『シンジ君、アスカさん。 これを見る頃には、私たちはもう一緒にはあえなくなっているでしょう。 短い間でしたが、本当にたのしい時間でした。 生まれて物心ついたときにはすでに軍隊にいた私たちにとって、みんなとの生活はなくしていたものを取り戻したようなものでした。 ムサシも、ケイタも、同じように思っていることでしょう。まるで神様が最後に私たちに幸せを与えてくれたようなものだと思います。 でも、このままではもういられません。 戦自は今回の戦闘記録を元に、さらに震電の開発を強化していくことでしょう。私たちは以前と変わらないテストパイロット生活に戻らなければなりません。 もう、疲れました。あの基地には帰ろうとは思いません。ケイタを殺して何とも思わない辻三佐たちと一緒にいることは、私にもムサシにもできません。 だから、私たちは逃げます。戦闘直後で警戒がゆるんでいる今しか、チャンスはないのです。 おそらくシンジ君やアスカさんは、私たちのやろうとしていることを愚かな事だと思うでしょう。面と向かったら罵倒されるかもしれません。 他に、方法はないんです。 もしかしたら、いえおそらく戦自は全力を挙げて私たちを追いかけてくるでしょう。捕まえる見込みが無くなったら、私たちごと震電を抹消しようとするでしょう。 どちらにしても、逃げ切れる見込みは少ないと思っています。 だから、この手紙を鈴原君に渡しておきます。 おそらく二人とも、私たちを助けようと頑張ってくれるこでしょう。鈴原君には、震電が消滅したら、この手紙を渡してくれるようお願いしてあります。 悲しまないでください。あの檻の中に帰るくらいなら、と二人で決めたことです。これはケイタも言っていたことでした。ケイタの遺志を無駄にしないためにも、私たちは逃げるのです。 このことを知っていた鈴原君を責めないでください。彼に黙っていてくれるようお願いしたのは、私たちなんですから。 シンジ君、アスカさん。最後にもう一度言います。ありがとう。 そして、さようなら。 霧島マナ ムサシ・リー・ストラスバーグ 』 |
『シンジ君、アスカさん。 ごめんなさい。 二人には事前に本当のことをお話ししたかったのだけど、それは止められました。高千穂さんが、秘密を知っているのは最小限にしないと、今回の計画は成功しないって言われたんです。全てが終わったら、鈴原君からお話ししてもらうようお願いしてあります。 私たちは生きています。おそらくあの戦闘の後、二人ともつらい思いをしているかもしれません。そんな思いをさせてしまったことは本当にすまないと思っています。 前の手紙を鈴原君に渡したとき、激しく反対されました。「死ぬんは簡単や。でも生きている命を無駄にしてどうする!」って説得されました。むしろもっと建設的な方向に話をすすめよう、と言われ、高千穂さんを紹介してくれました。 高千穂さんは、「要するに君たちが死ねば、戦自も追跡はしてこないんだろう?」と言いました。だったら霧島マナとムサシ・リー・ストラスバーグが死んでしまえばいい、と。 計画はこうでした。震電で私たちが逃げれば、当然戦自は追跡してくるでしょう。捕まえられないと分かった時点で、彼らは震電そのものを消してしまう。その手段はほぼ間違いなくN2による隠滅だと。 あれで焼かれてしまえば、震電の中に人が乗っていたかどうかなんて分かるわけがないだろう、ということです。。 私たちは途中で震電から降りました。最後の震電は無人でした。 これを知っていたのは、鈴原君と高千穂さん、大塚さん、そして高千穂さんが連絡をした碇司令だけです。 私たちは霧島マナという名前、ムサシ・リー・ストラスバーグという名前を捨てて、別人として生きていきます。父さん母さんと会えないことはつらいです。でも、あの基地に戻るくらいなら、どうせ死んでしまうのですから、こうする事を選びました。 私たちはこれから、二人で力を合わせて生きていきます。 この手紙を見る頃、私たちは第三新東京市を離れる頃だと思います。 最後にあえなかったのは残念です。 心配させてごめんなさい。そして前の手紙でも言いましたが、ありがとう。 さようなら。 霧島マナ ムサシ・リー・ストラスバーグ 』 |