向かうは三宮なのね

 三宮にアプローチ開始。鶴橋で余分な時間を食ってしまった。だからそこらのスーパーのキムチで十分だと言ったのに・・・
 時計を目にしながら路程を脳内に描く。既に予定を大きく逸脱している。このまま食事抜きでかっ飛ばすか。エンジンも暖まっていることだし。
 そんな感じで車を出す。古い車だから速度に限度があるんだよね。15年近く前の車で、しかもガソリンの1800CCである。 厳しいことこの上ないし、何よりも私が載っている。これは重たい。他のメンツに関しては敢えて触れないで置く。
 背後に鶴橋が遠のいていくとき、振り返って市場を見つめる 下条 さんの表情は心なしか寂しそうだった。きっとこの人はここにハマったに違いない。だってあやしいんだもん。

 車は高速に入り込む。車の数が朝に比して増えているが、そこはそれ、強気の走行で切り抜けることにする。
「おっせーなー。もう少し早く流れるとイイのになー」
 温厚な私も多少ぶーたれながらハンドルを握る。 下条 さんはもう市場への未練を断ち切ったのか、前を向いて座っている。後ろを向くと酔うからかも知れないが。 しかし光る眼鏡の奥に隠れた表情が何を考えているのかは分からなかったが、首が こうしゃく の方をむいて居たことを思えば、きっとオフレポのために観察でもしていたのだろう。 或いは性癖を満喫していただけかも知れないが。
 一方の こうしゃく は全てお構いなしでCDをがさごそ探している。CD置き場は無論のこと、勝手にダッシュボードまで明けてさがしまくる。 中にあるものを全て片っ端からあさって居るんじゃないだろうか?少々不安に駆られながらも捨て置く。 やばいものがあるわけな・・・あ!!!

 自分の声の入っているCDがあるじゃねぇか!

 やばい。あれだけは隠していない。処分したつもりがまだ未処分だったはず。あれを流されたらもう私、生きていけない!(涙) 万が一車検証の裏に手を伸ばすことがあったら、ダシュボードを足で蹴り上げてしめてやる!
 だが こうしゃく は他のCDに気が行ってしまったのか、車検証に隠されたCDを出そうとはしなかったので助かった。 機嫌良くCDケースをあけてどんなCDが入っているのか一枚一枚確認していってるようであった。 そのうち気に入ったモノをみつけたのか、ユニコーンのベストアルバムを掛けるかなりゴキゲンなようだ。
 下条 さんを振り向くと、地図をひっぱりだして見ている。そんなのみてたら車酔いしまっせ。 私の愛車で「もんじゃ焼き」をつくろうもんなら、ヒモでふんじばって引きずり回しますよ!? ってところであったが、それ以前にそんなに私の運転が心配なんだろうか?

 下条 さんの予測は当たっていた。おもむろに道に迷う。やれやれ。乗り慣れないルートはこまったもんだ。 目印のラブホテルもみつからないし。
 福知山方面いきの道なっているので 下条 さんにナビゲーションを頼む。横に乗っかっている8Lサイズぐらいの 「ぬいぐるみ」 は役に立たない。 下条 さんはその辺凄く役に立ってくれたわけで。的確な道を教えてくれる。 僅かな時間で現在地と行くべき道を見つける能力は、尋常ではない。「人間ナビ」と名付けてしまう。
 ちなみに当人にきくとここ十数年運転していないと言うが、なんか嘘臭い。 きっと幼女誘拐の時に運転しているに違いない。だから言えないのだろう。
 山道を駆け抜けていく愛車。道を間違えてロスったこともあり、早めについて食事は難しいことが分かった。

「もしかしたら食事は食べているヒマがないかな・・・」

 ぼそっと一言言っただけでたちまち こうしゃく の顔が曇った。

「ケーキ・・・ぶたまん・・・ラーメン・・・」

 みるみる目に光るものが溢れてくる。ここは男として人差し指で軽く拭ってやりながら慰めるべきなんだろうが、 不器用な私には MICK さんのように自然体でそんな仕草ができるわけがない。

「けーきー!楽しみにしてたのにー!!!けーきーーーーー!!!!!」

 ほとんど駄々っ子である。泣いて叫いてだだをこねる。

こうしゃくさんはわかりやすいですね」

 下条 さんはそんな意味深な発言をぼそっと洩らす。勘弁して下さい、そんな恐いことをいきなり言わないで下さい。

「わかった、わかったから!今度ケーキ二つ買ってやるから!」
「ヤだ!三つ買って!」
「三つでも四つでもかってやるから!」

 必死になってなだめようとすると、シフトレバーを持つ私の手を思いっきり叩き、

「うきーーー!!!子供扱いしてーーー!!!くやしーーー!!!飛騨っちの分際でーーー!!!」

 なんともよく分からない文句を言い出す始末。私としては手が砕けるかとおもったが、 それ以上言うと自分の人生が砕けるので何も言えなかった。
 とりあえずむずがる こうしゃく をなんとかなだめつつ、走り続ける。途中でJIMさんと連絡を取りながら激走する。 やばい、もう近くまで来てるんだって(汗) 三宮付近か・・・早いな・・・
 更にミラ さんから電話が入る。出たのは こうしゃく だった。その声がもの凄い。

「あははははー! こうしゃく ですー!!! ミラ さーん!!!!!」

 車内であることを既に忘れている。けたたましいことこの上ない。 下条 さんは地図をみながら、時々光る眼鏡の向こう側から こうしゃく を見つめ続けている。恐らくは電話の向こうの ミラ さんの容姿を想像、いや妄想しているに違いない。しかし幼女趣味だったんじゃなかったのか?
 兎に角JIMさんも ミラ さんもあと少しで着くそうな。こっちとしてももうすぐ着くと言うしかない。だがそこに追い打ちがきた。

「飛騨っち〜、あとどれくらいかかるの〜?って ミラ さんがいってるよ?」

 よ、余計なことをきくんじゃねぇ!(汗)
 仕方がないので、あと20分ほどかな、という。別にうそっぱちではないが、 見積もり根拠のないいい加減な目算である。そもそもこんなとこきたことないのに、無理を言ってはイケナイ。
 ブロイ さんとも連絡を取る。やはり食器はないらしい。既にいくらかは買ってあるので、残りを買い足すだけで済みそうだ。
 ちなみにブロイさんと話している最中に こうしゃく が私をバシバシたたくので、 ブロイ さんが私の悲鳴をきいて震え上がっていたのはナイショである。
 その後爆走すること十数分、三宮付近に到着する。予想外である。

 目的地のダイエーへむかい、そこでJIMさんと合流する。あの車の女性がそうだな! 早速走り寄っていって確認する。うお、めっちゃ格好良い!サングラスが似合いまくり!その上これがEのないすばでぃか! と思ったが、敢えて何も言わずにいた。OLさんと聴いていたが、どうみても女殺し屋って感じやん?(ごめんなさい)等と思ったが、 そんな危険なことは言わずにこちらの車に乗って貰う。
 続いて ミラ さんを捕獲する。電話で思わず「捕獲」と言った瞬間、「捕獲・・・?」と声のトーンが下がったのには一瞬で気付いたが、 敢えて何も無かったように迎えに行く。
 陸橋の上で見つけた女性はもの凄く艶っぽい体型にも関わらず、アンバランスな感じの顔つきは どこかしら子供を連想させた。これは 下条 さんの得意分野になるんだろうか?いずれにしろつぶらな瞳がチャーミングな女性である。
 車まで案内するなり Cisne さんから連絡が入る。うわぁぁん、まとめてきてくれぇぇぇ(涙)
 文句言ってられないので速攻で迎えに行く。遅かったら一升瓶でドタマかち割られるかもしれない。 ダッシュで陸橋にむかうと・・・どこにも一升瓶を抱えた女性は居ない。 HPにあった根無し草というふうな言葉から推察するに、きっと空中を浮かんでいるに違いないと思ったが、 某教団の総帥の様に空中浮遊する人も居なかった。
 おっかしーなー?と思いながら歩いていると後から声が。
「もしかして飛騨さんですか・・・?」
 危険を察した脊髄が、思わず「いえ、違います」と言いそうになったが辛うじて押し留まる。
 そこには鞄を抱えた極普通のおねーさんが立っていた。すらっとした感じで優しげな表情の人である。

「私がCisneです」

 戸惑う私にそう名乗った人は、一瞬ニセモンだとおもってしまった。だって一升瓶もってないんだもん。 MICK さんも「一升瓶もってるからすぐにみつかるやろ」っていってたし。
 兎に角車に案内する。荷物をもってあげたところ・・・やや!?これは重たい!?

「それ、お酒はいってるんですよ」

 やっぱりこの人は Cisne さんだなと納得した。

 しかし車に着くナリまたも携帯が!いくよ、いきます、いけばいいんでしょう!?(半ば自棄)
 まぁ運動がてら携帯で話しつつ走っていく。CALL主はちえぞうさんであった。愛らしい声の女性である。 今回の買い出しを支える重要人物だ。
 きょろきょろするちえぞうさんを発見する。消火栓の所でまってて下さいというと更にきょろきょろしだした。 目の前にある赤い消火栓が目に入らないんだろうか、この人は?
 そんな疑問を抱きつつ歩いていく。そしてちゃんと「消火栓はコレですよ」と言ってあげると、 「ありがとうございます」といわれてしまった。一瞬の間があって、ちえぞうさんはようやく私が誰であるか分かったらしい。

「えっと、もしかして飛騨さん?」

 もしかせんでも飛騨なのだが、車に案内する。後に年齢を聞いて驚くが、かなり年下だと最初は思ってしまった。

 全員が集まったところで、さっきから空腹過ぎてへこみまくっている こうしゃく が可哀想なので食事を食べに行く事を提案。ちえぞうさんに聴くとそこらに店があるはず、と。
 車を走らせて迷走すること2,30分。でも食事できそうなところが殆どない。こまった・・・。 ようやくロイヤルホストを見つけたので「ロイホでいいっすか?」って聴いた瞬間、 もの凄いブーイングが後部座席から響いた。

「えー?なんでファミレスなんー?」

 恐らくミラさんの声であろうが・・・何が気に入らないのだろう? 恐いので平謝りに謝ってしまう。もしかしたらちょっとちびってしまったかもしれない。
 しかし冷静になればなるほど、なんで私が謝らねばならないのだろうか?という疑問が湧いてくる。 世の中不思議と不公平で満ちている。人生は全て欺瞞だ!と拳を握って力説しようと後ろを振り返ると、 下条 さんが青白い顔で震えていた。目が切実に「頼むから堪えてくれ」と訴えかけている。彼の座席ポジションからいけば 巻き添えを食うのは必至であった。結局私も恐いから黙り込んでしまう。

 ロイヤルホストに入るなり こうしゃく が元気になる。余程嬉しいらしい。きゃっきゃいいながらメニューを見ている。

「これなにーー?なにーー?なーーにーーー?」

 特性パーコー麺なるメニューを指さして聴いてくる。カツがのっかったラーメンである、と説明すると 「えー?」とかいいながらも興味津々であるようだ。仙台にはロイヤルホストもないのだろうか?
 オーダーを取りに来たときにもミートスパゲッティとパーコー麺で心が揺れていたらしい。
「わかったわかった、君が好きな方を頼みな。で、もう片方は私がとってあげるから、好きなだけたべな」

 そう私が言うと、 こうしゃく は瞳を輝かせて喜んでいた。喜色満面というやつである。さっきまでの不機嫌は何処へ?

「ほんとーー?ほんとにーー?飛騨っちー、やさしーねー!ありがとーーー!!!」

 私はオーダーを取った後、 ブロイ さんや MICK さんに連絡を取って、最終的な調整を行う。
 両者にそれぞれ今までの依頼をトータル確認する。案の定漏れがあった。従来は焼き肉用の肉20人分、 焼き肉用たれ、取り皿、下ろし金( RON さんが忘れてくる、と MICK さんは予想していた為)である。
 これに追加が鍋用野菜2鍋分である。昨日の確認は何だったのだ?と MICK さんにつめよった所、「俺がおぼえとるわけないやろー?」と。そんなんありか?(涙)
 ブロイ さんは丁度出るところだったらしく、近所の肉屋で豚・鳥を買って行くらしい。

「この際 MICK さんには申し訳ないけれど、黒豚・地鶏は諦めて貰いましょう。普通のにします」

 適当なのをあてがえば、誰もわかりゃしねぇなんていう私とはエライ違いである。誠実だ。 エロサイト管理者であることがうそっぽい程だ。
 私が戻ると私のパーコー麺は無事なままであった。 こうしゃく に食べて良いよと言っても「ケーキを食べるからいらないーーー」とのこと。 テメェ・・・何のために、誰の為に頼んだとおもってんじゃぁぁぁ!!!(激怒)
 あきらめて伸びかけたソバをすする。
 あらかた食べ終わったところで MICK さんが爪楊枝を買ってきてくれと言う。そんなに量いらないし、かといって少量では売っていない。 まぁ無駄だけど買うか?となったときに、おもむろに こうしゃく はテーブルのナプキンを取るとそれをひろげ、そこにテーブルの上にあった爪楊枝を全て移した。 店員にみられたらどうするんだ!?ってことで、慌てて他のテーブルの爪楊枝を半分ほど移植。

「タダだから気にしないの」

 そらアンタにとってはタダだろうよ、という台詞を飲み込んだのは 下条 さんであった。JIMさんに至ってはもう何も言えないらしく、呆けた顔でピクルスを囓っていた。
 二度とこのロイヤルホストにはこれないな、そう誰かが私に語りかけていた。



こうしゃくからの一言:

@そんな愉快なものを隠しておくなんてーーーーーー!!
 くやしーーーーー!!絶対 一生 ネタにして遊んでやったのにーー!!
 歌いまくってやったのにーーーー!!!!

 (ああああ!!!そう言えばむか〜しそんなことを聞いた!!!
  忘れてた!!!!!すっかりかんかん忘れてた!!!
  まじで めっさ悔しい!!!!!!)

Aだって!!神戸にいったらケーキを食べるって
 オフが決まってからず〜〜〜っとおもってたんだもん!!!
 決めてたんだもん!!!なにさ!!なにさーーー!!!!
 でも、約束守ってくれたからなぁ・・・
 あんた 結構律儀だよね・・・

Bたくさん往復したから 息切れてたよね ぷぷぷ

Cやっぱりあの変なラーメンくっとけばよかったかな?
 でも、仙台にだってロイホぐらいあるもん!!!
 っていうかさ、爪楊枝のこと、まだ 誰も言ってなかったのに!!
 黙っててくれればいいのに!!!!!
 そりゃ、あとで自慢げにMICKさんに見せたけどさ・・・
 でも、活躍したでしょう??つまようじ

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