University of 3rd Tokyo

episode 1

 

 大学に入学した時と言うものは誰でも大いなる期待と言うものを持つものである。

彼、碇シンジもそんな気持ちを抱きながらガイダンスに臨んでいた。もっとも、シンジの

心はそんなに高ぶってはいなかったが。

「何よ、つまんないの?」

彼の連れである惣流・アスカ・ラングレーがシンジの顔をのぞき込みながら尋ねる。

「いや、そんなことないよ。」

シンジは自分が何故農学部に入ったか、そのきっかけになった人を思い出していたのだ。

「アスカこそ、大学は初めてじゃないんだろ?何でガイダンスになんか来るのさ。」

「あんたに付き合ってあげてるのよ。」

「別に頼んでもいないのに?」

「あんたねぇ…」

アスカは軽い溜息と共に、シンジの横顔をつついて続ける。

「アタシみたいな美少女連れて、嬉しいとは思わない訳?」

「もう高校生じゃないのに、美少女?」

シンジはちらりとアスカを見る。

「シンジこそまだ少年のくせに。」

にっこりと笑うアスカにシンジは少しドキッとする。が、平静を装ったまま

「僕はもう大人だよ。」

と、強がって見せる。と、ぼそぼそと教壇で説明していた教官がテキストを片付け始めた。

ほぼ同時にあちこちで席を立つ学生達。

「アタシ達も帰ろうか?」

席を立って、アスカがそう言った。

「うん。」

シンジは少し慌てた様子で立ち上がる。周りの視線に気がついたのだ。

「げーっ、すげー美人。」

「かー、いいねえ。」

「あいつ、彼氏なのかな…」

アスカをチラチラ見ながらの男子学生のつぶやき。ガイダンス中は薄暗かったが、終わると同時に

明るくなった。少し遅刻してきた二人に、視線が集まる。

もう一度、シンジはアスカを見る。ドイツと日本のハーフ。白く透き通った肌に青い瞳。

セピア色の長い髪。何より、端正なスタイルが彼女をどこでも目立つ存在にしている。

「どうしたのシンジ?」

「何でもないよ。」

少し顔を赤くして、シンジが答える。アスカはニッと悪戯に笑うと

「さぁ、行こ。」

と、シンジの手を取る。

「ちぇ。」

周りからは落胆の声が聞こえる。シンジはよけいに顔が熱くなるのがわかった。

「分かってるよ。」

照れ隠しに憮然とした口調で答えるが、機嫌良さそうにしているアスカに手を引かれ、ホールを

後にした。アスカにとって、今日は何年掛かりかの計画の実行日。

 

シンジとアスカは同居人である。大学も同じ。学年も、学部も、そして学科まで。同居は中学の時

からである。もっとも、シンジの両親もであるが。華のあるアスカに比べると、シンジは平凡な学生に

しか見えない。成績でも、シンジはアスカの後塵を拝している。と、言うよりもアスカは特別なのだ。

天使の様なルックスと才媛と言う言葉自体が赤面しそうな程の頭脳。天は二物を彼女に与えた。

シンジもそこそこのセンを行ってはいるが、太陽の前の月のようにアスカの前ではかすんで見える。

それを知ってか知らずか、シンジはアスカに頭が上がらないでいる。

「ねえシンジ。」

アスカがキョロキョロしながら歩くシンジに尋ねる。

「んー、何?」

生返事でシンジが答える。

「何を探してんのよ。」

「えー、可愛い娘でもいないかなあって…」

キッとアスカの眉がつり上がる。

「なんですって!?」

「えー、僕も大学生になったんだし、彼女の一人位、いてもいいだろ。」

強烈に鈍いシンジはさらに続ける。

「アスカも僕といたらいい迷惑だろ?勘違いされるしさ。」

-全く、このバカシンジ、何時になったらアタシの気持ちに気が付くのかしら?-

中学、高校と繰り返されるこのシチュエーションにアスカも慣れているかの様に反応する。

「全くね。何時になったら分かるのよ、バカシンジ。」

「え?」

キョトンとしてシンジがアスカを見る。

「分かってるから、探してるんじゃないか。」

鈍さ全開でつぶやく。それを聞いてアスカは深い溜息をついた。

「分かったところで、いいなと思った娘に声、掛けられるの?」

「あう。」

「あんた、ちっとも変わらないのね。そんなところは。」

言葉と裏腹にアスカの顔は満足気に微笑み、シンジを見つめる。が、一転また眉がつり上がる。

なにかにシンジの気が取られているのに気付いたせいだ。慌ててシンジの視線をたどる。

どこかで見たことのある、水色の髪の毛。スレンダーなスタイルに赤い瞳。

「綾波、綾波じゃないか。」

シンジは嬉しそうにその少女の方に近付いていく。

-げげっ、な、なんであの娘が?しかもよりによって今日に…-

アスカは動揺を隠せなかった。中学時代のアスカに取っては最大の恋敵…の登場に。

「碇君…碇君なの?」

「綾波もここに?」

シンジがウキウキしているように見えるアスカはムッとする。3年ぶりの感情。

「アスカ、ほら、綾波だよ。」

アスカには今のシンジの普通の笑顔がとびきりの笑顔に見える。

「あら、アスカ!ずいぶん大人っぽくなったわね。」

綾波レイは 屈託のない笑みで旧友を迎えた。

「どうしてレイが此処にいるのよ。」

小声でぼそっとつぶやいたあと、アスカも笑みを浮かべて答えた。

「随分久しぶりね。レイもこの大学なの?」

努めて平静にアスカは尋ねる。

「ええ。」

「学部はどこなの、綾波。」

シンジが尋ねる。さっきまでとは違う態度にアスカには映る。(そんなことはないのだが)

「農学部、農芸化学科。」

-あっちゃー、さぁいあくぅ!!こりゃ本当に今日中に何とかしないと…-

アスカの心ではその言葉が跳ね回っている。

「じゃあ僕たちと同じじゃないか!偶然だなあ。」

「え、碇君も…なの?」

はにかむようなレイの表情にアスカは憤慨したように続ける。

「アタシもよ。」

少し慌ててレイが反応する。

「そうなの?これでヒカリや鈴原君達がいたらなぁ…。」

レイは嬉しそうに微笑む。シンジはニッと笑うとアスカに尋ねる。

「だって…さ。」

アスカは複雑そうに苦笑した。

「レイってば、他の高校に行ってたから知らないのも当然じゃない。」

「え?」

当惑したようなレイの表情。

「ヒカリは文学部、鈴原と相田は工学部。ヒカリはいいとして、鈴原と相田は腐れ縁ね。」

「そうなんだぁ!」

再び天使の微笑み。シンジはそう思う。アスカはそんなシンジの心を見透かしたか、機嫌は悪化の一途。

「でも、腐れ縁って人のこと、言えないんじゃない?」

『え!?』

二人はレイの言葉にハモって答える。一方は嬉しそうに、他方は意外そうに。

「や、やあねぇ。あ、アタシがシンジなんかの相手をすると思ってるの?」

-ああ、また言ってる。どうしていつも心にもないことを…-

アスカはとっさに口からでた言葉に自己嫌悪。

「そ、そうだよ。何で僕とアスカなんかが…」

シンジも慌てて口を塞いだ。恐る恐るアスカに視線を送る。

「ほー、アタシはいいとして、バカシンジにそんなこと言われるとはね…」

-ああ、また殴られるのか…-

心のつぶやきと同時に、アスカの平手打ちがシンジの左頬を捉えた。

パァン!

「アタシ先帰る。レイ、またね。」

フン、と鼻息を鳴らしてアスカはシンジを一瞥、レイに手を振る。

「はは…またね…」

レイは困った様な顔をしてアスカに手を振り返す。シンジは頬に楓を張り付けて、決まり悪そうに

している。クスッと微笑むレイ。

「相変わらずね、アスカの尻に敷かれてるの。」

「そ、そんなことないって!僕とアスカはただの同居人だよ。」

ムキになってシンジは続ける。

「そうでもなけりゃ、一緒にいたくないよ、アスカなんて。」

「そうなの?」

赤い瞳がシンジの瞳を捉える。シンジは金縛りにあったような感覚を覚えた。

-な、なんだろ…この気持ち…-

少し狼狽するシンジに、レイは意味深な言葉を続ける。

「じゃあ、私もチャンスあるのかな?」

「え!?」

シンジはアスカといるときと同じ様な感覚に気が付く。

「相変わらず鈍いみたいね。こりゃ大変かな?」

-小悪魔の微笑み…って、こんなのを言うんだろうな-

真っ赤な顔をしたシンジ。いくら鈍い奴でも面と向かってそう言われれば察しは付く。

「そ、そ、そ、それって…僕の都合のいいように解釈してもいい訳だよね。」

「さあ?」

くるっと後ろを向いて、レイは背伸びをする。

「アスカ…追いかけなくていいの?」

「あ…」

本人は意識しなくとも、シンジはアスカの事が気になって仕方のないことがよくある。

昔に比べると格段に落ちついたはずのアスカが、まるで中学校の時のように不機嫌になったのが

不思議だと急に思うようになった。こうなると、まさに頭の中がアスカに染まる。

「あ、綾波…また明日ね!」

「ん。」

言うがいなや、アスカの去った方向に駆け出すシンジ。後ろを向いたままのレイはボソッともらす。

「私にはいつも中途半端なんだから…」

その表情には少し陰りがみえる。ローティーンよりはよっぽど安定しているが、割り切る事が出来る

ほど、安定していない十八歳から十九歳の間にいる自分。感情をシンジのおかげで取り戻せた自分。

そしてシンジに感謝したからこそ、別の高校に進んだ自分。

「でも…碇君を忘れられないのも…私。」

上を向いて軽い溜息。

「碇君が…必要なのよ。」

そうつぶやくと、レイも家路についていた。



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恥知らずにも小説もどきを投稿しました。
エヴァ小説の中で、大学を舞台としたものは少ない様ですが、
一番僕には描きやすいステージでもあります。
基本的にはシンジを取り合うアスカとレイと言う、極ありふれたパターン
ではありますが、お約束的な展開にはならない予定です。
若干ヘビーな内容になるかもしれません。
あと、何話目かで十八禁バージョンが入ります。(^^)
へぼへぼな力量丸だしの小説ですが、ご感想やご意見あれば
よろしくお願いします。
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Rossignol高橋さんへの感想はこ・ち・ら♪   


管理人(その他)のコメント

カヲル「高橋さん、いらっしゃい。この分譲住宅へようこそ。僕は待っていたよ」

アスカ「大学ものね。ふーん MIDNiGHTさんのとはまた少し違った内容ね。ふーん・・・・」

カヲル「どうしたんだい。そんな仏頂面して」

アスカ「なんでもないわよ。ただ、シンジがあんまりにも鈍感なんでね」

カヲル「ま、それがシンジ君のいいと頃なんだけどね」

アスカ「すこしは勘づきなさいよ、あの鈍感。レイですら分かって身をひいていたって言うのに、いうのに、まーたややこしいことに・・・・うがあっ!!」」

カヲル「ままままま、おちついておちついて」

アスカ「この先18禁バージョンが何とかこうとか言ってるけど・・・・まさかシンジとレイ・・・なんてとんでもないことになったら・・・・むきいっ!!」

カヲル「そう思ったら既成事実でも作ってしまえば? にやり」

アスカ「な、な、なんてことを!!(真っ赤)」

カヲル「同居人なんだから、簡単簡単」

アスカ「簡単って・・・・アンタ・・・・汗」

カヲル「じゃ、アスカ君が行かないのなら僕が・・・・」

アスカ「つまるところそれかい!!」


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