パトリックさん、バームガートさん、お疲れさま
HERE COMES THE GIRLS - volume 10 / GIRLS DON'T COME (SEQUEL/NEECD
327)
1990年にスタートしたガール・グループのコンピレーション・シリーズ「HERE COMES THE
GIRLS」のVOL. 10がリリースされました。サンディー・ショウの「Girl Don't Come」に引っかけたタイトルは、文字通りシリーズ最後を意味しています。そして、最後の大盤振舞いとしてか、2枚組56曲入りです。お買い得ですね。その分中身が薄いというわけではなく、選曲と解説は、いつものミック・パトリックとマルコム・バームガート両氏が行なっていますから、御心配なく。英国パイ音源によるものです。付け加えますと、パトリック氏は、ガール・グループばかりではなく、スペクターの研究家としても知られています。
さて、10作目となるとさすがに新鮮さは感じられません。マスト・アイテムには違いはないのですが、個人的に「ちょっと飽きたかなぁ」ってとこです。目玉になる曲がない、というのも理由のひとつかもしれません。いや、実際には面白いカヴァー曲もあるんです。たとえば、Simone
Jacksonの「Ain't Gonna Kiss Ya」。オリジナルは米国のガール・グループ、The Ribbonsで、テディ・ベアーズのメンバーだったマーシャル・リーブがプロデュースし彼自身のレーベル、Marshからリリースされた曲です。同じくSimoneによる「Pop
Pop Pop-Pie」もキュートなカヴァーです。Donna Douglasが歌う「He's So Near」なんて曲もあります。オリジナルは不発に終わったケーデンス・レコードのJean
Thomasで、日本でも「お熱をあげて」というタイトルで出ていたようです。つまり、資料的価値が大きい反面、楽しむには小粒ぞろいという印象です。もっとも、限られたレーベルから250曲以上を紹介してきたわけですから、当たり前といえば当たり前ですね。
ところで、Vol.8につづいてカラベルズの歌が聴けるのがうれしいです。70年代に発売されたオールディーズのオムニス盤で、初めて彼女達の「ユー・ドント・ハフ・トゥ・ベイビー・クライ」を聞いてファンになったのですが、正直それ1曲しか知らなかったものですから。20年間何やっとんねん、ですね。彼女達のハーモニーは絶品で、ベスト盤を見かけたら、ぜひ手に入れたいデュオです。
また、レスリー・ゴーアの「She's A Fool」、ジャッキー・デシャノンの「Needle And
Pins」をフランス語でカヴァーするペチューラ・クラークもオツなものです。そして、彼女の「Just
Say Goobye」で幕を閉じます。
BBSのほうで、ジャック・ニーチェのネタが書き込まれていましたので、今日はニーチェ絡みのCDの紹介でもしましょう。
それにしても、ニーチェがアレンジしたペトラ・クラークの楽曲が4曲あり、未発表の曲として「Nana」と「Me
About You」があったとは、興味深い情報でした。どうもありがとう、火山さん。
さて、そのニーチェ絡みのCDとはCollectablesからリリースされた「The Very Best Of
Preston Epps / Bongo Rock (COL-CD-6040)」です。
プレストン・エプスは、朝鮮戦争の時に海兵として沖繩に配属されて、そのころボンゴをマスターしたのだそうです。彼のデビュー曲「ボンゴ・ロック」は1959年に14位を記録する大ヒットとなりました。続く「ボンゴ・ボンゴ・ボンゴ」は、60年78位にチャートイン。そうです、この曲こそが、ジャック・ニーチェのアレンジャーとしての初ヒット曲なのであります。CDには、「ボンゴ・ボンゴ・ボンゴ」のステレオ・ヴァージョンが収録されています。また、そのB面にあたるニーチェ作の「Hully
Gully Bongo」も収められております。めでたし、めでたし。
しかし、いまどきベスト盤として10曲入りとは、チト寂しいです。どれもボンゴが鳴り響くだけのよく似たものだから、10曲もあればベリー・マッチというのでしょうか。はたまた、こんなヘンテコな曲ばかり1時間も聴いたら、頭までヘンテコになってしまうよ、という親心かもしれません。そんでもって、収録曲の少なさで、浮いた予算をパッケージにつぎ込んだようです。透明のトレイから、ボンゴの写真が、ボンゴ、ボンゴと目に飛び込んできます。もちろん、スピーカーからもボンゴ、ボンゴと、視覚聴覚の両面攻撃の嵐であります。さらに、盤面も豪華総天然色写真入り。これだけ凝っても、実にあっさりとしたライナーノートは、さすがCollectableです。プロデューサー、アレンジャー、リリース年度、主なミュージシャンくらいは書いといてほしいのですがねぇ。と、難癖つけましたが、もちろんイージーリスニングものとしては、結構イケてます。
そのイケてる1曲が「Bongos In Pastel 」です。女性スキャットをからめたトロピカルな雰囲気は、ボブ・トンプソンを思わせ、上品なラウンジものに仕上がっております。ボンゴがあまり気にならないのがオシャレ。こりゃ失礼。
そして圧巻は、ニーチェとエプスの共作による、12分を超すフル・ヴァージョンの「Call
Of The Jungle」です。サウンド・エフェクトを多用した音作りは、マーティン・デニーのお株を取ったエキゾチック・ワールドです。何語かわからない男女のコーラスも呪術的で、いやがうえでも怪しいムードを盛り上げてくれます。貴方のお部屋は、ひとときのあいだ密林と化してしまうはずです。寝苦しい夏の夜をさらに暑くしてくれるでしょう。