エヴァ・インスピレーションズ
「桜の咲く心」
作者:踊りマンボウ
「・・・・」
別に、何かを期待してここに居る訳じゃない。
僕はただ風に当たりにここに来ている。
ちょっと前までそうだった。
今、僕が腰を下ろしている河原は、特にこれといった特徴の無い場所だ。
厳しい規制のおかげで、甦った川は確かに綺麗で、飲むことは出来ないものの泳ぎたくなることもある。
辺りに風を遮るような大きな建物はあまりないこともあってか、風は心地良く流れていた。
水の香りを運んで、草の香りと混ざって僕の鼻腔をくすぐる。
ヒーリングというのだろうか。
昔、流行ったといわれる森林浴ではないが、自然に触れていると心が落ち着く。
これが自然といえるかどうか、疑問かもしれないけれど・・少なくとも僕はそう思った。
たとえ、コンクリートに固められた川だとしても、そこに生えている木々達は、それを疑問に感じたりはしない。
僕は、この・・何と言う川だったろうか、この川沿いに造られた公園のベンチに座っていた。
わざわざ自転車でここまで来てぼーっとするのも何だか妙な感じもするけど。
大学の友達に話しても、一笑に付されるだろうから話してないけれど、今までは本当に風を感じながら、何も考えないでここに居た。
「そろそろかな?」
僕は小さく呟いた。
腕時計に目を向けて時間を確認する。
近頃ここへ来るようになった理由。
一人の少女が、ここへ現れる時間だ。
「・・・・」
別に話をする訳では無い。
ただ、彼女が来たことを確認して少しその姿を見るだけ・・。
何だか、暗い発想だけど・・だからといって積極的に話し掛ける気もしない。
何と言うのだろうか、その少女は何処か近寄りがたい雰囲気があるのだ。
蒼い髪に、紅い瞳・・そして青白い肌。
現世とかけ離れたような外見もそうなのだが、瞳に輝きというものが感じられない。
何処か淋しいようで・・それでいて決して人を求めていない瞳。
それでも、僕は彼女に会う為にこの場所に来ている。
僅かの時間。
知らない者の繋がり。
背中が痒くなるような可笑しい想いと共に時が流れる。
「・・・・」
ふと、人の気配を感じる。
気になって視線を走らせる。
「!・・・・」
そこへには、僕が待っていた少女の姿があった。
ちょうど僕の方を見ていた彼女。
視線がぶつかる。
気まずい雰囲気に僕の方から視線を外す。
知り合いならば、にっこりと微笑んでみせる所だろうが、生憎僕と彼女は他人である。
視線があって微笑むなんて出来る訳無い。
笑ったところで、変な人だという印象しか与えないだろう。
頃合いを見て視線を戻すと彼女は離れたベンチに座って僕と同じように川を眺めていた。
・・僕は彼女を見ているので、同じようにという表現は違う気もするが。
さっきまでの僕、だったら合っているけど・・。
「・・・・」
静かな時間だ。
さらさらと川の流れだけが彼女との間の音だった。
時折、風が吹く。
悪戯げに彼女の髪を揺らす。
けれど、彼女は微動だにしない。
木々の葉の擦れる音の中・・まるで絵画の一枚であるかのように、止まっている。
何の為に彼女はここに来ているのだろうか。
それは同時に以前の僕に向けられる疑問だった。
落ち着く・・というのは理由になるのだろうか。
少なくとも僕にとっては理由になり得た。
彼女は、どんなことを考えてじっと川を眺めているのだろうか。
『・・声、掛けてみようかな』
おかしな男だと思われないだろうか。
・・いや、十分思われているだろう。
近頃は、何度も同じ時間に顔合わせをしているのだから。
「・・非常召集・・」
その沈黙にふいに終わりが訪れる。
何か、聞き取れないが彼女が呟いている。
彼女が動きを感じさせない静けさで立ち上がっていた。
かと思うと、僕の方へとつかつかと歩み寄ってくる。
僕は、何事かと動けないで迫ってくる彼女を見ているしかなかった。
「早く避難して。あそこの公民館地下が一番近いから・・」
「え?」
避難という言葉に、僕は咄嗟に反応できなかった。
が、彼女は僕の反応を待たずに歩き出していた。
「・・避難?」
呟き直したとき、ポケットラジオの緊急コールが掛かっていることに気が付いた。
ぶるぶると震えるラジオをポケットから取り出して電源を入れる。
すると、確かにラジオは彼女の言葉通り緊急放送を流していた。
「ただいまから、関東中部地方を中心とした……」
そんなラジオの言葉に続くように警報が鳴り響く。
ラジオと同じ言葉を耳障りな割れ気味の音で流す。
「市民の皆様は落ち着いて近くの避難場へと避難して下さい」
ち、近くの避難場って・・何処なんだ。
一瞬、混乱が僕を襲う。
が、すぐに彼女の言葉を思い出す。
「・・あそこか・・」
彼女の指し示した方向には確かに公民館が存在しているようだ。
ここからでは良く見えないが、緊急避難のプレートもおそらくあるだろう。
僕は立ち上がり自転車へと急いだ。
『彼女はどうしたのだろう?』
自転車にまたがり、急ごうとした時、頭に浮かぶ疑問。
彼女は、何処へ行ったのだろうか。
ラジオの放送より前に緊急避難に気付いて、避難場所とはまったく別の方向へと歩いていった。
避難場所を知らない訳じゃない。
となると、何の為に。
「急いで避難して下さい…繰り返します」
だが、そんな迷っている暇はない様である。
僕はすぐに自転車を走らせた。
そして、ほかの人々と共に指示されるままに避難をした。
その中に、彼女の姿は・・無かった。
「シンジ君。・・今すぐ出動して。街に入る前に叩くわよ」
「はい、解りました」
戦艦の艦橋部を利用したと思われる建物がそこには広がっていた。
何人もの同じ制服を着た者達が忙しくその上を走りまわっている。
そこへ先程河原に居た少女が入ってきた。
「・・・・」
走っていたのだろうか、額にうっすらと汗が浮かんでいる。
服装も、先程纏っていた制服ではなく、肌に密着した体のラインの解る白いボディスーツを着ている。
「綾波レイ、ただいま到着いたしました」
事務的に彼女は作戦司令官らしき女性にそう告げる。
レイと名乗った少女と同じようなスーツを着ている少年に一瞬視線を走らせた。
「?」
シンジと作戦司令官に呼ばれていた少年は、その視線に気付いて彼女の方を向く。
「・・状況は」
だがレイは涼やかな顔でシンジの疑問の視線に答えることもなく作戦司令官の女性の方を向いた。
「・・あまり良くないわ。レイ、さっそくで悪いんだけど、エヴァで出動してくれる?指示は追って出すわ」
「はい・・」
頷いて、レイは動き出した。
「ほら、シンジ君も急いで!」
「あ・・はい」
促されてシンジは、レイに続いてエヴァのケージへと急いだ。
「・・はぁ・・はぁ・・惣流・アスカ・ラングレー、ただいま到着しました」
二人が艦橋部から姿を消すのと入れ替わりに、別の少女が艦橋部へと入ってくる。
綺麗な亜麻色の髪を揺らしながら、少女は作戦司令官の前まで走ってきた。
その少女もまた、シンジやレイと同じようなボディースーツを着ていた。
ただし、彼女のそれは鮮やかな真紅に染められている。
「あれ・・シンジは?」
きょろきょろと辺りを見回して、シンジが居ないことを口にする。
「・・レイと一緒に使徒迎撃に向かったわよ。アスカは・・そうね、今回は待機してもらうわ」
「え〜っ!ちょっと、ミサト・・それはないでしょう!」
「・・不満なの?」
抗議をするアスカとは視線を合わせないでミサトと呼ばれた女性は彼女に訊ねる。
「当ったり前でしょう。どうしてこのアタシがこんなところで・・」
「だったら・・遅刻しないことね」
ちらりとも視線を向けないでミサトは冷たい声で言い捨てた。
そして、モニターに総ての注意を向ける。
「・・・・」
アスカはミサトの答えに不満の顔を見せたものの、彼女と同じようにモニターに神経を集中させた。
「・・・・」
無気味な音が聞こえる。
それと合わせるような振動。
何か・・とてつもなく大きな何かが動いている。
無論、僕にはそれを確かめる術はない。
ただ、まるで母親のお腹の中で眠る胎児のように膝を抱えて、その瞬間が過ぎるのを待っている。
「まだ・・だね」
唸るような振動が断続的に続く。
他に避難した人も、僕と同じようにじっと耐えている。
幼い子供達は不安にかられて母親に抱きついている。
ぎゅっとそんな幼子を抱きしめる母親達に、僕はなんとなく過去の記憶を重ねる。
母親がわりの・・祖母。
ありえない、香りとともに思い出す。
桜の香り・・。
現実と夢の間をさ迷う感覚。
「きゃあ!」
その時、一際大きな振動が、地下に存在しているこの避難所を襲いかかった。
女性、子供、そして男性の悲鳴が錯綜する。
「・・・・」
ここは危険なのだろうか、と不安が過ぎる。
僕と同じ気持ちになったのか、何人かの人々が立ち上がって、通路へと走っていく。
避難所の幾つかは通路で結ばれているので、ある程度の移動が可能なのである。
彼らはきっとより自分が危険が少ないと思われるところへと移動していったのだろう。
だが、そんな行動が裏目に出ることもある。
「ぎゃぁぁぁ!」
どんっ、と耳を叩く轟音。
そして、直接耳を叩く気圧。
すぐ近くで、爆発が起こった。
上で何があるのかまったく解らないが、すぐそこに危険が迫っていることは確かだった。
「・・・まずいなぁ」
痛む耳を押さえながら、僕は辺りを見回した。
辺りはパニック状態だった。
まだ、無事な通路へとなだれ込んでいく避難者達。
ある者は子供を抱きかかえ、ある者は離れないようにしっかりと手を握りながら出入り口へとなだれ込んでいく。
「・・・・けど・・こんな状態じゃあ・・どうしようもないな」
妙にさめた瞳で、目の前の風景を捉える。
覚悟が出来ているなんて上等なものじゃない。
ただ、呆然としているだけ。
咄嗟に動いたところで、出入り口から遠い場所にいる僕は、悪戯に混乱に巻き込まれてしまうのだから。
それでいいと、自分に納得させて、僕は膝を抱えた。
「…東地区、公民館地下避難所破損。怪我人、死亡者は不明」
サブモニターに浮かび上がる淡々とした文字の羅列。
「・・アスカ。準備はいい?」
ミサトは、艦橋部正面のメインパネルを見つめながら、隣に立つアスカにそう告げた。
「もちろん」
「・・使徒は市街地へと入りこんできたわ。まだ避難所の整備が完全ではない地区での戦闘を長引かせる訳にはいかないのよ。すぐに弐号機で援護に向かって」
「・・だからいったでしょ。最初からアタシを・・」
「文句は後でまとめて聞くから・・急いで」
ミサトの失敗を指摘するアスカの言葉を彼女は遮って、すぐに出動するように命じた。
アスカは、不満を顔に表わしたがすぐに気を取り直してケージへと急いだ。
「・・シンジ君・・アスカを今向かわせたわ。彼女と連携して、使徒迎撃にあたって。レイは囮として、使徒の注意を逸らして!」
パネルに映し出される戦闘の状況に、ミサトは声を荒げた。
あまり大きな被害を出すと、ネルフの活動に何らかの制限が加えられないとも限らない。
既に民間人に死亡者が数えられているようで、抗議の十や二十は覚悟せねばならない。
「・・あまり、状況は芳しくないようね」
白衣を身に着けた女性が、ミサトに話し掛けてくる。
「ええ・・最悪とは言わないけど、使徒を甘く見ていたわ」
苦虫を噛み潰した顔をその女性に向ける。
アスカを待機とした判断を後悔しているように見えた。
「・・そうね。・・私達に失敗は許されないものね」
「リツコ・・戦闘はモニターで見てたんでしょう?何か解ったことってないの?」
「解ったことね。・・そうね・・」
リツコと呼ばれた女性は、手元のパネルを操作して何かのグラフをミサトに示した。
「・・これは!」
それを見て、ミサトは驚きの声を上げた。
「・・振動が・・止んだ」
長い時間が経ったような気がする。
短い間だったような気がする。
あちこちで、安堵の声が漏れる。
とはいえ、半数以上の住民は既に別の避難所へと移動しており、この避難所に残っているものは僅かである。
「・・助かったのか?」
それでも、一定のリズムで小さな振動は聞こえてくる。
大きな質量が動いているということはまだ実感できる。
ただ、それに害意がないことは解った。
先程まで激しく避難所を揺るがしてた時とは、状況は明らかに変わっている。
「・・地上は、どうなっているのだろう」
そう思って僕は立ち上がろうとした。
だが、すぐに力が抜けてへなへなとだらしなくその場に座りこんでしまった。
どうやら、腰が抜けてしまったような状態らしい。
膝が恐怖で笑っていた。
「・・・・」
大きく息を吸って、胸に手を当て、動揺を押さえる。
何度か、それを繰り返してからようやく僕は立ち上がることが出来た。
情けないが、僕にとってはそれが精一杯だった。
「・・まだ、足が震えてる」
自嘲しながらも、僕は地上へと歩いていった。
「シンジ君、アスカ、レイ・・ご苦労様」
地上に立っている三体の巨人。
エヴァンゲリオンと呼ばれる人型決戦兵器。
その三体の中の一体、青色のエヴァに乗っている少女は、冷たい目で先程まで戦場だった場所を見つめていた。
何の変哲もない河原が、その瞳に映っている。
「作戦は終了したわ。全機帰投して」
「了解」
淡々とした事務的な言葉でその少女レイは応じて踵を返した。
「・・・・?」
「レイ、どうしたの?」
「・・民間人が地上に出ています。・・どうしますか」
振り返って、その民間人をモニターで捉える。
「構わないわ、ひとまず帰投して。後のことは諜報部が何とかするわ」
「了解」
拡大されたその民間人の姿にレイは僅かに表情を変えたが、それは一瞬でしかなった。
「・・・・あれは・・一体」
僕はそう呟いて、また腰を抜かしてしまった。
目の前に表れた巨人を見て驚くしか出来なかった。
ずしん、ずしんと足音を響かせて立ち去っていくそれは・・まるで「風の谷のナウシカ」の巨神兵のようにも見えた。
『実写版もいけそうじゃないか・・』
などと、くだらないことを思いつく余裕はあるのだが、それを追いかけてみようとか、行動を伴うことは一切出来ないでいた。
「・・何なんだ」
僕はただ呟くだけだった。
「・・また・・この場所に来てる」
あの日から、一週間ばかりの時間が経っていた。
何だか良く解らないが、巨人のことで怪しい男達に話を聞かれたりして(国家機密に関わる重大なことなのだそうだ)忙しく時間が流れていた気がする。
この場所も検証かなにかで昨日までは立ち入り禁止だった。
ようやく、その札も剥がされて久しぶりに河原に来たのだが・・。
「・・結構、景色変わってるなぁ」
いつもの場所に陣取っての感想はそれだった。
河原は周りに比べると、比較的戦闘の痕が少ないのだが、遠くに見える市街地は、まるで空襲にでもあったような景色だった。
焼けたまま、潰れたままのビルや家々。
早くも復旧を開始しているのか、建設の白い幕が巡らせているビルもある。
「・・あの娘・・来るわけないか・・」
そんな景色をぼんやり眺めながら、僕は呟いていた。
水の香りと草の香りが入り交じっていることは変化はなかったが、また彼女がこの場所に来るとは思っていない。
それ以前に、彼女が無事かどうかすら、僕には知りようがなかった。
なのに、何故、またこの場所に僕は来ているのだろう。
さらさらと心地良い水音に、耳を傾けて僕はぼんやりといつもの時間の到来を待っていた。
「無駄なことだよね・・」
誰ともなく呟いて僕は自転車の方へと足を向けた。
「・・・・!」
不意に風が吹いた。
辺りの草がざわめく。
河原の木々の葉が、その風に流されて空へと舞い散っていく。
「・・桜・・」
その風景に僕は過去の記憶を再び思い出していた。
「ここが・・そうか・・おばあちゃんの言っていた河原・・」
家庭用のビデオで撮った桜並木。
季節というものが失われてから、懐かしそうに見ていたその映像。
何処か懐かしいとこの河原に対して感じていた。
「・・・・今は、その面影を・・僅かに留めるだけ・・か」
自転車にまたがりながら、僕はまた来ようと思った。
「・・・・」
人の気配がする。
また・・あの人だ。
この間から来るようになった大学生の男の人。
私の姿を認めると表情を変えて私に注目する。
けれど、私が視線を向けると彼は視線を外して河原を見つめる。
きっと、それでも私に配慮しているつもりなのだろう。
話し掛けるわけでもない。
近付こうとしているわけではない。
何を考えているか解らない。
「・・・・」
もっとも考えを割く必要など無いから・・今のままでもいいと思う。
どうして、気になるのだろう。
気にしなくてもいいのに・・。
・・。
本を広げてベンチに座る。
柔らかな風と、懐かしい水の香りが私を包み込む。
「・・・・」
視線を感じる。
不快ではないが、心地良いものでもない。
私は、その感触を振り払おうと目を一度閉じた。
「・・・・」
自転車を止めて、河原へと降りる。
あの少女は、そこに来ていた。
時間通りではない。
いつもの時間にはまだ早い。
「・・といっても・・」
勝手な考えに陥る自分に苦笑する。
別に待ち合わせしている訳でもない。
彼女が、彼女の都合で好きな時に河原で本を読んでいても、別に構わないではないか。
それは僕が河原を眺めるのと同じなのだから。
互いに干渉をしない。
だからこそ、この時間が存在する。
そんな気がした。
「・・・・」
変わらない風。
変わらない香り。
僕は、河原に腰を下ろした。
再び逢えたことに少し心が騒いでいる。
視線を彼女に向ける。
彼女は、変わらない様子で本を読んでいるようだった。
『この間のことでも・・聞いてみようか・・』
警報が鳴り、避難していく中、彼女の姿はなかった。
一体彼女は、何処に居たのだろうか。
・・・・。
それは、僕の好奇心を満たすものかもしれないけれど、弾む話じゃなさそうだ。
かといって、大学の話なんてしても面白くないだろう。
「・・無理に・・」
いいじゃないか・・知らない者同志で。
同じ時間を共有するだけで。
そう思いながらも、その考えと反する行動。
『じっと見守る』
『思い切って、話し掛ける』
急にその二択を心の中で迫られたような感覚。
という風なゲームみたいなことはないのだが、ふときっかけがそこにあったから、僕は彼女に話し掛けようと思った。
「・・ね・・よくこの場所に来るね。・・この場所が好きなの?」
下心が無くても何となく、ありそうな気がするような声の掛け方。
繰り返している無関係の関係を打ち破るには必要なことだろうけれど、そんな声の掛け方に内心、赤面する。
「・・・・・・」
沈黙。
顔すら向けてくれない。
僕という存在を認識したくないと、拒絶しているような気がする。
「・・えっ・・と・・」
冷や汗に引きつった笑顔。
惨めで情けない空振りの結果である。
それでも、あきらめの悪い僕は何か接点を求めて視線をさ迷わせる。
「あっ・・そのしおり・・」
彼女の読んでいる本に、その話し掛けようとしたきっかけと結びつくものがあった。
「・・桜のしおり、なんだね」
「・・これ?」
指差してまで、示したおかげで彼女が声を上げて反応する。
「うん・・そのしおり・・懐かしいなぁ」
ひょいっと彼女が引っ張り出したしおりを指で受け取りじっと見つめる。
そのしおりを追うように彼女が顔を上げて僕の方へと向いた。
「・・ん・・いい趣味だね」
しおりの桜はイラストで花びらが描かれていたので、懐かしいという感慨は無いのだが、彼女が自分の方を向いてくれたということでじっと見つめる。
裏には、本物の桜の写真を加工した絵が刷ってあった。
「・・そう」
短い言葉が彼女から発せられる。
ぼぉとしたような、存在が希薄なような、冷めた声。
「でも、選んだわけじゃないわ。・・ただ、あっただけ」
視線を前の川に移して、言葉を続ける。
「そうなんだ・・」
彼女の言葉を受けて呟くように言う。
って、話を終わらせたら・・駄目じゃないか。
「・・・・」
「・・・・」
沈黙。
じゃ、なくてなくて・・ええっと・・。
いい天気ですね・・って今更の話題じゃなくて・・。
そうそう・・桜の話なんだ。
「・・昔は・・ここにも桜がいっぱい咲いていたんだけどね・・」
「?」
「このしおりの・・桜の木・・今でも、幾つかは残ってるみたいだけどね。・・」
そういって僕は話を繋いでいった。
不意に話し掛けてきた男性。
大学生くらいだろうか。
私の本のしおりを示して、話をしている。
「桜の・・風景・・」
四季というものが失われて、幻となってしまった風景達。
熱心に、その話をしおり一枚を活用して私に説明してくれる。
・・どうして、そんなことに熱心になるのか私にはまったく解らない。
何を考えて・・私に関わろうとしているのか。
それは私自身のわだかまりと結びついているのかもしれない。
・・何を考えて、いるのか。
・・あの人は・・。
碇司令は・・。
「とはいっても、僕もビデオで見ただけなんだけどね」
ふと嬉しそうな声に顔を向けると、男性の笑顔がそこにあった。
・・・・。
この人は、どうしてこんな笑顔を見せるんだろう。
『笑えばいいと思うよ』
碇クンの言葉。
笑顔。
『ごめんなさい、こんなとき、どんな顔をすればいいか・・解らないの』
心配をする碇クン。
私は命令に従っただけ・・なのに。
でも・・何処か守ったということに、気持ちが湧き上がっていたのかもしれない。
「・・いつか、ここにも桜が満開になるといいね」
そこにありえない風景を見るように、川の方を見詰める男性。
「・・そうね・・」
その男性の砕けた(優しい?)表情に、私もその意見に同意を示して。
何故か・・。
・・。
微笑んでいた。
「・・・・・・」
一方的な話だった。
僕の話に、相槌を打つでもなく、否定が存在しないだけの彼女の態度。
かといって、受け入れているわけでもない。
それでも、聞いている感じはしないわけではない。
暇つぶしに、耳を傾けてくれているのかもしれない。
まあ、それでもと話し掛けていたのだが・・。
話を一応終えたところで、彼女が同意を示してくれた。
と同時に、僕の心に衝撃が走った。
激しい鼓動。
息切れ。
立ち眩み。
・・じゃなくて、鮮烈で強烈な・・笑顔に魅せられて。
まるで・・花が蕾の状態からおずおずと花びらを開かせるように、少女が咲いた。
決して、その笑顔を誇るわけでもなく、ただ純粋に微笑む。
愛想笑いではない。
素直な笑顔。
「・・あっ・・」
僕と彼女のいる空間だけ、桜色に染まってしまったような気がする。
何だか・・どきどきする。
先程までずっと拒絶の空気を漂わせていたとは思えない。
暖かい感じ。
おばあちゃんの話してくれた・・桜の、春の・・暖かみみたいだ。
「・・まるで・・桜の精みたいだ・・」
じわっと暖かく、満たされた気持ちに、呟く。
紅い瞳、蒼い髪、そして白い肌。
・・あれほど、近寄りがたいと思っていた少女なのに・・。
事実、少女は言葉も少なく、何処か閉じこもろうとしているような気がする。
けれど・・こんなに暖かくしてくれる。
「桜の精・・?」
「あ・・ううん・・」
僕の呟きに彼女が首を傾げる。
「?」
「・・君みたいな綺麗な・・暖かい笑顔を見たの、久しぶりだから・・」
その仕種が可愛らしくて、僕は調子に乗ってぺらぺらと話を続ける。
近くに友人とかいたら、腹をかかえて笑われそうな台詞。
それでも僕は彼女に伝えたかった。
その言葉を・・。
そのまま、口にすることで。
彼女なら、きっとと思わせる何かが僕の中にあるのかもしれない。
「綺麗・・暖かい・・笑顔?」
彼女は僕の言葉を笑いはしなかった。
真面目に・・というか真剣な顔で僕を見つめた。
疑問なんだろうか。
どうして、そんな言葉を自分に掛けられているのか解らないとでもいうのだろうか。
彼女のその顔もまた印象的だった。
「笑顔・・」
私の疑問の言葉。
碇クンと同じような表情。
じっと私を見つめている男性の顔。
戸惑いと、照れくさい仕種。
それは・・私自身?
何か言おうとしている男性。
けれど、顔を赤くして何も言えないでいる。
「・・えがお・・」
もう一度言葉を反芻する。
「ちょっとくさかったかな?」
自分自身言葉を否定する。
頭に手を当てて苦笑い。
「・・・・」
私は・・解らなかった。
心の細波の意味さえも・・。
・・心の・・。
じっと川の水面を見つめる。
穏やかさとさざめきと、懐かしさと・・。
「えっと・・あはははははっ!」
態度のない私に、言葉が繋げなくて笑い出す男性。
「・・・・んっ」
けれど、何処かそれが嬉しい気がした。
その静寂を破る警報。
非常信号を感じる。
「・・非常召集・・」
携帯の通信機からの知らせに、呟く。
私は立ち上がった。
そして、この間と同じ所を指し示す。
「・・じゃ・・」
「ま、まって・・君は・・何処に行くの?」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
必要のないこと。
私が何処に行こうがこの人に関わりのあることではない。
「・・・・・・」
口には出来ない。
けど・・それでも、気持ち・・心が喋ろうと、私の中で唇を動かしているように思えた。
「言えないんだね・・。だったら・・せめて・・名前を・・」
すっと目を細める男性。
表情からも、もう訊ねないと伝わってくる。
「レイ・・綾波レイ・・」
名前を告げて私は男性に背を向けた。
そして、揺らいだ心を隠すように、そのまま歩き出す。
「・・・・」
男性は追ってはこなかった。
「・・綾波レイ・・か・・」
この間と同じ避難所で僕は天井を見上げてた。
相変わらずの不安。
何が起こっているか、知らされない。
ただ、嵐が通り過ぎて行くのを待っているだけの存在。
彼女は・・彼女は、きっと特別を持っているのだろう。
だから、行ったのだ。
何処かへ。
「また・・巨人が戦っているのだろう・・きっと」
前の戦いの後、見たあの巨人達。
きっと彼らが、得体の知れない化け物達と戦っているんだろう。
不気味な地響きが響く。
この間よりは、遠いところでの音。
それでも不安なことに変化があるわけではないのだが。
「桜・・無事かな・・」
ふと、気がかりなことを思い出す。
少女・・レイと話していて気付いたこと。
花こそ咲かせていなかったが、桜の木が、木々の中に存在していた。
この間の騒ぎでは、幸いなことに被害はなかったが・・今回も同じということはありえないだろう。
「・・・・」
かといって見に行ったところで何とか出来る訳でもない。
僕は大人しく膝を抱えた。
「・・・・」
こぽっ・・。
肺の中の残留空気が口から出て行く。
待機状態・・。
エントリープラグの中でゆっくりと目を閉じる。
『綺麗?』
先程の男性の言葉が思い浮かぶ。
『暖かい』
私を見つめるあの人の顔。
『笑顔』
笑顔・・心・・。
持ち続ける疑問。
考えること・・。
それが、人としての形・・なんだろうか?
あの人は、私を知らない。
でも、私の知らない私を見つめていた。
人としての存在として・・。
『人形!』
言葉に託された、形。
人であって人でない・・存在。
土くれから作られた・・偽物。
それでも、気持ちは宿るというの・・。
『名前・・教えてよ』
『レイ・・綾波レイ』
たとえ・・何人目であろうと・・私は・・綾波レイなのね。
「レイ・・作戦を説明するわ」
声がする。
思索の時間は終わった。
「・・終わったか・・」
亀のように首を収めて待っている時間を過ぎて、僕は立ち上がった。
この前とは違って、比較的足は自由に動く。
思い切って、また地上への階段を駆け登る。
っていう元気があれば良いのだが・・震える足では、ゆっくり登って行くのが精一杯だった。
笑ってるわけじゃないけど、拒絶を表わすように足取りは重い。
奥底の不安。
まだ、きっとそこに化け物がいて僕を待ち構えている・・なんてことは考えないけど。
待っているということはないけど、巻き込まれる可能性はないとはいえないし。
それでも、大きな爆発があったきり地鳴りが収まったので、僕は地上を目指した。
「・・・・ふう・・また派手な光景だこと・・」
遠くで煙が上がっている。
同じような、同じでない風景。
「・・巨人は・・もういないか・・」
となると・・今度はあの黒ずくめの男達に会うこともないだろう。
「・・さて・・帰るか」
といっても、帰る家があればという皮肉も付きまとうが。
どうも、煙の上がっている方向が僕に不安を与えてくれるようだ。
「・・また・・来るか」
河原は無事だった。
だとすれば、また彼女に会う機会もあろうということだ。
近くに止めてあった自転車を起こす。
振動で倒れてしまってちょっとハンドルの部分が傷ついているが、それはまあ気にすることではない。
こんなことを気にしていては・・この街では生活できるはずもない。
「・・・・咲くと・・いいな・・」
ふと、緑の葉を生い茂らせている木を見上げる。
咲かない・・桜。
「・・彼女の笑顔のように・・」
ぽつりと言ってしまった台詞の臭さに苦笑する。
だけど、それほどあの笑顔は・・印象的で・・綺麗で・・僕の心に残っていた。
「・・・・」
鏡。
自分を見つめる。
紅い瞳、蒼い髪、白い肌。
綾波レイという・・存在。
「笑顔・・」
笑おうとする。
笑顔を見ようとする。
けれど、いつまでたっても笑顔は見られない。
心に棘のようなものが刺さって抜けないでいる。
『君みたいな・・暖かい笑顔を見たの、久しぶりだから』
暖かい・・温もり。
私は、何も思わない。
鏡に映っている自分に。
たぶん、笑っている自分にも。
あの人が知っている私は・・私には見つからない。
「どうして・・」
すっと鏡に手を伸ばす。
もう一つの世界、向こう側の世界の私も手を伸ばす。
手と手が触れ合う。
冷たい・・鏡の感触。
『その人のこと・・気になる?』
「・・え?」
鏡の中の私が笑ったような・・気がした。
目の錯覚と思うけれど・・私はその時聞こえた言葉に心を奪われていた。
「・・気になる・・」
あの人じゃない・・男性を気にする。
そんなこと・・今まではなかった。
・・あったかもしれないけれど、無意識のうちだったかもしれない。
明確な意識の表れ。
『どきどき・・してるの?』
胸に手を当てる。
鼓動は正常だった。
早くもなく・・遅くもない。
「でも・・心に・・引っかかる」
私は、またあの場所に足を向けた。
「・・や・・やぁ・・」
何度目かの邂逅。
ぎこちない笑みを見せる。
レイちゃんとは、約束を交わすことなく何度かここで出会っていた。
何気に話す(といっても一方的な話が多いが)こともあれば、最初の挨拶だけで一言も喋らないこともある。
距離感というのが掴めないというのは今も変わらない。
その時々の彼女の様子で僕は態度を変えている。
といっても、ほとんど変化が無いのでそれが出来ているかどうか疑わしいのであるが。
「・・・・」
ぺこりと頭を下げて僕の脇を通りすぎて行く彼女。
河原のベンチで、持ってきた本を開ける。
今日は、あまり話かけない方がいいだろう。
まあ、今日のはどう見ても拒絶の態度だし・・仕方ないか。
僕は、彼女を見つめていられる草むらに寝転がった。
草の香りが全身を包み込む。
涼やかな風が、水の香りを運んでくる。
「・・今日も・・いい天気になりそうだ・・」
空を見上げて呟く。
穏やかな時間を今日もまた過ごしていくのだろう。
「・・・・」
空を見上げながらの考え事。
ポケットに入っている映画のチケット。
二枚。
『あのさ・・ちょうど映画のチケットが二枚手に入って・・それで・・明日が最終日なんだけど・・』
などと、化石的な誘い方は・・駄目だろうか。
今日か、明日・・。
いい映画だとは聞いているのだが、正直誘うのは不安だった。
仲良く、なっているとは決して思えないし、まあそれでも笑顔をこちらが見せてもいい関係にはなっている。
他人ではないけれど、友人でも、ましてやそれ以上でもない。
そんな関係で、映画を誘うなんて・・。
・・しかも、中学生・・みたいだし。
友達にロリコンって言われるの必死だなぁ・・。
じゃなくて、どうなんだろう。
「・・・・」
彼女の方を見ると、変わらない様子でじっと本を読んでいる。
明日、今から行かないって・・誘っても・・都合がつくかどうか。
でも、今日は何だかタイミングはよろしくないようだし・・。
とか何とか、こんな調子でせっかく手に入れたチケットの期限を過ぎてしまいそうになっているのは秘密である。
ええい、ままよ。
ということで、僕は立ち上がって彼女の方へと歩いていった。
「レイ・・使徒らしき未確認物体が観測されたの。悪いけど、待機していてくれない?」
「はい・・」
心に引っかかる、棘。
頷いて、私は目を閉じた。
「まだ、反応がはっきりしないんだけど・・お願いね。アタシは、データを取りに行ってくるから」
「はい・・」
あの人は・・待っているんだろうか。
ふと、心に思い浮かぶ彼の顔。
けれど、私はそれを振り払って、待機任務に就いた。
「・・・・」
振り払ったはずの彼の顔が・・すぐ目の前に浮かぶ。
その顔は、笑顔だった。
「・・こないなぁ・・」
河原を見上げる。
いつもの時間は既に過ぎている。
待ち合わせに、時間を告げてなかったような気がする。
ということは、もしかしなくても彼女が先に来て・・帰っちゃったとか。
いやいや・・そんなことはない。
ちゃんと・・彼女も頷いてくれたし。
・・うう、頷いたと思い込んでいただけとか。
「・・雲行き・・怪しいや」
思わず呟いた言葉に苦笑する。
空には、雨雲らしき雲が広がっていた。
「・・傘・・持ってきた方がいいかなぁ」
厚い雲に、太陽が消されていく。
街全体が、木陰に入ったように薄暗くなってゆく。
日の光が、遠くへと逃げて行く。
「・・まだかなぁ・・」
僕は時計を確かめて、それから河原を見上げた。
「・・・・」
時々、落ち着かなく視線を走らせる。
何処へというわけではない。
何を見るというものでもない。
ただ、心がざわめく。
『そう・・良かった』
笑顔を見せた彼。
その彼を思い出すと、落ち着かない。
約束を交わしたこと。
でも、私は自分を拘束する言葉に捕らわれて、ここから動けないでいる。
それは、約束ではなく、命令。
だから、私はここに居る。
「レイ・・どうしたの?・・今日は珍しく落ち着かない様子だけど・・」
「いえ・・」
掛けられた言葉を否定して、私はさ迷う視線を隠すように再び目を閉じた。
「・・・・」
心の芯まで冷えそうな雨が、僕を包み込んでいた。
空を見上げると、雨粒が僕の顔を激しく叩いてくる。
まるで、目を覚ませと言っているように。
涙とも雨ともつかぬ流れが頬を伝う。
「振られたかな・・」
自虐の笑みすら浮かばない。
まあいいと自分の心を慰める言い訳と、それを否定する悲しみ。
何か彼女にあったんだというのは、自分に対する都合の良い解釈としか思えない。
『そう・・振られたんだよな』
出会って間もない少女に、何を思っていたのだろうか。
次々と、自分の笑い話のような行動に、嫌悪感が沸き上がってくる。
「・・これが答えなんだ」
空を見上げる。
雨粒が目に直接入って痛かった。
でも、それが今の僕には似合いの仕打ちに思えた。
「・・・・」
それでも・・。
・・。
それでも・・。
・・・・。
足が動かないのは何故何だろう。
この場所から、離れることを望んでいない自分。
現実に直面しても、何処か思い込みの希望にすがって待ち続けようとする。
『だから・・馬鹿なんだよ』
もう一人の自分が笑う。
僕という存在を、僕の中から見つめていたもう一人の自分。
だが、彼も・・この場所から立ち去ることを望んでは居ない。
僕は、ただ立ち尽くしていた。
倒れてしまうまで・・。
「・・・・」
そこに、彼は居なかった。
それが、結果。
「・・・・」
病院で目を覚ます。
白い風景、鼻を突く消毒液の匂い。
「完璧に・・駄目だな」
自嘲。
乾いた笑いしか僕はひねり出せなかった。
『それから・・数日、考えていた』
『出会ってからの気持ち・・』
『それは、決して強い繋がりじゃない』
『それでも・・』
『あの・・河原に足を・・向けていた』
『絆・・だから』
『見せ掛けでも、偽りでも・・きっと』
「・・」
誰も居ない河原。
以前に戻っただけ。
そう思っているのに、それを否定したい私が何処かに居る。
約束。
繋がり。
心の何処か淋しい・・そう・・淋しい私。
あの人の存在を、私はどう言葉にしていいのか解らない。
どう感じれば良いのかも解らない。
それでも、ここに来ているのは、何かを期待しているの?
変わっていくこと、変われるかもしれないということに。
解らない・・けれど、思索を止めない。
じっと心を安らかにさせる水音を聞きながら目を閉じる。
ふと・・人の気配がした。
・・そこには・・。
「・・・・」
目を開けて、相手を見詰める。
何処か、安心に・・笑みが浮かんだ・・・・。
「・・・・」
言葉を持たない。
僕は、じっとレイちゃんを見ていた。
彼女が笑う。
馬鹿にしている笑顔ではなく、嬉しそうな・・笑顔。
それで・・すべてが許せた。
だから、僕も笑顔で・・彼女の下へと歩いていった。
・・そして・・新しい物語の幕が上がる。
すちゃらか裏話
作者 「どうも・・予想以上に時間がかかって、五十万ヒットに間に合わなかった人、踊りマンボウです」
ナギサ「皆さん、お久しぶりです、いかがお過ごしでしたでしょうか、アシスタントの雪風ナギサです」
作者 「さて・・今回は、何の話にしようかな」
アスカ「・・チェストぉぉぉぉぉ!久しぶりね、腐れ作者マンボウ」
作者 「・・や、やあ・・久しぶりだね、アスカ」
ナギサ「ほよ?マンボウさん、なぜ目を逸らされているのですか?」
アスカ「何か後ろめたいことがあるとか?」
作者 「・・そ、そんなことはない!・・多分」
ナギサ「マンボウさん、汗が・・もう、どうされたのですか」
作者 「あ、ナギサちゃんありがとう」
アスカ「あいかわらずのコンビね。まあいいわ、一体何をしてたのか白状してもらおうかしら?」
作者 「・・も、もしかして・・やっぱり近頃の遅筆のこと?」
アスカ「ほほぅ・・良く解っているじゃない。解ったらほらきりきり書く!」
作者 「はぅ〜」
アスカ「はまっているゲームの真似をしたって駄目。アタシが活躍する小説をどんどん書くのよ」
ナギサ「わたくしのは・・その・・マンボウさん。うるうる・・」
作者 「はう・・ナギサちゃんまで・・うにゅ〜・・」
アスカ「ということで、それはそれとして今回の話をしましょう」
作者 「切り替えが早いね」
アスカ「何年、アンタみたいな腐れ作者と遊んでると思うのよ、愚痴るだけじゃ、前には進まないものよ」
ナギサ「ほよ・・?愚痴・・ですの?マンボウさん」
作者 「あ・・ま・・いや・・ねえ」
アスカ「ということで、ほらほら今回のコンセプトでもきりきり話す!」
作者 「・・何かやりずらいなぁ・・まあいいか。今回のお話ですが・・」
ナギサ「マンボウさん。あの最後まで主人公さんの名前がなかったのですが、何かあったのでしょうか?」
作者 「はぅ〜ナギサちゃん、先を言っちゃ駄目だよ・・。その通りなんだけどね」
ナギサ「ほよ・・。あの、何かわたくし悪いことを申してしまったのでしょうか?」
作者 「ううん・・別に良いけどね。ということで、今回は主人公の名前を消しました。これは、シンジ君ではないキャラと・・狙いは読者自身が主人公としてエヴァの世界に入っていけたらなぁと思って、敢えて決めませんでした」
アスカ「まあ、それでも何だかキャラとしての性格がためはしてあるみたいだけどね」
作者 「・・まあ、その辺は仕方ないということで・・」
アスカ「それよりも・・アンタ、締切りは守りなさいよ。それと更新もしっかりとする」
作者 「・・・・アスカ」
アスカ「何よ、外道作家」
作者 「何だか、小姑みたい・・口うるさい」
アスカ「・・・・」
ナギサ「?・・アスカさん、にこにこ顔で拳を鳴らして・・何か良いことがあったのでしょうか」
作者 「・・ナギサちゃん」
ナギサ「はい?何ですの、マンボウさん」
作者 「逃げろぉぉぉぉぉ!」
作者、ナギサの手を引いて逃亡。
ナギサ「きゃあ、マンボウさん。急に手を引っ張らないでくださいまし!わたくし、少々驚いてしまい・・」
アスカ「待たんか!外道作家!」
アスカ、作者達を追いかけて舞台から消える。
と、終わりの挨拶も無いまま閉幕。
ということで、ではでは、また別の作品でお会いできるまで・・。
そして管理人(その他)のコメント
カヲル「ここの作者から伝言を預かっているよ。「ごめんなさい。マンボウさん(^^;」ってね」
アスカ「はん。この作品をもらってから、実に一月以上も更新しなかったんですもの。謝って当然! ほらほら、アンタも謝る!」
カヲル「・・・・何で僕がなんだい?」
アスカ「あら、一人の罪は一族に連座するものって相場が決まってるじゃない。同じ管理人どうし、あんたたちがわびるのが筋ってものよ」
カヲル「・・・・その〜」
アスカ「なによ」
カヲル「そう言いながら靴で僕の頭ぐりぐり踏みつけるの、やめてくれないかな。顔に跡がつく跡が」
アスカ「あら、アタシとしたことがそんな下品な・・・」
カヲル「といいつつさらに踏み踏みする・・・・そういうことすると・・・・」
アスカ「なによ」
カヲル「ぱんつみえるよ。スカートなんだからさ」
ただいま電波が混線しております。しばらくお待ちください。
カヲル「ぐは・・・・ううう」
アスカ「それはともかく、今回の作品。主人公はあたしたちじゃないのね」
カヲル「ああ、そうだね。てっきり最初は身分を隠した僕かと思ったんだけどね」
アスカ「まっさか〜そんなことあるわけないじゃない」
カヲル「そこまで言い切らなくてもいいじゃないか。君は短絡思考だね」
アスカ「アンタがでてくるのはだいたい悲惨な死を迎える作品かや○いものと決まってるんだから」
カヲル「偏見って言葉知ってるかい?」
アスカ「(ギロリ)まあいいわ。しかしこの主人公も、レイに気があるなんて悪趣味よね〜」
カヲル「なんでさ」
アスカ「アタシというスーパー天才美少女がいるっていうのに」
カヲル「自分で言うとは厚顔無・・・っと、いやいやなんでもないです(汗)」
アスカ「ふん、まあいいわ。そうそう、だから恋するべきはアタシ! アタシじゃないとね〜マンボウ、今からでも遅くないから、主人公変えない?」
カヲル「しかし・・・・それには重大な問題があるよ」
アスカ「問題?」
カヲル「ああ、重大な問題さ」
アスカ「?」
カヲル「暴力的・・・もとい、活動的な君がおとなしくベンチに座っているわけがないってことさ。あたりを破壊して回る君に心奪われる主人公がでるなんて出だしじゃ、この雰囲気は絶対に出せるわけがないんだからさ」
アスカ「ほっほー。つまり?」
カヲル「つまり、君がレイに代わった時点で、冒頭部分で話が破綻するという・・・・」
アスカ「なるほどーわかった。よーくわかったわ」
カヲル「ん? まさかり? げんこつ? まさか、ぐーで殴るんじゃないだろうね、ぐーで」
アスカ「ちょきで突き刺すよりはましだと思いなさい、とりゃ〜!!」
カヲル「どっちも、どっちもいやだ〜!!」
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