「約束のキーホルダー」

CHAPTER 03


Tears dried up.




第34日


―――NERV本部第二発令所。

「・・・なんですって!?」
「・・・だから、レイのサルベージは不可能なのよ。」
声を荒げたミサトに、静かにリツコが答えた。
「どうして!?」
「簡単な事よ。エントリープラグが排出できないの。これじゃ、サルベージしよう がない。
マギのサポート云々以前の問題だわ。」
「・・・排出信号を受け付けないから?・・・だったら装甲を破るなりなんなりし てでも」
ミサトの提案に、リツコは即答した。
「プラグの中にどんな影響が出るかわからないのよ。レイは初号機と融合している し・・・。
それに。」
「何?」
「・・・内部を走査しようとすると、S2機関の出力が上がるのよ。
・・・どう思う?」
リツコは、最後の台詞は口調を変えた。
ミサトはそれを敏感に感じ取り、作戦部長としての考えを出す。
「・・・手を出すな・・・って事?」
『・・・でも、どうしてそんな事が・・・。前に言ってた、EVAの意志?』
ミサトは何も知らない。当然、そんな疑問が浮かぶ。
だが、口には出さない。答えが返ってこないのは、分かっている。
もちろん、リツコはミサトの胸の内は分かっている。だから、簡潔に返事をした。
「それしかないでしょうね。」
「じゃあ、レイはどうするのよ!?」
「奇跡を待つしかないわ。・・・あと一度だけ、奇跡が起こるのを、ね。」
「・・・・・・」
「あなたは、信じないの?」
予想もしないリツコの言葉に、ミサトは少し戸惑った。
「リツコ・・・変わったわね。
「ふふ。誰かさんのおかげよ。」
「・・・私は・・・」
・・・信じられるだろうか?もう一度・・・
・・もちろん、決まっている。


第44日


―――同じく、第二発令所。

「・・・まさか、初号機にそんな秘密があるとは、ね。」
「それで、サルベージしようとしたの。でも、それは失敗した。代わりにサルベージされたのが・・・」
「―――レイ・・・ってわけね。」
・・・実はそれだけではないんだけどね。
リツコはそう思った。レイの力の事には触れていないのだ。
が、今言っても仕方ない事なので、それは伏せる。
「そういう事。どう、奇跡が起こる気も、してくるでしょ?」
以前では考えられないようなセリフを、リツコは返した。
「まぁ、ね。・・・でも、いつになるかは、わからないってわけか・・・。」
「そればかりはどうしようもないわね。」
「はぁ・・・。」
確かに、仕方ない。こればかりは誰にも予測できないだろう。
だから、今度はリツコが答えられそうな事を聞く。
「なんだってこんな時に、初号機の事なんか教えてくれたの?」
「もう隠していられないでしょうし・・・。それにあなたにも、知る権利があると思ったから、かしらね。
・・・レイがこんな事になったから。」
・・・レイの体は限界を越え、死に・・・今は初号機の中。これで何も知らないなんて、ね。
―――ミサトは黙ったまま、何も答えない。だからリツコは、少し気にかかっている事を聞いた。
「ミサト。・・・シンジ君は、どう?」
「一日中、初号機の前で立ってるわ。レイが戻ってくるのを待ってるんだろうけど・・・。」
言葉を切ったミサトに、リツコが怪訝そうに問い掛けた。
「何かあったの?」
リツコの問いに、少し躊躇してから、答える。
「・・・シンジ君、何だか恐いのよ。家でも何も話そうとしないし、全然表情変えないし。あれじゃ、まるで碇司令みたい。」
「・・・・・・」
「シンジ君のお母さん、ユイさん、だっけ?その時、碇司令もあんな顔してたんじゃないかしら。」
「さぁ、ね。アスカは大丈夫?」
ミサトの疑問をはぐらかしリツコはそう尋ねた。 「・・・それがねぇ・・・。あれからずいぶん荒れてるのよ。だいぶ参ってるわね。」
「なんだか他人事みたいな言い方ね。ミサトらしくもないじゃない。」
リツコは、普段と違い、冷たいような答えを返したミサトに聞いた。
「昨日、ちょっとね。・・・家に戻って、食事にしようと思ってシンジ君達の部屋に行ったんだけど・・・。
何だかケンカしてたみたいね。で、止めようとしたら、アスカに怒鳴られたのよ。」
「何て?」
「『ミサトは黙ってて!』・・・って。何だか、昨日はこたえたのよ。あの言葉が。」
ミサトの言葉に、重みが乗る。
「・・・そう。確かに、だいぶ参ってるかもね、アスカ。」
「・・・。ちょっと、諜報部の報告、見せてくれる?」
リツコが手元のキーボードを叩く。
数秒で、望みのデータが現れた。
「出たわよ。」
「・・・どうかしら・・・?。」
ミサトは、ディスプレイに並んだ短い文章を見て、重く呟いた。
「・・・・・・こりゃ、参ったわね・・・。」



『セカンドチルドレン、精神状態さらに悪化。』



───コンフォート17マンション

───11−A−3号室


家には、誰もいない。

ミサトは本部に行ってる。仕事もないのに。

レイはまだ帰ってこない。

いつ帰ってくるのか、全然わからない。

シンジは・・・毎日家事を済ませると、すぐに本部に行ってしまう。

ここの所、ろくに話もしていない。シンジは、話そうともしてくれない・・・。

昨日、いい加減怒ったけれど・・・やっぱり何も言ってくれなかった。黙って聞いてるだけ。

後で部屋に来たけど、一言『食事、食べてね。』って行っただけ。

・・・いつものシンジの声じゃなかった。

何日も前から、私の部屋は散らかりっぱなし。

・・・だけど、注意もしてくれない。黙って、さっさと行ってしまう。

ちょっと前の夜、イヤな夢を見た。

・・・昨日はもう眠れなかった。

明け方ごろ、ようやく少し寝て・・・

・・・目が覚めたら、シンジはもういなかった。 もうたまらなくなって・・・シンジの部屋に・・・シンジのベッドに逃げ込んだ。

少し落ち着いたら、眠くなった。眠ったら・・・また夢を見た。

イヤな気持ちが押し寄せてくる夢。

安堵。

暗い期待。

自己嫌悪。

言い訳。

悲嘆。

嫉妬。

自己嫌悪。

絶望。

空虚感。

孤独。

不安。

恐怖。

目が覚めても、その夢からは逃げられなかった。

・・・暗い部屋。

・・・殺風景な部屋。

・・・人の―――シンジの感じがしない部屋。

レイもシンジもいない家。

・・・私だけしかいない。


・・・私だけ・・・?

・・・私一人?・・・

・・・また、一人?

いや・・・もう・・・。

もう・・・、一人はいや・・・。

一人はいや!

一人はイヤぁっ!






「・・・シンジ・・・・・・」

か細い声が響いた。

「シンジィ・・・このままじゃ、あたしまた壊れちゃうよぉ・・・。」



CHAPTER 04 Ended.



キャリバーンさんへの感想はこ・ち・ら♪   


出張コメントfrom分譲住宅

作者 「・・・・・ほんと、キャリバーンさんって高校生なんですか?」

カヲル「僕に聞かないでくれないか。君の方が彼のことはよく知ってるだろうに」

作者 「そういわれても、この作品レヴェル・・・・信じられないね。まったく。私の作品よりもいいですよ」

カヲル「それは確かにいえるかもね。一月以上更新のない誰かさんの作品よりは・・・・」

作者 「ぎくぎくぎくっ。い、いや・・・・いちおう今書いているんですけどね・・・・」

カヲル「いいかげんに書かないと、君、見捨てられるよ」

アスカ「ふん、このキャリバーンってやつ、よっぽどアタシを不幸にしたいのかしらね。こんなの、アタシじゃないわよ!」

カヲル「まあまあ、これはいくつもある可能性の一つの形。キャリバーンさんの描こうとする終局のひとつなんだから、もうしばらく様子を見守ってみようじゃないか」

アスカ「ふん、まあ、それはそうかもしれないけど、こんなのをシンジに読まれるかと思うと・・・・」

カヲル「なに、嫌われるのが恐いって?」

アスカ「ま、まあね・・・」

作者 「そう気にしなくても、アスカちゃんなら大丈夫だって」

カヲル「そうそう、元々シンジ君には嫌われてることだし」

作者 「こ、こらカヲル君! 人の発言を勝手に解釈するんじゃない!!」

アスカ「そうか〜そうおもっていたのか〜アンタたち〜」

作者 「ち、ち、ちがうっ、私の言いたいことはこの腐れ使徒とはちがうっ!!」

アスカ「問答無用、天誅をくらいなさい!!」

作者 「そんな無体な〜(涙)」

 どかばきぐしゃあっ!!(×2)

カヲル「どうだい・・・・殴られる立場になったのは・・・・ぐはっ」

作者 「み、道連れにするとは・・・・・げふうっ」


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