GOD'S IN HIS HEAVEN.ALL'S RIGHT WITH THE WORLD.

 碇シンジ(以下、シンジ)「初号機が神?神ってなんだろう?」
 渚カヲル(以下、カヲル)「曖昧な記号だね、『神』という言葉は」
 シンジ「カヲル君、それは僕が日本人だからかい」
 カヲル「違うよ。確かにキリスト教徒が『神』といった場合、多くはそれはヤハウェの事を指すのだろう。が、だからといって人の心に彼以外の神が宿っていないとは限らない・・・」
 シンジ「僕にとっての神は・・・」
 カヲル「神というのは所詮は人の心に宿るものだ。たとえ髭もじゃの俗物とて、信じるものからすれば神だ」
 シンジ「・・・」
 カヲル「ペルシアで『暗殺教団』といえばアサッシンだが、インドでは『カーリー教徒』だ。カーリーはドゥルガー女神から生まれた破壊の権化だ。その姿は醜い。秀麗なドゥルガーの負の側面を負った神といえるんだ。彼ら、カーリー教徒は己の信ずる神、破壊神シヴァの后であるカーリーのために旅人を殺し、祀る。彼らは自分を祝福されたモノと考えるだろう、殺人を犯すときにね」
 シンジ「信仰心を持った人間が人殺しを・・・」
 カヲル「人間は絶対の価値観、乃ち『宗教』の後ろ盾があってもっとも大胆になれる。SEELEの老人達にとっての『神』は己の事業と言えるだろう。彼らはそのためになら幾千億の死体もものかは、だよ、シンジ君」
 シンジ「『神』は絶対で、全能なの?」
 カヲル「一神教とは、この世で最も体系化されたペテンの一つだ。すべての歴史的事実は神に集約される・・・」
 シンジ「歴史的事実?」
 カヲル「ノアの箱船、モーゼのエジプト脱出、イェリコの攻防、旧約聖書は文献資料に充分成り得るよ。『聖書史学』というのか成立するんだ」
 シンジ「それが・・・ペテン?」
 カヲル「すべては書き手の『主観』により処理されるんだ。史学は『客観的事実』の積み重ねだ。つまり、宗教というのは史学から最も遠いところにあるんだ」
 シンジ「じゃあ・・・」
 カヲル「だからこそ、神は人の中に住む」
 シンジ「・・・」
 カヲル「『神』が全能かどうか、という問にはいくつか回答があるね。例えば『島のケルト』の神、『トゥアハ・デ・ダナーン神族』。彼らは人間、アイルランドの先住民と戦い、勝ちきれない。彼らとアイルランドを分割する。その後、魔族『フォワール』には苦戦したとはいえ勝利を収める。しかし、大陸からの『人間』にアイルランドを逐われる」
 シンジ「最も強いのは・・・人間?」
 カヲル「そういう見方もできるね。『トゥアハ・デ・ダナーン神族』現アイルランド人に対する先住民、と見ることもできるね。つまり、この神話は『英雄譚』の、もう少し脚色されたもの、という見方さ。そうだね、本朝の『古事記』なんかもその一種じゃないかな」
 シンジ「カヲル君が日本のことを『本朝』なんて、なんかおかしいや」
 カヲル「はは・・・」
 シンジ「僕は、僕は自分の価値観が絶対なんてとても考えられないな・・・」
 カヲル「君とは逆のことを考えている人間、乃ち『信者』は常に不安なんだ。自分の価値観を否定されることが。だからこそ『布教』する・・・」
 シンジ「『人類補完計画』はSEELEの『布教活動』なのかな?」
 カヲル「面白いことを考えるね、シンジ君。確かに、彼らの価値観が否応なく世界を覆っていることは確かだね」
 シンジ「僕は・・・いやだな」
 カヲル「初号機は・・・記号に過ぎない、神だとしてもね」


 あとがき
 真面目に神話学、宗教学やってる人にひっぱたかれそう・・・

   

楊 威利さんへの感想はこ・ち・ら♪   
そして楊 威利さんのぺえじはこ・こ♪   


管理人(その他)のコメント

ミサト「うい〜ひいっく」

アスカ「起きなさいよ、この酔っぱらい!」

ミサト「うい? あ、あら、お久しぶりね、楊さん」

アスカ「まったく・・・・醜態を見せるんだから・・・・みんなに」

ミサト「あははは(^^; 

アスカ「で、この神に関する論議だけどね」

ミサト「確かに、神はひとの不安が作り出したものよね絶対的なものの地からの下にいると確信することで、人は安心することができる。逆に、自分の信じる以上の絶対的な神は否定されなければならない。一神教に関してはそういう論議があるからこそ、十字軍などがおこるのよね」

アスカ「じゃあこの日本は?」

ミサト「日本や中国は、逆に自然万物に神が宿っており、彼らが豊かな恵みを与えてくれるものと信じていたの。だから、水辺に近い人は水の神を。山にすむ人は山の神を。商売にたずさわる人は商売の神、という風に個々人が神を信仰していたのね。それぞれが競合するわけではなかったから、それほど他の神を迫害することはなかったのよ」

アスカ「多神教・・・ねぇ」

ミサト「多神教の方が宗教としては低俗だ、という見方があるらしいけど、こと寛容さに関してはこちらの方が遙かにましだったわ。少なくとも、自分たちの宗教の名の下に人を虐殺するなんて言うことは、一時期をのぞいてアジアにはほとんど存在しなかったのだから」

アスカ「・・・・」

ミサト「楊さんが例としてあげているアイルランドもまたしかり。多くの神が存在していたこの地に、キリスト教が布教されてからは、神とあがめられていた彼らは逆に異教の悪魔の烙印を押されてその地から追放されたのよ」

アスカ「ふーん」

ミサト「他の価値観を認めることができない人々・・・ゼーレも、そのひつなのよね」

アスカ「なるほど・・・・って・・・・」

ミサト「ん?」

アスカ「めずらしく、まともだわ・・・・」

ミサト「最初の醜態の分、挽回しないとね〜(笑)」



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