過剰期待

 惣流・アスカ・ラングレー(以下、アスカ)「陪審員の皆さん、まずアタシが申しあげたいことは、被告に与えられた情報量を一考していただきたいということです」

場所:アメリカ式の裁判所。被告人、碇シンジ。弁護士、惣流・アスカ・ラングレー。検察官、加持リョウジ。陪審員の顔ぶれについては、ご想像にお任せする。

アスカ「被告はパイロットでした。そして彼には、その身分なりの情報量しか与えられなかったのです。しかし、彼には高度の判断が求められました。ここで彼が採るべき行動はなんだったでしょうか。乃ち、それは上位者の判断に委ねることです」
加持リョウジ(以下、加持)「異議あり。弁護人は問題のすり替えをしようとしています。ここで問題とされるべきは彼のとった行動による結果だ。過程じゃない」
アスカ「ち、が〜う!アタシがいいたいのは、ここで裁かれるべきが被告人じゃない、ってことなのよ。いいこと、皆さん。彼のとった行動が、結果としてその上位者、及び公共の利益に反する、というならば、これは彼が何らかの形で裁かれても当然よ。でもこれは違うの。かれは自らの情報量と状況を照らし合わせ、自分の宰領で行うべき事ではない、と考えたのよ」
加持「そう考えた結果が、乃ち今裁かれていることなのだ。かれは判断を保留したのではない。ただ逃げ出したのだ」
アスカ「で、その結果が今の世界といいたいわけね。その責任は挙げてこの被告人、碇シンジにあると」
加持「被告人は己にとって過ごしやすい世界を望んだ。この世界では、彼しか救われない」
アスカ「馬鹿シンジには己の望んだ世界を具象化する力が与えられた。そしてこの馬鹿はその力を実に素直に行使してしまったのよ。それは何故か」
加持「被告人がはやく楽になりたかったからではないのかな」
アスカ「違うわ。被告人はどうしたらよいのか、わからなかったのよ。彼は単なる技術者(パイロット)としてしか己を評価していなかった、自分の存在意義とイコールですらあった。実際、彼にはそれなりの情報しか与えられていなかった。被告人はそんな力(=己の望んだ世界を具象化する力)が存在することすら知らなかったのよ。ましてや自分がそれを行使するなんて、想像の外だった」
加持「現実に彼にはその力が与えられた。与えられる予定がはじめからあった、といいきることはできない。そして逃げ出した、それだけだ」
アスカ「ならば・・・ならば、どうしてシンジの心の葛藤をだれもいやさなかったのよ!?曲がりなりにも『人類補完計画』とかいって、キリストの如く魂の救済をはかろうとしたんでしょう!何もわかってないんだわ、人の心が!傲慢よ!」
加持「・・・君には弁護をする資格はあっても、弾劾する権限はないはずだ」
アスカ「・・・失礼しました。被告人は・・・シンジは己の心を世界に反映させたことをとても後悔しています。ですから、情状の余地が充分あります。陪審員の皆さん、どうか彼の世界観を責めないでください。本当なら、こんな秘匿的なことが表に現れることはないのです」
加持「いや・・・もはや彼の価値観自体がすべて白日の下に曝され、裁かれるべきだ」
アスカ「異議あり。それは法の適用される範囲ではありません。結果を裁くべきと仰ったのは検察側ではないですか」
加持「結果のうちに、彼の価値観が含まれる」
アスカ「ならば、ここで裁かれるべきは彼ではありません。検察側の論法を借りるなら、結果にたいして責任をとるべき人物、乃ち碇ゲンドウ氏、葛城ミサト氏ならびにSEELEこそがこの場に立たされるべきなのです。彼らの手の内にあった情報は、十分に被告人の疑問を解くに十分なものでした。
シンジに情報さえあれば、あればシンジは自ら任ずるところの役割を果たしたでしょう。その心をどうして他人が是だの非だのと論評できるわけ!シンジの心はシンジのものなのよ。他人が絶対踏み込めないかわりに、外の世界と関係のないものじゃないの・・・」
加持「残念ながら・・・この件はかなり特殊だ。一般論が通用しない。碇シンジ、被告人、彼の心に踏み込む権利があるのだよ、我々にはね」
アスカ「大人の・・・責任転嫁だわ。そんなの欺瞞よ。彼に過剰な期待をかけておいて、結果に対する責任を一切負わないなんて。そのくせ、そのくせ、成功した暁には手柄顔するつもりだったのよ・・・そうよ、絶対そうだわ・・・卑怯者なのよ・・・大人って」




あとがき
弁護人、検察官の人選はあくまでたまたまです。アスカは、これはもう僕の心情的なものですし、たまには加持に泥を被ってもらうのもよかろうかと思って。
さて、あなたはシンジを弾劾しますか?赦せますか?   

楊 威利さんへの感想はこ・ち・ら♪   
そして楊 威利さんのぺえじはこ・こ♪   


管理人(その他)のコメント

ミサト「ぐーすかぐーすか」

アスカ「このぐーたら管理人は・・・・前回に続いて今回も醜態をさらして・・・・」

シンジ「はぁはぁはぁ、やっとついた・・・・」

アスカ「シンジ? アンタ一体なにしに来たのよ?」

シンジ「え? ミサトさんからメールが来てね。「コメント、よろしく〜」って書いてあるから、急いでここへ・・・・」

アスカ「また・・・・シンジに頼ってるのね。ミサトは」

シンジ「仕方ないよ。ミサトさんはいつもそうだもん」

アスカ「大人はいっつもそうなのよね。シンジシンジシンジって」

シンジ「でも、自分のできることとできないことを分かって、できないことまで無理してしないって言うのはある意味正しいことじゃないのかな?」

アスカ「なんでよ」

シンジ「だって、出来もしないことをやって、失敗してまわりに迷惑をかけるよりは、自分のできることを一生懸命やって、できないことはそれができる人に任せた方がいいじゃないか」」

アスカ「ミサトにできることなんてせいぜい酒飲んで寝てるくらいじゃない」

シンジ「それは・・・・まあ・・・・そうだなぁ・・・・」

アスカ「たかがこんなコメントをするくらい、誰だってできるって。ミサトにはやる気がないのよ、やる気が!」

加持 「おやおや、ずいぶんとひどいことを言うじゃないか」

アスカ「あ、加持さん〜はあと」

加持 「こいつだって、自分のできることとできないことくらい分かってるさ。それに、自分がどういう役割を求められているかってこともね。酔っぱらってるぐ〜たらっていう役割を、見事に果たしているじゃないか」」

アスカ「どうかんがえても、アタシにはミサトが演じているんじゃなく、でやっているように思うんですけど」

加持 「まあ、そうともいうなぁ・・・はっはっは」

アスカ「・・・・げんなり」

ミサト「ぐお〜すぴ〜」



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