エヴァ・インスピレーションズ
「雪風ナギサの青柳邸訪問話」前編
(青柳氏チェック済)
作者:踊りマンボウ
「おはようございます、マンボウさん」
朝の挨拶。
メゾン・ド・マンボウの前で一人の少女と朝の挨拶をかわす。
少女の名は雪風ナギサ。
メゾン・ド・マンボウの住人である。
「おはよう、ナギサちゃん」
彼女はいつものように、満面に眩しい笑顔を湛えていた。
腰まで届く長い黒髪、それと同じ漆黒の瞳。
整った顔つきに白い肌。
「今日も元気だね」
まるで、どこかのお嬢様のようだと、彼女を見るたびに思う。
「はい、ナギサはいつでも元気ですの」
僕の言葉に、さらに笑顔になる。
この笑顔を見るたびに、僕は元気になる。
落ち込んだ時に励ましてくれたり、本当に彼女には迷惑ばかりかけている。
『今日も・・いい一日になるかな・・』
さわやかな、朝日を受けながら背伸びをする僕は、そんなことを考えていた。
その時、ふとカサリとポケットに違和感を感じた。
「あ、そうだナギサちゃん。そういえば・・こんな手紙が来てたんだけど」
そういって、僕は違和感の原因である一通の手紙を取り出した。
「え?なんですの?マンボウさん」
うんっと僕と同じように背伸びをしていたナギサちゃんだったが、僕の言葉にそれを止めて、てくてくとやってきた。
興味深々という感じに僕の手の手紙を見つめる。
「招待状だよ・・。宛先は、踊りマンボウ様および雪風ナギサ様とあるんだ」
「はい?・・わたくしとマンボウさんですか」
「うん。・・差出人は青柳洋館主人、青柳康平ってあるけど・・」
しっかりと封蝋のされてある招待状。
それが、すべての始まりだった。
「それにしても、本当に普段の格好でよろしいですの?」
僕の横にぴったりとくっついて歩くナギサ。
服装は、普段の格好で構わないと青柳さんの手紙には書いてあったのだが、ずいぶんとおめかしをしているようである。
何処から引っ張り出してきたのか、彼女はまるで巫女のような服を纏っていた。
若干、色合いとかが、年末年始に神社で見る巫女とは違うのだが、印象的にはどう見ても巫女の衣装であった。
『御祓い棒(祓い串)を持たせたら、完璧なんだけど』
そういう、個人的な希望は置いとくとして。
まあ、一応普段の格好として・・う〜ん・・目立つと思うんだけど・・。
『まあ、似合ってるし・・いいか』
対して、僕は本当に普段の格好。
くたびれたシャツにGパンという・・まんま、貧乏学生そのもの。
少しは、決めれば良かったと、彼女の姿を見て思うものの・・もはや、後の祭りである。
「ああ、手紙・・じゃなかった招待状には、服装は普段のままで構いませんって書いてあったし、ね」
言い訳じみている言葉であるが、それは本当だった。
「それなら、よろしいのですけれど・・」
手紙(招待状)の内容は、ごく短いものだった。
『踊りマンボウ様、雪風ナギサ様、突然ではございますが、ぜひ我が洋館に一度いらして下さいませ。お待ちしております』
単純に要約するとこんな感じになる。
あとはほとんど定型の挨拶文といったところだ。
同じ楽園内、分譲住宅に住んでいるということで、名前は知っているのだが、近頃、メインストリートが何やら物騒という事もあってか、ろくに挨拶回りをしていなかったのだ。
それで、ひさしぶりに気分転換も兼ねて、出かける事にしたのだが・・。
「それにしても、ずいぶんとこの辺りも変わったね」
「はい・・そうですね」
そう、ずいぶんと街の様子も変わったものだ。
マンションを留守にして、第一の約束の地へ出掛けていた事もあってか、その変化は、ただ、ただ目を丸くするばかりである。
「黄昏歌舞伎町とか・・色々増えているんだね」
新しい地図を見た時は、その記された住人の数には驚いたものである。
管理人さんも大変であろう。
「はい、でもレイさんには、色々危ないからあまり遠くまで出掛けては駄目ですよ、って言われているんです。ですから、お出かけするのも本当にひさしぶりで」
横を見ると、本当に嬉しそうな顔でナギサは微笑んでいる。
「お、向かいにはグッズショップか。どんなのがあるんだろう。今度、一緒に見に行こうか。みんなを誘って」
「はい!・・あれ、マンボウさん。あそこにおられるのは、アスカさんではないでしょうか?」
頷いたナギサが、ふと誰かを見つけて指を差す。
「ああ、本当だ。でもアスカの様子が変だよ・・何か・・包丁とか持ってるし」
「本当ですの・・。あらあら、どうかされたのでしょうか、・・アスカさん!」
ぱたぱたと、駆けていくナギサ。
慌てて後を追いかける僕。
「アスカさん、どうかされたのですか?包丁を持っておられるようですが」
「・・ひかる」
何やら、怪しい雰囲気をアスカは纏っていた。
「はい?」
「山村ひかるは、何処よっ!」
まさしく、怒髪天をつく状態のアスカは、ナギサに怒鳴った。
「え、あ・・その」
激しく詰め寄るアスカに、ナギサは戸惑っていた。
「山村ひかるよ、ひかる!」
「えっと、確か、黄昏歌舞伎町のほうでお見かけしたとレイさんがおっしゃってましたけど・・見かけても声を掛けちゃいけないって・・あら?」
「・・・・」
ナギサの言葉をすべて聞く前に、アスカは駆け出していた。
「覚悟しなさい!外道作家!」
その表情は、鬼気迫るものであった。
街行く人達は、そのあまりの形相に恐れをなして彼女から逃げるように道を開けて行く。
「・・はあはあ、ナギサちゃん足速いんだね・・。あれ、アスカは?」
僕が、ナギサに追いついた時には、既にアスカは近くには居なかった。
「はい・・アスカさん、何やらお急ぎのようでして、その・・山村ひかるさんとおっしゃる方をお捜しだそうで。・・それでわたくし、黄昏歌舞伎町の方で、その方をレイさんがお見掛けしているようですって言いました所・・突然走り出されまして・・」
「ふうん・・そうなんだ・・成る程ね。でも、包丁を持っているなんて・・危ないよね」
「はい、そうですわね・・」
頷いたナギサは、そんなアスカを心配してか、しばらく彼女の去っていった方向を見ていた。
彼女が走り去っていった後には、おそらく彼女が携帯していたと思われる武器が点々と落ちていた。
石斧、青竜刀、ミスリルソード、エクスカリパー、光の剣、黒曜石の槍・・等々。
一体何処にそれだけの武器を備えていたのか不思議なくらいである。
しかも、結構珍しい(というかすべて珍しいのだが)ものが揃っている。
「・・銃刀法違反だよね・・完全に」
何処に消えてしまった、アスカのことを考えながら僕はそう呟いていた。
「・・あらあら、なんてご立派なお屋敷ですの」
程なく、僕達は青柳邸についた。
距離的にはたいしたことはない距離である。
メインストリートを横断して、しばらく歩けばすぐに着くのだから。
「そうだね・・こう全体的に伝わってくる雰囲気が何とも言えず・・おどろおどろしいというか・・」
ぼんやりと、深い霧の奥に大きな建物が見える。
ここだけを包んでいる怪しげで不自然な霧の所為ではっきりとはその全容は確認できない。
が、ナギサの言う通りかなり立派な建物であると思えた。
何度か、N2爆雷で焼き払われたということを聞いているのだが、辺りに微塵もその痕らしきものはない。
「さすが、噂に違わぬ洋館と言うべきだね・・」
ぴりぴりと肌を刺す独特の空気に僕は身構える。
まだ屋敷の外だというのに、である。
「ほよ?・・誰かこっちにいらっしゃいますわ。マンボウさん」
だが、そんな緊張を見せる僕とは対照的に、ナギサは久しぶりに出かけたことが嬉しいのだろう、はしゃいでいた。
彼女の瞳には、どう映っているのだろうか・・この屋敷は・・。
「?・・何も見えないけど・・」
「あら?そんなことはありませんわ。ほら、すぐそこに来られていますわ・・」
僕は、目を凝らしてナギサの指差した方をじっと見た。
確かに彼女の言う通り、ぼんやりと人影が見える。
だが、彼女に言われなければ、それが人影であるとは認識しなかっただろうと思えた。
屋敷全体を包む不自然な霧の中から、ゆっくりとこちらに向かって歩いてきている。
「・・確かに・・誰かこっちに向かって歩いてきてるね・・」
しばらく経つと、明確に人であると解るようになる。
「どなたでしょうか?」
「さぁて、誰だろう・・」
閉じられた門の前でその人を待つこと、しばし・・。
「ようこそいらっしゃいました・・。踊りマンボウ様に雪風ナギサ様ですね」
「・・・・」
「はいですの」
僕達の前に来た人影は、あからさまに怪しかった。
黒いローブを着ており、顔はそのフードの所為でまったく見えない。
男なのか、女なのかすら判らないくぐもった声で、自分達の名前を呼ぶ。
ナギサの方は、元気良く返事したものの、僕は黙って睨み付けるしかなかった。
「ほよ?・・マンボウさん、どうかされたのです?」
沈黙を守る僕を不思議がるナギサ。
「い、いや・・何でもないよ・・」
曇りの無い明るい笑顔で顔を覗き込まれて思わず動揺する。
「どうぞ・・」
その黒ずくめの使者がそう言うと、洋館の館が鈍い音を立ててゆっくりと開き始める。
手も触れずに、門は開いていた。
『まさか、自動化されてるとかいう訳でもないだろうし』
じっと、目を凝らして見たものの、らしき仕掛けもない。
どういう原理なんだろうと、考え込んでしまう。
少なくとも・・僕の理解の範囲は越えていることであろう。
「・・」
となると・・入るべきかどうか、悩むのは必定である。
「ほら、マンボウさん、行きましょう!」
が、ナギサはそんな僕の躊躇いをよそに、迷いもなく屋敷に足を踏み入れていた。
「あ、ああ・・」
僕の手を引いて館の中へと誘う彼女に僕は抗することは出来なかった。
覚悟を決めて、門を潜る。
途端、門は音を立てて閉まり始めた。
まるで、僕達をここへ閉じ込めるとでも言わんばかりに。
「どうぞ・・こちらです・・」
「はいですの。・・さ、マンボウさん」
「あ・・ああ」
黒ずくめの使者に案内をされて深い霧の奥へと足を踏み入れる僕達。
「・・なんか嫌な感じ・・」
僕達の後ろでだんだんと霧の中に消えていく閉じてしまった門をちらりと見て、僕はそう呟いた。
「・・ターゲット、及びおまけ。ただいま、館内に入りました」
洋館のとある一室に、先程の黒ずくめの者と同じ格好をした・・声から察するに男が、その主と思われる男に報告をしていた。
「・・そうか、作戦を続けてくれ・・」
「はっ・・御意・・」
黒ずくめの男は、軽く頷くと消えてしまった。
「・・ふふっ、ナギサちゃん・・待っててね。今すぐあのおじゃマンボウを始末するからね・・」
そういって、男は笑みを浮かべた。
男の名は、キール青柳といった。
この青柳邸において、ナギサ補完計画を進めている中心人物である。
「もうすぐだよ・・ナギサちゃん」
モニターに映るナギサの姿を見て、まるでゲンドウのような笑みを浮かべる。
『ううん、巫女さんのような服も、もえもえ〜』
頭の中では、何だかこんな感じらしい。
「!・・どうしたというのだ」
だが、急にそのモニターの映像が消えた。
「まさか・・奴が・・動き出したのか。この館・・生きている壁が・・」
キール青柳の額に大粒の汗が浮かんでいた。
「ナギサちゃんの・・力を受けて・・活発化しているのか・・だとすれば・・」
しばらく、口に手を当てて考える。
「誰か・・誰かいないか?」
そして計画とは別の形で彼は動き始めた。
とてとてと歩くナギサ。
その前をきょろきょろと周りを警戒しながら歩く僕。
そして、さらにその前を黒ずくめの者(雰囲気からして男だと思う)が足音も立てずに歩いている。
入ってから、結構歩いているような気がする。
「・・ずいぶんと、大きいのですのね・・」
天井を見上げてナギサが感心する。
確かに、ナギサの指摘した通り、今歩いている廊下は十分、車が通れるような幅を持っていた。
「そうだね・・メゾン・ド・マンボウとは大違いだね」
ナギサに倣って、天井を見上げる僕。
僕達の遥か上に天井は存在していた。
『何メートルくらいあるのだろう』
少なくとも、背伸びをして手を伸ばして届かない距離にあることは確かである。
「・・それにしても、あの絵は誰が描いたんだろう」
天井は何だか良く判らない模様が彩られていた。
絵といわれれば、絵の様な気がするし・・何とも言い難いものである。
『この天井・・掃除とか、どうするんだろう?』
ふと、余計なことを考えてしまう。
『高枝切りバサミとかみたいな、伸び縮みする棒の先にはたきをつけて埃を掃っているのかな・・』
ぼんやりと天井を見てると・・驚くべき事に唐突にその天井の模様が変化した。
「え?」
思わず声を上げる僕。
「ほよ?・・どうかされましたか、マンボウさん」
「え・・いや、その天井の模様が・・」
指をさす。
ナギサは僕の指し示す場所を見る。
「あらまあ・・これはこれは、模様が変化しておりますわ」
ナギサが見た途端に変化が止まる、などということもなく、壁の模様は変化し続けていた。
何とも言えない色彩の変化。
長い間見続けていると、気分が悪くなるかもしれない。
「だろう・・」
一気に緊張が体を駆け抜ける。
やはり、来るべきではなかったかという思いが心をよぎる。
だが、ナギサは妙に嬉しそうにはしゃいでいるようだった。
「?・・ナギサちゃん?」
彼女の様子に訊ねる調子で彼女の名を呼ぶ。
「さすが、青柳さんのお屋敷ですわ。壁紙を変化させるなんて・・感心致しますわね、マンボウさん」
「・・それは違うと思うけど」
うねうねと色彩めざましく変化する壁。
何だか、立体的な変化も伴ってきているような気がするのだが・・。
動く壁。
生きている屋敷。
それが、突如襲い掛かってくるなんてこと・・考えたくないけど。
「あまり・・ぞっとしないね・・」
何処かに目玉があって僕達を見ているような気がする。
ぴりぴりと首筋が痛むほどに緊張している。
服の下では鳥肌がさぞかし盛大に浮き出ていることだろう。
嫌な空気だ。
「・・・・そのように、脅えなくても大丈夫です・・・・」
黒ずくめの男があまりに警戒する僕の様子にそう声を掛けて来た。
「・・誰でも、七色に変化する天井を見せられたら驚くと思うけど・・あ、ナギサちゃんは別みたいだけど」
妙にはしゃいでいる彼女に少し呆れる。
けれど、自分のペースを崩さないという意味では・・凄いことだと思う。
「はい?・・お呼びになられましたか、マンボウさん」
ナギサという言葉に、彼女が反応してとてとてと僕の隣にやってくる。
ふわりと長い黒髪が空気を受けて鳥の翼のように広がる。
「い、いや・・何でも無いよ」
無邪気な笑顔を見せるナギサに、僕は少し戸惑いつつもそう答えた。
「・・・・さて・・ここです」
そうこうしている内に、どうやら目的の部屋へ辿り着いたようである。
黒ずくめの男が立ち止まる。
頑丈そうな鉄の扉の前。
「・・・・」
あの・・上のプレートに「ガス室(危険)」って書いてあるんだけど。
「マンボウ様だけ、お入り下さい」
「をいをい・・冗談だろう」
思わず一歩引く僕。
「・・いいえ、本気です」
多分、言葉の雰囲気からして、黒ずくめの男はにっこりと笑顔を見せているのだろうが・・なにぶんにもマントの下での表情だけに・・見えない。
でも、僕を身震いさせるには十分な雰囲気と言葉だった。
「・・どうぞ、お入り下さいませ・・」
丁寧な言葉で、ドアを開けようとノブへ手を伸ばす男。
「って、あれ?・・あれぇぇぇぇぇぇぇ・・・」
その手がドアノブらしき出っ張りに掛けた瞬間、大きな変化が起こった。
ドアノブは、生き物の・・たとえていうならカメレオンの舌の先のようになって、黒ずくめの男の伸ばした手を絡め取った。
まるで腕輪のように、ぴったりと腕にはりつく、元ドアノブ。
「ひ、ひいっ・・」
悲鳴が上がる。
無論、黒ずくめの男からだ。
「た、助け・・」
男が声を上げるものの、僕はその現実離れした光景に動けないでいた。
鋼鉄製のドアが、モーフィング技術で繋いだような変化を見せて、今や大きな口になっていた。
「あっ・・」
舌が引っ込められて、口の中に黒ずくめの男は飲み込まれていく。
「あひぃぃぃぃぃ」
・・その後に、嫌な咀嚼音のようなものが聞こえてきたが・・聞かなかったことにしておこう。
『・・・・か、帰ろう。ここに居たら命が幾らあっても足りない』
そう思って、ナギサの方を向く。
「・・・・あらあら・・案内の方が・・居なくなってしまいましたわ。まあまあ・・どうしましょう、マンボウさん」
だが、僕の隣で僕と同じようにその様子を見ていたはずのナギサは、場違いに落ち着いていた。
のんきというか・・その・・ある意味安心できるのであるが・・何とも彼女らしいというか・・。
「と・・とりあえず、逃げようか・・」
震える声でそう提案する。
「え?そんな・・まだ、青柳様に御挨拶も何もしておりませんのに・・」
「それどころじゃないよ・・。いつまでもこんな所に居たら食われちゃうよ」
「マンボウさん!」
脅える僕に、急に彼女は強く言い寄ってきた。
「は・・はい」
その言葉に、何故か気を付けをしてしまう僕。
何だか、びしっとした言葉に思わず身構えてしまった。
「せっかくの青柳様の御招待ですのに、御挨拶も無しに帰るなんて失礼にもほどがあります!」
「い・・いや・・でも・・」
「でも、ではありません。さあ、参りましょう・・」
僕の手を強く握り締めてナギサが歩き始めた。
僕も仕方なく彼女に続いて歩き始める。
「・・・・」
不安で仕方ないのだが・・こうなっては従うほかないだろう。
周りを警戒しながら歩く。
そんな中、唯一の救いは、彼女の握ってくれた手の暖かさだろう。
手を離したら、僕が逃げると思っているのだろうか、しっかりと握っている。
『ナギサちゃん・・こういうところは・・頑固だから・・』
で・・とてとてと歩く彼女に、続くこと数分。
「ねえ・・ナギサちゃん・・」
ふと、彼女を呼び止める。
「はい?何のですの、マンボウさん」
「その・・何処へ行こうとしているの?」
「はい。青柳さんの所ですわ」
「ナギサちゃん・・青柳さんの居場所知っているの?」
「いえ・・存じませんけれども・・」
にっこりと微笑むナギサ。
「・・・・じゃあ、何で歩いているの?」
至極当然の質問である。
一体、彼女はどういう根拠でつかつかと歩いていたのか。
外観から考える以上に、青柳邸の内部は複雑だった。
今、何階に居るのかすらもう把握していない。
途中、僅か階段が五段くらいしかないところを何度か通っているので、一階ではないと思うのだが・・。
「・・えっと、その・・」
また、にっこりと微笑むだろうと思っていたのだが・・ナギサは僕の予想とは違って俯き加減になっていた。
「マンボウさんが、あのようなことをおっしゃるので・・つい、わたくし・・その・・あっ!・・ぽっ・・」
そこまで言ってナギサはまだ僕の手を引いていたことに気付いた。
顔を真っ赤にして、慌てて手を引く彼女。
「あの・・その・・」
珍しくナギサが動揺している。
「は、恥ずかしいですわ・・」
「・・・・」
そんなナギサの様子に、僕まで恥ずかしくなる。
「・・・・」
「・・・・」
気恥ずかしい沈黙。
もじもじとしているナギサ。
それに対して、どう声を掛けていいか迷う僕。
何だかほんわかした空気に包まれている。
「ちょっと待ったぁぁぁぁぁぁ!」
そこへちょっと待ったコールがかかる。
何やら怪しげな人影。
「こら!そこのナレーションじゃなくて、説明文野郎!・・誰が怪しいんだ。失礼な・・」
はうっ・・この私に気付くとはさすがこの館の主。
すかさずのご指摘、感服いたします。
「ふ・・気付かいでか・・そもそも、一応空白を置いて視点が変わることをアピールしてるではないか」
う・・よくおわかりで。
「今までは、基本的にあのおじゃマンボウからの視点になっていたからな・・。ま、それはいいとして・・途中で書いたようにちゃんと紹介しろ!」
解りましたよ、もうこんなこと初めてだよ・・ぶつぶつ。
「こら、何か言ったか?」
いいえ、何も。
「ならいいんだがな」
・・では言い直しましょうか、仕方ないですね。
おほん。
「まったく、きちんと紹介してもらいたいものだな」
グリーンヒカリの父さん。
「ぷぅぅぅぅぅぅぅぅ・・。だ、誰が父さんだ。まったく失礼な・・。私はキール青柳。ナギサ補完計画の責任者である」
だ、そうである。
「こらこら!そこ、手を抜くんじゃない」
色々、注文が多い人ですね。
「・・お前が手を抜きすぎなんだよ」
描写が苦手なのは・・マンボウゆずりです。
「・・・・まあ、それはいいとして・・早く話を進めろ。これではいつまで経っても二人・・いや一人漫才になってしまうではないか」
はいはい。
「返事は一度でいい」
はい。
では、今度こそ。
ちょっと待ったコールをかけたのは、この館の主であり、ナギサ補完計画遂行の中心人物であるキール青柳、その人だった。
「あ・・」
その声に、ナギサが気付いて彼の方を向いた。
「一つ目小僧さんですわね・・初めまして」
「え・・あの・・その・・」
案内役と同じように黒ずくめのマントの中から覗く顔は確かに一つ目だった。
いわゆる、エヴァのキール議長のようなアイバイザーをキール青柳も装着しているのだ。
だが、その顔を見て・・一つ目小僧はないと思うのだが・・。
その言葉に、呼ばれた本人も戸惑っているようだ。
「あ・・一つ目コウゾウさんだ。初めまして」
その隣で、少しナギサの口調を真似た気持ち悪い声がする。
言わずもがなの、マンボウである。
「誰が・・」
その声に、正気に戻るキール青柳。
何だか、よっぽどマンボウに言われたことが嫌だったのか顔を歪めている。
息を吸い込み怒鳴ろうとする。
「誰が、一つ目コウゾウだ。まったく失礼な・・」
急に人影が天井から降ってくる。
「うわぁぁぁぁぁ!」
「きゃあっ・・」
思わず叫び声を上げるマンボウ。
それにつられる様にナギサも小さく悲鳴を上げる。
「・・な、何だ・・」
あまりに突然な出来事に、キール青柳も少なからず動揺している。
本来、発動させるはずだった補完計画のシナリオにもないことである。
「失礼にもほどがある」
だが、そんな異常な出現にもかかわらず、当の本人である冬月コウゾウは落ち着いていた。
ある時はネルフ副司令、ある時はコメディアンのマルチな人。
「・・・・そこ、誰がコメディアンだ!」
ぎく・・、何だか今日の出演者は勘がいいなぁ。
「・・ふざけてないで、話を進めたまえ」
はいはい、何度も同じネタを振っても嫌われるだけですしね。
「で・・でたぁ!」
「もう、マンボウさん。突然大きな声を出さないで下さいまし。わたくし、驚いてしまいましたわ」
マンボウはまるでお化けでも見ているように驚いているが、ナギサはどうやらそのマンボウに驚いていたようだった。
彼女にとっては、シルバーダンディ・コウゾウが天井から降ってくるのは驚くことではないのだろうか?
「・・むう、ナギサちゃんは、まったく驚かなかったのか?」
天井から生えている状態でコウゾウが残念がる。
やはり、驚かせたかったらしい。
「・・・・ぼ、僕は十分驚いたけどね・・」
マンボウがコウゾウの言葉に返答する。
「お前には聞いておらん」
が、コウゾウはあっさりと流す。
「・・・・」
「あらあら・・まあまあ・・これはコウゾウさん、お久しぶりでございます」
ようやく、コウゾウに気付いたナギサが、暢気にも挨拶を始める。
「うむ・・ナギサちゃんもあいかわらず元気なようで、何よりだな」
にこりと表情を和らげるコウゾウ。
「はい、わたくし、とても元気ですわ。ご心配には及びません」
コウゾウに、極上の笑顔を返すナギサ。
「・・それにしても、コウゾウさん」
「何だね、ナギサちゃん」
「どうして、ここにいらっしゃるのでしょうか。もしかして、コウゾウさんも御招待されたのでしょうか?」
首を傾げて疑問を表わす。
「いや、それについては、話すと長くなるのでな・・また今度ゆっくりと話すよ」
「・・そうですの・・。残念ですわ」
本当に残念なようで、ナギサは拗ねたような物言いをする。
「・・・・」
それに、見とれるキール青柳。
どうりで、さっきから静かだと思った。
「・・・・で、ちょっといいでしょうか」
ふと、マンボウがナギサとコウゾウの間に割り込んでくる。
「うむ・・何だね少年」
すでに、少年と呼べないと思うのだが、どうやら何だか質問を受けるお兄さんの気分にでもなっているのだろう、びしっとカメラ目線で決めている周先生のようなポーズでコウゾウはマンボウの方を向いた。
何だか、さっきと対応が一変しているが気にしないでおこう。
「ネクタイとか・・どうしてきちっとしているんですか?」
「何だ、そんなことか。はっはっはっ、身だしなみは男の基本ではないか。そんなことも解らんのか」
さわやかに笑うコウゾウ。
「いえ・・そうじゃなくて・・そのネクタイ、引力に逆らって落ちてこないんですけど」
マンボウは、コウゾウが現れた時から疑問に思っていたことを口にした。
彼の指摘した通り、コウゾウの服装、髪型、その他、すべて決まっていた。
そう、通常、地面に立っているかのように。
本来なら、ネクタイは下に垂れるし、頭に血が上って大変だしということになるはずなのだが、そのどれもが当てはまらない。
「はははっ・・それは」
さわやかな笑顔を振り撒いて笑うコウゾウ。
歯がきらりと光っている。
どうやら青春しているようである。
「私が、シルバーダンディだからだよ」
「は?」
コウゾウの答えに、呆れるマンボウ。
「聞こえなかったかな少年。私はシルバーダンディなのだよ。それが、君の質問に対する答えだ」
きらりと光る歯を見せるコウゾウ。
「????・・あの、ちっとも答えになってないような気がするのですけど」
「仕方がないな」
そう言って、コウゾウはコーラを何処からともなく取り出した。
かと思うと、それを開ける。
無論、逆さまのままだ。
「あっ・・れ?」
マンボウが声を上げるものの、コーラはまったくこぼれない。
コウゾウは、何の苦もなくそのコーラを飲む。
・・そういえば、ドリフのネタで逆さまになって色々なことをするのがあったなぁ。
ビールとか、上に向かってどぼどぼとこぼれていったり・・。
単純な仕掛けなんだけど、何だか不思議で面白いネタだったなぁ。
と、そういう回顧はいいとして・・。
「・・これで解ったかね」
「・・・・あの、ますます解らないんですけど・・それに、シルバーダンディって一体?」
「む、まずい。もうこんな時間か!・・少年、それにナギサちゃん、突然だが私は失礼するよ!」
じゃ、というふうに手を挙げるコウゾウ。
マンボウや、ナギサから見ると手を下げているという風になっているだろうか、とにかく別れの挨拶をする。
「あ、ちょっと・・」
「では、また会おう。さらばだ!」
「あ・・コウゾウさん。ご機嫌よろしゅう・・」
慌てて挨拶をするナギサ。
「うむ・・」
くるくると回りながら天井に飲み込まれていくコウゾウ。
その間もさわやかな笑顔を崩さない。
「・・・・結局、質問に答えてないんですけど・・」
呆然とそれを見送るマンボウ、手を振っているナギサ。
そして・・キール青柳は・・。
「・・ナギサちゃんもえ〜」
をい。
どうやら、ずっとナギサの方を見ていたようである。
さすが、ナギサ補完計画の中心人物。
「・・はっ、ついついナギサちゃんに見とれてしまった。・・それ所ではないというのに・・。おのれ、マンボウ」
「・・え?」
コウゾウがいなくなったところをじっと見つめていたマンボウは、急に自分の名を呼ばれて驚いた。
「・・お前を倒して、ナギサちゃんを得る。・・そして、そしてその後は・・」
そこまで口にして、キール青柳は夢見るをとこ(をい)の瞳(といってもアイマスクで隠れてるけど)になった。
「まずは・・紅茶を飲みながら楽しくお話を・・」
・・ここから少し、キール青柳の妄想モードに入ります。
「うふふ、そうですの・・青柳さん、素敵ですわ」
屋敷のテラスで二人きりで話す。
白いテーブルには、気の利いたお茶菓子と紅茶が並んでいる。
「ああ、そうなんだ。それにさ・・」
自分が話をする。
「あらまあ、そうですの?わたくし、存じ上げませんでしたわ」
他愛のない話にナギサちゃんが感心の声を上げる。
「あれ、ナギサちゃんなら知っていると思ったんだけど・・」
「いいえ、わたくし、あまり外へ出ることがありませんので」
「そうなんだ・・だったら、今度出かけようよ。何処でもいいから」
「はい、楽しみですわ!」
嬉しそうに顔を綻ばせるナギサちゃん。
楽しき時間が、ゆっくりと流れて行く。
「それで、それで・・・・」
夢見る瞳で、キール青柳は続ける、
「・・よい風ですわ・・涼やかな草の香り・・」
小高い丘の上・・。
整えられた草の絨毯の上に身を投げ出す。
「青柳さん・・こちらへ・・」
「え?・・」
伝説の木の下(?)にキール青柳を呼ぶナギサちゃん。
「ここの風が一番心地良いですわ」
「あ・・うん」
「・・・・何だか、とても良いお昼寝場所になりそうですわね・・」
「・・そうだね」
「青柳さんも、お休みになられます?」
「え?」
驚くキール青柳に対して、ナギサは草の上に膝をつき正座した。
「どうぞ・・ゆっくりと」
「う、うん・・」
ナギサちゃんの膝枕でお昼寝とは羨ましい・・。
っと、ナレーションが羨ましがってどうするんだ・・。
「でへ、でへ・・」
と、妄想を膨らませるキール青柳。
「・・・・ナギサちゃん、こっち・・」
「あ、マンボウさん」
一人で盛り上がる、キール青柳をよそにナギサの手を引いてその場から離れるマンボウ。
いつまでも、彼の妄想に付き合ってられないというところなのだろう。
「・・・・で、あ〜んとかいってケーキ食べさせてもらったり」
「・・よろしいのですか。あの方に御挨拶なさらなくても」
「いいんだよ・・多分ね」
マンボウは相手が誰であるか知っていたが、敢えて口にしなかった。
ひとまず、この場は離れた方がいい。
その場逃れであるが仕方ない。
「さあ・・行こう」
「・・はい・・ですが・・あ、マンボウさん」
マンボウとナギサは素早く廊下の先に姿を消した。
「・・・・ということで、マンボウ、邪魔なお前には消えてもらう!」
満足したのか、妄想を止めてびしっと口元を引き締めて前を向くキール青柳。
びっと指差した先には、誰もいなかった。
「あれ?・・本当に消えてる」
呆然とするキール青柳。
「・・ナギサちゃんも・・消えてる・・。これが、ラピュタの力・・世界を焼き尽くしたという・・アドンとサムソンの・・メンズビーム・・。じゃ、なくて!ちっ・・逃げやがったな」
何やら、訳の解らないことを言っているが、安心して欲しい、ただの毒電波である(をい)。
ともかく、キール青柳は状況を把握した。
「ガンダムゥカムヒアーっ!」
そして、すかさず動いた。
「・・・・はっ、お呼びになられましたか・・」
ぱちんと指を鳴らすと数人の黒装束の男が何処からともなく現れる。
「うん・・やはり、ナギサ補完計画を発動させる・・よいな」
「は・・しかし、この館の動きは・・」
「・・構わぬ。今は逃げたマンボウを発見することに全力を尽くせ」
「はっ・・畏まりました」
軽く頷くと数人の男は一人を残して姿を消した。
「ふふふ・・マンボウ。ゆるさんぞ・・なんとしても、ナギサちゃんを手に入れてみせるぞ・・」
青柳邸忍者隊・・通称『青影』。
普段は、表に出ることがない影の部隊。
色々な方面でのエキスパートを集めたというエリート集団。
それが、動き出したとなると、まず、マンボウは逃げ切ることは出来るはずもない。
あやうし、マンボウ。
あやうし、ナギサちゃん。
はたして、二人の運命は!
ブラックアウトしていく、画面(?)。
エヴァ・インスピレーションズ「雪風ナギサの青柳邸訪問話」『アイキャッチ』
坂道で雪だるまを作るナギサちゃん。
ふと気がつくと、雪だるまがなくて・・坂道の向こうでレイが雪だるまと化している。
それに気付いて楽しそうに微笑むナギサ。
CM(CN?):
「雪風ナギサの御祓い巫女」
なんと、あのナギサちゃんの巫女さん人形の発売が決定。
ボタンを押すとナギサちゃんが貴方の悪運を祓ってくれる。
ポチッと手タレさんの手で押されるスイッチ。
すると、御祓い串を持った手が左右に動く。
『祓いたまえ、清めたまえ・・えいえい。これで大丈夫ですわ』
内蔵チップで声も出る!
声の種類は16種類以上。
さあ、巫女マニアの貴方、これは必ずゲットだぜ。
御剣工業から、絶賛発売中!
・・突如乱れる画面。
のち、独特の発信音と共に『しばらくお待ち下さい』の画面が表れる。
すちゃらか裏話(1998/1/21)
作者 「皆さん、ご機嫌いかがでしょうか。ちっとも本編が進まない人、踊りマンボウです」
ナギサ「皆様、御無沙汰しておりました。すちゃらか裏話、アシスタントの雪風ナギサでございます」
作者 「さて、裏話に移る前に・・まずは」
二人 「あけまして、おめでとうございます。今年も宜しくお願いいたします!」
作者 「1998年、最初の作品ですから、一応、御挨拶をば」
ナギサ「なかなか、わたくしの出番がございませんが、変わらぬ応援宜しくお願いいたします」
ぺこりと、頭を下げるナギサ。
作者 「はははっ・・ナギサちゃん、ごめんね・・。毎回、毎回・・謝ってばっかりだけど・・なかなか実現しないんだよね・・」
ナギサ「もう、マンボウさん・・。このままだと、皆様から忘れ去られてしまいますわ」
作者 「・・それは言わないで・・、ということで、今回、雪風ナギサの青柳邸訪問話をお送りしております」
ナギサ「はい・・ですが、マンボウさん、何だか物語の途中で終わっているような気がするのですけれど」
作者 「うん・・これはちょっと物語を大きくしすぎちゃって・・それが原因でこうなったんだよ」
ナギサ「と、おっしゃいますと・・」
作者 「えっと、最後の文章は、物語を30分枠のアニメに見立ててそのちょうど中間にあるアイキャッチというイメージで書いてみたんだ」
ナギサ「はい?アニメですか・・」
作者 「うん・・なんだけど、そのちょうどいい地点が・・中間といえなくて・・」
ナギサ「そうなんですの?」
作者 「・・で、ちょっと後半部分の増量とか色々な事情で、完全に前後編に分けることにしたんだ」
ナギサ「ちょっと待って下さいまし。・・つまり、皆さんにお会いできる時間が増えるという訳ですわね」
作者 「うん、結果としてはそうなるね」
ナギサ「まあ、それは良いことではないですか、マンボウさん。わたくしも皆さんとまたお会いできるのが楽しみですし」
アスカ「・・・・マンボウはここ?」
作者 「あ、アスカ」
ナギサ「あ、アスカさん、お久し振りです。お変わりございませんで、何よりです」
にっこりと微笑むナギサ。
アスカ「ええ・・この腐れ作者には色々と泣かされているけどね」
作者 「・・・・何か、ありましたか?」
アスカ「・・シグレとか・・色々ね」
作者 「・・・・」
アスカ「まあいいわ。それよりもマンボウ、何が諸般の事情よ。ただ単にアンタがへぼなだけでしょ。・・これだから、へぼ作家は困るわよね」
ナギサ「ほよ?・・何かあるのでしょうか、アスカさん」
アスカ「ええ、もうありもあり大有りよっ!」
ナギサ「オオアリ・・食い、でしょうか?」
アスカ「・・・・とにかく、マンボウの思惑はこうよ。まず、前後編まとめて、入れるとテキスト量が大きくなる、だから半分に分ける。まあ、これは正論だから良しとするわ」
作者 「・・だって、テキストで20KB越えてるんだから、中間点で」
アスカ「けれど、まあ別に規定がある訳じゃないから、一つにまとめても問題じゃない。・・ちょっと読み込みに時間が掛かるけどね。でも、そこでこの外道は考えたのよ」
作者 「・・げ、外道とはひ、酷い」
ナギサ「そうですわ、アスカさん。マンボウさんはまんぼうであって、ゲドウ(釣り用語の方、目的以外の魚のこと)ではございませんわ」
作者 「な・・ナギサちゃん、ちょっとそれ違う気がする」
アスカ「そもそも、まんぼうを目的に釣り糸を垂らす釣り人なんていないわよ」
ナギサ「ほよ?違うのですか?」
アスカ「・・まあ、いいからナギサは黙って聞いてよね」
ナギサ「はい・・」
アスカ「さっきコイツが言ったように、中間点が中間点じゃなかったのよね。それで、後半の加筆を考えたんだけど・・それが、加筆どころか、ほとんど書き下ろしになるのよね」
作者 「う・・痛いところを・・」
アスカ「それで、時間を稼ぐ為にとりあえず、前半を発表しておこうっていうことなのよ」
ナギサ「あの、アスカさん。加筆とおっしゃいましたが、何を基準におっしゃていらっしゃるのでしょうか。マンボウさんがこの作品を発表されるのは始めてだと思うのですけれど・・」
作者 「ああ、そのことだけど・・表題にあるように、この物語は青柳さんのお屋敷にナギサちゃんがお出かけをする物語だから、ひとまず荒原稿が出来た段階で青柳さんに、内容のチェックをお願いしたんだよ」
アスカ「それで、ひとまず見てもらおうということで、お手紙を書いた。でそのメールを送った後に、自分で原稿を読み直して、その出来の酷さに絶句したのよね」
作者 「そうそう・・て、もしもし」
アスカ「でも、優柔不断の外道作家は、勿体無くて原稿をゴミ箱に捨てられなかった」
作者 「もしもし・・アスカ。そこで勝手に物語を作らないでよ」
アスカ「・・勝手に作ってるのはアンタでしょう?」
作者 「・・まあ、そうだけど・・」
アスカ「それで、大幅な加筆となった訳よね」
作者 「はい、その通りです」
アスカ「まあ、アタシはそんなことどうでもいいけどね。ともかく、構想を膨らませたのはいいけど、姑息な時間稼ぎの為にこんなことするんじゃないわよ」
作者 「・・そんなこと言わなきゃばれないって」
アスカ「それを言うからすちゃらか裏話なんでしょう?」
ナギサ「ちゃんちゃん☆」
作者 「とまあ、落ちもついたところで、そろそろ今回のすちゃ裏を終わりと致します」
ナギサ「それでは皆さん、また、後編や、本編でお会いできる日まで・・。ご機嫌よろしゅう・・」
作者 「ではでは、皆様、失礼いたします」
アスカ「・・外道作家だし・・いつ会えることやら」
作者 「ぐさ・・傷ついた・・。ぱた・・」
ナギサ「まあまあ、マンボウさん・・しっかりなさって下さいまし」
作者 「あ・・ナギサちゃん。ありがとう」
ナギサ「だって、マンボウさんがしっかりなさらないと誰がわたくし達の物語を綴って下さいますの・・」
ナギサ、少し涙目。
作者 「・・そうだね。ごめん・・ナギサちゃん」
ナギサ「マンボウさん、ファイト!ですわ」
作者 「うん・・」
アスカ「・・またべたネタを続けてる。・・懲りないわね、外道のくせに」
ナギサ「アスカさん、違いますわ。マンボウさんはまんぼうさんであって・・」
アスカ「あ〜、はいはい、解ったわよ。・・ホント、疲れるわね、ナギサの相手をしてると・・」
作者 「ということで、また後編でお会いいたしましょう、ではでは!」
ナギサ「それでは、失礼いたします」
ぺこりと頭を下げるナギサ。
退場していく二人。
アスカ「・・はあ・・終わった、終わった。さ、帰ってシャワー浴びなきゃ。・・何だかどっと疲れた感じするし・・」
アスカ、退場。
・・後編に続く。
管理人(その他)のコメント
アスカ「あけましておめでとうなんてばっかじゃない〜」
カヲル「ん?」
アスカ「今いったい何月だと思っているのよ、3月よ3月! それをあけましておめでとうなんて、どこか頭のねじがくるっているんじゃないの?」
カヲル「いや・・・・逃げた作者がこれを受け取ったのは1月上旬なんだけど・・・」
ぎくっ
カヲル「しかも、新年の挨拶と一緒だったような・・・・」
ぎくぎくぎくっ
アスカ「・・・・またどこかでびびってるわね・・・・作者・・・・」
冬月 「やあ、君たち」
アスカ「うをっ! ど、どこからでてきたのよ!」
カヲル「やあ、シルバーダンディじゃないですか」
冬月 「・・・・その呼び方は・・・・ちょっと・・・・」
アスカ「自分で名乗っているくせに」
カヲル「シルバーダンディ・・・・うぷぷ。なんか間抜けな響き・・・・」
冬月 「すきでやっているわけではない! 読者に期待された役割というものがだな」
カヲル「そのわりには気持ちよさそうにくるくる回っていたくせに」
アスカ「歯まで輝いていたし」
冬月 「ええい、あれは碇にだまされたのだ! 私の聞いていた役柄とは違う!」
アスカ「じゃあなんて聞いていたのよ」
カヲル「うん、そうだね」
冬月 「それは当然、縁側でひなたぼっこしながら渋茶をすする楽隠居に決まっているではないか」
アスカ「・・・・誰が決めたのよ」
カヲル「なぜ当然・・・・」
冬月 「それを碇のやつめ・・・・むぐぐ・・・・」
カヲル「ふっ、所詮世の中なんて世知辛いものさ」
アスカ「じじむさいせりふ・・・・あんたこそその楽隠居が似合ってるわね」
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