Annette 1000
RINGO, I LOVE YOU
BONNIE JO MASON
 ビートルズ人気にあやかって、数多くのノヴェルティー・ソングが登場したが、その中でも珍品中の珍品が、この1枚だ。「抱きしめたい」をベースに、演奏スタイルもビートルズを模したパロディー作品ではあるが、やはり、どこかスペクター・サウンドを感じさせるところがおもしろい。
 マニッシュなボーカルは、今ではアカデミー女優として知られているシェール。当時、スペクターのアシスタントをしていたソニー・ボノは、恋人であったシェールをソロ歌手としてスペクターにプロデュースしてもらい、できればフィレスからレコードを出してもらえるよう、機会あるごとアピールしていた。実現はしたものの、これが彼女の不本意なデビュー盤となってしまった。また、シェールではなく、いかにもアメリカ的な名前であるボニー・ジョー・メイソンの名義でリリースしたところに、スペクター特有の皮肉とユーモアを感じさせる。
 
 この曲は、1964年にスペクターの妻の名をとったサブ・レーベル、アネット・レコードを設立、そこからの第1弾としてリリースした。実は、そのころロネッツのヴェロニカとの不倫で夫婦間がぎくしゃくしだしたため、その溝を埋め合わせる意味で作られたという。付け加えれば、ヒット・レーベルであるフィレスをノヴェルティー・ソングで汚したくないためもあった。
 また、クレジットにはヒル・アンド・レンジの重役ポール・ケイスの名が連ねてあるが、新人のアンダース&ポンシアとフィルを組ませるアイデアを思いついたのが彼だった。
 B面の「Beatle Blues」は、The Crystals Sing The Greatest Hits(Philles 4003, 1963
)に収録された「Mashed Potato Time」のカラオケ。レーベルをよく見ると、どうしたわけかレコード盤号が1001になっている。
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