Wall of Houndのクリスマス・イシューをお届けします。ここでは、フィル・スペクターに関連したクリスマス・レコードを取り上げて、思いつくままと好き勝手なことを書いていこうと思います。もちろん、史上最強のクリスマス・アルバム「クリスマス・ギフト・フォー・ユー」にも触れていきます。第一回目は、この3枚から始めましょう。

vol. 1


THE JINGLE BELLES
CHRISTMAS SPECTRE
(Passion 12 14)

Produced by Nigel Wright, Engineered by Robin Sellars Exective Produser
Les McCutcheon

クリスマス・スペクター/ザ・ジングル・ベルズ
1.Frosty the Snowman
2.I Saw Mommy Kissing Santa Claus
3.Rudolph the Red Nosed Reindeer
4.Winter Wonderland
5.Santa Claus is Comin' to Town
6.White Christmas

 いかにもマイナー・レーベルにありがちな、お気楽なスリーヴ・デザインの12インチ・シングルですね。全6曲をメドレーで一気に聞かせてくれます。でも、侮ってはいけません。タイトルの「SPECTRE」は「SPECTOR」のダブル・ミーニングです。そうです、スペクター・サウンドによるクリスマス・メドレーなんですね。もちろん、いわゆるテープのツギハギではなくて、あたまからおしりまでキチッと通しでアレンジされております。曲目を見ると、全てスペクターの「クリスマス・ギフト」に収められているものばかりです。そうなんです、アレンジもそっくり、歌もロニー・べネット似、ララ・ブルックス似、ダーリン・ラヴ似の歌手が「クリスマス・ギフト」での持ち歌を歌っております。これは、拾い物でした。1983年にリリースされた英国産です。そうでした、スペクター・フリークの多い国なんですね、英国って。
 B面ですか?一応ちゃんと溝は刻まれてますけど。


SPICE GIRLS
Sleigh Ride
(Virgin VJCP-12050)

楽しいそりすべり/スパイス・ガールズ

 マンデラ氏も大好きだというスパイス・ガールズ。歌よりも彼女たちのファッションとダンスに目がいってしまいます。5人5様のスタイルに、ビレッジ・ピープルをダブらせてしまったのは、ぼくだけでしょうか。ところで、スペクターもノックアウトされたようで、彼女たちといっしょに仕事をするというニュースが作年報道されました。実際、レコーディングが行なわれたのでしょうか?詳しい方、ぜひ教えていただきたいものです。もしこれからだとすると、メンバーの妊娠、結婚で歯抜け状態になってしまってますが、どうするのでしょうね。
 「楽しいそりすべり」は、アメリカのもっとも著名な「知られざる作曲家」リロイ・アンダーソンの代表曲のひとつです。1948年に初演、彼自身の指揮で1950年に初レコーディングされた超有名曲ですね。べつにクリスマス用ではなくて、アンダーソンが子供時代を過ごしたニューハンプシャーの想い出を綴ったものだそうです。
 さて、スパイス・ガールズが1996年にリリースしたCDシングル「トゥ・ビカム・ワン」にアルバム未発表曲として「楽しいそりすべり」が収録されていました。なんとロネッツのヴァージョンとそっくりなアレンジで驚かせてくれます。最初、偶然耳にした時は、クリスタルズによる別ヴァージョンと思ってしまったくらいです。ジャック・ニッチェのアレンジはまったく色褪せることがないという証でしょう。リロイ・アンダーソンも「シンコペイテッド・クロック」や「タイプライター」など、ユニークなアレンジをしていますが、この「楽しいそりすべり」には一本取られた、という感じですね。


MARIAH CAREY
Merry Christmas
(Sony SRCS 7492)

メリー・クリスマス/マライア・キャリー

 個人的には、あまり好きな歌手ではないのですが、「Christmas (Baby Please Come Home)」をカヴァーしているときては、放っておくことができません。期待どおりのダーリン・ラヴによるオリジナルに近いサウンドですね。ダーリンのパワーに、いまひとつとどかないボーカルですが、まずは、めでたし、めでたし。だったら、オリジナルでいいじゃないか、といわれればそのとおりなんですけど。
 94年に大ヒットした「恋人たちのクリスマス」は、「ああ、スペクター・サウンドやねぇ」と感じたくらいで、たいしておもしろくはありません。おもしろいのは、日本盤の解説です。あの湯川れい子女史がやってくれました。「Christmas (Baby Please Come Home)」の部分で、「一聴60年代のガール・グループ風だが、'72年になってスペクター・レコードから出たクリスマス・アルバムの中でダーレン・ラヴという女性歌手が歌っていた曲だ」と書いているのですね。どこがおかしいかは、あえて指摘しません。ついでに、「恋人たちのクリスマス」のところはというと、「60年代風のアレンジが楽しい」と、こうきました。「60年代」じゃなくて、「スペクター」と書いてほしいところなんですが。
 もうひとつ、「サンタが街にやって来る」の説明に、「ブラームスの子守歌から入る導入部が、この曲に優しさをそえている」と結んでおりますが、湯川さん、スペクターのクリスマス・アルバムを聴いてないことがバレバレですねぇ。ブラームスの子守歌から入るアイデアはクリスタルズの歌で使われております。しかも、このメロディをバックに「ジミー、おじさんは銀河を一周する楽しい旅から帰る途中、ちょいと北極に寄って昔なじみのサンタを訪ねたんじゃよ」というヴァース(前歌)の部分を語りでちゃんと入れてるところが、スペクターのすごいところでしょう。マライアはヴァースを喋っても歌ってもくれません。

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