昭和72年
平成9年
春の映画の前にテレビでエヴァンゲリオンの再放送が始まった。その日はレイ心の向こうにから、アスカ来日までだった。
「やっぱり決戦、第三新東京市は面白いな。おお、双子山がでて来たぞ・・・あれ? 二子山って書いてない・・・ぎえー、俺、間違がっとるやんけー。がびーん・・・まっ、いいか、これもギャグってことで」
昭和89年
平成26年
双子山要塞
そして、双子山要塞は富士山要塞の前にすがたを現した。要塞指令室で、高笑いする男が一人いた。
「ふはははは、同盟のやつらめ驚いたか、このケンプケ様が来たからにはお前ら全員皆殺しだー」
「ちょっと、ちょっと、私たちの仕事はシンジ皇子奪還でしょ。皆殺しだなんておだやかじゃないわよ」
ミュサト提督がたしなめる。
「うるさいぞ、ふ・く・司令官」
(・・・かわいくないわねー)
そう、ミュサトは思った。
「男のロマンは大鑑巨砲主義じゃあー、ガイエスハーケンを発射しろ」
ガイエスハーケンとは双子山要塞の主砲であり、やっぱり投石機だった。投石機とはいえコンピューターで気温、湿度、気圧、バイオリズム、諸世紀などを調べ方向を修正することにより、誤差数センチの精度で命中させることができるのだ。
「ガイエスハーケン発射・・・・・命中しました」
「ぐふふ、いいぞ第二射を準備しろ」
そのとき、指令室が大きく振動した。
ごがががが
「な、なんだ何が起こったんだ」
「富士山要塞より、トゥールハンマーが発射されました」
「なんだと? 同盟のやつらめ要塞主砲同士の打ち合いなどしたら共倒れじゃないか、馬鹿が」
(おーい、あんたが始めに撃ったんでしょうが)
ミュサトはあきれ顔だ。
「こうなったらしかたがない、ミュサト提督、艦隊を出撃させろ」
「ん! なるほどこちらの主砲を囮にして艦隊で富士山要塞を取るのね」
ミュサトは素直に感心したが、
「違う。艦隊を囮にするのだ。そうすれば安心して何発でもガイエスハーケン撃てる。すばらしい考え・・・・ぎゃー」
ぼこぼこぼこ!!
ケンプケはたこ殴りにされた。その後平和的にミュサトの案が採用された。
富士山要塞指令室
「ええー、敵がいきなり出現!! それも質量40兆トン!!!」
フレデリカ・グリーンヒカリは机から面をあげた。机の上にはマンガの原稿があった。同人誌だ。指令室中にいくつも机が並べられていて、何人もの人が同じようにマンガを描いていた。いや、描かされていた。ヒカリは司令官代理になったことをいいことに、職務特権を悪用していたのだ。
「いやー、なんで締め切り前になると、問題が起こるのよー」
ちなみに締め切りは、明日だ。
ごがががが
指令室が大きく揺れた。コトンと、インクのつぼが倒れた。
「ぎゃあああー、原稿が、原稿ぐあぁ!!」
ヒカリはヒステリックに叫んだ。
「敵の要塞砲のようだね。こっちもトゥールハンマーで応戦しよう」
カヲルがなだめるようにやさしく言った。ちなみにカヲルの机には抱き合っているシンジとカヲルの原稿があった。
「よくも神聖な原稿を汚してくれたわね。トダ・ケンスケ技術少佐、トゥールハンマー発射して、それといそいで第二新東京市に連絡、惣流ラングレー提督を呼び戻して」
ヒカリは的確に指示を出す。だてに司令官代理を勤めているわけではなかった。
(レイ、僕たちの居所に気づいたな。僕とシンジ君の愛の巣は渡さないぞ)
カヲルはあやしい決意をした。
第二新東京市
「どう、シンジ。この服似合うかしら」
惣流ラングレーは持っている服を自分に重ねてシンジ皇子に見せていた。
「・・・あのさー、こんなことやってる場合じゃないと思うんだけど」
「何言ってるのよ。艦隊を編成している間、暇だから買い物してるんじゃないのよ。今日出発したって明日出発したって状況変わらないわよ」
「でもさー・・」
その時、シンジの耳に怪しい笛や太鼓の音が聞こえてきた。音のする方へ目を向けた。
「・・・寺、伊豆、舞浜・・・」
「・・・寺井、住まい、Ω・・・」
何十人もの人が、楽器を奏でたり、上のようなことをぶつぶつ言っている。シンジは震えながら、指をさした。
「・・なに、あれ」
「ん、ああ『大人になったらアニメ見るな教』ね。人の趣向にとやかく言うわけわかんない集団よ」
「じゃあ、あのかけ声は?」
「えーと、確か・・伊豆半島にある舞浜の寺を見ろ。とか、寺井さんは住むのに抵抗があるという意味だったわね」
「めちゃくちゃじゃないか! 舞浜は伊豆半島にないし、しかもあそこには鼠屋敷しかないじゃないか。それにどっちも教義とは関係がないよ!!」
「今週のべたべたなんでしょ」
富士山要塞
ごがががが
また、砲撃を受けた。
「トゥールハンマー、打ち返して。ふう、それにしても帝国のやつら、共倒れでもねらってるのかしら」
「どうやら、そうじゃないみたいだね」
レーダーは双子山要塞から艦隊が出撃してくるのを捕らえていた。
「僕は、スパルタニアンで出るから後はよろしく」
そう言うと、カヲルは駆け足で指令室を出ていった。スパルタニアンとは、かっこいい戦闘機のことである。
スパルタニアン操縦席
「タンビ、サブ、バラ、ヤオイ、オカマ、ホモ、各中隊そろっているね」
黒いプラグスーツを着たカヲルは操縦席から勝手に付けた名前で部下に呼びかける。
「いいかい、柄でもないこと考えてはいけないよ。片思いの、きれいな男の子のことだけを考えるんだ。生きてその男の子の笑顔をみたいと思うんだ。そうすれば、あやしい同人誌だけでなく、やおい同人誌も買えるようになるよ。わかったかな」
しーん
部下たちは誰も返事をしなかった。
「シンジ君。君の笑顔は僕だけのものだよ・・・・出撃!」
そして、スパルタニアンは次々と飛び立った。
ミュサト艦隊旗艦イスラフェル甲
「ガイエスハーケンが発射されました」
ミュサトはオペレーターの報告にうなずき、命令した。
「全艦最大戦速、目標富士山要塞!! トゥールハンマーはこっちに向かってこないわ」
そして、ミュサトが言ったとおりトゥールハンマーは艦隊でなく双子山要塞に向かって発射された。そして艦隊が富士山要塞に肉薄した。あわてて同盟艦隊が出撃したが、
「遅い!!」
先手を取っているミュサトの艦隊にいいように撃墜された。
「いけるわ」
と口に出したとき、ミュサトは急に違和感を感じた。
(なに、うまくいきすぎている・・・罠・・)
「いえ、違うわ。オペレーター、要塞砲の第二射はまだなの」
「第二射の準備時間はとっくに過ぎましたが、未だ発射されません」
「あの野郎〜、おじけづきやがったな・・・しまった! 全艦・・・」
そして、トゥールハンマーはミュサト艦隊に襲い掛かった。
双子山要塞
「もうしわけありません。あともうすこしのところで落とせたのですが・・・・」
(このチキン野郎が、てめえのせいだ)
ミュサトは皮肉のつもりで慇懃無礼にあやまった。
「まあ、戦いは始まったばかりだ。我が軍のほうが優勢だしな」
ケンプケはうれしそうに言った。どうやら皮肉を理解する頭はなかったようだ。これ以上皮肉を言ってもしょうがないと悟ったミュサトは話題を変えた。
「ところで、兵士たちのうわさなんだけど、富士山要塞司令官惣流ラングレーが要塞にいないってことらしいわ。もしそうなら無理をしても全軍をあげて要塞を取りにいくのが得策ではないかしら」
ところがケンプケは顔を真っ赤にして怒った。
「わ、罠だ。罠だというのがわからんのか、低能め。そんな無理をせずここで要塞砲を撃っていればいいんだ」
(だめだ、こいつ)
ミュサトはケンプケの相手をするのをあきらめた。
(要塞にいなく、戦闘が開始されたことがわかれば惣流ラングレーは戻ってくるはず。それさえおさえることができれば・・・・この戦い勝てる!!)
ミュサトがまじめに戦術を考えているとき、ケンプケはくだらないことを考えていた。
「くくく、この回廊はやがて名前を変えるだろう。双子山回廊とな。それともケンプケ=トダ回廊というのもありうるぞ」
(馬鹿な、綾波伯が部下の個人的名誉をそのようにむくいるわけはないのに・・・)
「って言うかー・・・ぬわんでケンプケ=ミュサトじゃないのよ!! 誰よ、そのトダって!!!」
ミュサトは暴れだし、10人がかりでやっと取り押さえることができた。
惣流ラングレー艦隊旗艦ジェットアローン
艦隊はそろそろ富士山要塞に近づいてきた。
「そろそろ敵に警戒して」
惣流ラングレーがオペレーターたちに告げる。
「え、なんで? まだ富士山要塞じゃないけど」
シンジ皇子はのほほんと聞いた。
「ふっ、やっぱ、ばかシンジね。あたしが帝国軍だったら絶対、援軍を富士山要塞に近づけないわ。合流する前に必ず叩いておく。まあ戦術の常識ね」
「へー、惣流って戦術は詳しいんだ」
「戦術も戦略もよ」
惣流ラングレーは強調した。
「えー、だって阿武隈川のときの戦略は・・・・げえ」
がす!!
シンジののど元に地獄突きが決まった。
「男のくせにいちいち、うるさいわねー」
床でのたうちまわっているシンジには、惣流ラングレーの言葉は耳に届かなかった。
双子山要塞
ケンプケは艦隊を囮に使いたかったがミュサトがそれを許さず、かといって反撃にびびって要塞砲も撃たなかった。戦闘は膠着状態におちいった。
「ふ・く・司令官、卿は勝手に艦隊を動かしているらしいではないか」
ケンプケは不機嫌になっていた。
「司令官、惣流ラングレーが援軍を率いて帰ってきます。それを富士山要塞に知られないうちに各個撃破することができれば・・・」
ミュサトは現在、戦術的に一番正しいことを述べた。
「まだ、そんなことを言っているのか!! 惣流ラングレーはいるに決まっている。前線の指揮官がいないわけなかろうが、この世の掟だ!!」
「しかし・・・」
「おかしもばーむくうへんもない!! とっとと艦隊をもどせ」
つかつかとケンプケは立ち去った。
「ばーむくうへん?」
ミュサトはその後、艦隊を戻したことを後悔した。
富士山要塞
富士山要塞にようやく、惣流ラングレーが帰ってきた。そしてシンジ皇子と共に指令室に入ってきた。
「みんな、待たせたわね! って、この指令室はどうなってるのよ!!」
迎撃にいそがしく、マンガ描き用の机を出したままだった。近くにいたトダ・ケンスケ技術少佐が答えた。
「ああ、それね。司令官代理がコミケに間に合わないから、みんな手伝えって言われてね」
ぷるぷるぷる
惣流ラングレーの両手は震えていた。
「・・・その、フレデリカ・グリーンヒカリ司令官代理はどこにいらっしゃるのかしら」
惣流ラングレーとシンジ以外の、指令室にいた人達全員が、机の下に隠れているヒカリをビシッと指さした。
つかつかつか、と歩み寄った。そこには頭だけ隠して震えているヒカリがいた。
「まったく、頭かくしてなんとやらね」
ガシッとヒカリのお尻に蹴りを入れた。ヒカリは、びっくりしてその場で立ち上がろうとし、ガンっと頭を机にぶつけた。
「あたたたたた、て、提督・・・おかえりなさい」
「ヒーカーリー、覚悟はできてるでしょうね」
「あの、その、ゆるして・・・」
「死ね」
以下100行カット
惣流ラングレーは、ぱんぱんと手をはたいた。床にはグリーンヒカリと呼ばれていた物体が転がっていた。
「まったく、ちょっと隙をみせると、ろくなことしないんだから」
「ほんとうだよ、シンジ君。僕のいないところで変なことされなかったかい」
「・・・カヲル君」
いつのまにか現れた、カヲルがシンジにくっついていた。
「こらこらこら、そこのホモ男、シンジから離れなさい」
そう言うと、シンジの方へ近づいていった。が、妨害される前にカヲルが言い放った。
「惣流君、今は膠着状態だけど戦闘中だよ。さっさと司令官として義務を果たしてくれないかな」
「わかってるわよ!! 要塞駐留艦隊発進準備、艦隊で双子山を叩くわよ」
双子山要塞
ごがががが
トゥールハンマーが命中した。
「くそ、やつらめこちらがおとなしくしていると思って、つけあがりやがって、ガイエスハーケンをお返ししてやれ」
「まって、敵から攻撃をしてくるなんて初めてだわ。これは絶対罠よ。いま少し様子を見ましょう」
「あほか!! 攻撃を受けたら反撃するのが決まりだろうが、とっとと発射しろ」
ケンプケはわけのわからないことを言った。ガイエスハーケンが富士山要塞に発射された後、すぐに同盟艦隊が発進してきた。ミュサトが最初に考えた戦術を駆使してきたのだ。
(なぜ、今ごろこの手で・・・やはり援軍か)
ミュサトはふっとため息をもらした。そして次のケンプケの言葉を聞いて愕然とした。
「次は、こっちから撃ってやる。第二射準備急げ」
「ちょっ、何いってるのよ! 敵艦隊がせまってるじゃないのよ、あれをなんとかしないと」
「はぁ? あんな小物どうでもいい。敵の要塞が重要なんだ。そんなに気になるなら、卿の艦隊でなんとかすればいいじゃないか」
「・・・わかりました。勝手に行かさしてもらいます」
「早く発射しろ」
もはや、ケンプケは聞いていなかった。
ミュサト艦隊旗艦イスラフェル甲
「全艦、敵にかまわず撤退する。敵に隙をみせないようにね」
「全艦に通達します」
副官が答えた。
「あのさ、お酒いいかな。飲まずにはいられないんだけど・・」
「ほどほどにしてくださいよ」
と、副官は準備していた青汁をミュサトに手渡した。ミュサトは泣きながらそれを飲みほした。その後、ミュサトは望遠映像で双子山要塞が敵艦隊に攻撃される様を見ていた。そして、自分の席から立ち上がった。副官は立ち上がったミュサトの右手が上がるのに見て敬礼でもするのかと思ったが、中指だけが立てているのに気付きビクッとした。
「こぉんの、ピー野郎!! お前なんかピーでピーでピー!!!!」
と、お嫁に行けなくなるような言葉でどなり散らした。
双子山要塞
「ガイエスハーケン破壊されました」
「なんだとー、ミュサトの奴は何をやっているんだ!」
まさか、ピー扱いされているとは夢にも思っていなかった。
「こ、こ、こうなったら、突撃じゃあ! 玉砕じゃあ! 双子山要塞をぶつけてやれー!!」
興奮して血管が切れて額から血を流しながら、ケンプケは叫んだ。
「山は動きませんけど・・・」
副官はもうしわけなさそうに、答えた。
どっかーん
その時、何かしらの攻撃を受けて指令室が崩れた。ケンプケは瓦礫の下敷きになった。
「・・・くっ、お、男ならバーチャロンはライデンでやれ・・・ぐはっ」
ぱた
ケンプケ、その生涯を大艦巨砲主義で通した男が死んだ。
綾波伯元帥府
ミュサトは頭や腕に包帯をぐるぐるまいた姿で、綾波伯レイの前にひざまずいた。
「もうしわけありません。シンジ皇子を奪還することができなかったばかりか、多くの兵士を失い、ケンプケ司令官もお救いできませんでした。ううっ」
頭を深く下げたときに、頭の包帯から血がにじみだした。レイはミュサトを冷たく見下ろしていた。そして言葉を発した。
「卿に罪はないわ。一度の敗戦は、一度の勝利でつぐなえばいいのよ。遠路の征旅、ご苦労さま」
「閣下・・・」
(やったわ、包帯ぐるぐる同情作戦成功ね!!)
「と、言いたいところだけど、ミュサト提督。その背中に隠しているケチャップは何かしら」
「ぎくっ・・・あああ、ばれてる」
「元祖包帯少女のこの私に、偽包帯は効かないわ。ミュサト、あなたの戸籍の名前は『てミュサト』に変更よ」
「いやあああぁぁぁ、それだけは勘弁してーーー」
「ケンスケラー、うるさいから追い出して」
「はっ」
・・・・第三新東京市の歴史が、また一ページ・・・・
作者コメント
どうも、雪風ナギサちゃんの誘拐に失敗してブルーな青柳です。駄作化が進行している第五話を読んでいただきありがとうございます。それでもって感想までいただけると、非常にうれしいっす。さて、第五話についてちょっとだけ解説します。原作の銀英伝には地球教というのがありまして、それのスローガンに「Terrais my hand. Terra is my home.」というのがあります。で、これが今週のべたべたに通じているわけです。原作を知らない人があのべたべたを見ると、外基地扱いされそうなので触れときました。
青柳さんへの感想はこ・ち・ら♪
管理人(その他)のコメント
カヲル「ふう、リリンの文化の一つ、マンガというのは書くの大変だね。でもまあ、なかなかいいできのができたから・・・・これは売れるだろうな」
アスカ「妖しい電波物のやおい同人誌を健全な子供に売るんじゃない!!」
げしげしげし!!
カヲル「むぎゅう・・・・」
アスカ「それにしても青柳・・・・アンタのせいでヒカリまでやおいにそまったじゃないの!! ヒカリにはちゃんとトウジってあいてがいるのよ!! それを、それを、むっきいいいいい!! コメントで余計な解説しなくてもあんたは外基地よ、外基地!」
カヲル「なんかとんでもない言われ様だね、青柳さんも・・・・ああ、そうだ。アスカ君」
アスカ「なによ!!(きっ)」
カヲル「僕の作るはずだったマンガのネタを、青柳さんにきいて見れば?」
どかばきぐしゃ!!
アスカ「そんな破廉恥な内容、き、聞きたくもないわ!!!!!」
カヲル「ぐふっ・・・・じゃあ・・・・知りたい人は・・・・青柳さんまで・・・・メールを送って下さい・・・・」
べきどこぐしゃ!!
アスカ「ホントに送る奴がいたらどうするのよ、このぶぁか!!」