これが、ナイアガラ・ファン垂涎のライナー「スペクター・サウンドを256倍楽しむ法」が収められた、幻のスペクター・ボックスのブックレット。単なる、CDの調味料を越えた一品料理か?

July 25, 2003

Pepper Salt or Phil Spector

 さてお立ち会い。これが巷で噂されてた、マニア垂涎のアイテム、スペクター・ボックスに封入された解説書でございまする。ひところは、10万出しても手にしたいと申す者もいたという、そんな流言さえ飛び交った、スペクター・ボックス、はたして、その価値は如何に……、てなわけで、わたくしの手元に、なんと幻とされていた解説書が勇猛果敢なSpectropop極東調査員コードネームMs.Kによって、届けられたのでありました。

 ところで、この解説書で使用されたレーベルの写真は、すべてわたくしのコレクションであります。レーベルの汚れや書体、印字のズレ、あるいはスタンプなどがすべてにおいて一致したことで断言できます。思い起こせば、この写真は、もともと白夜書房が出版した季刊誌「GoldWax」の創刊号のスペクター特集のために撮影されたものであり、それを転用したのだと推測できます。白夜書房は「フィル・スペクター/蘇る伝説」の出版と、それに合わせてムーン・レコードがCDボックスをリリースするという協賛関係にあったので、当たり前といえば当たり前かもしれません。
写真は特に意味なくレコード番号順に並べてあるだけ。ひとこといってくれれば他のレーベルもお貸ししたのに…

 正直いいますと、解説書を今回手にして初めて、わたくしのコレクションが無断で利用されていたとわかって、少々不愉快な思いがしているのでございます。当時、無事にリリースされていれば、たとえそれが無断であっても、最後のページにクレジットされていた自身の名を発見することで光栄の喜びに満ちていたでしょう。しかし、現実は国内での発売中止の知らせをレコード・コレクターズ誌で読み、そして廃棄処分となったという話を業界筋から耳にしただけでした。それだけなら、日の目を見ないまま、たとえ事後報告無しであっても、永久にわたくしの知るところではないのですから許すも何もありません。ところが、どういうルートなのか、わずかではありましょうが米国の中古マーケットに流れていたのでした。そして、13年経て、その現物を目にして、なにか釈然としないものが沸き上がってくるのでございます。「せっかくレーベルの写真を流用させてもらったんだけどさぁ、今回こんな結果になっちゃって、残念だよ」てな声でも掛けていただいていたのなら、こんな気分にはならなかったでしょう。でも、やはり一番うれしいのは、現物をいただけることですがね(^_^ゞ。

 というところで、個人的な恨み辛みはともかく、スペクター・ボックス十三回忌として、公式には消されてしまった遺産を可能なかぎり公にしようと考えるしだいであります。
 
 なお、このスペクター・ボックスに関してわたくしは、ムーン・レコードからは結果として1円もいただいておらず、善意を踏みにじられただけで義理はないことを付け加えておきましょう。なんか、クレーマーみたいだな(≧∇≦)ノ彡










Phil Spector Box
OOXE-7/ Phil Spector's Greatest Hits
OOXE-8/ Phil Spector Artists
OOXE-9/ Best Of The Ronettes
OOXE-10/ Best Of The Crystals
OOXE-11/ Darlene Love Sings



(注)
1977年にビクターより発売されたLP「レア・マスターズ/幻のスペクター・サウンドVol.2」の解説書に掲載された「スペクターを語る/亀淵昭信氏と大瀧詠一氏との対談」を転載。
なかなか面白い対談ではあるが、いかんせん20年前のもの。どういう意図で収められたのだろうか、よくわからない。

July 30, 2003

Pepper Salt or Phil Spector (part 2)

 第二回目として、解説書のページ構成をご紹介しましょう。

 表紙は左の画像のとおりですが、表2(表紙の裏)、表3(裏表紙の裏)、表4(裏表紙)はいずれも白紙です。
 実質56ページ(スミ一色刷り)といってもよいでしょう。

<コンテンツ>

  • P1/フィル・スペクターの写真(ありふれたもの)
  • P2〜3/フィル・スペクター・プロダクションのCD化にあたって ムーン・レコードより一言……山下達郎
  • P4〜8/フィル・スペクターとフィレス・レコードについて……朝妻一郎
  • P9/クリスマスEPのレーベル写真
  • P10〜43/スペクター・サウンドを256倍楽しむ法……大瀧詠一

  • P44〜54/スペクターを語る 対談:亀淵昭信氏/大瀧詠一氏(注)
  • P55/クリスタルズ There's No Other (Like My Baby)のレーベル写真
  • P56/日本盤クレジット

以上であります。

何を聴いたか、山下のタッちゃん

 まずは、「フィル・スペクター・プロダクションのCD化にあたって ムーン・レコードより一言」と題した2〜3ページを見てみましょう。

 ここでは、山下達郎がムーン・レコードの代表者として一文を寄せています。前書きのようなものですが、ひとことで申せば、何でこんな中途半端なボックス・セットになってしもうたか、という言い訳なのであります。早い話が、文句はムーン・レコードにではなく、アラン・クラインにいってくれ、ということでした。
 しかし、山下氏に文句とまではいいませんが、ひとつ注意を申し上げたく思います。それは、この部分です。

『従って、CD毎に曲が重複している事、それから例えばロネッツの「アイ・ワンダー」など、別ヴァージョンは入っているのに、肝心の「本物」が収録されていないといった問題に関しては、我々サイドからは手の打ちよ うがありませんでした。』

 官僚答弁のように、やや曖昧さがただよった文ですが、素直に読めば、<不
スペクター・サイドに対する怒りはごもっとも。だからといって、ウソとも取れる発言はいけません。
本意ではあるが、ロネッツが歌う別ヴァージョンの「アイ・ワンダー』が収録されてしまった>と解釈されるはずであります。しかし、どこを探しても、このボックスにおいて、ロネッツの歌う「アイ・ワンダー」は見当たりません。あるのはクリスタルズの「アイ・ワンダー」だけです。山下氏はこうも書いてます。「送られてきたデジタル・マスターもこれ以外には一曲もありません」と。あなたは、いったい何を聴いたのでしょうか?
 ロネッツとクリスタルズの違いがわからないなどとは、いや、そもそもそんなに難しいことではなく、普通のかたでも気が付く程度のことなのでございまして、CD3の『ベスト・オブ・ロネッツ』の中の「アイ・ワンダー」と、CD4の『ベスト・オブ・クリスタルズ』の中の「アイ・ワンダー」は同じもの、ということなのであります。故、わたくしは山下達郎の耳を疑わざるを得ません。幸いにも、このボックス・セットが発売中止となったため、物議を醸すことなく済んで、よかったね、でした。
 でも、バラしちゃった(≧∇≦)ノ彡

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