できるのはせいぜい一つのこと。がんばって二つ。三つ以上はちとつらい。四つ以上になると加速度的に駄目になる。精神的にも強くない。圧力が多いとだんだん顔がしかめ面に変わっていくのは自分でもおもしろいほどによく分かる。眉間にしわが寄っているときは、不機嫌なときか途方に暮れているときだ。
一つのことを頭の中で考え始めると考えすぎだと思うくらいに悩む。悩むことでさらに圧力が心にかかってしまいしかめ面になる。しかめ面になった自分をみてさらに悩む。
いくつものことを器用にほどほどにできればもっと楽なのかもしれないしもっといいのかもしれないけど、そういうことはできない。できないから手に入れようとしても手に入らないものはいっぱい。手にしてもこぼれてしまったものもいっぱい。そして手に入れたいと思いながらあきらめるものもいっぱいある。
そうやって少しずつ少しずつ、胸の奥のなにかが削り落とされていく。さらに増やし、育て、練り上げ、昇華されるべきだったそれは、今まで蓄えていたであろうものを無惨に削り取り、そぎ落とし、小さく小さくなっていく。そして最後に残るものは、たぶんなにもない。