アスカ一行日記 1月10日
  
今日は金曜日。ぱっとしなかった1日だったけど、まあ、仕方ないわよね。それよりも明日は土曜日。しかもお休みよ。これは何かしなくっちゃね・・・・ でも・・・・何をしたらいいんだろ? もう、シンジをいろいろ引きずり回してめぼしいところは大体行っちゃったのよね・・・・ ま、明日になればそのうちいいこと思い付くわよね。一人でこう考えてるから、何も思い浮かばないけど、きっとシンジの顔を見れば、いいアイデアがきっと浮かぶはず。よし、今晩はシンジを夜更かしさせないようにしよう! そうすれば、どこに行きたくなっても大丈夫だと思う。それに、一泊旅行なんて言うのもいいわね・・・・そう、旅行がいいわ!!それに決めた!!でも、シンジにはまだ言わないわよ。明日急に言って、びっくりさせてやるんだから!!

   

   

  

「シンジ!!起きなさい、バカシンジ!!」

  

アタシはこっそりシンジの部屋に忍び込み、叩き起こしにかかった。

時間はまだ、朝の六時をちょっと過ぎたところ。もちろんいつもならアタシも寝てる時間だし、シンジも平日ならともかく休みの日はまだ熟睡している時間。だけど、今日はそうは行かないの。だって、今日はシンジと一緒に、どこかへ旅行に行くんだから・・・・

  


   

アスカ一行記・番外編

第一話:旅の始まりはキスから

   

  

「な、何だよアスカ・・・・」

  

シンジは眠そうな声を上げる。シンジは目覚し時計よりも先に目が覚める男だけど、やっぱり予定外の時間にいきなり起こされるのは、さすがに辛いみたい。

  

「いいから起きなさい!!もう起きる時間よ!!」

「もう起きる時間・・・?そんなはずはないけど・・・・今何時なの?」

「今は、六時・・・七分ちょうどよ。」

「六時ぃ!?今日は休みだろ!?どうしてそんなに早く起きなくちゃなんないんだよ!?」

「旅行に行くのよ!!旅行に!!いいから起きなさい!!」

  

アタシはそう言うとシンジの布団を引っぺがす。シンジは急に朝の冷たい空気に全身をさらされて、仕方なく起きるはめになった。

  

「旅行・・・?なに訳の分かんない事言ってんだよ・・・・」

「急に旅行に行きたくなったの。シンジも付き合いなさいよ。」

「・・・急に?」

「そ、急に。」

  

アタシの言葉は嘘だった。実は昨日から旅行に行くつもりだった。でも、誰にも言わずにいた。だって、シンジの驚く顔が見たかったし、それに、急な事にでもしないと、シンジが誰かを誘おうとしたかもしれなかったから・・・・

  

「付き合ってくれるんでしょ、シンジは?」

「別にいいけど・・・・どこに行くの?遠くじゃないだろうねえ?」

「行き先は決めてないわ。気が向くところに行く、ぶらり旅なんてのはどう? 知らない街を歩いて、珍しい食べ物を食べて・・・・」

  

シンジはようやく頭がしゃきっとしてきたようで、アタシの話にも案外乗り気な態度を見せはじめた。

  

「いいねえ、たまにはそういうのも。」

「でしょ!?じゃあ、オッケーよね!?」

「う、うん。いいよ、一緒に行こうか。」

「やったー!!」

  

アタシは思わず飛び上がって歓声を上げた。そして、アタシとシンジの、旅支度が始まった・・・・

  

「シンジ、用意は出来た?」

  

アタシは自分の用意、と言っても、実はほとんど昨日の夜のうちに済ませておいたんだけど、用意を済ませてシンジの様子を伺いに来た。するとシンジはようやく着替えを終えた段階だった。

  

「ほとんど終わったけど・・・って、アスカ!!何だよその大きな荷物は!?」

  

シンジはアタシの旅行鞄を見て驚きの声を上げる。まあ、当然よね。シンジはちょっとした日帰りの旅行のつもりでいたんだろうから。でも、泊まりの旅行だって言うのはまだ内緒。シンジに知られると、またいろいろ面倒だもんね。

  

「アタシはレディよ。アンタみたいな男とは違って、どこに行くにも手ぶらって言う訳にはいかないの。分かる?」

「アスカの言う事は分かるけど、それにしてもそのバッグは大きすぎるんじゃない?」

  

シンジのその指摘に対して、アタシは鞄を軽く持ちあげて見せると、シンジにこう言って聞かせた。

  

「これにはお土産を入れるの。いっぱいいろんな物を買ったり、綺麗な石を拾ってみたり・・・・分かるでしょ、アタシの気持ち!?」

「・・・・わかったよ。でも、一人で持って歩けるの?大変そうだけど・・・」

  

シンジがそう言うのを聞いて、アタシは不敵な笑みを浮かべながら、シンジに話した。

  

「もしかしてシンジは、レディに重い荷物を持たせておくわけじゃないでしょうねぇ・・・・?」

「・・・・わかったよ、僕が持てばいいんだろう?全く、アスカは・・・・」

「ぶつぶつ言わないの。後でアタシがご褒美をあげるから。ね!?」

「・・・・せいぜい期待しないで待ってるよ・・・・」

  

シンジの言葉はつれない。まあ、アタシがシンジにあげるご褒美といえば、大抵ビンタかキスかのどっちかだから、シンジがそういうのも無理はないんだけどね。でも、最近ビンタっていうのはめったになくなってる。キスがほとんどよね。しかも、何だかアタシはシンジとキスがしたくてシンジをからかってるみたい。実際そうなんだけど、改めて考えてみると、何だかおかしな話よね。男のシンジがキスを嫌がって、女のアタシがキスを求めてる。これって逆じゃない。ほんとはシンジがもっとアタシに積極的にしてくれればいいんだけど、シンジはなかなかアタシの気持ちを分かってくれない。この旅行をきっかけにして、シンジが少しでもアタシの気持ちを分かってくれるといいな・・・・

  

「アスカ、これ、一体中に何が入ってるの?やけに重いんだけど・・・」

  

シンジは道を歩きながら、アタシに尋ねてくる。

  

「大した物は入ってないわよ。そんなに重い?アンタが貧弱だからそう感じるんじゃないの?」

「そんな・・・・でも、ほんとに何が入ってるの?お土産を入れるって言うにしては、既にかなりいっぱいに入ってるし・・・・」

「洋服とか、バスタオルとか・・・・そんなもんよ。あとは・・・・アンタには言えないわ。」

「バスタオル?何でそんなものが必要なの?」

「川に落っこちた時のためよ。それに、いい温泉を見つけて、入るかもしれないし・・・・」

  

川に落っこちた時というのはかなり無理があったけど、とっさに思い付いた次の温泉って言うのは、結構いい理由になったみたい。シンジもアタシの言葉を聞いて、納得した顔をしてるし・・・・

  

「もちろんシンジの分も入ってるわよ。だから安心して川に落っこちて。」

  

アタシは冗談めかしてそう言う。シンジはすねたような顔をして、アタシに返事をした。

  

「川になんて落っこちる訳ないだろ?それに、その僕には言えないものって何だよ?」

「・・・・聞きたい?」

  

アタシはもったいぶってにやにやしながらシンジに尋ねる。シンジはそんなアタシの顔を見て、少し躊躇したけど、それを押し切ってアタシに言った。

  

「聞きたい。何が入ってるの?」

「・・・・女の子の・・・・アレよ。」

「アレ?」

「そ、アレ。シンジだって分かるでしょ?」

「・・・・・そんなに重いもんじゃないだろ?」

  

シンジはアタシの言った「アレ」というのに思い当たるものがあったのか、顔を真っ赤にしながらアタシにこう言った。すると、アタシにそんなシンジに向かってとぼけた顔をして言う。

  

「あら、女の子には男の子に知らないいろんなものがあるのよ。それとも何? もしかしてシンジはアタシの言葉を変な風にとらえたのかなぁ〜?」

「そ、そんなことないよっ!!」

「じゃあ、どうして重いものじゃないって言ったのぉ?シンジくんは何を考えたのかなぁ?」

「・・・・・」

「顔が赤いわよ、シンジ。」

「・・・・アスカのいぢわる・・・・」

「じゃあ、余計な詮索はしない事ね。」

「・・・・わかったよ。もう何も聞かない・・・・」

「ふふっ、わかればそれでいいの。そのかわり、ご褒美をあげるからね。」

  

アタシはそう言うと、シンジの真っ赤なほっぺにちゅっとくちづけ。シンジは更に真っ赤な顔をして、アタシに向かって言った。

  

「アスカぁ・・・・こんな大通りで・・・・」

「誰も見てやしないわよ。それに、見てたっていいじゃない。ね、シンジ?」

「・・・・はぁ・・・・・」

  

シンジはため息をついてる。でも、こんなキスくらいで真っ赤な顔をしてるシンジって、いつ見てもかわいいわよね。男らしい態度を見せるシンジもいいけど、こういうシンジも捨て難いな。

アタシはちょっといぢわるをしちゃったけど、シンジはあんまり怒ってないみたい。また、いつもの事かとでも思ってるのかしら?こういうアタシの事、厄介者だって思ってなきゃ、いいんだけどな・・・・

  

「さ、シンジ!!ぼさっとしてないで先を急ぐわよ!!」

  

アタシはため息をついてるシンジを見て、急ぐようにせかす。シンジはアタシの重い荷物を持ちながら、アタシの後をだまって付いて来た。

  

駅はもうすぐ。

これからどこに行こうかな?

シンジと二人っきりなら、アタシはどこでもいいんだけど、やっぱりいい思い出を作れるようなところにしたいし・・・・昨日一晩考えたんだけど、結局決められなかったのよね。ま、なんとかなるわ!!アタシはシンジと一緒なら、何でもうまく行きそうな気がするからねっ!!
   


高嶋さんへの感想はこ・ち・ら♪   

「かくしEVAルーム」高嶋さんのぺえじはこ・ち・ら♪   


管理人(その他)のコメント

シンジ「本日、カヲル君はどうしても手放せない用があるらしく、ここには来れません。かわりにメッセージを預かっています。「高嶋さん、この分譲住宅にようこそ。僕は待っていたよ。ただ、なぜ僕のシンジ君がアスカ君と旅行へ行くんだい? そういうネタはぜひ僕がシンジくんと愛の旅行をする話に・・・・」って・・・・カヲル君・・・・汗」

アスカ「あのぶぁか、とことんまでシンジをつけねらう気ね。ふっ、このアタシと対抗しようなんてどだい無理な話なのに」

シンジ「え、ええと・・・・とりあえずこの手紙はおいておいて・・・・(ごそごそ)、どう、アスカ、これを読んだ感想は?」

アスカ「え・・・・(どきり)・・・・き、決まってるじゃない! どうしてアタシがアンタなんかと、その、らぶらぶ旅行しなきゃいけないの! ア、アタシには加持さんって人がいるんだからね!」

シンジ「・・・・やっぱり、僕と旅行なんていやなの? そうか、そうだよね。アスカは・・・・ふう(がっくり)」

アスカ「な、なにしょんぼりしてんのよシンジ! あ、あ、アタシだって別にアンタと行くのがイヤって訳じゃないし、その、あの、だから・・・・」

シンジ「はああああああ・・・・・」(とぼとぼ)

アスカ「あ・・・・シンジ、どこ行くのよ・・・・。・・・・・ああ、またやっちゃったわ・・・・どうしてアタシって、高嶋さんのお話みたいに素直になれないのかなぁ・・・・ホントは、シンジと旅行に行けてすごくうれしいのに・・・・。・・・・アスカの、バカ・・・・」


   

逃げた作者のコメント

 いやーすごいですなーさすがはたかしまさんですなーはー。

 ・・・・はっ、こ、これは失礼を(あせあせ)。あまりのすばらしさに脳味噌がスパークしまして、ひらがなになっておりました(笑)。というわけで、もうエヴァ小説界で知らない人はいないとまで言われる大人物、高嶋さんのお話でございます。読んだ感想は、もう「いやー、いいなー、ふんいきもすごいしーてんかいもー」・・・・いかんいかん(あせあせ)。ワタシはアスカ一人称は好きなんですよね。ですからこれはもう至福の境地。シンジをからかう態度や言葉の端々にも光るものがありまして・・・・って、未熟者のワタシが言う台詞じゃないですね(爆)。
 かくしEVA様についてはもう何も説明はしません。というか、みなさん知っているのに説明するだけ無駄ですからね。こんなコメントを読んでいる人がいるかどうかも分からないですし。ああ、やっぱりコメントぺえじを別に作ろうかな・・・・なんか投稿の下に付けると悪い気がして・・・・(あせあせ)。

 と、とりあえず。高嶋さん本当にありがとうございます。そしてじゃんじゃかじゃんじゃか続きを読みたいみなさま! 感想めえるを高嶋さんに!(笑)
   


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