シンジの1日

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シンジの1日




 ここは、(旧姓)葛城ミサト作戦部長の、自宅・・・。
 ミサトさんは、日向さんと結婚して、一戸建の家に引っ越していった。
 なんと、日向さんは、ネルフを辞めて、パートをしながら主夫に専念してい
て、ミサトさんは、国際公務員のまま。
 ま、確かに、掃除・洗濯・炊事、家事全般がまるでダメなミサトさんに変わ
って、日向さんが家事をするのも肯ける。
 日向さんの苦労のほどが、よく分かるよ・・・だって、僕と一緒だもん。

 つまり、僕とアスカは、今もここに住み続けている。
 ミサトさんの分の世話が減ったから、楽にはなったんだけどね。
 それに、最近は、アスカも手伝ってくれるようになったんだ。
 でもまだ、僕の方が多いんだけど・・・。

 そして、朝。
 僕はドアを開けて外へ出る。後ろにはアスカ。
 アスカは、僕が出て行くのを毎日見送ってくれる。

「じゃ、行ってきま〜す。」
「行ってらっしゃい。」

 アスカは笑顔で見送ってくれる。
 そして、アスカはもう一度・・・。

パパ、行ってらっしゃ〜い!」

 アスカは、抱きかかえている子供の小さな手を取って振る。

 そう。いるんだ、子供が・・・。僕とアスカの子供。

 生後3ヶ月。
 名前は・・・惣流カズミ。

 なぜ、苗字が『惣流』なのかというと、実は、結婚をしていないんだ。
 ・・・というより、出来ないんだ。まだ、僕は17歳だから。

 そして、僕は、高校に通っている。
 生活費が必要だから、まだネルフから足が洗えない。とはいうものの、エヴァ
のパイロットはしていない。とうとう、シンクロできなくなってしまったんだ。

 なぜなら・・・今は、アスカを愛してるから。

 アスカはというと、既にネルフを辞めていて、中学を卒業したけど、高校へ
は進学しなかった。もっとも、アスカの場合、すでに大学を卒業してるから、
いいんだけどね。漢字も覚えたみたいだし。字は、相変わらず下手だけど。

 ところで、なぜ、子供がいるかというと・・・要するにデキちゃったんだ。
 そりゃ、デキるんだから、そういうことをやったんだけどね・・・。
 だけど、そういうことをやるときは、アスカは、いつでも、

「安全日だから、大丈夫よ。」

 としか言わなかった。

 いくら鈍感・朴念仁な僕でも、さすがに、おかしいとは思ったんだ。
 だから、ある日、それについて聞いてみたら、もの凄く恐い顔して睨みつけ
るんで、それから何も言えなくなってしまった。
 おかげで、この有り様・・・。
 今にして思えば、まんまとアスカの策にハマってしまったというわけ。

 17歳にして、人生が決まってしまった僕って・・・。

 とは言ってるけど、もちろん幸せだ。後悔をするわけがない。
 僕もアスカが好きだし、アスカも僕が好きだし。
 結婚はしてないけど、幸せな新婚生活ってやつかな。

 だけど、こうして、一人の女性に決まってしまうと、やはり、他の女の子に
目が行ってしまうものなんだね。

 あっ!綾波だ。

「綾波、おはよう。」
「おはよう、碇君。」

 綾波も、僕と同じ高校へ通っていて、なぜだか、クラスも一緒。
 登校時間が同じくらいなので、毎日のように途中で会う。
 以前のアスカは、学校までついてきて、厳しく監視していたんだけど、子供
が生まれてからは安心でもしたのか、ついてこなくなった。

 いつものように、綾波と話をしながら登校する。
 こうして、よく見てみると、綾波って可愛いな・・・って、ダメダメ、僕に
は、アスカがいるんだ。でも・・・可愛いよな・・・。
 ちょっと、選択を間違えたかな・・・なんてことを思ったのがバレたら、
アスカに殺されるから、我慢して思わないでいる。
 はぁぁ・・・僕には、思考の自由も無いんだな・・・。

 あ、綾波が笑った!や、やっぱり、可愛い・・・。
 いかんいかん。前を向いていよう。
 あ、突然前を向いた僕を不思議に思ったらしく、綾波が聞いてきた。

「碇君・・・どうして、私を見てくれないの?」

 それは、僕には、アスカがいるからだよ・・・なんてことは恥ずかしいから
言えるわけがない。

「前を向いていないと、危ないだろ?」

 こうやって、無難な答えを言っておく。我ながら上出来だな。
 ところが、綾波が腕を組んできた。

「私が、ちゃんと導いてあげるから、碇君は、私を見つめていて。」

 綾波って、自分の言ってることの意味が分かってるのかな。
 や、やっぱり、綾波って僕のことが・・・好きなのかな・・・。
 でも、この前、それについてアスカに聞いてみたら、

「そんなことあるわけないでしょ!!アンタを好きになる女なんて、いるわけ
 ないじゃないの!!」

 とか言って怒ってたけど・・・。そういうアスカは、なんなんだよ。


 とかなんとか言ってるうちに、学校に到着した。
 教室に入って自分の席に座る。

 朝のHR。そして1時間目。
 たいくつな授業だな。でも、勉強して、ちゃんと卒業しないと・・・。
 でも、僕は大学にいけないな。高校を出たら、ちゃんと働かないとね。

 1時間目が終わった。
 なんだか、お腹の調子が悪い。
 きっと、あの肉のせいだろう。昨日、アスカが買ってきたものだ。
 ちゃんと、棚の奥から取って、色を見ないとダメだって言ってるのにな。
 アスカの胃袋は丈夫だからいいんだろうけど、僕はデリケートなんだから。
 そういえば、ミサトさんと暮らしてるとき、僕だけが食当たりして、アスカ
とミサトさんは平気な顔してたことがあったっけ・・・同じもの食べてるのに。


 トイレに行って、個室に入る。

 ふぅぅ・・・

 RRRR・・・RRRR・・・RRRR・・・

 あ、携帯電話が鳴ってる。

 ピッ!

「僕だけど。」

 「もしもし」なんて言わない。電話の相手は決まっているからね。
 相手は、もちろん、アスカだ。
 授業の合間に、必ず掛けてくる。僕の都合なんてお構いなしだ。

『どう?なんかあった?』
「どうも、お腹の調子が悪いんだ。やっぱり、あの肉のせいだと思うよ。」
『アタシは、なんともないわよ。』

 そりゃ、鉄壁の胃袋を持ってれば大丈夫だよ。
 なんてことを口に出すと、家に帰ったとき、どんな目に合わされるか分から
ないので言わない。
 僕だって、その辺のスキルは身についているんだ。骨身に染みて・・・。

 でも、悔しいから、遠回しに言ってやろう。

「変だね。同じもの食べてるのに。」
『シンジ!それは、どういう意味よ!!』

 あっ!しまった!皮肉だってバレちゃったよ。アスカは、頭が良いからな。

「ち、違うよ。べつに、深い意味は無いよ。」
『ならいいんだけどね。』

 ふぅ、助かった・・・。やれやれ。

『ねぇ、大丈夫?』

 あ、優しい声で聞いてきてる。ちゃんと、心配してくれてるんだな。

「うん。大丈夫だよ。」
『よかった。じゃ、またね。』
「うん。」


 教室に戻って、2時間目、3時間目、4時間目・・・そして、昼休み。
 お弁当を食べて休憩をする。

 あ、クラスの女の子が話し掛けてきた。

「ねぇ、碇君。昨日の話、考えてくれた?」
「ごめん、やっぱり、やめておくよ。」
「ねぇ、どうしてもダメかな?」

 この子は、合奏部の女の子。
 どこで聞いたのか知らないけど、僕がチェロを弾くことを聞きつけて、合奏
部に勧誘しているんだ。
 合奏部は、毎年、部員が少なくて悩まされているそうだ。

「うん。だって・・・」

 RRRR・・・RRRR・・・RRRR・・・

 また、アスカから電話だよ。話の途中なのに。
 せめて、10コールにしてほしいな。

 ピッ!

「僕だけど。」
『どう?なにかあった?』
「とくに、なにもないよ。」

 そんなに頻繁に、何かあるわけないって・・・。何かあったら、僕の方から
電話するよ。
 これくらいで、掛けてこなくてもいいのに。電話代が掛かって仕方がない。
 でも、そんなに僕の声が聞きたいんだな・・・これはこれで嬉しいな。


「ねぇ!碇君!!私のお願いを聞いて!!」

 もう、なんだよ。この女の子、わざと大きな声で言ってるよ。
 この電話のこと、もう、クラスのみんなに知られてるから、この女の子も、
こうやって、からかってくるんだよな。勘弁してよ・・・。

『シンジ!!なによ、今の声は!!!』

 ほら・・・アスカが怒鳴った・・・。
 でも、そんなことを予測して、電話を耳から離してたから助かったけどね。
 だけど・・・家に帰ったら、また、尋問されるんだろうな・・・。
 これじゃ、中学校に一緒に通ってたときのほうが、まだマシだったよ。

「合奏部の子だよ。昨日、話しただろ?」
『断りなさいって、言ったでしょ!!』

 昨日、このことを、アスカに話したんだけど、すぐに断りなさいって言って
きた。やはり、女の子が沢山いる合奏部は気に食わないみたい。

「分かってるよ、ちゃんと断るから・・・。」
『断らなかったら、ただじゃおかないわよ!!』
「大丈夫だから、安心してよ。じゃ、話の途中だから切るよ。」
『待ちなさいよ。このまま、その合奏部の女とやらの話を聞かせなさい!』
「うん、分かった。」

 僕って、信用ないのかな・・・。
 自分で言うのもなんだけど、僕は律義だと思ってるんだけど。
 そりゃ、頼まれたら断れないって性格でもあるけどさ・・・。

「やっぱり、入部できないよ。」
「そうか・・・しかたないわね。」

 諦めてくれたみたいだ。

「ちゃんと、断っただろ?」
『それでいいのよ。』
「じゃ、切るよ。」
『うん。』

 ふぅ、終わった。


 さて、昼休みも終わって、午後の授業。
 今日は、眠くない。昨日の夜は、お休みの日だったから。
 ちゃんと、5時間目、6時間目の授業を受けることが出来た。

 そして、夕方のHR。
 ふと、外を見てみる。
 すると、見慣れた人影がある。アスカだ。
 アスカは、毎日、学校まで迎えに来る。カズミを背中に背負って。

 ああやって、カズミをあやしながら僕を待っているアスカを見ると、素敵な
母親だなと思う。僕の母さんも、あんな感じだったのかな。
 そういえば、綾波は・・・母さんの・・・。
 きっと、綾波も、いいお母さんになるんだろうな。

 さて、HRが終わったから帰るとしようかな。
 教室を出て、アスカの待っている校門へ行く。

「さ、帰りましょ。」
「うん。」

 もちろん、初めの頃は、好奇の目で見られてたけど、今では、そんなことが
なくなった。
 僕達は並んで歩いていく。
 と、後ろから声がする。

「カズミちゃん、こんにちは、本当のママですよ〜。」

 やっぱり、綾波だ。
 なぜか、僕とアスカの帰宅についてくるんだよな。

「レイ!だれが、本当のママよ!!」
「カズミちゃん、学校を卒業したら、迎えに行きますからね〜。」
「ふざけたことを言ってんじゃないわよ!いい加減にしなさいよ!!」

 綾波は、すっかり普通の女の子になってるよ。
 だけど、この二人、飽きもせず、毎日毎日同じようなことしてる。
 仲が良いのか悪いのか分からないな。

 やっと、家についた。
 さて、夕食の準備をしないと。

 その前に、カズミのミルクの時間だから、ミルクを作って・・・と。
 昼間、アスカは、ちゃんと母乳を飲ませてるんだけどね。
 そして、哺乳瓶をリビングにいるアスカに渡す。
 アスカは、カズミを抱いて飲ませる。
 あのアスカが見違えるように、優しい顔になってる。
 ときどき見せる、アスカのこういう姿を見ると、新鮮に映るな。
 だから、改めて惚れなおして・・・って、早く夕食を作らないと、アスカに
怒られちゃうな。

 そして夕食も終わ 宿題をしないといけない。そのままリビングで宿題をする。
 アスカはというと、カズミと遊んでいる。いや、遊ばれてるのかな。
 僕は、分からないところをアスカに聞きながら宿題を片付ける。

 さて、お風呂お風呂。
 カズミと一緒にお風呂に入る。その間、アスカは、食器を洗っている。
 今では、僕は、食器洗いから開放されて少し楽になったんだ。

 お風呂から上がって、カズミを寝かしつけた後、リビングでくつろぐ・・・
わけにもいかないんだな、これが・・・。
 アスカが、学校であったことを根掘り葉掘り聞いてくるんだ。
 日本の高校に興味があるんだろうけどね。そんなことなら、進学すればよか
ったのに。


 さて、夜も遅くなってきたから、そろそろ寝ようかな。
 ダブルベッドに、二人で仲良く横になる。

「じゃ、おやすみ、アスカ。」

 ふぅぅ・・・今日も、いい1日だった・・・。



 と、寝ようとしたら、アスカが恥じらいながら擦り寄ってきた
 今日は、金曜日・・・つまり、明日は休みだから仕方がないか。
 でも、こうやって、はにかむアスカって、やっぱり可愛いな。
 世界一だと思うよ。

 そして、アスカが僕に耳打ちをする。なになに・・・

 はぁぁぁぁ・・・溜め息が出る。
 今日も安全日だよ・・・。アスカの危険日って、いつなんだろう・・・。
 まだ、子供が欲しいのかな。そりゃ、もう一人くらいは欲しいけど、さすが
に間を空けないとなぁ・・・。



 さて、今夜もサービスサービスゥ!



              − お わ り −



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 後書き

 作者:Confessionの後日談的な話ですね。『後日談』ですから
    ね。そのまんまってわけじゃないんです。レイの性格が全然違うし。
アスカ:言い訳がましいことを。ところで、カズミって、男の子?女の子?
 作者:想像にお任せ。どっちにもとれる名前にしたからね。って、アスカ様
    が産んだんでしょう?なに、とぼけたことを言ってるんですか。
アスカ:アタシは、上の話のアタシじゃないのよ。まだ中学生なんだから。
 作者:そうだったんですか。見分けがつかないですね。成長が止まったんで
    すかね。とくに、胸とか・・・

 ドカッドカッドカッドカッドカッ!!

 作者:うぅぅ・・・。子供が生まれても変わらないんだろうな・・・。
アスカ:やかましい!!
 作者:ところで、この話は、シンジの一人称ですね。一人称ものを書いてみ
    たかったんですけど・・・難しい〜・・・。高嶋さんって、よく、書
    けるね。ホント、すごいよね。あ、これ、ちょっとした感想です。
    って、読んでないって・・・。
アスカ:なに、ひとりでツッコミ入れてんのよ。
 作者:あぁぁっ!!そういえば、後日談なんて言ったら、結末がバレちゃう
    じゃないか!!
アスカ:アンタも、とろくさいわねぇ。自分で、バラしてどうすんのよ。
 作者:でも、いいや。この話を書いた時点で、33話まで出来上がってるん
    だけど、最近、ユミちゃんを主人公にしようかって思ってるし。
    そもそも、Confって、アスカ様とユミちゃんと、どっちにも転べ
    るように書いてるしね。
アスカ:アンタ、バカァ!!まだ、そんなことを言ってんの?いい加減にしな
    さいよね!!
 作者:いやぁ、どうもねぇ、お!ユミって、なかなか良い娘じゃん、とか思
    いだしてて・・・。
アスカ:そんなことばかり言ってると、怒りのメールが来るわよ。
 作者:それより、誰か、この設定で、「アスカの1日」とか「レイの1日」
    って書いてくれないかなぁ・・・。



杉浦さんへの感想はこ・ち・ら♪   


作者たちのコメント

作者 「杉浦さん、100本投稿記念小説、ありがとうございます」

アスカ「にやにやにや」

作者 「あ、デキちゃったアスカちゃんだ」

アスカ「・・・・にやにやにや」

作者 「・・・・なんか、今日は変ですね。怒らないんですか?」

アスカ「いいのよ、シンジがアタシの者ものになるって分かったんだから」

作者 「そのわりにはしつこく電話なんかかけちゃって・・・・ある人が言うには、それは自分に自信がないから、だそうですよ」

アスカ「ぬ、ぬあんですってええ!!!」

 ばきぐしゃどかっ!!

アスカ「そう言うこと言ってると、アンタの秘密、ばらすわよ!」

作者 「はて、なんのことですかな?」

アスカ「ふっふっふ・・・・この100本記念小説が送られてきた経緯について、よ」

作者 「ぎくっ!!

アスカ「杉浦さんが100本目だったって事は、実はこの作者、かなり前から知っていたのよね(投稿処理があいかわらず遅いから)。それで100本目をあげるときにここでどぱっと公開して驚かしてあげようと思っていたら・・・・」

作者 「先に、杉浦さんから投稿が来てしまった、という訳なんです。100本目を引き当てた人から100本記念の投稿。何という偶然だろうか!!」

アスカ「作者の無能無策ぶりがよく分かるってもんでしょう」

作者 「ふんふん、どーせあたしは無能者ですよ。いじいじ」

アスカ「いじけているヒマがあったら自分の小説さっさと書きなさい!!」


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