遙かなる空の向こうに

第35話:茫漠たる午後





「綾波、どこに行っていたんだよ」
 ケンスケはシンジの声に、はっと後ろを振り返った。
 放課後、帰り支度の教室。校庭へ、部室へ、また家へと帰る生徒の流れに逆らうように、レイは教室の入り口に立っていた。
「家を出て学校にも来ないで」
 机の間を駆けるように綾波のもとへ行くシンジに、ケンスケも我知らず後を付いていく。
「もしかしてまた、本部に行っていた?」
「・・・・うん、ちょっと用事があって」
 レイは眼前に立ったシンジからわずかに視線を避け、小さくうなずいた。ケンスケはその様子を見て、あれ? と思った。
 ここしばらくのレイは、シンジの目をじっと見て話をしていた。意識して、視線の中に様々な思いを込めて。
 また、以前はまるでシンジがいないかのように無感情で見つめていたはずだった。
 今日のように、最初から視線を逸らすような事はなかったはずだ。
 シンジはしかしそれに気づく様子もなく、ほっとしたように小さく息をついた。
「それなら、いいけど、さ。どこかで悪いことでもあったんじゃないかと、心配したんだよ。アスカもさ」
 そう言って、きょろきょろとシンジは辺りを見回した。
「・・・・あれ、アスカは? ケンスケ、知らない?」
「いーや、僕も知らない・・・いや、そういや授業のあと、すっ飛ぶようにどっか行ったっけ」
 思い出したようにぽんと手を打ち、そしてまたケンスケはあれ、と思った。
 珍しい。綾波がいるのに、惣流がいない。
 いや、そうなない。
 シンジがここにいるのに、惣流がここにいない。
 惣流もまた、綾波と同じようにシンジをずっと見ていたはず。ずっと側にいようとしていたはずだった。
 それが、シンジの奴をほっぽりだしてどっかに行っちゃうなんて。
「あれ、そうなんだ」
 シンジは一つ首を傾げた後、ま、アスカのことだから、と納得したようにうなずいた。
「じゃ、綾波。先生のところに行って、それから帰ろう」
 先生だって気にしているだろうから。
 しかしレイは、シンジのその言葉に、小さく首を振った。
「碇くん。話があるの」
「・・・え?」
 僕に? そう問いかけたシンジに、レイははっきりとうなずきを返した。
「今すぐ?」
「うん」
「大事な話?」
「うん」
「・・・・まさか、そのためにわざわざ学校に来た?」
 無言のまま、レイはそれを肯定した。そして、ケンスケの方をちらっと見る。ケンスケはそれで、彼女の言わんとすることを理解した。
 自分の心が、わずかに波打つのがケンスケには分かった。
 シンジの奴に、言うつもりなんだ。
 そう思うと同時に、ケンスケは、はっと声を張り上げていた。
「あ、もしかして、今日って水曜日?」
 びっくりしたように、シンジがケンスケの方を振り向く。
「な、なんだよいきなり。水曜日に決まってるだろ?」
「ってことは・・・・いけね!」
「え?」
「今日は新富士演習場で試製十六式戦車の一般公開日だった!」
「は?」
「は? じゃない、七十四式、九十式と続いた自衛隊の次期MBT最有力候補だぞ! 三菱、石川島、西崎の共同開発計画の結晶! しかも十五式指揮戦闘車の初公開もある! これを見に行かないでなんとする!」
「・・・・いや、そう言われても・・・」
「そうもこうもあるか!」
 目を白黒させるシンジにむかって一気にまくし立てると、ケンスケはあわてたふりをしてまず教室の時計を見た。
「15:30か。今から行けば、最後の試験射撃には間に合う・・・・っと、カメラカメラ!」
 そう言って、次に自分の席を見る。どたばたとカメラを掴み、自分の鞄を肩に引っかける。
「じゃ、そう言うわけでまた明日な、シンジ、綾波!」
 びっ、と手を挙げて挨拶をし、ケンスケはもはやシンジの方を振り向こうともせず駆けだしていく。そして教室を飛び出し際、彼は綾波の脇を駆け抜けながら小さくうなずいて見せた。
 ・・・・がんばれよ。
 無言の声に、レイはシンジに気づかれないようにうなずいて見せた。
「ケンスケの奴、相変わらずだなぁ」
 廊下を遠ざかる足音をバックに、シンジはそう苦笑して見せた。
「でも、あれがやっぱりケンスケらしい、っていうのかな」
 頭をかきながら、シンジはもう足音のない廊下をみる。レイはそのシンジの背に向かって、小さくつぶやいた。
「・・・・碇君、友達って・・・・」
「え?」
 ふっと聞き返すシンジに、レイはその後に続く言葉を飲み込む。
 ・・・・友達って、いい、ものね。
 かわりに、彼女はシンジに向き直ると、意を決して言った。
「お願い、一緒に、来てほしいの」


 ったく。
 我ながら、人がいいっていうかなんつうか。
 ケンスケは歩みを止めながら、今出てきた教室を振り返りわずかにため息をついた。
 聞かない方が、知らない方がよかったのかもしれないけど。
 そしてあの屋上の会話を思い出す。
 私は残された時間を精一杯生きるの。
 そして、この間の夜のこと。
 私のたった一つだけの我が儘。
 そう言った彼女の顔は、目を閉じればありありとよみがえってくる。
 ・・・・まあ、しょうがないよな。
 好きな子のため、って思うしかないか。
 ケンスケは頭をかきながら、小さく苦笑した。
 それに。
 これは、惣流を除けば、僕にしかできないことだし、な。
 惣流は綾波と同じグラウンドに立っている。手伝おうにもできないこともある。
 そういう意味では、僕にしかできないこと。
 脳裏で、くるくると綾波の顔が現れては消えていく。
 憂いている顔。
 笑っている顔。
 想いを向ける顔。
 シンジに、想いを向ける顔。
 そう、僕があの子を好きだってことは、もう伝えた。
 その答えも、もらった。
 予想していたとはいえ、だから悔いはない。
 今はただ、あの子がシンジに想いを告げることを、後ろから手伝うこと。
 残り少ない時間の中で。
 だから・・・。
 そこまで考えて、ケンスケははたと気づいた。
 背筋に、電流が走ったような思いだった。
 いや、実は気づいていたのかも知れない。気づいていながら、目を背けていた。それが今、より現実感と共に眼前に突きつけられたのではないだろうか。
 そう。
 もし、彼女が想いを告げて。
 告げて、その想いが彼に受け入れられたとして。
 その後、彼女の時間が途切れたとき、想いを受け入れ、そして突如残された彼はいったいどうすればいいのだろう。
「最後には、ちゃんと言わなきゃいけないよ。みんなに、何があっても」
 あの夜、自分はそう言った。
 最後には。
 最後には?
「そんな終わり方なんて」
 いいのか。
 そんな終わり方なんて、いいのか?


 レイは、黙って歩いていた。
 シンジはその後をついていった。
 彼女の後ろ姿を見ながら、どこか違和感を感じていた。
 いつものように、横に並んで歩こうかとも思った。しかし今日はなぜだかそれがためらわれた。
 なんでだろうか、そう考えて、シンジははたと思い浮かんだ。
 そういえば、いつもなら綾波は自分から僕の横に並んでいた。それが今日はどうだろう。彼女一人で歩いていき、その後を僕が付いていっている。まるで、昔のようだ。
 まだ使徒と戦っていたあのころ。ジオフロントの中で。あるいは街中でも。綾波は一人で歩いていき、その後を僕が付いていき、アスカが二人にちょっかいを出しながら。
 違和感の正体が分かって、シンジは逆に疑問を深めた。
 じゃあなんで、綾波は今日に限ってそうなんだろうか。
 何があったんだろう。
 赤信号で歩みを止めたその横に、シンジは立った。
 そっと横目で見ると、レイはじっと前を見つめている。
 その赤い瞳の先を見つめる先を追ってみたが、たいしたものはない。どちらかと言えば、なにも視界に入っていない、と言う感じだった。
「どこに、行くの?」
 シンジはかろうじてそう聞いてみた。
 それに対して、レイはしばらく答えにとまどっているようだった。
 じりじりと照りつける日差しの中、無言の時間が過ぎ、信号が青に変わる。
「・・・・すぐ、わかるから」
 そう言って、レイはまた歩き始める。
 上の空のその返答に、シンジは踏み出す足をわずかに止めた。
 そしてまた、彼女の後をついて歩く。
 歩きながら、再び考えた。
 心ここにあらず、という感じだよな。
 どこを見ているのかわからない。問いかけても返事はあの様子。
 それでいて、教室で自分に話してきたときは真剣だった。真摯な表情で、僕に一緒に来て欲しいと言った。
 大事な話でもあるんだろうか。
 周りに気を配る余裕もないほどの事なんだろうか。
 レイは歩き続ける。
 シンジはその後をついていく。
 どれくらい歩いただろうか。
 セミの鳴き声が耳に響く。
 やがて、そこに異音が交じり始めた。
 ガコーン。ガコーーーン。
 鉄骨を打つ鈍い音。
 その音に、シンジは聞き覚えがあった。
 そして、彼女は歩みを止めた。
「ここは・・・・」
 シンジは、とまどった。どうして、ここに。
 そして頭上を見上げた。
 まだ陽は高い。まぶしさに目を細め、右手をかざす。そして徐々に光に慣れた頃。
「・・・ここよ」
 レイが、ぽそりと言った。
 そして踵を返し、シンジの方を振り返ることなく建物の中に消えていく。
 しかしシンジは、まだ見上げていた。
 信じられない、とばかりに。
 その建物に自体に驚いたわけではない。町中を歩けば、どこにでもあるようなごくごくありふれたものでしかない。作られてから10年ほどのわりに、外壁がくすみ薄汚れている以外はまったく違和感がない。第三新東京市の町並みにとけ込み、その一風景にしかならない。
 彼が驚いたのは、建物自体ではなかった。
 まだ、そこに「それ」があったことに驚いたのだ。


「ミサト!」
 アスカが息せき切って飛び込んできたとき、彼女が呼びかけた相手は眉一つ動かさなかった。動かさなかったどころか、振り向きさえしなかった。
 入り口に背を向け体をかがめ、食い入るように卓上の画面を見つめていたのだ。
 ただ傍らのリツコがついと視線を投げ、わずかに表情をゆがめたのみ。それを無視するようにつかつかと歩み寄ると、アスカはミサトの傍らに仁王立ちになる。
「アンタ、何か知ってるんでしょ!」
 レイが今日、学校に来なかったわけ。
 朝からずっと姿を消していた理由。
 シンジの側を離れていた、その目的。
「こんな時期にあの子がシンジのそばを離れるなんて」
 しかし、それでもミサトは彼女の方に視線を向けようとはしなかった。
 自然、卓上にかがみ込むミサトを彼女が見下ろす形になる。その横顔は彫像のように・・・・彫像のように一切の感情を排していた。
「ミサト、聞こえているの! 何とか言ったら―――」
「アスカ」
 そこで始めて、ミサトはアスカの言葉を遮った。
 その声を聞いたアスカが、鼻白むほどの弱々しい声だった。
「お願い、少し、黙ってて」
「な」
 取りすがるようなその口調に、アスカは瞬間言葉を失った。傍らのリツコはと言うと、そんなミサトと彼女のやりとりをみても全くの無言だった。
 再び視線を戻すと、ミサトの唇は固くひき結ばれ、何かをこらえているように見えた。
 それがかえって、アスカには不気味だった。救いを求めるようにもう一人の人物、マヤに視線を向けると、マヤはびくりと肩を震わせ、ついと瞳を反らした。
 なに。
 何なのよ。
 アスカは背筋に薄ら寒いものがはしった。
 かつて誰もが抱えていた、何かに対する拒絶、反駁、そして抵抗。
 ここしばらくなかった暗い雰囲気が、まるでかつての戦いの時を思い起こさせる。
 もう、そんなものないはずなのに。解き放たれたはずなのに。
 彼女は思った。
 じゃあ、いったい。今、みんなが認めたくないものとは。
 何なのか。
 ・・・・。
「あ」
 そこで彼女は不意に、気づいた。
 つながった一本の線。
「そうなの?」
 尋ねるのは怖かった。しかし聞かずにはいられなかった。
「ねえ、そうなの?」
 だれも、答えなかった。
 ばっと振り向くと、リツコのこわばった表情とまともに向かい合った。アスカは彼女に歩み寄ると、やおら両手で彼女の白衣を鷲掴みにする。
「リツコ! ねえ、そうなの?」
 食ってかかる少女に、リツコは何も答えなかった。ただ胸ぐらを捕まれるまま、声一つ上げようとしない。
「ミサト、そんなことないわよね! ねえ、そんなことないんでしょ!」
 すがるように―――本当に一本の藁にすがるような口調で、アスカはさらにミサトに問いかけた。
「嘘だって言ってよ。そんなことないって」
 それでも、ミサトは無言のままだった。食い入るように画面を見つめるのは変わらず。まるでそうすることで、救われようとしているかのように・・・。
 そんな二人の姿に、アスカは恐怖した。
 同時に、言いようのない思いがわきあがってくる。
「ミサト、そこをどいて!」
 その思いを振り払うように、アスカはミサトの肩を掴み、ずいと力強く押しのける。突き飛ばされた格好のミサトは卓に手をつき、耐えられないとばかりにアスカから視線を逸らした。彼女はそれをあえて無視すると、今し方までミサトが見ていた画面を・・・・そこに映し出された一連の文章を、ざっと読む。
 ―――そして、今度こそ本当に言葉を失った。
「私も今、知らされたのよ」
 力無く、ミサトが口を開いた。
 『DAY 1』。そんな書き出しで始まっていた画面は、レイの行動、体調、それらについて簡潔に、しかし要所を押さえて記されていた。『DAY 2』、『DAY 3』。そんな風に続く画面の流れの、それぞれの最後に簡潔に数字が記されている。
 30。29、27・・・。
 徐々に数を減らしていくその数字が、レイに残された時間であることをアスカは否応なく理解した。
 『DAY 8』、『DAY 12』、『DAY 17』・・・。日が下るに連れ減り続けるその数は、今日の日付、『DAY 20』の部分で、アスカと、そしてこの場にいる全員を戦慄させる値を記していた。
「もう・・・駄目なの・・・」
 かろうじて、アスカの口からそれだけがこぼれた。
 それが奇しくも、今朝レイがつぶやいた台詞と同じであることを、この場にいる誰もが知らなかったのだが。
「もう、あの子には時間も残されてないって言うの!」
 叫ぶように、少女は言った。
「こんなことって、こんな・・・・こんな・・・・」
 先ほどのまでのミサトと同じく、彼女は卓上に手をつき、肩を震わせる。食い入るように画面を見つめる瞳は、自分の見間違いであることだけを願っていた。しかしどんなに見直しても、その数値が変わることはない。
「まさか!」
 アスカは不意に気づいた。ばっと顔を上げ、リツコの方を振り向くと、絞り出すようにつぶやく。
「まさか、レイはもう・・・」
 朝から姿を見ない理由としては最悪の想像だったが、リツコは彼女の無言の問いに対し、ゆっくりと首を振った。
「いいえ、まだあの子は、大丈夫」
 何を指して大丈夫と言っているのか、その意味するところを全員が理解していた。
 リツコは表情を隠すように全員に背を向けると、窓際に歩み寄り外の景色を見つめた。まぶしい午後の日差しが、集光装置を通してジオフロントの大地に降り注ぐ。その強い光を意に介することなく、彼女は淡々と言葉を継いだ。
「でも、数の計算はもう終わり。あの子がいつ死ぬか、今度こそ本当に、誰にも分からない」
「リツコ、アンタって!」
 しれりと言い放ったその口調にアスカは激昂しかけたが、その肩を掴んだのは意外にもマヤだった。
「アスカ、そうじゃない、そうじゃないの!」
「なにがよ! なにがいったいそうじゃないっていうの!」
 一見無責任ともとれる発言にアスカは憤っていたが、マヤはそれでも彼女の肩に掛けたてを話そうとしなかった。
「先輩が言っているのは、これで本当に、あの子が時間という呪縛から逃げられた、ってことなの」
 両肩に手を置き、ぐいと自分の方を向かせて、彼女は言葉を続けた。
「私は今日、先輩に言ったわ。主役は舞台の状況を知らなくちゃ、最善の演技はできません、って。でも、考えてみればおかしな話。彼女は演技をしているわけじゃない。ただ一生懸命に今を過ごしている」
「・・・・」
「人の命を数字にできるなんて、ある意味思い上がりであるし、そんな数字を突きつけられて、じゃあどうするの? あと15日。じゃあこの3日間であれをして、次の2日間でこれをして。最後の1日、はい終わり。そんなのは普通の人のすることじゃない」
 それじゃあ、本当に舞台上の演技のような日々にしかならない。
「本人にはその気はなくても、突きつけられる数字はどうしても意識してしまう。あと3日しかない。ああ、どうしようって感じで」
 アスカはその言葉を黙って聞いていた。マヤも察したのだろう。アスカの肩から両手を離すと、さらに話を続けた。
「で、数字がゼロになった。でも、レイはまだ自分の足で立っている。歩いている。自分ではもう、と思っても、あの子の体の中ではまだしっかりと時は刻まれ続けている」
 だからこそ、私はあえて彼女の『時』を計った。マヤの瞳はそう語っていた。
「もう計算はできない。だれもわからない。そうは言っても、MAGIはずっと数値をはじき出してきた。でも人の命なんて、あと何年、あと何日なんて分からないのは元からのこと。明日死ぬかも知れない。10年生きるかも知れない。そして今のレイも同じ。明日倒れてそのまま死んでしまうかもしれない。 でも、明日倒れても10年生き続けるかも知れない。残された時間が0という数字で、始めてあの子は本当の「ヒト」に」
「もう、いいわ」
「アスカ」
 大きく一呼吸。アスカは嘆息すると、くるりとリツコの方を振り返った。
「アンタに怒ったのは私の間違いだった。謝るわ」
 でも。と、アスカは続けた。
「分かってるんでしょ。それが詭弁だって」
 ぴくりと、二人は体を震わせた。
 確かにヒトは誰もがいつ死ぬかは分からないが、レイにはそのゴールがもう見えているのだ。余命を宣告されたということは、そうでない人のように茫漠とした感覚ではなく、実感として目の前にあるのだから。
「そう、ね」
 リツコは否定しようとしなかった。マヤも、同じくだろう。
「思えば自分勝手なことね。最初は道具として使い、罪滅ぼしといいつつもあの子のためになるようなことはなにひとつできない。それでいて、自分たちのやったことは無駄ではないと思いたいなんて」 
 窓枠に置いた拳が、わずかに震えていた。
「私たちは結局、何をしていたのか・・・」
「それは、アタシの言える事じゃない。アンタ達のやってきたことがどうだったか、それがどうレイに感じられたか、それはあの子にしかわからないことだから」
 冷たいようだけど、そうとしか言えないから。
 アスカはそう言って、しばらくしてぽつり、と尋ねた。
「・・・・あの子は、いまどこ?」
 少女の問いに答えたのは、ミサトだった。
「レイは今、彼女のマンションにいるわ。シンジ君と一緒にね」




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