は

十四なんだよ!?」

「しかしもう十四でもある。帝国を継ぐのならばその歳にもなって妻の一人も

いないというのがおかしいのだ。」
 
 この会話が交わされているのは銀河で一二を争う帝国、NERV帝国の皇帝の
 
間だ。
 
「とにかく父さんの言うことになんて従えないよっ!!」

 激昴した少年は走り去っていってしまった。

「・・ふむ、何が気にくわんというのだ。」

                                                   *

「どうしたのよ、シンジ。そんなにアンタが興奮しているなんて何があったの?」

 声の主は長いブロンドの髪の、まれなカリスマと容貌を持つ惣流=アスカ=
 
ラングレー嬢で、シンジの幼なじみだ。両親は別の国で戦って今は一緒ではない。

「・・父さんがさ、見も知らぬ人と結婚しろって言うんだ。」

 アスカはその口から漏れた言葉に一瞬戸惑い、そしてもう一瞬後に怒っていた。

「そ、それでアンタはどう答えたのよっ!!」

「勿論いやだって言って飛び出してきたさ。何で皇帝の息子だからって結婚の

相手まで決められなきゃならないのさっ!!」

 シンジは珍しく感情をあらわにしている。いつもはもっと静かな普通の少年

であるはずなのに、明らかに父親に対して怒りをこめていた。

「そう、ならアタシもおじさまの・・皇帝のところまで行ってはっきり言って

きてあげるわよ!!いくら温厚なアタシでももう怒ったわよっ!!」

 ・・ちなみにこのアスカ嬢、気が短いので有名だ。これさえなければ言い寄
 
って来る男の数も今の比ではあるまい、惜しいものだ。

「それはよした方がいいよ、アスカの両親が危ない。あんな父さんのことだか

ら無理な命令を命じてアスカの両親が・・」

 さすがに親戚も全て戦で死に、肉親は両親と弟だけなのでアスカもここは自
 
重した。弟は今は行方知れずで生きているとしか手紙が来ない。普段アスカも

気丈だが肉親のことになると弱い。

「と、とにかく何とかして結婚を取りやめなきゃ!!アンタ結婚するのやなん

でしょ!!」

 えらい剣幕で喋るアスカ。しかし普段と違いシンジも興奮している、そんな

事じゃあ反応しない。

「アスカ、このままじゃあいつもみたいに父さんにまた有無を言わさず結婚さ

せられてしまう。僕はもうこの国から出ていくよ!」

「そうね、それがいいわ。アタシもついていってあげるから両親のいるNーF

ポイントまでいくわよっ!!たしかこの帝国の真下に遺跡があったわよね、夜

にいつもの場所でおちあいましょ。」

 ここNERV帝国は惑星ゲルヒンの上に建てられていて、前住民の造り上げた

地下遺跡はありの巣のように張り巡らされているのだ。

「うん、じゃあ気づかれないようにね。」

                 *

 ここは静かな部屋だった。そう、ほんの数分前までは、静かな部屋だった。

「なかなか腕の良い暗殺者を送りつけてきたみたいだな。しかし伊達に一つの

集団を形成している訳じゃあない、まず雑兵にひねり潰されなくてよかったな。

いや退屈してた俺にまわしてくれたのかもな。」

 喋っている男はごく普通の十八から二十二ぐらいまでの一般的な青年だった。

いや、その容貌は並を凌駕しある種のカリスマを備えていた。そしてその力

も常人の比ではなかった。おそらく全銀河の一般人全てで襲いかかっても勝て

はしないだろう。青年の前にへたりこんでいるのは黒ずくめの一般的暗殺者で

その様子は尋常ではなかった。

「化け物め・・」

 一言言い捨て暗殺者は指をはじいた。しかし飛んできた弾丸並のスピードの

それはかわされた。いやあたったのかも知れない、なぜなら確かに体を通過し

たからだ。

「無駄だぜ、俺を倒すにはそうだな・・・まあ同士討ちでもさせるこったな、

とにかく力技じゃあせめてブラックホールでもぶつけてくれりゃあな。」

 明らかに自信過剰なセリフであったが、しかし暗殺者は知っていた。この目

の前にいる青年が・・

「そろそろ茶番はよしなよ、飽きてきたぜ。」

 声の主はこれまた十八から二十二ぐらいの精悍な青年だった。

「あんまりやると可哀想だろ?こうしてさっとしとめてあげなきゃ。」

 喋っている最中に暗殺者の首は落ちた。即死だろう。

「芸がないな、しかし見くびってるのか?」

 最初に暗殺者におそわれていたらしき青年の名はバスタード=ショウ。そし

て今割り込んできたのは火野リョウマという青年だ。

「まったくもって退屈だ、外回りはいいよな。」

「まったくだ。俺達は今回影か、まあ宿命だな。」 

 どうやらこの二人、根っからの戦好きらしい。外回りとはしかし・・ガチャ

                 *

 全くの静寂が部屋を流れていた。さっきとは違い完全な。

「・・・・」

 そこにたたずむ少女もまた静寂にふさわしきものだった。

「・・・・」

 しかし静寂にふさわしいというよりはその少女から静寂が放たれているよう
 
だ。少女は青いショートカットの髪で、顔からは表情が読めない。

「・・私って、なんのためにいるの?・・」

 その口からすべり出た声は美しく、この少女もまた類まれなるカリスマをも

っていた。聞くものに力を与え、平穏をもたらす声。

「まあこんな事私が考えてもガラじゃないってか?」

 さっきとはうって変わって陽気な声。この少女はゼーレ公国よりきたりし公

女綾波レイ。その不思議な声の力に触れゼーレ公国の国民全員が熱狂的支持者

となったカリスマの固まりだった。いやカリスマだけでなく容貌も並以上、い

やおそらくかなり高いレベルにあるだろう。

「そもそも次女の私がなんで歳が同じだからって嫁にだされなきゃいけないわ

け?旅に出てのんきなもんよ姉さんは!第一お父様もお父様よ、何で見も知ら

ぬ奴と私が結婚しなきゃいけないの!?まったく理不尽な話だわ!!」

 開く度にその口からはおおよそ外見からは予想もつかない愚痴が滑り出す。 

「まあ高い身分の娘って損よね。その点弟はいいわよ、大公になれて色々と優

秀でっ!!まったく何でこの私なのかしら?」

 そうこう愚痴をもらすうちに扉がノックされる。

「私だ、ゲンドウだ。入っていいかな?」

 その声は確かにゲンドウ、いや碇九世のものだった。しかしレイはただ一言

「どうぞご自由に。」

と冷たく言い放つだけだった。しかたなくはいる碇九世。

「そう怒らないでくれ、私の息子もなかなかのものだぞ。」

 明らかに結婚に不満ありげなレイ公女に対して言う碇九世。

「だって、いくらNERV帝国の次期皇帝とはいえ顔も知らない人と結婚させら

れるなんて理不尽です!!有無を言わせず父が無理矢理ここに送りつけさせて

きてみれば結婚ですって!?冗談にもほどがあります!!」

 かなり怒っているらしい、その白い膚が紅く紅潮している。

「その辺は私や君の父君にも落ち度があった。しかし顔を知っていたからとて

君は結婚するのかね?」

 盲点を突かれ一瞬ひるむレイ公女。しかしとっさに反論を切り出す。

「それはそうですが、別段この帝国と私の父の公国は仲が良いというわけでも

利害が一致する要素もないのになぜ政略結婚のようなことをするんですかっ!!」

 こちらもいたいところを突かれひるむ碇九世。

「そ、それはまあ色々あったのだ。」

としどろもどろにお茶を濁して返す。

「そうですか。とにかく私のご機嫌取りなら無駄です、すみませんがおかえり

になってください。」

 言われてしかたなく帰る碇九世。しかし容赦なくにらみつけられ帰らざるを

えなかった。

「まったく近頃おかしいわね、理由もなしに政略結婚なんて!!」

 言うなりレイはベッドに転がり眠ってしまった。これが公女の姿か・・

                 *

 ここもまた静寂に包まれていた。その静寂の中に銀髪の少年が一人たたずむ。

少年は普通の女性が見たら一目でまいってしまいそうな美少年で、やはりあ

る種のカリスマ性を備えていた。しかしその瞳は紅く、明らかに常人とはかけ

離れていた。 ノックされるドア、しかたなく開ける。

「なんだ、シャムシェルじゃないか。ノックなどせず入ればいいのに。」

「そうゆうわけにもいきますまい、あなた様は次期皇帝ではないにせよ第二皇

位継承者なのですから。」

 そう、この少年こそ碇九世がもう一子、渚カヲルだ。正妻の子ではないので

第二皇位継承者だがその人気はシンジよりも高い。

「いってくれるな、シャムシェル。それに君は僕の直属の部下じゃないか。」

 このシャムシェルという男はカヲル独自の特殊部隊「ANGEL」の一員

で、背格好は細長い感じを与え、膚は赤銅色だ。

「何をおっしゃいますか、こういったことにこそきちんとけじめを・・」

「もういいよ、そんなことをするためにきたんじゃないだろう?」

 くどくどと始まりそうになるお説教を遮りカヲルが言う。

「そうでしたな。シンジ様のことで、実はご結婚なさるというのです。」

 それを聞いたカヲルは血相を変えて

「いつ、どこで!?一体誰が!?シンジ君は同意しているのかい!?」

と取り乱した。それを制してシャムシェルが言う。

「大丈夫です、シンジ様にそのご意向はなく皇帝陛下と対立なさいました。」

「そうかい、良かった・・・・」

 と安堵するカヲル。しかし続けてシャムシェルが言う。

「どうやらアスカ様とシンジ様のお二人でNーFポイントへ向かわれるようで

す。決行は今夜夜分、場所はわかりませんでしたが・・「いつもの場所」にお

心当たりありませんか?」

 どうやらカヲルが常にシンジに見張りをつけ、かわりがあったら報告される

ようになっているらしい。勿論カヲルと部下しかこのことは知らない。

「いつもの場所か、あの二人の落ち合う場所なんかわからないな・・」

 カヲルは顔をしかめ、それからシャムシェルに二三耳打ちした。それを聞い
 
たシャムシェルは退室の挨拶をして去っていった。

「離しはしないよ、シンジ君。」



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管理人たちのコメント

カヲル「火野さん、分譲住宅への入居、ありがとう。僕は待っていたよ。・・・・しかし・・・・ふっ、僕がシンジくんの弟か・・・・」

アスカ「なに悲しそうな顔してんのよ」

カヲル「いやね・・・・シンジ君と血族と言うことは・・・・あんなことやこんなことやそんなことをすると法律で罰せられる身分になると言うことに・・・・」

 ばきっ! ぐしゃっ! どかっ!

アスカ「いい加減にそのあやしい妄想をやめなさいっ!! それに、あんた第二皇位継承者なら、滅多なことじゃ法律なんて適用されないでょうがっ!!」

カヲル「あ、そうか。じゃ、シンジ君の所に早速・・・・」

 めきっ

カヲル「・・・・ぐふっ・・・・」

アスカ「はあーっ、はあーっ、はあーっ・・・・この、ぶぁかが・・・・」


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