肉がないんだよ!


 コンドミニアムで男女部屋に別れ、荷物を置きに行く。私の車には女性陣の荷物が積まれていたので、 女性陣の部屋が最上階ということもあり、もっていってあげる。 続いて自分の荷物を車から搬出しようとして階段を下り掛けたときである。

「キャーッ!!!」

 ミラ さんの「予想外」の声を聴いて飛び戻る。そんな可愛い声が出ることもあるんだなぁとちょっと感心。 で、部屋に戻ると・・・何かカーテンを指さしている。はて?

 かめむしだった。

「とって!はやくとって!」

 なんで荷物を運搬した上にかめ虫の相手までせねばならないのであろうか? 少々疑問が湧かぬでもないが、でもまぁ女の子ならば虫を恐がるのも致し方ないわけで。 ・・・「女の子」に分類してはイケナイのは分かっている、みなまでいうな、賢明なる読者諸賢よ。
 取り敢えず虫を紙で鷲掴み・・・ってこれ死骸やん。死んでますやん。こんなんにびびってたのか!? そのままゴミ箱にポイする。

「わぁん、こわかったー。飛騨さん、ありがとぉ〜」

 天敵が居なくなった ミラ さんにぎゅっと抱き付かれる。役得です。最高です。 やっぱり女の子ではなかった。オトナの女性である。色気むんむんである。 腕に当たる胸の感触が何とも言えない。 多分 MICK さんを覗けば、男性で唯一 ミラ さんの胸に触れた人間ではないだろうか? それも合法的かつ女性の方から胸を押し当てて来るという素晴らしいシチュエーションである。 昼間のファミレス文句も思わず水に流しそうな程だ。

「私、ジュンとしちゃうんです・・・」

 宇能鴻一郎ばりの状態に ミラ さんがなっているわけでもないので、それ以上のことは何もなかったが。 ちょっと物足りなかったのであのかめ虫の5,6匹は欲しかったが、 紳士な私はそんなそぶりを見せず、部屋を後にする。

 ひろし さんかだれか忘れたが、荷物を運んできた他の男性の羨望の視線があった様な気もするが、 心の中で腕に残る感触を楽しみつつ、階段をおりていく。

 鍋を行う予定の部屋に入ると、机の上に色々な材料を出し始めているところであった。 MICK さんが嬉しそうに指示を出している。根っからの鍋奉行なんだろう。しいたけがきらいだけど。

「飛騨〜、肉どこや〜?黒豚と地鶏はどこじゃ〜?」

 肉の買い出しは ブロイ さんということなので、私が ブロイ さんにきくと・・・

「・・・私でしたっけ?」

 沈黙の後に訪れた背筋の凍る解答。

「アホ、今すぐ買いにいってこい!」

 MICKさんの一声で私と ブロイ さんが買い出しにいくことに。丁寧な ブロイ さんは一々すまなそうに謝って下さったけど、 ブロイ さん、あなたがそこまで面倒みきれないのは当然ですよ、お気になさらず。 それより問題なのはこんな山の中に売ってる店があるんだろうか?である。 時間はもう8時になろうとしている。

「お店なんてありますかね?」

 私の不安そうな問いに対して ブロイ さんも同じ不安を抱えていたらしく、車を出したはいいが、状態である。 取り敢えずゲートの守衛さんに聞いて見ようと言うことになった。
 ゲートにいた守衛さんに聞くと、どうやら近くにサティがあるらしい。すごいぞサティ。あんな田舎にまで。 しかもこんな時間にまで。

「右手にシェルが見えてくるから。そこで曲がって」

 守衛さん、ありがとう!これで精進鍋にならなくて済むよ! ブロイ さんと車を走らせながら語る。安堵したのか、もう口調が互いに柔らかい。

「元々神戸で仕入れるのが間違いで、三田とかで仕入れるべきなんですよ。だって神戸牛って三田牛とかだから」

 ブロイ さんは物知りであった。私はそんなこと、ちーっともしりませんでしたよ。 そんなマメ知識に始まって、話はブロイ さんのエロサイト設立のキッカケ話になる。でも割愛。
 そんな話が続く中、二人して目印をしっかり確認。

「出光ですね、これ。守衛さんはシェルっていってたので、まだ先でしょう」

 そのまま先に進むと・・・どうも違う場所であることが判明。 守衛のおっちゃんは覚え違いをしていたらしい。野郎二人して山中を彷徨うハメになる。
 途中で私の携帯がなる。バイブレーションだったので一瞬車の振動と勘違いしてしまいそうだった。 もしも音を出していたら私は悲惨な失敗をしていたことだろう。そう、後で気付いたのだが、 着信メロディを RON さんの分は間違って指定されていたのである。私の作曲したオリジナルメロディ。 登録していたのは、過去に付き合っていた女性一人だけである。 鳴ったら当然名前を間違えて呼びかけたことだろう。絶対にネタにされていたに違いない。
 電話の主は使いっ走りの RON さんであった。 MICK さん、人使い荒いからなぁ、かわいそうに(笑)

「すみません、大根買ってきて下さい」

 下ろし金は持ってきたけれど、大根は忘れたらしい。ふむ、さすがは RON さんだ。片手落ちというか、らしいというか、ナイスなポイントである。
 しかしこれを皮切りに、何度も電話が鳴る。その都度注文品が増えるのである。なんて準備の悪い。 肉だけのハズが、一味、わさび、さしみ醤油、だいこん、うどん・そば数玉、胃薬などなど・・・ まだあと数点あったような。記憶するだけでも精一杯である。
 二人はこの時点でおおきな問題を抱えていた。そう、金がないのである。 買い物をする上で必要にして必須なお金がないのである。 ブロイ さんは部屋に鞄ごと財布をおいてきてしまったらしい。 私は私とて昼間のかい出しで財布の中を一気に吐き出してしまい、 予備の金を入れた財布は自分の車の中。ついでにカードも車においてきてしまっていた。 胃薬を買った時点で私の財布にある残余金は4700円ほど。
 私とブロイ さんは勇気を振り絞ってレジに行った。足りなければ戻るしかないが、 おそらく財布を再入手して戻ってくるときには、もうお店は閉まっているだろう。

 しかしお代は4200円程だった。辛うじて助かったのである。 私の目算では5000円ちょいだと思っていたのだけれど。
 ブロイ さんとほくほく顔で車に戻り、コンドミニアムを目指した。案外真面目なネタしか話さなかったのは内緒である。 車は軽快に山中を走り抜け、行きの時の半分ほどの時間でコンドミニアムに帰り着いた。時計は9時前を指している。  部屋に入るやいなや、拍手と喧騒と嬌声がお出迎え。

「よっしゃ、鍋を作るぞ!」

 MICK さんの号令をもとに、買われてきた品物はアッという間に消えていった。

「ああ、間に合った・・・」

 うねうね さんの切実な声を私はしばらく忘れられずにいた。




こうしゃくからの一言:

@そうそう、飛騨ッちらがかい出しに行ってる間、こっちはこっちで意味わかんなかったんだよ!
女性たちが料理する中 あたしは ぼへーっと椅子に座ってたんだけどさ。
下条さんは落語させられそうになるしー、RONさんは電話を必死にかけてるし、
ひろしさんは妹からLOVEコールかかってくるし、雛さんのめんたいこはうまいし・・・

って あんまり覚えてないってことだったんだけどさ

あ!!胃薬ってあたしのせいじゃん!!!あたしが頼んだんじゃん!!
ご、ごめんなぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

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